序章
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その日以降、美桜のバスケ部マネージャーとしての日々が始まった。
朝早く起きて学校へ行き、体育館を開けて用具の準備
そしてドリンク作って練習の休憩時間にドリンクを配る
ゲーム練習の時はスコアを記録したり
バスケの裏方という初めての仕事に美桜は四苦八苦しながらも少しずつ余裕が持てるくらいになっていった。
そして相変わらず緑間と高尾は自主練と言う形で残って練習をしていた...
そんな時、緑間が高尾に話を切り出すのだった。
「どーゆうつもりなのだよ?」
緑間が突然動きを止めると、高尾に鋭い眼差しを向けた。その視線を黙ったまま受け続ける高尾に対し、緑間は続ける。
「最近オレが残っている時は必ずお前もいる。それに、練習中何かと張り合ってくるフシがある。オレに特別な敵意でもあるのか?」
緑間が抱いた疑問は、美桜自身も思っていたこと。四六時中、高尾は緑間と張り合っているかのように練習に参加しているような気がしてならなかったのだ。
実際どうなのだろう?
対峙する二人を固唾を飲んで美桜は見守る。そんな中、黙り込んでいた高尾は息を吐き出すように口を開いた。
「⋯まーな」
高尾は肩を竦めながら続ける。
「つかやっぱ⋯思い出してはもらえねーか。
オレ、中学の時一度お前とやって、負けてんだけど。」
「悔しくて引退後も練習続けて⋯そんでいざ、高校進学したら笑うわマジ。
絶対倒すと決めた相手が、同じチームメイトとして目の前にいやがる。
⋯けど今さら敵意なんて持ってもイミねーしな。
むしろお前にオレの事を認めさせたかった…
競り合ってる様に見えたのはそのせーかな?」
高尾は淡々と正直な気持ちを赤裸々に述べた。
まさか中学時代の対戦相手だったとは...
時間の許す限り試合を見に行っていた美桜の記憶の片隅に彼の存在はない。恐らく、美桜が見に行っていない中学最後の試合のどこかで対戦したのだろう。
驚くべき事実にただただ美桜が驚いていると、尋ねた当事者である緑間は的外れな返答をする。
「...なぜ言わなかったのだよ?」
「へぇ??」
「はい??」
真太郎、普通言わないよ?
美桜と高尾は素っ頓狂な声を漏らした。だが、キョトンとしていた高尾は次の瞬間ブハッ!と吹き出していた。
「なぜ笑うのだよ」
「そっちこそなんでだよ!?言うの?オレが?
『ボク、君にボコボコにされたから頑張ってきたんだ!認めて!』
って?ダッセエ!!」
笑い出した高尾に、意味が分からないと端正な顔を顰める緑間に、高尾は半分おどけながらも声高々に言い放った。そして、笑いを引っ込めた高尾は真剣な眼差しで緑間と対峙する。
「ねーだろーけどむしろまだ認めんなよ。オレはただお前より練習するって自分で決めた事やってるだけだ。
そのうち思わずうなるようなパスしてやっから...
覚えとけよ真ちゃん!」
「...その呼び方は馴れ馴れしいからやめろ高尾」
そんなやり取りがあってから急速的に緑間と高尾の距離が近づいた。だが、第三者側から見ると一方的に高尾が接しているだけで、緑間はめんどくさそうに応対しているのだが。
それでもいいコンビだなと美桜自身、実際微笑まし気に彼らを見ていた。
そんなある日…
いつものように学校へ行こうと家を出た美桜は己の目を疑った。何故なら、目の前に緑間と高尾がいるのだ。それだけならまだいいのだが、問題は彼らが乗っている乗り物。
「美桜ちゃんおはよー!!」
「おはようなのだよ美桜...
さぁ...乗れ」
「なにこれ?」
高尾が乗る自転車には荷台が取り付けられており、そこに座っている緑間は悠々と大好物のお汁粉を啜っていたのだ。
理解が追い付いてない美桜は恐る恐る尋ねる。すると、緑間が真顔で答える。
「チャリアカーなのだよ」
「で?なんで高尾君が漕いでるの??」
チャリアカーという乗り物でどうして通学しようとしたのか、その経緯を聞く気力は美桜にはなかった。浮かびあがった疑問を保留して美桜は別のことを尋ねることにした。その美桜の質問に対して、高尾が泣きつくかのように声を上げた。
「ジャンケンで負けたら漕ぐルールになってんだけどさ...
いつも俺が負けるんだよ!おかしくないか!」
...なるほど
事情をだいたい理解した美桜は高尾を憐みの眼差しで見つめた。
大人しく従うか..高尾君には悪いけど…
これから先の高尾のことを不憫に思いながらも、先を急ぎたい美桜は荷台に乗り込み、緑間の正面に腰を下ろした。
「じゃ..お言葉に甘えて..乗りまーす!」
「よし..行け高尾!早くしないと遅刻するのだよ」
「..わかりましたよ」
そして奇妙なチャリアカー通学が始まったのだった…