序章
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様々な部活が盛んな帝光中学校
中でもバスケ部は部員数は100を超え全中3連覇を誇る超強豪校である。その輝かしい歴史の中でも特に「最強」と呼ばれ、無敗を誇った10年に1人の天才が5人同時にいた世代は「キセキの世代」と呼ばれているようになった。一方、女子の方でもキセキの世代と肩を並べるほどの才能を持つ人物がいた。
少女の名は神田美桜
才能を遺憾なく発揮しコートを駆け回っていた少女。
だがいつからか彼女は表舞台から姿を消したのであった...
*****
空に浮かぶ日が西に傾き始めた夕暮れ時
人気がまばらな住宅街の道をうつむき加減で歩く少女がいた。トボトボと足取りが重いその少女の髪は珍しいマリーゴールド色。その髪は西日の光を受け、一層輝きを放っていた。
はぁぁ…億劫だな
手持ち無沙汰なこの時間。本来ならばボールを我武者羅に追いかけ回していた。だが、もうそんな気分にもなれず、それどころかその他に何をすればいいか彼女にはわからなかった。気分転換にもと外に出てみたはいいものの、結局この浮かない気持ちは晴れることはなかった。
そんな彼女だが、耳に入った音に足を止める。そして、ハッと顔を上げるとその音の方向に視線を向けた。
ドリブルの音
走る音
ボールがゴールを揺らす音
久々に聞くその音に少女は髪を掻き上げて目を細めた。
未だに慣れない長くなったマリーゴールド色の髪を風に靡かせた少女のエメラルド色の瞳に映ったのは、毎日忙しなく通いつめていた公園だった。
少女の足は、その音に懐かしき光景に吸い寄せられるように一歩踏み出していた。そのゆっくりとした足取りは着実に音のする方に向かっていた。が、瞳に飛び込んできた光景を目の当たりにした少女は足を止めた。
公園の一角にひっそりとあるのはバスケットゴール…
そのゴールの前には1人の青年がいて、彼は汗水を流しバスケットボールをダムダムと音を鳴らしていた。
リズムよく軽快に音を鳴らしていた青年は勢いよく走り出し、ステップを踏み地面を蹴り上げる。飛び上がった青年の指先からリリースされたボールは綺麗にリングの網をくぐり抜けた。
その青年のレイアップに少女は密かに高鳴りを覚えた。
どうしてだろうか…
至って普通のレイアップのはずなのに目を奪われてしまったのだ。
汗を拭い懸命に一つのリングに向き合う彼の姿がとても新鮮だった。
だからだろうか…
一瞬だけと思っていた少女は食い入るように、彼のバスケをする風景を眺めていた。が、少女の目の前で青年は動きを止めた。リングの網をくぐって落ちるボールを片手でキャッチした青年はゆっくりと背後に振り返ったのだ。その青年のダークブルー色の眼差しは真っ直ぐと少女に向けられてた。
見ているのがバレてしまった…
不味いとアタフタしだす少女に青年は駆け寄って近づくと、抱えていたボールを彼女に突き出した。その予想外の彼の行動に、少女はポカンとしながら、目の前のボールを眺めたあとにゆっくりと視線を上げた。そこにはさきほどとは打って変わって人懐っこい笑みを振りまく青年がいた。その青年は、困惑する少女に口を開いた。
「バスケ好き??」
その言葉にすぐさま首を振れたらどれだけ良かったであろうか。だが、彼女の首は無意識のうちに縦に動いていた。
その小さい動きに気づいた青年は人懐っこい笑みを浮かべた。そしてそれと同時に抱えていたボールを彼女へと差し出すのだった。その唐突な彼の行動に少女は困惑気味にボールへ落としていた視線を上げる。
「良かったら一緒にバスケしませんか?」
その青年の言葉は少女にとって甘い毒のように感じられた。
ほんとうにこのボールを受け取っていいのだろうか??
少女は暫くの間そのボールを見つめていた。
だが本能というものは素直だった。
数秒後、少女の手にはボールが収まっていたのだ。
「よっしゃ!やろうぜ!」
少女がボールを受け取ったのを確認すると、先程の行儀正しいのが嘘のように、青年は少女の手を引っ張る。その手に誘われるように少女は一歩前へと足を踏み出した。
「俺、高尾和成って言うんだ。よろしくな!」
走り出した青年は嬉しそうに笑いながら自己紹介をする。そんな彼に対して自ずと少女の口は開いていた。
「みお...神田みお。」
そして二人の奇妙なバスケ関係が始まった。
...っと言っても一緒にバスケをするというわけではなく、少女は彼の練習の手伝いをしていた。
パスしたり
ボールを拾って渡す...
ただそれだけでも彼のバスケを間近で見ているだけで少女の胸の奥が高鳴りを覚えた。
色褪せていた景色が、彼が動くたびに色鮮やかな景色へと変貌したのだ。
それをずっと見ていたいと少女は思った。
しかし、春休みは無常にもあっという間に過ぎ去った。
いつの間にか桜咲く季節となり少女は真新しい制服を身に着けていた。
そんな彼女が潜ったのら秀徳高校の門
もう会うことはないだろうと思っていた
だが運命のイタズラは少女と青年を引き寄せるのだった