番外編
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カツカツカツ
靴音を響かせて美桜は全力疾走していた。
ヤバい!!怒られる!!
珍しく寝坊した美桜は、急いでスマホを取り出しある人物に一報入れて、その後慌ただしく支度を済ませて家を出て、駅のプラットホームへ駆け上がっていた。
ハァハァ
取りあえず電車には間に合ったと大きく息を付き呼吸を整える美桜の耳に、近くにいた女子生徒集団の話が入ってきた。
「あの人カッコよくない??」
「うっわぁ!チョーイケメン!」
「あれ?あの制服、秀徳じゃない?」
「ホントだ!頭いいとこじゃん」
「彼女いるのかなぁ?」
「優良物件じゃない!」
「ちょっと声かけてみようかなぁ」
「ちょっとでいいからこっち向いてくれないかな」
そのヒソヒソ話にピクリと美桜は反応する。そして恐る恐る彼女達の背後に回り、視線の先を確認するように覗き込んだ。
秀徳の学生服である学ランを身にまとい
両耳にはイヤホンを入れて
サラサラの黒髪が時おり風で揺れており
伏目がちな瞳は片手に握られているスマホに落とされていた
彼こそ、美桜が待ち合わせしていた相手…高尾和成である。
ドクン
美桜の心臓は大きく高鳴った。
いつも間近にいるからこそ、少し遠目から見る彼の横顔は新鮮だった。
ってか、何噂話されてんだ…
美桜の心の奥底で黒い感情が渦巻き出した。
ふとスマホから視線を外した高尾は顔を上げる。彼のダークブルーの瞳は迷いもせずに真っ直ぐ美桜のいる方向に向けられた。そしてニヤリとすると早くこっちに来いとでも言うように手をこまねいた。
「キャア!!こっち向いた!!」
「私達のこと見てるのかな!!」
「えぇっ!!手招いてるよ!!」
「どうする?どうする!!」
先程の集団の女子生徒達が上ずった声で興奮気味に妄想を膨らませ始める。
別にアンタ達の事を見てるわけじゃないのに
高尾に向けられるヒソヒソとした黄色い歓声に美桜はイラッとしてしまった。
周囲から向けられる高尾の印象は知っているが、流石に我慢の限界だった。
「和!!!」
彼女達の背後から抜けると美桜は真っ直ぐ彼の元に走り抜けた。彼女達の耳に聞こえるようにわざと甘い声で彼の名前を呼ぶと美桜は彼の腕に自分の腕を絡ませた。
「おっせーよ、ヒヤヒヤしたじゃねぇーか」
人前では中々やってくれない行動に、高尾は驚きながらも平然を保った。
「イヤぁ、寝坊しちゃって」
「美桜が寝坊ってww
珍しいじゃん」
ケラケラと笑いはじめる高尾の袖を美桜は引っ張る。
「ん??どうした」
「あっち行かない??」
「…別にいいぜ」
彼女たちの視線が煩わしく美桜は、さりげなく高尾を眼の届かない方へ誘導した。
「はぁ…たく、いたんなら様子見してないでもっと早く来いよな」
もういいかなと絡めている腕を外そうとする美桜だが、それを拒むように高尾は阻止する。えっ…と困惑する美桜に高尾は大きく息を付きながら口を開いた。
「え…いつから気づいてたの?」
「美桜が階段を駆け上がって息を整えている頃から??」
「……!!」
「なーんたって俺にはこの眼があるからな!!」
驚きの表情をする美桜に高尾はもう片方の手で己の瞳を指差して笑ってみせた。
「で??」
「ん??」
「美桜ちゃんはどうしてそんなに必死になってるのかなぁ??」
いたずらっぽい笑みを浮かべる高尾は、見透かすような瞳で美桜を見据えた。
その様子に美桜はサッと血の気が引いた。完全に彼はこの状況を知っていて楽しんでいたのだと。直感的に美桜は本能的にヤバいと慌てて取り繕った笑みを浮かべてとぼける素振りを示した。
「え??そう見える??」
「見える見える!!
最初あの声、クソうぜーなって思ったけど、
こんなに甘えてくる美桜見れて、ちょー俺役得だったわ!!」
嬉しそうに笑みを浮かべる高尾に美桜は思わずムッとした表情をした。
「何が役得よ!!こっちの気も知らないで」
「知ってるぜ!!嫉妬してくれたんだろ!」
愉快げに高尾は口角を上げると、呆ける美桜を腕に閉じ込めて彼女の額に唇を落とした。
「気にすんなって!!
俺は美桜以外の女に目移りしないし興味ねーから」
美桜の耳元に高尾はそう囁くと、彼女の手を引いて歩き出す。
不意打ちすぎる!!
完全に殺し文句を言われた美桜の表情は赤面していて、暫しの間俯いて歩く羽目になるのだった。