秀徳対洛山(WC準決勝)
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「出してくれって赤司!!さっきまでよれよれだったじゃないか!!大丈夫なんだろうな!」
「あぁ見苦しい姿を見せた。それについては悪いと思っている。
すまない…」
深々と頭を下げる赤司。その姿を目の当たりにし彼らは目を丸くした。彼が謝る姿なんて見たことがなかったからだ。
「もう一度力を貸してほしい…秀徳に勝つために」
そしてタイムアウトがあける。
洛山からのボール。もちろんボールを持つのは赤司。だが、先ほどと明らかに纏っている空気が違う。先ほど以上に警戒心を強める高尾。だが、赤司は彼をかわす。その先にはボールに手を伸ばそうとする緑間の姿。彼を見た赤司は目を細め口角をあげた。
「久しぶりだね…緑間」
声をかけられた本人は驚きで体が硬直する。その隙に赤司は素早く実渕にパスをした。パスされたボールを実渕は驚きながらもきれいに決める。
「美しいシュートだ。いいぞ実渕」
ディフェンスラインに戻る際に赤司は実渕に一言いい残していく。そんな彼の背を実渕は追うように見つめた。
赤司からのエールなんて初めてだったからだ。だが、それだけではない。未だに手に残る先ほどの感触が忘れられなかったからだ。
位置・タイミング・指にかかるボールの縫い目の角度まで…
完璧
試合中にあんなに気持ちよくシュートを打てるなんて初めてだった実渕は高ぶるテンションを抑えきれず思わず笑みを浮かべるのだった。
赤司のあの一瞬のパス……
それを見た美桜は思わず口角を上げた。
あのパスだ。あのパスに美桜は中学時代憧れをもった。
PGならだれしも欲する完璧なパス。それはエンペラーアイがあるからこそできる。コートにいる敵味方全てを把握しておよそ狙って出せないようなパスを自由自在に出す。それにより完璧なリズムを生み出す。そのリズムはパスを受けた味方の動きを良くし潜在能力を限界まで出すことが出来るのだ。
やっと帰ってきた…本来の彼が
「お帰り…征君」
良かったと胸を撫でおろす美桜。だが、こっちの状況は全然芳しくない。赤司のパスにより調子を上げていった赤司以外の4人はゾーンに類似するほどの力を引き出されていたからだ。
もう皆体力の限界に近い。なのに洛山の方は調子は鰻上りに上がっている。
「洛山に勝つなんて…100年早い!!」
自らゴールを決め点を入れた赤司がそう言い放った。
万事休すの状態。
何をやっても無駄。
どうすればいいのかわからず茫然と立ち尽くす。
そんな二人に対しガツンと一発ずつ宮地と木村が頭を叩く。
「いつまで突っ立てんだ!!眼鏡割るぞ!」
「あの字が見えないのか!!シャキッとしろや!」
木村が顎をしゃくった。その先は秀徳側の観客席にある垂れ幕。
『不撓不屈』
それを視野に入れたと同時に聞こえてくるのは秀徳の名を呼ぶ声、そして自分たちの名前を呼ぶ声。
「時間はまだある。諦めるな。
まずは一本だ…勝ちに行くぞ」
大坪は持っていたボールを高尾に渡す。
そしてベンチ側を顎でしゃくってみせた。
「アイツに最高の景色を見せてやろうじゃないか」
高尾と緑間が視線を向ける。そこには必死に叫ぶ美桜の姿。
和!!!
真太郎!!!
まだ行ける!!!諦めないで!!!
彼女の声はどんな大きな声援よりも鮮明に二人には聞こえた。
それにそのまま持ち場に戻っていく先輩たちの背中が大きく見えた。
そうだ…まだ時間はある。点が取れていないわけではない。
ここで諦めちゃダメだ。
まだまだこの先輩達とバスケをしたい。
それに美桜に頂を見せると約束した。
「高尾…行くぞ」
「あぁ!!」
「洛山よりも多く点を取ってやるのだよ」
二人は互いに頷き駆け出した。
*
そこから洛山と秀徳の鍔迫り合い。
だが、緑間と高尾の連携技は洛山にとっても驚異的だった。
いつどこからシュートが放たれるかわからない。
加えてわかったとしても止めることができないからだ。
必然的に攻撃の的になるのは高尾だ。だが、そうなることは本人もわかっていたことだ。
覚悟は決まっている。
信じるのは緑間のシュートだ。
そして高尾が放ったのは左サイドではなく右サイドから。
これには赤司は目を丸くした。何故なら、緑間は左利き。どう考えても左サイド側からボールを放たないと彼の手にジャストフィットしないからだ。
驚愕な表情を浮かべながら赤司はボールを追う。そしてその先にいたのはいつもと反対の体制で待つ緑間だった。
「お願い!!決まって!!」
美桜は祈るように手を合わせた。左利きの彼に逆サイドの右手でシュートをするように無茶を行ったのは美桜自身だ。でもそんな無茶を頼めたのは緑間だからだ。彼なら出来るようにしてくれると思ったから。
一方の緑間は手におさまったボールに目を細める。
「いいパスなのだよ…」
自分の手にピタリと狂いなくフィットするパス。それは昔赤司から受けたパスを緑間に思い出させるようなものだった。
そして緑間が放ったボールは利き手でないにも関わらず綺麗な弧を描きゴールネットを揺らした。
「どっちからボールが来てもシュートできるのだよ」
唖然とする赤司に緑間は口角を上げる。
「面白い…相手に不足はない」
対する赤司も口角を上げるのだった。
そしてこの戦いは遂に終止符が打たれる。
1点差…
これは緑間が必死に3Pシュートにこだわった結果生み出された勝利だった。