秀徳対洛山(WC準決勝)
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『お前は俺の弱さだ…』
心の奥底で自分と瓜二つの別の声が聞こえてくる。
『名門に生まれ常に人の上に立ち勝つことを義務づけられてきた。』
蘇るように映像に流れるのは己の幼少期。
幼いころから厳しい教育を受けてきた自分。
そして次にシーンとして流れたのは母親の笑う写真。その前で茫然と立ち尽くす自分。
『唯一の安息を与えてくれた母を失って、立ち止まることなど許されなかった。』
母を失ったのにも関わらず、当時悲しみにくれる暇を与えられることはなかった。
『そのころ…
俺はもう引き裂かれ始めていたのかもしれない』
そしてシーンはバスケをする場面に変わる。
『バスケットボール…
母の残してくれた拠り所
厳格な父も勝利する限りバスケに打ち込むことを許してくれた。
帝光バスケ部の練習はハードだが苦ではなかった
それ以上に思う存分にバスケが出来
仲間と過ごす日が楽しかった。』
バスケをすることが…
バスケを通じて出会った仲間達と過ごすことが…
赤司にとって新たな安息になっていた。
『そして果たした全中2連覇
他の誰とでも不可能だった。彼らとだから叶えられた。』
栄光の場。金メダルを首にかけて誇らしげに笑う自分。だが、ここまでこれたのは自分だけの力ではない。
黒子・青峰・紫原・黄瀬・緑間
そしてサポートをしてくれた桃井・神田
誰一人欠けてしまってはこの頂にはたどり着けなかっただろう。
『だが…
ある時からチームは勝利至上主義へと傾いていく。
時を同じくして彼らは次々と自らの才能を開花させ始めた。
その成長は手に負えなくなることへの恐怖となり、置いてかれることへの焦りとなった。』
そんな中、才能を開き始めた紫原に吹っ掛けられた1on1。
その時に思ってしまったのだ。
俺が…赤司征十郎が…負ける!?
ありえない…そんなことはあってはならない!!
勝利によって得たものは敗北によって失われる!!
『俺は最も強くあらねばならなかった。彼らとバスケを続けるために!』
「そうだ…だから…僕が生まれた。
僕は再び彼らを従えた。全中3連覇もわけもないことだ。完膚なきまでの勝利。
絶対は僕だ。
彼らが敵になっても同じことだ。
僕は僕の強さを証明し続ける。」
『だから俺など必要ないとでも?』
「そうだ!!お前はここにいろ!永遠に!!」
そう吠える自身に影にいる己が静かに口を開く。
『そのつもりだった…
だが今…
敗北の予感がお前をきしませている。』
「何がわかる!?
弱者に成り下がったお前に!?」
『あぁ…わかっていなかったのだろう
俺は勝つことで繋ぎとめようとした
かけがえのないものを
それ以外に方法を知らなかった
その弱さがお前を生んだ
勝つことのみを求めそれ以外を切り捨て何のために強くあろうとしたのかを見失った。』
影に潜むもう一人の自分が後悔の色をにじませながら己の手を見つめそっと握りしめた。
『そして今…
お前は同じ過ちを繰り返そうとしている』
脳裏に洛山のチームメイトの後ろ姿が浮かび上がる。
「…!?」
『俺たちの罪はけっして消えはしないだろう
敗北をするならそれもいいと思っていた
だが…やはりそうはいかないようだ
勝ちたい衝動が抑えきれない』
そう言い立ち上がると影から光り輝く道に彼は歩いていく。
何故かはわからない。
でもそんな彼の中で思い出されるのは好戦的な目で睨んできた美桜と高尾。そして緑間だったのだ。
*
そしてゆっくりと目を開けた赤司。纏っている雰囲気が違うと察した黛達は目を見開いた。
それだけではない。彼のオッドアイの瞳が両目とも深紅色になっていたのだ。
「誰とは心外だな…
俺は赤司征十郎に決まってるだろ?」
驚く黛に立ち上がった赤司は口角を上げ目を細めるのだった。