番外編
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「椛!!助けて!!」
一足早く教室に着いていた椛の耳に聞こえてきたのは友達である美桜の声。
朝の憂鬱な時間。加えて椛は低血圧のため朝っぱらからテンションをあげられない。よってすごく朝からテンションが高い美桜についていけない。思わず椛は自身に抱きつく彼女を鬱陶しげに見た。
「なに?朝っぱらから...」
機嫌が悪い椛。だが、そんな彼女などお構いなしに美桜は口を開いた。
「プレゼントだよ!プレゼント!!」
「はぁ!?」
「どうしよ!!」
美桜から出たまさかの言葉に啞然とする椛。
プレゼント!?
いきなり言われても...どういうことだ!?
支離滅裂で言ってる事がわからず、何処からどう突っ込めばよいのかと固まる椛の眼の前では、頭を抱える美桜がいた。
暫く凝視していた椛。だが、やっと頭が回転し始めたのかやっと美桜の言っている事が解りたまらず溜息を吐いた。
「アイツ...誕生日なの?」
「そうなんだよ!!というか良くわかったね?」
テンパりすぎていた美桜は呆れる椛を見て、やっと落ち着いた美桜がキョンとした表情をした。
誰に?と言ってないのにどうしてわかったのかと?
「美桜がテンパるなんてそれしかないでしょ」
溜息混じりに答える椛を見て、美桜は思わず顔を引きつらせた。
「そ...そうかな」
「そうだよ」
バサリと美桜の言葉を椛は切り捨てた。その言葉に思い当たる節がありすぎて美桜は言い返す言葉が見当たらず肩をガクリと落とすのだった。
そんな彼女に椛は次の質問を投げかけた。
「それで?誕生日いつなの?」
「...明日です」
「...はぁ!?明日なの?」
聞いた本人の椛は思わず声を張り上げた。相談してきたということは1週間後くらいなのかと思ったらまさかの明日...。
予想を遥かに上回りすぎて椛は頭を抱えこんだ。
「なんでもっと前に相談しないの!」
「だって今知ったんだもん!」
「誰に聞いたの?」
「真太郎...」
そうなのだ。美桜だって知ってたら前から準備をするのだ。だがそれはできなかった。何故なら彼の誕生日を知らなかったからだ。
そして美桜が誕生日を知ったのはホントにたまたまであったのだ。
美桜が知ったのは今日の登校中。リアカーで学校まで来た後、彼がリアカーを置きに行ってるのを待っている間にふと緑間が口に漏らした一言だった。
*
「美桜...明日は俺一人で登校するのだよ」
「え?どうして?」
何も思い当たる節が見当たらない美桜は不思議そうな顔をして緑間を見上げた。その顔はホントに何も知らない顔。それを見た緑間は驚きの表情を浮かべた。
「気を利かせたつもりだったのだが...
知らないのか?」
「ん?なにを?」
「明日はアイツの誕生日だぞ」
「え....えぇーーー!?」
学校中に響き渡るのではないかくらいの驚きの声を発した美桜。そこからどう教室まで来たかは覚えていない。気づいたら教室にいた椛に抱きついていたのだった...
*
「何あげたら喜ぶかな??」
やはり誕生日は大事な日。本人に喜んでもらいたい美桜は頭を悩ませた。
そんな美桜を見ながら椛は、彼女の彼氏である彼の事を思い浮かべていた。
「アイツなら美桜に貰ったものなら何でも喜ぶと思うけど...」
ほぼ過保護といっても違いない彼。彼女から貰ったものなら彼氏というのは何でも貰っても嬉しいに違いない。が、美桜一筋の彼ならなおさらそうだろうと椛は思ったのだ。
「ホントに!?ホントに!?」
すがるような瞳で椛を美桜は見た。
まぁわかってないのは当の本人くらいかと椛は心の中で溜息を吐くのだった。
一方でその頃隣の教室では...
「なぁなぁ、真ちゃん!
なんで美桜はあんなに怒ってたんだ??」
先程あった光景を思い浮かべながら、高尾は後ろの席に座る高尾に疑問を投げかけた。
学校に着くまでは何もなかったはず...
なのに、リアカーを置いて戻ってきたらいきなり赤くした顔で「和のバカ!」と怒鳴られてしまったのだ。
思い当たる節がない高尾の頭の中はハテナでいっぱいであったのだ。
「怒鳴られても仕方がないのだよ」
投げかけられた緑間は深く溜息を吐いた。
「はぁ!?なんでだよ!」
「それくらい自分の頭でしっかり考えるのだよ...バカめ」
緑間の言葉に再び高尾は頭をフル回転させる。だが、さっきから同じことをしてるのだから結果は同じ。全く美桜が機嫌を損ねた理由がわからなかった。
「降参です!教えて下さい!!」
「教えないのだよ」
「なんで!?」
「おのずと明日には理由がわかるのだよ」
教えてくれと頼み込む高尾。だが、今頃色々と考えてるであろう美桜の事を頭の隅で思い浮かべる緑間が理由を教える訳が無かった。
「明日??」
そのフレーズに高尾はなんかあったっけ?と考え込むのだった。
そして翌日...
学校に行く支度をして外に出た美桜は、高尾の家に向かった。頭の中にシュミレーションを思い浮かべながら...
そして家に着くと足を止める。空を見上げると晴れ晴れした雲一つない青空が広がっていた。
ドクドクと鼓動を打つ心臓音を感じつつ、美桜は深く深呼吸を一つする。そして、眼の前のチャイムを鳴らした。
そして...
ガチャ
玄関の扉が開いて高尾の姿が現れた。
「和....」
緊張しているためか少しうわずった声を出す美桜。対して、高尾は昨日怒られてしまったのに何故美桜がこんな表情しているのか?と心の中で拍子抜けしていた。
なにか一言文句を言われるのかと息を呑む高尾だったのだが...
それはいい意味で裏切られた。
「和!
誕生日...おめでと」
後ろに隠し持っていたのか小さい黒色の手堤を高尾の前に突き出し、頬を赤く染め弾ける笑顔を浮かべる美桜がそこにはいた。
え...とポカンとする高尾。そしてやっと今日は己の誕生日だったのかと気づくのだった。そして恐る恐る高尾はそれを受け取った。
「そっか...今日誕生日だったのか。
すっかり忘れてた」
それと同時に高尾はようやく昨日美桜が怒鳴った理由が腑に落ちた。
「もぅ駄目だよ。大事な日を忘れちゃ...」
一年に一度の大事な日。
誰もが平等に持っている、生まれてきた大切な日。
そんな日を忘れてた高尾に対して、美桜はたまらず頬を膨らませた。
「わりぃ...ありがとな美桜」
バツが悪そうに高尾は頭を掻く。
どういう経緯で美桜が己の誕生日を知ったのかわわからない。だが、そこに昨日理由を一切教えようとしてくれなかった彼が一枚絡んでいることは明らかであった。
高尾の反応を満足気に見た美桜はというと頬を緩まし彼に近づく。そして彼の空いてる手を掴んで歩き出した。
「しょうがないから、これからはちゃんと思い出させてあげるよ」
高尾の顔を見上げそう言うと美桜は、ニヤリと笑い飛ばすのだった。
そして手を引っ張られながらも朝日に照らされる美桜を見て高尾も頬を緩ますのだった。
隣にずっと居たい彼女がいる
そんな彼女と誕生日を過ごすことができている
些細な事かもしれない。だが、高尾にとってそれが一番最高のプレゼントであった...