誠凛対陽泉(WC準々決勝)
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第3クォーター始まりのブザーが鳴る。
誠凛は黒子をベンチに下げ、フォーメンションを2人がマンツーマンディフェンスをし残りの3人がゾーンディフェンスをするトライアングルツーに変更してきた。岡村・劉には3人がつき、福井には伊月、そして氷室には火神が付く。氷室のやる気満ち溢れるオーラを感じた福井は最初からそれを出せよと思いつつボールを送る。
「待たせたな…遠慮なくやろうぜ!辰也!!」
「いい目だ。安心したよ。試合前に言ってたことはホントみたいだね。だが、勝つのは俺だ!大我!」
兄弟の証であるリングをかけて、そしてこの試合の勝敗をかけて…火神と氷室の対決の幕が開けた。
シュート体制をとる氷室。火神は放たれるボールに備えて飛ぶが、氷室の今の動きはフェイク。実際、氷室は飛んでおらず地面に足をつけたまま。フェイクだと気づく火神だが、すでに体は宙に。氷室はそのままドリブルで火神をかわす。だが、前に日向が立ちふさがり後ろには火神。完全に氷室は挟み撃ち状態に。だが、そんなのもろともせずに氷室はシュートを放った。火神・日向は反応できなかった。あまりにも綺麗なモーション。氷室がシュート体制に入ったことに二人は気づけなかったのだ。美桜も青峰も思わず呆けてしまうほどの魅力あるシュート。
「相当やんぞあの12番」
ぼそっとつぶやいた青峰。氷室が放つオーラに青峰は何かを感じとったらしい。そして美桜もそれを感じていた。美桜から見ても氷室のバスケはとてもきれいだった。ドライブ、シュート、フェイク...どれも繋ぎ目が滑らか。青峰のは型にはまらないプレースタイル。一方の氷室は対極的で基本に忠実で一つ一つのクオリティーを極限まで高めている超正統派。
「大輝と真逆だね!」
「あ??美桜うっせーぞ!!」
思わず隣の青峰と比較してしまった美桜。たまらず青峰は彼女を小突く。ギャアギャア言い合いが始まる二人。高尾はこの光景に呆気に取られてしまっていた。が、桃井の方は久しぶり見る光景に思わず感傷に浸ってしまうのだった。
一方コート上では...
再び対峙する火神と氷室。氷室は火神を見てまだ火神が気持ちを吹っ切れていないことに気づく。未だに火神は氷室を兄弟として見ていたのだ。恐らく無意識なのだろう。本気でやっているつもりでもセーブをかけてしまう。それくらい火神は優しすぎるのだ。
火神の心情を悟った氷室が繰り出したのは陽炎のシュート(ミラージュシュート)。放たれたボールは火神のブロックをすり抜けてゴールネットを揺らすのだった。
「俺とお前は敵同士…もっと殺す気で来いよ」
火神と氷室の対決は、氷室の勝ち...そして誠凛は火神を一度ベンチに下げるのだった。やっぱりやな予感は当たったと美桜は火神が下がる様子をじっと見ていた。付き合いが少なくてもわかる。火神は情と勝負を分けきることができないのだろう。それは試合にとっては寧ろマイナス面。恐らく、彼の頭を一回リセットさせるために下げたのだろう。
火神・黒子のいない状態でのイージスの盾破りをするために誠凛は勝負に出た。
必死に食らいつこうとする木吉に対し、紫原は苛立ちをつのらせていた。紫原には何故勝てない相手に対してここまで努力し必死になるのか理解できなかったのだ。疑問を抱く紫原に木吉は笑みを浮かべる。
「勝てるかなんて関係ない。目標に向かって努力することなんて楽しくてしょうがないさ…お前は楽しくないのか?バスケ」
「どうせ負けるのに…小物が充実した気分になってんじゃねーよ!!」
紫原の頭にチラつくのは黒子、そして中学時代の美桜の姿だった。それらをかき消すように木吉のボールを叩いた。そのボールは地面にバウンドし伊月が取る。そして、彼はいつの間にか3Pゾーンにいた木吉へパスをする。木吉はシュートを決めた。センターの彼がスリーを決めたがまぐれに過ぎないと陽泉は動揺を鎮めた。その後、氷室が点を追加する。
「伏線はここまでだ…いくぞ!イージスの盾破りだ!!」
日向の掛け声で誠凛の攻撃が始まった。笑みを浮かべ、木吉がPGの代わりを始めるのだった。再びスリーをしようとする彼...それに対し紫原は飛ぶ。しかし、それに対し木吉はシュートをせず伊月へパスを回すのだった。伊月は前後に挟まれながらも上に放り投げた。
「勝てるかどうか関係ないって言ったけど勘違いすんなよ。負けるつもりも毛頭ない!」
木吉がダンクを決めるのだった。
紫原は大抵シュートを飛ばずに止めることができる。だが、木吉の中距離シュートはどうしても飛ばないと飛ぶことが出来ない。つまり数秒間紫原は動くことができず1テンポ動作がどうしても遅れてしまうのだ。誠凛はそこをついたのだ。
再び同じ布陣で挑む誠凛に美桜は疑問に思う。
この作戦、あっ君が飛ばねば効力は無いはずでは。
しかし美桜の予想に反して再び飛ぶ紫原。彼の脳裏に浮かんだのは先ほどの木吉の言葉だった。紫原は飛んではいけないと頭の中ではわかっているのに咄嗟に体が動いてしまったのだ。伊月→日向と周り日向が点を追加した。木吉のお蔭もあり誠凛はまた点を入れ少しずつ追い上げを見せ、点差を一桁差にしてきた。すかさず陽泉はタイムアウトをとるのだった。
「なんで紫原は飛んだんだ??」
「だよね…木吉さんスリーの確率を考えたら…」
「だから伏線を張ったんだろ?」
高尾の疑問に美桜も賛同する。だが、青峰だけはこの作戦のカラクリを見破っていた。
誠凛はこの作戦を仕掛けるために伏線を二つ張った。まず一つは成功確率が低い木吉の中距離シュートを入れた事。あれが一発で決まったことで陽泉のメンバーの頭に刷り込まれたのだ。もう一回あるかもしれないと。なおかつ木吉の後出しの権利。直前まで本気でシュートを放ちに行ってる。これを止めるのはなかなか難しいことだ。
「もう一つは俺の推測でしかないが…」
青峰の推測を美桜達はジッと聞くのだった。
木吉は紫原に挑発して怒らせた。嫌われていることを利用して木吉は紫原の身体が無意識に動くようにしかけたのだろう。
一方、誠凛ベンチでは火神が木吉の姿を見て決意を固めた。未練でしかない、氷室との兄弟の証のリングを黒子に捨ててくれと頼むことで火神は雑念をふっきったのだ。氷室との過去と誠凛との未来を天秤にかけた火神の気持ちは決まっていた。
タイムアウト明け、火神が出てきて氷室と火神が対峙する。この対決は火神が勝ち、氷室のシュートを弾いた。伊月→火神とボールが渡り、今彼の目の前にいるのは紫原。
「今度こそ、ひねりつぶしてやるよ!火神!!」
「ここで引いたらエースじゃねー!!」
飛び上がる火神、調子に乗ってんじゃねーよ!!と紫原が弾くのだった。思わず火神は尻もちをつく。ただ、紫原は浮かない顔をしていた。火神がなにかしようとしていたのは明らか…だが、それがなにかわからなかったのだ。
一方、陽泉も奇策に打って出る。それは木吉にトリプルチームをつけることだった。ボールを持っていた木吉だが、スティールされてしまい、陽泉のカウンター。陽炎のシュートを放つ氷室。止めようとする火神だが、汗で足が滑ってしまいタイミングが遅れてしまうのだが、氷室の放ったボールに触れたのだ。
今のは偶然滑って…
火神はこの1プレーである可能性を考え始めるのだった。火神から木吉はボールをもらうが、木吉にのしかかるのは三人の圧力。咄嗟に伊月にボールを回す。伊月はボールをもらったものの周りにパスを回せるものがいない。確率は悪いがここから打つしかないと判断にスリーを放つ。焦った伊月のシュートはゴール端に当たってしまう。リバウンド…紫原が取ろうするが、その前に走り込んできた木吉がものにしそのままボールを叩き込むのだった。
一人二役をしている彼...体力の消耗も激しいだろう。彼はついに倒れ込んでしまう。危惧していたことが起こってしまったと誠凛は焦る。が、木吉は再び立ち上がった。せっかくここまで追いあげてきたのだ。木吉はここで流れを途切れさせたくないのだ。彼の熱意を聞き...誠凛はさらにエンジンをかけた。全員での総力戦だ。遂に誠凛は5点差まで追い上げた。
「あー...もうこれ以上無理だわ。不愉快過ぎて吐きそうだ。お前らみたいのがうごめいてるのは!努力だの、根性だの、信頼だの...捻り潰してやるよ、全て」
紫原の雰囲気ががらりと変わった。感じるのは物凄い威圧感。どうやら木吉の言動、そして誠凛のプレーが紫原の逆鱗に触れたらしい。そしてオフェンスに参加し始めた。元々、紫原は好戦的なタイプだ。そしてバスケへの興味が薄く面倒を嫌う彼はオフェンスの方が得意なのだ。普段ディフェンスをする彼だが、今回のように逆鱗に触れたゲームでは一人で100得点を入れたこともあるくらいだ。それくらい攻撃力が強いのだ。日向・水戸部・木吉の三人がマークに付く中、それをもろともせず紫原は竜巻のように身体横回転させる。あまりの威力で三人が尻ちをつく中、紫原はボールを叩き込んだ。激しい威力のボースハンドダンク…破壊の鉄鎚(トールハンマー)だ。
まだだ!!と木吉はすかさず伊月にボールを回す。カウンターを狙った攻撃だが、紫原は伊月のすぐ背後に追いついていた。伊月は名前を呼ばれ木吉にボールを戻す。木吉のポイントガードだ。そして陽泉は木吉へのトリプルチームを解いた。木吉の相手をするのは紫原ただ一人だ。
「あんたは俺一人で止める」
そして木吉は後出しの権利を繰り出すも紫原に阻まれてしまう。弾かれボールは福井が取る。そして彼はゴール前に走り込んだ紫原にパスする。火神が必死に止めようとするが、紫原の強力なダンクに弾き飛ばられてしまう。彼のあまりにも勢いがあるダンクはゴールを破損させててしまうのだった。ゴール破損のため一時試合は中断されるのだった。
「あんなことあんの?」
高尾の目は見開いていた。今の状況に驚きを隠せないのだろう。でもいくら美桜でもこれは目を疑う光景だ。「いや...私もビックリだよ。ね?」と美桜は残りの二人に話を振る。「いくらむっくんでもね」あははと引きつった顔で笑う桃井。「怒ったあいつならやりかねないだろ?」苦笑する青峰。流石の彼らもゴールが破損する所は見たことは無かった。
ゴールを変えた後も、彼の勢いはとどまる事を知らない。それでも必死に木吉は食らいついたのだが、遂に彼は体力が尽きたらしくコートに倒れこんでしまう。そんな彼を引き上げたのは紫原は彼にとどめを刺すようなセリフを吐くのだった。
「これが現実でしょ?どう?また何も守れなかったけど…楽しかった?バスケ?」
木吉は悔し気にベンチに下がった。代わりに出てきたのは黒子だった。確かに紫原が言ったように木吉が抜けてしまうとインサイドはもう歯が立たないのは事実だ。それでも、ここにいないだけで木吉の意思は黒子はしっかり受け取った。絶対に負けるものかと黒子は目の前にいる紫原を睨みつける。
「人の努力を否定してしまう君には絶対負けたくない!」
「だからそういう綺麗事がウザいって言ってんだよ、黒ちんさ!」
黒子はバニシングドライブを繰り出し、ゴール前に切り込む。そして、紫原はさっきと距離を詰めてブロックしようとする。見えなくても放物線状にボールは動く。氷室にアドバイスを受けた紫原は腕をありったけ伸ばした。だが、止めることができなかった。黒子の選択はシュートでなくパスだったのだ。そして、ゴール上に上がったボールを火神が叩き込んだのだ。
「皆で力を合わせて結局そういうことでしょ。何時も!!でも言っただろ...俺の前じゃ全部ゴミだって」
苛立ちを見せる紫原。対して黒子は驚きの行動をとった。なんと紫原のディフェンスに一人でついたのだ。
「皆で戦うのはもちろんそのつもりです。でも言ったはずです。紫原君!君を倒すと」
誰もが止められないと思ったその行動。しかし、「ファーリング!白9番。誠凛ボール。」紫原からファールをもぎ取ったのだ。
黒子は影の薄さを利用していないも同然と意識させ不用意に動いたところで現れることで紫原の止めたのだ。
次の誠凛の攻撃...日向がバリアジャンパーを決めた。
「あ!!外すわけないだろうが!黒子だけじゃねぇ!人泡吹かせてやりたいのは俺もなんだよ。」
木吉に吐かれたセリフに日向も憤りを感じていたのだ。
「行くぞ!新フォーメーションだ!」
日向の掛け声で、誠凛はオールコートマンツーマンディフェンスをとった。だが、とれは通常と違う。このディフェンスはマークを度々チェンジしているのだ。これは黒子のスティールを最大限に活かすためのディフェンス…ステルスオールコートマンツーマンディフェンスなのだ。神出鬼没の黒子に対し陽泉はうかつにパスを回せない状態。このディフェンススタイルで更に誠凛は追い上げを見せたのだった。
第3クォーター終了。勝負は残り10分。
誠凛は黒子をベンチに下げ、フォーメンションを2人がマンツーマンディフェンスをし残りの3人がゾーンディフェンスをするトライアングルツーに変更してきた。岡村・劉には3人がつき、福井には伊月、そして氷室には火神が付く。氷室のやる気満ち溢れるオーラを感じた福井は最初からそれを出せよと思いつつボールを送る。
「待たせたな…遠慮なくやろうぜ!辰也!!」
「いい目だ。安心したよ。試合前に言ってたことはホントみたいだね。だが、勝つのは俺だ!大我!」
兄弟の証であるリングをかけて、そしてこの試合の勝敗をかけて…火神と氷室の対決の幕が開けた。
シュート体制をとる氷室。火神は放たれるボールに備えて飛ぶが、氷室の今の動きはフェイク。実際、氷室は飛んでおらず地面に足をつけたまま。フェイクだと気づく火神だが、すでに体は宙に。氷室はそのままドリブルで火神をかわす。だが、前に日向が立ちふさがり後ろには火神。完全に氷室は挟み撃ち状態に。だが、そんなのもろともせずに氷室はシュートを放った。火神・日向は反応できなかった。あまりにも綺麗なモーション。氷室がシュート体制に入ったことに二人は気づけなかったのだ。美桜も青峰も思わず呆けてしまうほどの魅力あるシュート。
「相当やんぞあの12番」
ぼそっとつぶやいた青峰。氷室が放つオーラに青峰は何かを感じとったらしい。そして美桜もそれを感じていた。美桜から見ても氷室のバスケはとてもきれいだった。ドライブ、シュート、フェイク...どれも繋ぎ目が滑らか。青峰のは型にはまらないプレースタイル。一方の氷室は対極的で基本に忠実で一つ一つのクオリティーを極限まで高めている超正統派。
「大輝と真逆だね!」
「あ??美桜うっせーぞ!!」
思わず隣の青峰と比較してしまった美桜。たまらず青峰は彼女を小突く。ギャアギャア言い合いが始まる二人。高尾はこの光景に呆気に取られてしまっていた。が、桃井の方は久しぶり見る光景に思わず感傷に浸ってしまうのだった。
一方コート上では...
再び対峙する火神と氷室。氷室は火神を見てまだ火神が気持ちを吹っ切れていないことに気づく。未だに火神は氷室を兄弟として見ていたのだ。恐らく無意識なのだろう。本気でやっているつもりでもセーブをかけてしまう。それくらい火神は優しすぎるのだ。
火神の心情を悟った氷室が繰り出したのは陽炎のシュート(ミラージュシュート)。放たれたボールは火神のブロックをすり抜けてゴールネットを揺らすのだった。
「俺とお前は敵同士…もっと殺す気で来いよ」
火神と氷室の対決は、氷室の勝ち...そして誠凛は火神を一度ベンチに下げるのだった。やっぱりやな予感は当たったと美桜は火神が下がる様子をじっと見ていた。付き合いが少なくてもわかる。火神は情と勝負を分けきることができないのだろう。それは試合にとっては寧ろマイナス面。恐らく、彼の頭を一回リセットさせるために下げたのだろう。
火神・黒子のいない状態でのイージスの盾破りをするために誠凛は勝負に出た。
必死に食らいつこうとする木吉に対し、紫原は苛立ちをつのらせていた。紫原には何故勝てない相手に対してここまで努力し必死になるのか理解できなかったのだ。疑問を抱く紫原に木吉は笑みを浮かべる。
「勝てるかなんて関係ない。目標に向かって努力することなんて楽しくてしょうがないさ…お前は楽しくないのか?バスケ」
「どうせ負けるのに…小物が充実した気分になってんじゃねーよ!!」
紫原の頭にチラつくのは黒子、そして中学時代の美桜の姿だった。それらをかき消すように木吉のボールを叩いた。そのボールは地面にバウンドし伊月が取る。そして、彼はいつの間にか3Pゾーンにいた木吉へパスをする。木吉はシュートを決めた。センターの彼がスリーを決めたがまぐれに過ぎないと陽泉は動揺を鎮めた。その後、氷室が点を追加する。
「伏線はここまでだ…いくぞ!イージスの盾破りだ!!」
日向の掛け声で誠凛の攻撃が始まった。笑みを浮かべ、木吉がPGの代わりを始めるのだった。再びスリーをしようとする彼...それに対し紫原は飛ぶ。しかし、それに対し木吉はシュートをせず伊月へパスを回すのだった。伊月は前後に挟まれながらも上に放り投げた。
「勝てるかどうか関係ないって言ったけど勘違いすんなよ。負けるつもりも毛頭ない!」
木吉がダンクを決めるのだった。
紫原は大抵シュートを飛ばずに止めることができる。だが、木吉の中距離シュートはどうしても飛ばないと飛ぶことが出来ない。つまり数秒間紫原は動くことができず1テンポ動作がどうしても遅れてしまうのだ。誠凛はそこをついたのだ。
再び同じ布陣で挑む誠凛に美桜は疑問に思う。
この作戦、あっ君が飛ばねば効力は無いはずでは。
しかし美桜の予想に反して再び飛ぶ紫原。彼の脳裏に浮かんだのは先ほどの木吉の言葉だった。紫原は飛んではいけないと頭の中ではわかっているのに咄嗟に体が動いてしまったのだ。伊月→日向と周り日向が点を追加した。木吉のお蔭もあり誠凛はまた点を入れ少しずつ追い上げを見せ、点差を一桁差にしてきた。すかさず陽泉はタイムアウトをとるのだった。
「なんで紫原は飛んだんだ??」
「だよね…木吉さんスリーの確率を考えたら…」
「だから伏線を張ったんだろ?」
高尾の疑問に美桜も賛同する。だが、青峰だけはこの作戦のカラクリを見破っていた。
誠凛はこの作戦を仕掛けるために伏線を二つ張った。まず一つは成功確率が低い木吉の中距離シュートを入れた事。あれが一発で決まったことで陽泉のメンバーの頭に刷り込まれたのだ。もう一回あるかもしれないと。なおかつ木吉の後出しの権利。直前まで本気でシュートを放ちに行ってる。これを止めるのはなかなか難しいことだ。
「もう一つは俺の推測でしかないが…」
青峰の推測を美桜達はジッと聞くのだった。
木吉は紫原に挑発して怒らせた。嫌われていることを利用して木吉は紫原の身体が無意識に動くようにしかけたのだろう。
一方、誠凛ベンチでは火神が木吉の姿を見て決意を固めた。未練でしかない、氷室との兄弟の証のリングを黒子に捨ててくれと頼むことで火神は雑念をふっきったのだ。氷室との過去と誠凛との未来を天秤にかけた火神の気持ちは決まっていた。
タイムアウト明け、火神が出てきて氷室と火神が対峙する。この対決は火神が勝ち、氷室のシュートを弾いた。伊月→火神とボールが渡り、今彼の目の前にいるのは紫原。
「今度こそ、ひねりつぶしてやるよ!火神!!」
「ここで引いたらエースじゃねー!!」
飛び上がる火神、調子に乗ってんじゃねーよ!!と紫原が弾くのだった。思わず火神は尻もちをつく。ただ、紫原は浮かない顔をしていた。火神がなにかしようとしていたのは明らか…だが、それがなにかわからなかったのだ。
一方、陽泉も奇策に打って出る。それは木吉にトリプルチームをつけることだった。ボールを持っていた木吉だが、スティールされてしまい、陽泉のカウンター。陽炎のシュートを放つ氷室。止めようとする火神だが、汗で足が滑ってしまいタイミングが遅れてしまうのだが、氷室の放ったボールに触れたのだ。
今のは偶然滑って…
火神はこの1プレーである可能性を考え始めるのだった。火神から木吉はボールをもらうが、木吉にのしかかるのは三人の圧力。咄嗟に伊月にボールを回す。伊月はボールをもらったものの周りにパスを回せるものがいない。確率は悪いがここから打つしかないと判断にスリーを放つ。焦った伊月のシュートはゴール端に当たってしまう。リバウンド…紫原が取ろうするが、その前に走り込んできた木吉がものにしそのままボールを叩き込むのだった。
一人二役をしている彼...体力の消耗も激しいだろう。彼はついに倒れ込んでしまう。危惧していたことが起こってしまったと誠凛は焦る。が、木吉は再び立ち上がった。せっかくここまで追いあげてきたのだ。木吉はここで流れを途切れさせたくないのだ。彼の熱意を聞き...誠凛はさらにエンジンをかけた。全員での総力戦だ。遂に誠凛は5点差まで追い上げた。
「あー...もうこれ以上無理だわ。不愉快過ぎて吐きそうだ。お前らみたいのがうごめいてるのは!努力だの、根性だの、信頼だの...捻り潰してやるよ、全て」
紫原の雰囲気ががらりと変わった。感じるのは物凄い威圧感。どうやら木吉の言動、そして誠凛のプレーが紫原の逆鱗に触れたらしい。そしてオフェンスに参加し始めた。元々、紫原は好戦的なタイプだ。そしてバスケへの興味が薄く面倒を嫌う彼はオフェンスの方が得意なのだ。普段ディフェンスをする彼だが、今回のように逆鱗に触れたゲームでは一人で100得点を入れたこともあるくらいだ。それくらい攻撃力が強いのだ。日向・水戸部・木吉の三人がマークに付く中、それをもろともせず紫原は竜巻のように身体横回転させる。あまりの威力で三人が尻ちをつく中、紫原はボールを叩き込んだ。激しい威力のボースハンドダンク…破壊の鉄鎚(トールハンマー)だ。
まだだ!!と木吉はすかさず伊月にボールを回す。カウンターを狙った攻撃だが、紫原は伊月のすぐ背後に追いついていた。伊月は名前を呼ばれ木吉にボールを戻す。木吉のポイントガードだ。そして陽泉は木吉へのトリプルチームを解いた。木吉の相手をするのは紫原ただ一人だ。
「あんたは俺一人で止める」
そして木吉は後出しの権利を繰り出すも紫原に阻まれてしまう。弾かれボールは福井が取る。そして彼はゴール前に走り込んだ紫原にパスする。火神が必死に止めようとするが、紫原の強力なダンクに弾き飛ばられてしまう。彼のあまりにも勢いがあるダンクはゴールを破損させててしまうのだった。ゴール破損のため一時試合は中断されるのだった。
「あんなことあんの?」
高尾の目は見開いていた。今の状況に驚きを隠せないのだろう。でもいくら美桜でもこれは目を疑う光景だ。「いや...私もビックリだよ。ね?」と美桜は残りの二人に話を振る。「いくらむっくんでもね」あははと引きつった顔で笑う桃井。「怒ったあいつならやりかねないだろ?」苦笑する青峰。流石の彼らもゴールが破損する所は見たことは無かった。
ゴールを変えた後も、彼の勢いはとどまる事を知らない。それでも必死に木吉は食らいついたのだが、遂に彼は体力が尽きたらしくコートに倒れこんでしまう。そんな彼を引き上げたのは紫原は彼にとどめを刺すようなセリフを吐くのだった。
「これが現実でしょ?どう?また何も守れなかったけど…楽しかった?バスケ?」
木吉は悔し気にベンチに下がった。代わりに出てきたのは黒子だった。確かに紫原が言ったように木吉が抜けてしまうとインサイドはもう歯が立たないのは事実だ。それでも、ここにいないだけで木吉の意思は黒子はしっかり受け取った。絶対に負けるものかと黒子は目の前にいる紫原を睨みつける。
「人の努力を否定してしまう君には絶対負けたくない!」
「だからそういう綺麗事がウザいって言ってんだよ、黒ちんさ!」
黒子はバニシングドライブを繰り出し、ゴール前に切り込む。そして、紫原はさっきと距離を詰めてブロックしようとする。見えなくても放物線状にボールは動く。氷室にアドバイスを受けた紫原は腕をありったけ伸ばした。だが、止めることができなかった。黒子の選択はシュートでなくパスだったのだ。そして、ゴール上に上がったボールを火神が叩き込んだのだ。
「皆で力を合わせて結局そういうことでしょ。何時も!!でも言っただろ...俺の前じゃ全部ゴミだって」
苛立ちを見せる紫原。対して黒子は驚きの行動をとった。なんと紫原のディフェンスに一人でついたのだ。
「皆で戦うのはもちろんそのつもりです。でも言ったはずです。紫原君!君を倒すと」
誰もが止められないと思ったその行動。しかし、「ファーリング!白9番。誠凛ボール。」紫原からファールをもぎ取ったのだ。
黒子は影の薄さを利用していないも同然と意識させ不用意に動いたところで現れることで紫原の止めたのだ。
次の誠凛の攻撃...日向がバリアジャンパーを決めた。
「あ!!外すわけないだろうが!黒子だけじゃねぇ!人泡吹かせてやりたいのは俺もなんだよ。」
木吉に吐かれたセリフに日向も憤りを感じていたのだ。
「行くぞ!新フォーメーションだ!」
日向の掛け声で、誠凛はオールコートマンツーマンディフェンスをとった。だが、とれは通常と違う。このディフェンスはマークを度々チェンジしているのだ。これは黒子のスティールを最大限に活かすためのディフェンス…ステルスオールコートマンツーマンディフェンスなのだ。神出鬼没の黒子に対し陽泉はうかつにパスを回せない状態。このディフェンススタイルで更に誠凛は追い上げを見せたのだった。
第3クォーター終了。勝負は残り10分。