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「誰?」

某年6月の梅雨入り。

傘を差して走るのは大変だ。
自分に体力が無いだけだとは思うが、びちゃびちゃに濡れたズボンの裾、靴の中にまで染み込んできた雨にはいろいろ敵わない。

さっきは交差点で車に水をかけられた。
ワイシャツは汚れてしまっている。

とりあえず学校に着いたが上履きなんて履けない。靴下を脱ぎ、裾をまくりあげて、鞄からタオルを取り出し足元を拭う。

とりあえず裸足で上履きを履く。
実に不快なものだ。

「おはよう、広戸。」

声をかけてきたのは担任の松原 太一だ。
科学の教師で少し変わっているが冗談が通じるのでそれなりに面白いと生徒から好かれている。らしい。

「おはようございます。」
「見事にずぶ濡れだね、さっさとジャージに着替えて、風邪引くよ。また後でな。」

松原が更衣室の方向を指差して笑っている。なんとも爽やかな笑顔だ。

とりあえず更衣室に向かう。
まだ他の生徒は来ていなかったようで、更衣室には誰もいなかった。
わざわざ早目に家を出て良かった、ゆっくりと着替えられる。


ジャージに着替えて、更衣室から出た。濡れた制服をビニール袋へ入れ、教室へ向かう。

3年4組、廊下と教室を隔てたガラス戸から人の姿が見えた。もう先客がいるみたいだ。

そこで何かおかしいと感じた。
見慣れない人がいるのだ。

自分の席の隣、左隣の席に見慣れない生徒がいる。
そこは親友の席なのに、邪魔だなぁ。なんて思ってしまう。


金髪で、右耳にピアスを3つ付けて、後ろ髪を紫色のヘアゴムで束ね、尻尾のようになっている。
偏見かもしれないけど、明らかに不良の生徒だと思われる。

ともかく自分の席に物は置きたいと思い、教室に入った。

無言で教室に足を踏み入れた、その生徒がチラッと自分を見た瞬間に、ぱっと表情を変えて目を輝かせる。

「おはよう、秀(しゅう)ちゃん!今日は早いんだね!」

「・・・え?」



窓際、一列目五番目、親友の席だ。
窓際、二列目五番目、僕の定位置。
まあ、特に何もない、変わらない。


隣にいたはずの見慣れた黒髪が、金髪に染まっていること以外は、何も。


それに、『秀ちゃん』なんて呼ぶ奴は親友の日生 奏音(ひなせ かなと)以外にはいない。幼馴染みで親友の奏音以外にいないのは確かなのに、こいつは誰なんだ?


「秀ちゃん、今日元気ないね。」
「んー、いつもより早く起きたから・・・。」

夢だろうか、それとも僕がおかしいだけなのだろうか。こいつは奏音なのか?

混乱している頭では何も言えない、本当にこいつは奏音なのかと考えているところだった。ガラッと勢い良く戸が開いた。

「おっはよー、早いねぇ、広戸君。相変わらず日生君は不良みたいなのに真面目だねぇ。」

生徒会長をしている田辺 郁香が来た。確かに今金髪のことを日生と呼んでいた、じゃあ、奏音で良いんだろうか、と奏音の方を見る。

黒髪が金髪に・・・イメチェンでもしたのかと聞きたかったが聞くに聞けない。田辺が普通に、いつもの事のように話しているもんだから。

「広戸君。さっきから変だよ?元気ないもの。」
「秀ちゃん、早起き苦手だからね。ちょっと疲れたみたいだ。」

二人が楽しそうに僕を見て話しているが、こっちは愛想笑いしかできない。

今日からどうしたら良いのか・・・。
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