短編夢
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「それでは、失礼しまーす」
ヨコハマ署の応接室を後にした佐兎子は銃兎と左馬刻に遭遇した。
佐兎子はヨコハマ署の職員を労うため、退勤後、差し入れを持って訪れていたのだった。
「おや、佐兎子さん」
「銃兎さん。お疲れ様です。……左馬刻くんも?」
銃兎の隣には左馬刻がいた。
「ええ。また昨晩やらかしたようで、本日出所ですよ」
佐兎子はうなだれながら盛大に溜息を吐いた。
「…… 佐兎子。なんだその溜息。ヤクザが悪事を働くのなんかフツーだろ」
佐兎子がうなだれた理由はそこではなかった。
ブタ箱なんか入り慣れてる左馬刻。なのになんで
ツメが甘いんじゃないの?と言うと逆ギレされそうで、佐兎子は敢えて本心を言うのをやめた。
「そうね。でも銃兎さんに感謝しなくちゃね」
銃兎がぽん、と手を打つように閃いた顔をしながら佐兎子に言った。
「そうだ。佐兎子さん。このまま左馬刻を連れ帰ってくれます?」
「いいですけど……」
「今日くらいは大人しくさせておかないと」
今日くらいは……?
仕事の忙しさで『憂鬱な月曜日』の感覚しかなかった佐兎子には銃兎の意図が見えてこなかった。
「銃兎さん、この後は残業ですか?」
「ええ。コイツの後処理をしないと」
「大変ですねー」
ほんとにいつもいつも大変。
左馬刻が捕まるたびに無条件釈放じゃ、尻拭いをする銃兎のネタが尽きるのでは、と佐兎子は不安になった。
佐兎子は左馬刻の腕をがっちりホールドし、銃兎に笑顔を向ける。
「では表の後処理はお願いします。私は裏の後処理をしておきますので」
「おい!後処理に表とか裏とか何だよ!」
「うるさい」
いちいち文句をつける左馬刻に、佐兎子は彼の頬を思い切り抓る。
「お願いしますね」
微笑む銃兎。
佐兎子は頬をさする左馬刻の隣で頭を下げた。
ヨコハマ署を後にした二人。
「ねぇ、今回はなにやらかしたの?」
「お前にゃ関係ねーよ」
ぶっきらぼうに言う左馬刻。
女の佐兎子には心配をかけたくなかった。ましてや妹の
「ふーん。まぁいいわ」
佐兎子はとあるメモに何かを書き込み、1枚剥ぎ取る。
それを、先ほど抓った左馬刻の頬とは逆の方に平手打ちでもかますかのように大きく音を立てて貼り付けた。
「私の裏処理!」
「ッてーな。抓った挙句にビンタかよ。バイオレンスな女だな、おめーはよ」
さすがに痛みを感じながら、左馬刻は紙を剥がし表面を見た。
「1111枚目の違反チケットか。ははっ、何かいいことありそうだな」
「何呑気なこと言ってんのよ!……ん、1111?」
佐兎子はその数字に気付いた。今日は何日だっけ?とか銃兎が『今日くらいは』と言った意味を考えながら逡巡させた。
その意味に辿り着いた頃には、佐兎子は後ろから左馬刻を抱き締めていた。
「佐兎子……?」
「そっか。それで銃兎さん……」
左馬刻のぬくもりを感じながら、佐兎子は優しく呟いた。
「今べつに銃兎の名前言うことねぇだろ」
むっつりとして言う左馬刻に佐兎子は、
「そうだね。だけど、今日は早く家に帰った方がいいよ。大切な人のところに」
「……居ねぇよ」
小さく呟く左馬刻。
「え?」
「あいつは2年前、俺の前から姿を消した。それ以来顔を合わせたことはねぇ」
佐兎子は失言したことを後悔した。
「ごめん。そんなことになってるなんて知らなかった。じゃあ、私が左馬刻くんち行っていい?お祝いしたいの。合歓ちゃんの分まで」
「良いのかよ?お忙しいアイドル検事様が。言っとくが、来るからには今夜は寝かせねぇからな」
「なっ?!なんでそうなるのよ!」
顔を真っ赤にして怒る佐兎子。
「俺様を祝ってくれるんだったらそれぐらいはしてくれねーと」
不敵に笑いながら言う左馬刻。
貴方と出逢えたのを大切にしたいと佐兎子は思った。
この広い宇宙の中で出逢えた奇跡。
いちどきりのあなたを好きでいたいよ。
(2019/11/11)
Happy Birthday, Samatoki!
修正:2020/10/05
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