NL短編
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秋雨の夜。
左馬刻はベッドに横になり、雑誌でも読みながら睡魔が襲ってくるのを待っていた。
ふと窓の方を見やると、雨脚が強くなっているのが分かった。
あ、雷も鳴ってきた。
あいつ……大丈夫かな。昔から雷が嫌いだったから。
そう思っていると突然のノック。
「開いてるぜ」
扉を開けたのは合歓だった。
合歓は、左馬刻が11の頃に母親が再婚し、その再婚相手の連れ子だった。当時5歳。
左馬刻が13歳の頃に母親は夫を殺し、自害してから7年、合歓と二人きりで生きてきた。
左馬刻は成人を迎え、合歓も14になる。
左馬刻の部屋を訪ねた合歓は、やはり泣き顔で涙を拭っていた。
「怖いよ……お兄ちゃん」
「来るか?合歓」
左馬刻は合歓を誘うと、外では一際大きな稲妻が鳴り響いた。
合歓はビクリと身体を震わせ、急いで左馬刻の懐にしがみついた。
「寒くねぇか?」
合歓は首を横に振ると、
「さむい。」
左馬刻は自分のくるまっていた毛布を合歓にも被せてやる。
「ありがとう……お兄ちゃん。お兄ちゃんは、どんどん大人になってくね」
拭いたばかりの合歓の頬に一筋の涙が流れた。
「どうした、急に」
「あたしは雷なんか怖い子供のままで。いつかお父さんとお母さんみたいに、お兄ちゃんも合歓を置いてっちゃうの?」
左馬刻の胸に顔をうずめながら、合歓は泣きじゃくっていた。
「初めて会った時から好きだった。でも『お兄ちゃん』なんだって。好きになっちゃいけないってずっと言い聞かせた。だけど……」
左馬刻は合歓の言葉を黙って聴いていた。
「でもどんどん大きくなっていくの。大好きって気持ちが抑えられないよ……!」
「……!」
左馬刻は胸の奥がズキンと痛むのを感じた。
そして合歓の顔を上げさせ、止め処なく流れる涙を拭ってやる。
俺も……同じだよ、合歓。
左馬刻は合歓の桜色の小さな唇に自身のを触れさせた。
「合歓を置いてかないで」
涙で潤む瞳で訴える合歓に、左馬刻は彼女を抱き締めた。
置いてかねぇよ、合歓。
ずっと一緒にいてやるから。
その夜、ふたりはおでこを合わせるくらい近くで眠った。
朝にはいつのまにか嵐は去っていた。
(2019/11/15)
左馬刻はベッドに横になり、雑誌でも読みながら睡魔が襲ってくるのを待っていた。
ふと窓の方を見やると、雨脚が強くなっているのが分かった。
あ、雷も鳴ってきた。
あいつ……大丈夫かな。昔から雷が嫌いだったから。
そう思っていると突然のノック。
「開いてるぜ」
扉を開けたのは合歓だった。
合歓は、左馬刻が11の頃に母親が再婚し、その再婚相手の連れ子だった。当時5歳。
左馬刻が13歳の頃に母親は夫を殺し、自害してから7年、合歓と二人きりで生きてきた。
左馬刻は成人を迎え、合歓も14になる。
左馬刻の部屋を訪ねた合歓は、やはり泣き顔で涙を拭っていた。
「怖いよ……お兄ちゃん」
「来るか?合歓」
左馬刻は合歓を誘うと、外では一際大きな稲妻が鳴り響いた。
合歓はビクリと身体を震わせ、急いで左馬刻の懐にしがみついた。
「寒くねぇか?」
合歓は首を横に振ると、
「さむい。」
左馬刻は自分のくるまっていた毛布を合歓にも被せてやる。
「ありがとう……お兄ちゃん。お兄ちゃんは、どんどん大人になってくね」
拭いたばかりの合歓の頬に一筋の涙が流れた。
「どうした、急に」
「あたしは雷なんか怖い子供のままで。いつかお父さんとお母さんみたいに、お兄ちゃんも合歓を置いてっちゃうの?」
左馬刻の胸に顔をうずめながら、合歓は泣きじゃくっていた。
「初めて会った時から好きだった。でも『お兄ちゃん』なんだって。好きになっちゃいけないってずっと言い聞かせた。だけど……」
左馬刻は合歓の言葉を黙って聴いていた。
「でもどんどん大きくなっていくの。大好きって気持ちが抑えられないよ……!」
「……!」
左馬刻は胸の奥がズキンと痛むのを感じた。
そして合歓の顔を上げさせ、止め処なく流れる涙を拭ってやる。
俺も……同じだよ、合歓。
左馬刻は合歓の桜色の小さな唇に自身のを触れさせた。
「合歓を置いてかないで」
涙で潤む瞳で訴える合歓に、左馬刻は彼女を抱き締めた。
置いてかねぇよ、合歓。
ずっと一緒にいてやるから。
その夜、ふたりはおでこを合わせるくらい近くで眠った。
朝にはいつのまにか嵐は去っていた。
(2019/11/15)
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