とある夏の思い出
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「もう見えないし、聞こえないんだな」
「そうだね」
涙ぐむ彼らを前に、青葉とアツヤは苦笑した。
ヒロトたちは言った。2人の体が透けていると。声が聞き取りづらくなっていると。
それに青葉もアツヤも慌てはしたが、自分たちの体を見てみても、そういった異変は感じられなかった。
単に彼らに、姿を認識し、声を聞けるタイムリミットがきただけだけ。
事実、青葉とアツヤは期限が迫っていたが、"手紙"にあった2人と彼らの期限は、本質は別のものだった。
「生まれ変わるまであとちょっとか」
「どうする?吹雪くん見に行きたい?」
「いーよ今更。兄ちゃんには仲間がちゃんといるし」
「それならヒロトたちだって」
「……振り回しちまったよなあ」
「だよねえ」
「こんなに入れ込むつもりなんかなかったし、お前になんか会わなきゃ良かったわ」
「は?何それ酷くない!?」
「嘘」
「くっそおこのバカ!」
「アホ!」
「マヌケ!」
「ドジ!」
「……なんか虚しい」
「キリがねーな」
ふう、とため息をつくと。地を蹴って、浮かび上がる。空を飛ぶということも、すっかり慣れてしまったなと、青葉は思った。
そのまま登っていけば、お日さま園はどんどん小さくなっていく。
「……すんごい今更だけど、どうやって転生すんの?」
「……知らね」
「え、どうすんの!?シリアス返せ!」
「いやだって!成仏だってよく分かんねーし!」
「未練無くなったし、今成仏してんじゃないの?」
「……そうなのか?」
「いや知らないけど」
「オレも知らない」
「……転生する為の場所とかあるのかな?意思があれば勝手に着くとか――、」
すとん。足が着いた。ぽかんとする青葉を余所に、アツヤは油断なく辺りを見回す。
ここは、雲の上だろうか?感覚はないが、何か柔らかなものの上に立っているように思える。
遠くには、大きな扉が見えた。
「青葉、あれ」
「……!」
遠くからでも感じる威圧感に、身震いする。自分を失うことへの恐怖か、なんなのか。
「あれ通ったら転生かな」
「だろうな。記憶も全部無くなんだよな」
「辛いなあ。何に来世は何に生まれてくるんだろ」
「人間じゃないかもな」
「例えば?」
「ゴキブリ」
「アツヤなんかプラナリアになっちゃえ」
「ぷら……何だそれ」
「べっつにー」
「……出来るんなら人間に生まれてーな」
「ね」
「んで、またサッカーやりたい」
「あたしもサッカーやりたいな」
「オレたち、また会えっかな」
「どうだろ。記憶ないし」
「あー……」
「会えたらさ、案外本能で分かるかも。この人知ってる!って」
「そうだったら、絶対にサッカーやろうな!」
「うん!ヒロトたちともやろう!」
「もう大人になってんじゃね?」
「サッカーやるのに年齢は関係ないよ。サッカーが好きって気持ちがあればさ!」
「……そうだな」
「その時は勝負しようね!今度こそ負けないよ!」
「無理」
「この野郎!」
そうこうしているうちに、扉は目の前にあった。聳え立つ扉は大きく、神々しい光を放っていた。
無意識のうちに繋いでいた手を、互いに固く、強く握り締める。
「どうせならオレ、今度はお前ときょうだいになりたいかも。面白そうだし」
「それいいね!あたしが姉で、アツヤは弟!」
「いやオレが兄だろ」
「年的にあたしが姉!」
「だからだろ。弟はもうやったし、兄ちゃんいたし、玲名とかは姉ちゃんみたいなもんだったし」
「あたしは?」
「ガキ」
「アツヤだって同じじゃん!」
「うっせ。……あ」
「開いたね、ね」
扉の向こう側は何もなく、白く輝いているだけだった。
「今までありがとう、アツヤ。アツヤに会えて良かったよ」
「オレも、ありがとな、青葉。オレだって、青葉に良かった」
「さっきはあんなこと言った癖に」
「だーかーらー、嘘だっての」
「……あたし、アツヤのこと大好きだよ」
「オレも青葉のこと、大好きだ」
「みんなのことも、大好き」
「オレだって」
「「………」」
「……また、会えたら」
「ああ」
「「サッカーやろうぜっ!!!」」
繋いだ手は離れていく。
またね、なんて言わない。
"会える"ではなく、"会いに"行く。
もう、振り向かない。
躊躇わない。
2人は光の中へ、飛び込んだ。
(おねがい、かみさま)
.
「そうだね」
涙ぐむ彼らを前に、青葉とアツヤは苦笑した。
ヒロトたちは言った。2人の体が透けていると。声が聞き取りづらくなっていると。
それに青葉もアツヤも慌てはしたが、自分たちの体を見てみても、そういった異変は感じられなかった。
単に彼らに、姿を認識し、声を聞けるタイムリミットがきただけだけ。
事実、青葉とアツヤは期限が迫っていたが、"手紙"にあった2人と彼らの期限は、本質は別のものだった。
「生まれ変わるまであとちょっとか」
「どうする?吹雪くん見に行きたい?」
「いーよ今更。兄ちゃんには仲間がちゃんといるし」
「それならヒロトたちだって」
「……振り回しちまったよなあ」
「だよねえ」
「こんなに入れ込むつもりなんかなかったし、お前になんか会わなきゃ良かったわ」
「は?何それ酷くない!?」
「嘘」
「くっそおこのバカ!」
「アホ!」
「マヌケ!」
「ドジ!」
「……なんか虚しい」
「キリがねーな」
ふう、とため息をつくと。地を蹴って、浮かび上がる。空を飛ぶということも、すっかり慣れてしまったなと、青葉は思った。
そのまま登っていけば、お日さま園はどんどん小さくなっていく。
「……すんごい今更だけど、どうやって転生すんの?」
「……知らね」
「え、どうすんの!?シリアス返せ!」
「いやだって!成仏だってよく分かんねーし!」
「未練無くなったし、今成仏してんじゃないの?」
「……そうなのか?」
「いや知らないけど」
「オレも知らない」
「……転生する為の場所とかあるのかな?意思があれば勝手に着くとか――、」
すとん。足が着いた。ぽかんとする青葉を余所に、アツヤは油断なく辺りを見回す。
ここは、雲の上だろうか?感覚はないが、何か柔らかなものの上に立っているように思える。
遠くには、大きな扉が見えた。
「青葉、あれ」
「……!」
遠くからでも感じる威圧感に、身震いする。自分を失うことへの恐怖か、なんなのか。
「あれ通ったら転生かな」
「だろうな。記憶も全部無くなんだよな」
「辛いなあ。何に来世は何に生まれてくるんだろ」
「人間じゃないかもな」
「例えば?」
「ゴキブリ」
「アツヤなんかプラナリアになっちゃえ」
「ぷら……何だそれ」
「べっつにー」
「……出来るんなら人間に生まれてーな」
「ね」
「んで、またサッカーやりたい」
「あたしもサッカーやりたいな」
「オレたち、また会えっかな」
「どうだろ。記憶ないし」
「あー……」
「会えたらさ、案外本能で分かるかも。この人知ってる!って」
「そうだったら、絶対にサッカーやろうな!」
「うん!ヒロトたちともやろう!」
「もう大人になってんじゃね?」
「サッカーやるのに年齢は関係ないよ。サッカーが好きって気持ちがあればさ!」
「……そうだな」
「その時は勝負しようね!今度こそ負けないよ!」
「無理」
「この野郎!」
そうこうしているうちに、扉は目の前にあった。聳え立つ扉は大きく、神々しい光を放っていた。
無意識のうちに繋いでいた手を、互いに固く、強く握り締める。
「どうせならオレ、今度はお前ときょうだいになりたいかも。面白そうだし」
「それいいね!あたしが姉で、アツヤは弟!」
「いやオレが兄だろ」
「年的にあたしが姉!」
「だからだろ。弟はもうやったし、兄ちゃんいたし、玲名とかは姉ちゃんみたいなもんだったし」
「あたしは?」
「ガキ」
「アツヤだって同じじゃん!」
「うっせ。……あ」
「開いたね、ね」
扉の向こう側は何もなく、白く輝いているだけだった。
「今までありがとう、アツヤ。アツヤに会えて良かったよ」
「オレも、ありがとな、青葉。オレだって、青葉に良かった」
「さっきはあんなこと言った癖に」
「だーかーらー、嘘だっての」
「……あたし、アツヤのこと大好きだよ」
「オレも青葉のこと、大好きだ」
「みんなのことも、大好き」
「オレだって」
「「………」」
「……また、会えたら」
「ああ」
「「サッカーやろうぜっ!!!」」
繋いだ手は離れていく。
またね、なんて言わない。
"会える"ではなく、"会いに"行く。
もう、振り向かない。
躊躇わない。
2人は光の中へ、飛び込んだ。
(おねがい、かみさま)
.