25日目
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あの日、オレは雪崩に巻き込まれて死んだ。
気づいたら父さんも母さんも兄ちゃんもいなくて、1人だった。
声をあげても誰も気づかない。向こう側の見える透けた体に、自分が死んだことを理解した。
「なん、で…………っ」
何でオレは死ななきゃいけなかったんだっ!
やりたいことは沢山あった。もっとサッカーが上手くなりたかった。
いつか、フットボールフロンティアに出て、優勝だってしたかった。兄ちゃんと一緒に、完璧なコンビで。
もっと、生きていたかった。なのに、なのに何で、オレは死んだんだ。
叫んでも、叫んでも、誰も聞いちゃいない。何度も何度も叫んでも、声がかけることもない。
オレは本当に死んだのか。悪い夢でも見てるんじゃないのか。そう考えても、現実は残酷で。
髪をかきむしっても、抜けることはない。風は感じる。痛みも微かに。感覚はなんとなくある。でも、
オレは確かに、異質ななにかだった。
暫くして、そんな体にも慣れた。
ガキの頃に読んだ絵本を思い出した。未練ってのがあって、成仏出来ない幽霊の話。
オレもそうなんだって、漠然と思った。
父さんと母さんがどうなったかは分からない。多分、オレと一緒に死んだ。
とにかく、死ぬ前に兄ちゃんが車から放り出されたことは覚えてた。だからきっと、兄ちゃんは生きてる。
慣れ親しんだ大雪原を、空を飛んで通り過ぎる。何でか感じる寒さを防ぐ為にマフラーを巻き直して、真っ直ぐ、真っ直ぐ。
学校はすぐそこだ。
「何だあれ」
グラウンドに立つ兄ちゃんは、オレのマフラーを巻いていた。そんで、マフラーに触ったら、雰囲気が変わった。
それはまるでオレみたいで、ていうか言動がそのまんまオレで、エターナルブリザードまで使うし。
なんか、兄ちゃんの中にオレがいる感じで、
「二重人格ってやつなんじゃないかな」
むちゃくちゃな違和感に棒立ちになっていたオレに、オレと同じようになってるお兄さんが、そう言った。
この体の"使い方"は、お兄さんが教えてくれた。
暫くしたら、物に触ることが出来るようになるとか。
腹が減ったり喉が渇いたりはしないけど、食べたり飲んだりすることは出来るとか。
死んだ時の姿のままなのも、服とか身長とか、変えられることとか。
どういう仕組みなんだよって聞いたら、首を傾げられた。長いこと幽霊をやってるお兄さんも、知らないらしい。
そんなお兄さんが知っていた、重要なこと。
いつまでも、幽霊ではいられない。
ひとりひとりに決められた期限があって、未練がなくなれば成仏出来るようになる。
その期限になったら、未練があっても強制成仏。輪廻?に回って、生まれ変わる。
一応未練がなくなっても、期限までならこの世にいていい。
ほんと、どういうことなんだって。
「お兄さんはさ、未練あんの?」
ゆっくりと首を縦に振ったお兄さんは、苦笑した。なんか妹がいるとか、弟みたいな奴がいるとか。
暇だから色々聞いたら、サッカーをしていることを知って、暇潰しにサッカーをすることにした。
お兄さんはめちゃくちゃ上手くて、兄ちゃんとオレのコンビは完璧だって思ってたけど、まだまだだったんだって思い知った。
また暫く経った。
お兄さんがせっかくなんだからって、色んな所に行くのを勧めるから、そうすることにした。
何を隠そうオレは北海道から出たことがない。だだっ広くて、雪が沢山降る北海道だけが、オレの世界だった。
北海道を飛び出したオレは、色んなものを見た。
世界は広くて、日本だけでも知らないことは沢山あって、何で死んじまったんだろうって、改めて思った。
そんな中、ある町でオレと似たような感じな奴を見つけた。膝を抱えて座る、ぼろぼろな女。こいつも、幽霊か。
試しに声をかけると、そいつは周りを見て、首を傾げた。お前しかいないだろって。
「オレのこと、見えるか?」
めちゃくちゃに首を振るそいつに、思わず笑う。
「お前も、オレと同じなんだな」
そう言うと、「どういう意味」と返ってくる。……自覚ねえのかよ。
厄介そうなやつに話しかけちまった。そう考えながら、思う。
このまま放って置くのは、なんか気分が悪い。すげえ弱ってるし。何がって、心が。
こいつがまた、いつ同じような奴に会うかも分かんないし、いつまでもこの体のままじゃいられない。
……現実を、受け入れさせるしかねーよな。
「お前も、オレと同じようにもう死んでるってことだよ」
嘘だ。
その呟きは、絶望の色に満ちていた。
.
気づいたら父さんも母さんも兄ちゃんもいなくて、1人だった。
声をあげても誰も気づかない。向こう側の見える透けた体に、自分が死んだことを理解した。
「なん、で…………っ」
何でオレは死ななきゃいけなかったんだっ!
やりたいことは沢山あった。もっとサッカーが上手くなりたかった。
いつか、フットボールフロンティアに出て、優勝だってしたかった。兄ちゃんと一緒に、完璧なコンビで。
もっと、生きていたかった。なのに、なのに何で、オレは死んだんだ。
叫んでも、叫んでも、誰も聞いちゃいない。何度も何度も叫んでも、声がかけることもない。
オレは本当に死んだのか。悪い夢でも見てるんじゃないのか。そう考えても、現実は残酷で。
髪をかきむしっても、抜けることはない。風は感じる。痛みも微かに。感覚はなんとなくある。でも、
オレは確かに、異質ななにかだった。
暫くして、そんな体にも慣れた。
ガキの頃に読んだ絵本を思い出した。未練ってのがあって、成仏出来ない幽霊の話。
オレもそうなんだって、漠然と思った。
父さんと母さんがどうなったかは分からない。多分、オレと一緒に死んだ。
とにかく、死ぬ前に兄ちゃんが車から放り出されたことは覚えてた。だからきっと、兄ちゃんは生きてる。
慣れ親しんだ大雪原を、空を飛んで通り過ぎる。何でか感じる寒さを防ぐ為にマフラーを巻き直して、真っ直ぐ、真っ直ぐ。
学校はすぐそこだ。
「何だあれ」
グラウンドに立つ兄ちゃんは、オレのマフラーを巻いていた。そんで、マフラーに触ったら、雰囲気が変わった。
それはまるでオレみたいで、ていうか言動がそのまんまオレで、エターナルブリザードまで使うし。
なんか、兄ちゃんの中にオレがいる感じで、
「二重人格ってやつなんじゃないかな」
むちゃくちゃな違和感に棒立ちになっていたオレに、オレと同じようになってるお兄さんが、そう言った。
この体の"使い方"は、お兄さんが教えてくれた。
暫くしたら、物に触ることが出来るようになるとか。
腹が減ったり喉が渇いたりはしないけど、食べたり飲んだりすることは出来るとか。
死んだ時の姿のままなのも、服とか身長とか、変えられることとか。
どういう仕組みなんだよって聞いたら、首を傾げられた。長いこと幽霊をやってるお兄さんも、知らないらしい。
そんなお兄さんが知っていた、重要なこと。
いつまでも、幽霊ではいられない。
ひとりひとりに決められた期限があって、未練がなくなれば成仏出来るようになる。
その期限になったら、未練があっても強制成仏。輪廻?に回って、生まれ変わる。
一応未練がなくなっても、期限までならこの世にいていい。
ほんと、どういうことなんだって。
「お兄さんはさ、未練あんの?」
ゆっくりと首を縦に振ったお兄さんは、苦笑した。なんか妹がいるとか、弟みたいな奴がいるとか。
暇だから色々聞いたら、サッカーをしていることを知って、暇潰しにサッカーをすることにした。
お兄さんはめちゃくちゃ上手くて、兄ちゃんとオレのコンビは完璧だって思ってたけど、まだまだだったんだって思い知った。
また暫く経った。
お兄さんがせっかくなんだからって、色んな所に行くのを勧めるから、そうすることにした。
何を隠そうオレは北海道から出たことがない。だだっ広くて、雪が沢山降る北海道だけが、オレの世界だった。
北海道を飛び出したオレは、色んなものを見た。
世界は広くて、日本だけでも知らないことは沢山あって、何で死んじまったんだろうって、改めて思った。
そんな中、ある町でオレと似たような感じな奴を見つけた。膝を抱えて座る、ぼろぼろな女。こいつも、幽霊か。
試しに声をかけると、そいつは周りを見て、首を傾げた。お前しかいないだろって。
「オレのこと、見えるか?」
めちゃくちゃに首を振るそいつに、思わず笑う。
「お前も、オレと同じなんだな」
そう言うと、「どういう意味」と返ってくる。……自覚ねえのかよ。
厄介そうなやつに話しかけちまった。そう考えながら、思う。
このまま放って置くのは、なんか気分が悪い。すげえ弱ってるし。何がって、心が。
こいつがまた、いつ同じような奴に会うかも分かんないし、いつまでもこの体のままじゃいられない。
……現実を、受け入れさせるしかねーよな。
「お前も、オレと同じようにもう死んでるってことだよ」
嘘だ。
その呟きは、絶望の色に満ちていた。
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