とある夏の思い出
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
俺――緑川リュウジは、物陰に隠れながら、冷や汗をかきつつ中の様子を伺っていた。
……それは少し前のことだ。たまたま、本当にたまたま、お日さま園の端にあって、ほとんど使われない部屋の前を通った。
そしてその中をふと覗いてみたら、青葉とマキが向かい合っていて、とにかく驚いた。何にって、あのマキの真剣そうな表情にだ。
対する青葉は僅かに下を向きながら、マキの様子を伺っていて、ただならぬ気配を感じた。
君子危うきに近寄らず、だ。そう思いながらその場をそっと立ち去ろうとした時、
「青葉は……マキたちに何隠してるの!!」
何でよりによってそれを聞くんだ!!!
とまあ、こんな感じの経緯で動けないでいた。なんというか、聞いておいた方がいい気がしたというか。
現状としては、マキは涙目だし、青葉は唇を噛み締めて黙りこんでいる。ここは滅多に人が来ないことだけが、唯一の幸いというか…。
「玲名が言ってた。青葉は何か隠してるって!」
「……」
「ねえ何でマキ達に黙ってるの?家族なのに!」
「っ……」
「マキたちのこと、嫌いになった?」
「……そんな、こと……!」
「なら何で言ってくれないのっ!」
マキの方はもう完全に問い詰めるような口調だ。若干パニックになってるような。……気持ちは分からなくもないけど。
「……」
ふっと息を吐いた青葉の表情は、驚く程冷めきっていた。
冷え冷えとして、例えがおかしいかもしれないけど、まるでグランだった頃のヒロトみたいだ。
暫くして、青葉が口を開いた。
「こんな場所に連れ込んで問い詰めてるってことは、マキも薄々勘づいてるんじゃないの」
「!」
図星。そりゃまあ、俺だってそうだ。
この生活が、青葉やアツヤがいる生活がずっと続くなんて最初から思ってない。
いつか、"そういう"日が来る。
そもそも今までだってそうだったんだから、元に戻るだけだ。
頭のどこかでは、気づいてるし、分かってる。
でも、受け入れたくないと思ってない奴なんて、いる筈なくて、
「(あー、ダメだ)」
結局俺も同じな訳だ。
ため息を吐いた時、ドタドタと足音を響かせなから、マキが飛び出していた。
続いて出てきた青葉か、じっとりとした目で俺を見た。
「聞き耳たててたね」
「まあ、ね…」
気まずい。なんて言おうかと頭をかきながら視線を向けると、青葉は今にも泣きそうな表情をしていた。
「――え、」
俺の言葉に気づいたんだろう。次の瞬間には、いつもの笑顔に戻っていた。
「……リュウジは、さ、」
「……」
「あたしがまたいなくなっちゃったら、寂しい?」
「……寂しいのは当然だよ。けど、青葉やアツヤが辛い思いをする方が、もっと嫌かな」
「リュウジってさあ、欲しい言葉を言って欲しい時に言ってくれるよね」
「ヒロト程フォローは上手くないよ」
「ヒロトのことほんと好きだね」
「いや何でそうなるの」
ブーメランして刺さってるよ、それ。
「あとちょっとだから、」
「やっぱり?」
「うん」
「静かになるなあ」
「晴矢と風介が十分煩いよ」
「さしずめ今は十二分ってとこだね」
「ですね」
「青葉は」
「うん」
「楽しかった?」
「もちろん」
「なら良かった」
「強いて言うならだね、」
「ん?」
「自重してたけど、お風呂ドッキリを仕掛けたいかな」
「それはやめて」
「ていうかわざと触れないでくれてるね」
「触れて欲しくなさそうだからね」
「まあ」
「まだ時間はあるんだろ?なら精一杯楽しんでけよ」
「お父さん……!」
「いや何で」
つまるところ、だ。
そんな会話をした時はまだ、あんなことになるなんて想像出来る訳が無かった。
.
……それは少し前のことだ。たまたま、本当にたまたま、お日さま園の端にあって、ほとんど使われない部屋の前を通った。
そしてその中をふと覗いてみたら、青葉とマキが向かい合っていて、とにかく驚いた。何にって、あのマキの真剣そうな表情にだ。
対する青葉は僅かに下を向きながら、マキの様子を伺っていて、ただならぬ気配を感じた。
君子危うきに近寄らず、だ。そう思いながらその場をそっと立ち去ろうとした時、
「青葉は……マキたちに何隠してるの!!」
何でよりによってそれを聞くんだ!!!
とまあ、こんな感じの経緯で動けないでいた。なんというか、聞いておいた方がいい気がしたというか。
現状としては、マキは涙目だし、青葉は唇を噛み締めて黙りこんでいる。ここは滅多に人が来ないことだけが、唯一の幸いというか…。
「玲名が言ってた。青葉は何か隠してるって!」
「……」
「ねえ何でマキ達に黙ってるの?家族なのに!」
「っ……」
「マキたちのこと、嫌いになった?」
「……そんな、こと……!」
「なら何で言ってくれないのっ!」
マキの方はもう完全に問い詰めるような口調だ。若干パニックになってるような。……気持ちは分からなくもないけど。
「……」
ふっと息を吐いた青葉の表情は、驚く程冷めきっていた。
冷え冷えとして、例えがおかしいかもしれないけど、まるでグランだった頃のヒロトみたいだ。
暫くして、青葉が口を開いた。
「こんな場所に連れ込んで問い詰めてるってことは、マキも薄々勘づいてるんじゃないの」
「!」
図星。そりゃまあ、俺だってそうだ。
この生活が、青葉やアツヤがいる生活がずっと続くなんて最初から思ってない。
いつか、"そういう"日が来る。
そもそも今までだってそうだったんだから、元に戻るだけだ。
頭のどこかでは、気づいてるし、分かってる。
でも、受け入れたくないと思ってない奴なんて、いる筈なくて、
「(あー、ダメだ)」
結局俺も同じな訳だ。
ため息を吐いた時、ドタドタと足音を響かせなから、マキが飛び出していた。
続いて出てきた青葉か、じっとりとした目で俺を見た。
「聞き耳たててたね」
「まあ、ね…」
気まずい。なんて言おうかと頭をかきながら視線を向けると、青葉は今にも泣きそうな表情をしていた。
「――え、」
俺の言葉に気づいたんだろう。次の瞬間には、いつもの笑顔に戻っていた。
「……リュウジは、さ、」
「……」
「あたしがまたいなくなっちゃったら、寂しい?」
「……寂しいのは当然だよ。けど、青葉やアツヤが辛い思いをする方が、もっと嫌かな」
「リュウジってさあ、欲しい言葉を言って欲しい時に言ってくれるよね」
「ヒロト程フォローは上手くないよ」
「ヒロトのことほんと好きだね」
「いや何でそうなるの」
ブーメランして刺さってるよ、それ。
「あとちょっとだから、」
「やっぱり?」
「うん」
「静かになるなあ」
「晴矢と風介が十分煩いよ」
「さしずめ今は十二分ってとこだね」
「ですね」
「青葉は」
「うん」
「楽しかった?」
「もちろん」
「なら良かった」
「強いて言うならだね、」
「ん?」
「自重してたけど、お風呂ドッキリを仕掛けたいかな」
「それはやめて」
「ていうかわざと触れないでくれてるね」
「触れて欲しくなさそうだからね」
「まあ」
「まだ時間はあるんだろ?なら精一杯楽しんでけよ」
「お父さん……!」
「いや何で」
つまるところ、だ。
そんな会話をした時はまだ、あんなことになるなんて想像出来る訳が無かった。
.