11日目
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「なあ」
アツヤが俺たちの前に現れて二日目の夜、突然彼は俺の部屋に姿を現した。
「どうかした?」
「いや…」
どこか何かを言うのを躊躇っているような、そんな表情をアツヤは浮かべた。
うろうろと飛び回っているのを静かに見ていたら、決心したかのように口を開いた。
「…あのさ」
「うん」
「言いづらいんだけど、重ねられてたんだってな。その、あの人と」
その言葉に息を呑んだ。そうか、彼はあの人の事を知っているのか。
もしかしたら、会ったこともあるのかもしれない。
「なんつーか、伝言?そーゆーの預かってるから、伝えようと思ってさ」
他の奴らの前じゃ言えないだろ、とアツヤはベッドに腰をかけた。その隣に俺も座る。
あの人――吉良ヒロトから、俺への伝言。一体何を言われるのだろう。
「"ごめん"、だってさ」
「え…」
「自分のせいで辛い思いをさせてしまってごめん、だって」
ぼんやりと思い出すように、アツヤは言った。
謝られるなんて思ってもみなかった。確かに、俺は吉良ヒロトの存在を恨んだことある。
誰も俺自身を見てなくて、俺を通して別の人を見ていて、みんなから疎まれて…。
でも、円堂くんたち雷門に出会えて、仲間の大切さや、サッカーの楽しさを知ることが出来たんだ。
辛い事ばかりじゃなかったんだって、そう思えるんだ。
「辛い事も勿論沢山あった。けど…、嬉しい事も沢山あった。だから、俺はもう恨んでなんか…」
「あー、はいはい。分かってる。"ヒロトさん"もそう言うだろうからって言ってたから」
アツヤはため息をつきながら、ヒラヒラと手を振って言葉を遮った。
「あのな、まあつまり言いたいことは、アンタが負い目を感じる必要はないってことなんだよ」
「アツヤ…」
「"ヒロトさん"はさ、アンタのこと、血は繋がってないけど本当の弟みたいに思ってるってさ」
「…」
「自分の分まで長生きして、思いっきりサッカーやって欲しいって」
「…"ヒロトさん"は?」
「…直に会いたかったみたいだけど、無理だったんだ。遅かれ早かれ死んだ人間は輪廻を回って生まれ変わる事になるからな。それでも、かなり長く留まってたんだぜ?」
「そっか……」
口振りからして、あの人ははもう…。
…こんな俺を、弟と思ってくれた。一度でもいいから会って、話してみたかった。
「…悪い。でも、伝えなきゃいけない事だったから」
「うん、ありがとう。…ねえ、"ヒロトさん"はどんな人だったの?」
「お前に似てた」
「っ……」
それは俺が一番言われたくない言葉で、自分がなんなのか分からなくなる言葉で、
言葉を詰まらせていると、「けど」とアツヤは続けた。
「似てないよ。全然」
「え…?」
「性格とか、考え方とか?つかお前は基山ヒロトだろ?」
「アツヤ…」
「あーもー…上手く言えねえけど、似てない!」
「顔、赤いよ」
「うっせえもう寝ろ!おやすみ!」
そう言うと、アツヤはまるで逃げるように部屋を出ていった。
それを見送って、ベッドに寝転がって目を閉じる。
「(弟、か…)」
俺がなりたくて、なろうとして、なれなかった人は、俺の事を弟だと言ってくれた。
その事実に心が軽くなって、そのまま俺は眠りについた。
(その日見た夢は)
(サッカーをする俺と、あの人の夢)
→あとがき
アツヤが俺たちの前に現れて二日目の夜、突然彼は俺の部屋に姿を現した。
「どうかした?」
「いや…」
どこか何かを言うのを躊躇っているような、そんな表情をアツヤは浮かべた。
うろうろと飛び回っているのを静かに見ていたら、決心したかのように口を開いた。
「…あのさ」
「うん」
「言いづらいんだけど、重ねられてたんだってな。その、あの人と」
その言葉に息を呑んだ。そうか、彼はあの人の事を知っているのか。
もしかしたら、会ったこともあるのかもしれない。
「なんつーか、伝言?そーゆーの預かってるから、伝えようと思ってさ」
他の奴らの前じゃ言えないだろ、とアツヤはベッドに腰をかけた。その隣に俺も座る。
あの人――吉良ヒロトから、俺への伝言。一体何を言われるのだろう。
「"ごめん"、だってさ」
「え…」
「自分のせいで辛い思いをさせてしまってごめん、だって」
ぼんやりと思い出すように、アツヤは言った。
謝られるなんて思ってもみなかった。確かに、俺は吉良ヒロトの存在を恨んだことある。
誰も俺自身を見てなくて、俺を通して別の人を見ていて、みんなから疎まれて…。
でも、円堂くんたち雷門に出会えて、仲間の大切さや、サッカーの楽しさを知ることが出来たんだ。
辛い事ばかりじゃなかったんだって、そう思えるんだ。
「辛い事も勿論沢山あった。けど…、嬉しい事も沢山あった。だから、俺はもう恨んでなんか…」
「あー、はいはい。分かってる。"ヒロトさん"もそう言うだろうからって言ってたから」
アツヤはため息をつきながら、ヒラヒラと手を振って言葉を遮った。
「あのな、まあつまり言いたいことは、アンタが負い目を感じる必要はないってことなんだよ」
「アツヤ…」
「"ヒロトさん"はさ、アンタのこと、血は繋がってないけど本当の弟みたいに思ってるってさ」
「…」
「自分の分まで長生きして、思いっきりサッカーやって欲しいって」
「…"ヒロトさん"は?」
「…直に会いたかったみたいだけど、無理だったんだ。遅かれ早かれ死んだ人間は輪廻を回って生まれ変わる事になるからな。それでも、かなり長く留まってたんだぜ?」
「そっか……」
口振りからして、あの人ははもう…。
…こんな俺を、弟と思ってくれた。一度でもいいから会って、話してみたかった。
「…悪い。でも、伝えなきゃいけない事だったから」
「うん、ありがとう。…ねえ、"ヒロトさん"はどんな人だったの?」
「お前に似てた」
「っ……」
それは俺が一番言われたくない言葉で、自分がなんなのか分からなくなる言葉で、
言葉を詰まらせていると、「けど」とアツヤは続けた。
「似てないよ。全然」
「え…?」
「性格とか、考え方とか?つかお前は基山ヒロトだろ?」
「アツヤ…」
「あーもー…上手く言えねえけど、似てない!」
「顔、赤いよ」
「うっせえもう寝ろ!おやすみ!」
そう言うと、アツヤはまるで逃げるように部屋を出ていった。
それを見送って、ベッドに寝転がって目を閉じる。
「(弟、か…)」
俺がなりたくて、なろうとして、なれなかった人は、俺の事を弟だと言ってくれた。
その事実に心が軽くなって、そのまま俺は眠りについた。
(その日見た夢は)
(サッカーをする俺と、あの人の夢)
→あとがき