豪炎寺と放課後特訓
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西の空が茜色に染まり、鉄塔広場の街灯が点き始めた頃。シュートを受けた美波は、もう今日で何度目か、またもや吹き飛んだ。
「そろそろ終わりにするか」
「ま、待って!お願い!もう1回!もう1回だけ!」
「何度目だ、それ」
「う……」
呆れたような物言いに、流石の美波も黙り込んだ。疲労は溜まっていて、半ば気力で保っているようなものだ。
「今日はもういいだろう。練習ならまた付き合う」
「でもっ……あと少しで、掴めそうなんだ」
「……」
休憩を取りつつ特訓をして数時間。美波は格段に成長していた。真っ正面から対峙して、豪炎寺は円堂に似た何かを感じていた程だ。
「……これで最後だからな」
「ありがとう、豪炎寺!よし、来い!」
「行くぞ!……はあああっ!」
「ゴッドハンド!」
気が渦巻き、掲げた右手からオレンジの巨大な手が現れた。引いた腕を突き出し、シュートにぶつける。せめぎあいの末、ボールは手の中に収まった。
「!」
「でき、た……?や、やった!やったよ豪炎寺!ねえ、見てた!?」
「ああ、見てた。見てたよ」
「豪炎寺のおかげだよ!本当にありがとう!」
「っ、おい!」
歓喜の笑みを浮かべて、美波は豪炎寺に抱きついた。サッカーをしているとはいえ、男子と女子とではやはり体つきは異なる。
筋肉質ではあるものの、どこか柔らかい感触に、触れ合っているところが熱を持った。気恥ずかしさに、顔を反らす。
「豪炎寺?」
「……なんでもない」
不思議そうに覗き込まれて、視線を明後日の方向へ向けた。直視は、出来なかった。
「すっかり日も暮れちゃったね。時間大丈夫?」
「大丈夫だ。美波の方こそ大丈夫なのか」
「うん。言ってはいないけど、多分守兄は気づいてるだろうから」
双子だからね。そう言って笑う美波に、豪炎寺はふと思う。
「円堂に聞こうとは思わなかったのか?」
「それも考えたけど……守兄は守兄のことを考えてて欲しいなって。キャプテンだから、色々大変だろうし」
「そうか……」
「今日もね、あたしが練習したがってるって気づいてたと思うんだ。だからここを空けるために、KFCの練習に混ざりに行ったんだと思う」
敵わないな……と呟いた美波は、タイヤに触れた。このタイヤは兄の相棒で、誰よりも長く特訓相手になってくれた。
「ありがとうございました!」
「ふ……、はははっ」
「笑うな!」
勢いよく頭を下げる美波に、お前らしいなと豪炎寺は笑い出す。
ムッとして文句を言おうと足を踏み出せば、疲労もあってかがくんとバランスを崩した。驚いた豪炎寺が慌てて支える。
「つ、疲れた……」
「だろうな。気力で持っていたようなものだろう。立てるか」
「うん。家までは多分大丈夫」
「そうか。……送るよ」
「え、それは助かるけど、いいの?」
「ああ。今日は頑張ったからな」
「豪炎寺だって付き合ってくれたし……あ、待ってて!」
財布片手に美波は自販機へ走ると、スポーツドリンクを2本買う。そしてそのうち1本を豪炎寺に差し出した。
「お礼ってことで!」
「ありがとう、美波」
冷たいドリンクで喉を潤し、階段を下っていく。
「やっぱり豪炎寺のシュートは凄いや。ガッときて、バーンって!」
「ガッときて、バーン……?」
「とにかく凄いってこと!流石は炎の天才ストライカー!」
「天才、か」
「あ、もちろん豪炎寺が沢山練習してきたことは知ってるよ。あたしも負けてらんないや!うん、負けない!」
「フッ、俺も負けてやる気はないぞ」
「あたしだって!」
顔を見合わせ、誰が言うでもなく走り出す。次の試合はすぐそこだ。
(つ、疲れたあ……)
(……大丈夫か?)
→あとがき
「そろそろ終わりにするか」
「ま、待って!お願い!もう1回!もう1回だけ!」
「何度目だ、それ」
「う……」
呆れたような物言いに、流石の美波も黙り込んだ。疲労は溜まっていて、半ば気力で保っているようなものだ。
「今日はもういいだろう。練習ならまた付き合う」
「でもっ……あと少しで、掴めそうなんだ」
「……」
休憩を取りつつ特訓をして数時間。美波は格段に成長していた。真っ正面から対峙して、豪炎寺は円堂に似た何かを感じていた程だ。
「……これで最後だからな」
「ありがとう、豪炎寺!よし、来い!」
「行くぞ!……はあああっ!」
「ゴッドハンド!」
気が渦巻き、掲げた右手からオレンジの巨大な手が現れた。引いた腕を突き出し、シュートにぶつける。せめぎあいの末、ボールは手の中に収まった。
「!」
「でき、た……?や、やった!やったよ豪炎寺!ねえ、見てた!?」
「ああ、見てた。見てたよ」
「豪炎寺のおかげだよ!本当にありがとう!」
「っ、おい!」
歓喜の笑みを浮かべて、美波は豪炎寺に抱きついた。サッカーをしているとはいえ、男子と女子とではやはり体つきは異なる。
筋肉質ではあるものの、どこか柔らかい感触に、触れ合っているところが熱を持った。気恥ずかしさに、顔を反らす。
「豪炎寺?」
「……なんでもない」
不思議そうに覗き込まれて、視線を明後日の方向へ向けた。直視は、出来なかった。
「すっかり日も暮れちゃったね。時間大丈夫?」
「大丈夫だ。美波の方こそ大丈夫なのか」
「うん。言ってはいないけど、多分守兄は気づいてるだろうから」
双子だからね。そう言って笑う美波に、豪炎寺はふと思う。
「円堂に聞こうとは思わなかったのか?」
「それも考えたけど……守兄は守兄のことを考えてて欲しいなって。キャプテンだから、色々大変だろうし」
「そうか……」
「今日もね、あたしが練習したがってるって気づいてたと思うんだ。だからここを空けるために、KFCの練習に混ざりに行ったんだと思う」
敵わないな……と呟いた美波は、タイヤに触れた。このタイヤは兄の相棒で、誰よりも長く特訓相手になってくれた。
「ありがとうございました!」
「ふ……、はははっ」
「笑うな!」
勢いよく頭を下げる美波に、お前らしいなと豪炎寺は笑い出す。
ムッとして文句を言おうと足を踏み出せば、疲労もあってかがくんとバランスを崩した。驚いた豪炎寺が慌てて支える。
「つ、疲れた……」
「だろうな。気力で持っていたようなものだろう。立てるか」
「うん。家までは多分大丈夫」
「そうか。……送るよ」
「え、それは助かるけど、いいの?」
「ああ。今日は頑張ったからな」
「豪炎寺だって付き合ってくれたし……あ、待ってて!」
財布片手に美波は自販機へ走ると、スポーツドリンクを2本買う。そしてそのうち1本を豪炎寺に差し出した。
「お礼ってことで!」
「ありがとう、美波」
冷たいドリンクで喉を潤し、階段を下っていく。
「やっぱり豪炎寺のシュートは凄いや。ガッときて、バーンって!」
「ガッときて、バーン……?」
「とにかく凄いってこと!流石は炎の天才ストライカー!」
「天才、か」
「あ、もちろん豪炎寺が沢山練習してきたことは知ってるよ。あたしも負けてらんないや!うん、負けない!」
「フッ、俺も負けてやる気はないぞ」
「あたしだって!」
顔を見合わせ、誰が言うでもなく走り出す。次の試合はすぐそこだ。
(つ、疲れたあ……)
(……大丈夫か?)
→あとがき
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