荒波一期(仮)
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・ちょっとしたメタ発言あり
「美波ってさ、何で虫苦手なの?」
「え」
そう一之瀬に問われた美波は、頬をひきつらせた。幼なじみである風丸は、視線を明後日の方向へ向けている。
「あーそれ俺も気になってた。蜂が教室に入ってきた時なんか、廊下に飛び出しかけてたし」
「だよね。気持ちはわかるけど、過剰反応し過ぎだと思った」
「だって怖いじゃんか!刺されるかもしれないんだよ!?」
「まあ、蜂はな……」
「美波ちゃん、蟻でさえビビってなかったっけ?」
「ちっちゃくても集団で来られたら……うわ、寒気した」
「大げさじゃないか?」
「怖いよ!上木鉢ひっくり返したらびっしり付いてたりするんだよ!?」
力説する美波に、部室にいるメンバーは首を傾げる。
いくら苦手……というか嫌いだとしても、そこまで言うだろうか。いや理由はあるのだろうけど。
「何かトラウマでもあるのか?」
「さあみんな!練習だ!」
「……あるでヤンスね」
「間違いないッス」
「ああっ!壁山のロッカーにゴ○ブリが……」
『……え?』
「ばっ……言うな宍戸!」
カサカサという効果音がつきそうな動きをしながら、ゴ○ブリが壁に貼り付く。次の瞬間、
「いぎゃあああああっ!!!」
美波の悲鳴が、学校中に響き渡った。
(おいそっち行ったぞ!)
(うわあああ!ちょっ、半田先輩がなんとかして下さいよ!)
(宍戸のアフロに付きましたよ!)
(壁山お前、菓子を置いたままにしていたな!)
(すみません!)
(鬼道……そう言いながら逃げる体勢を取るな)
(豪炎寺もね)
(マックス殺虫剤持ってんじゃねえか!)
(何で持ってるんですか!?)
(買い出しでマネージャーたちがいなくてよかったね……ふふ)
(本当でやんすね……)
(新聞もあったぞ!)
(ナイス土門!)
(嫌だああああっ!)
(とりあえず落ち着け美波!)
バンバンバンッ
プシューッ
「……1匹どころか5匹も出てきたな」
「まあ……1匹いたら30匹いるって言うしな」
「さっ、さん……もう嫌だ帰るKFCと練習するまた明日ね皆」
「だから落ち着けって」
バッグをひっ掴んで部室を出ていこうとした美波を、慌てて風丸が引き留める。
ちなみに発生の原因は、壁山のロッカーに放置されていたお菓子(消費期限切れ)であった。
「もうさ、マネージャーに頼んでゴ○ブリホイホイ置こうぜ。美波が部活に来なくなる」
「もう帰っていいよね?」
「……大丈夫か?」
「全然だいじょばない帰りたい」
「本当に何があったんだ……?」
サッカーバカである美波が、部活をせずに帰ろうとまでする程のトラウマって、一体。
付き合いの長い風丸へと自然と目が向けられるが、気まずそうに背けられる。
「円堂に聞いてみる?」
「止めてくれ!」
「……まさか原因って」
「キャプテン……っすか?」
「だね」
「……」
しまったと言いたげな顔になる風丸を美波は横目に見つつ、思い出したくない……と呟いた。
一同が円堂(キャプテン)は何をしたんだと考えを巡らせていると、
「あれ?まだ練習始めてなかったのか?」
丁度いいのか悪いのか、話題になっていた円堂が現れた。
「美波の悲鳴が聞こえたんだけど、何かあったのか?」
追試真っ最中で直ぐに駆けつけられなかったのが不満なのか、しかめっ面で円堂が言う。
「円堂。何故美波は虫が苦手なんだ?」
「……さあ皆!練習だ!」
豪炎寺の問いかけに一瞬固まった円堂は、くるりと体の向きを変え、拳を突き上げた。流石は双子。誤魔化し方も全く同じである。
「あれは守兄のせいなんだからね……!」
「だからごめんって!」
「……何をやからしたんだ」
「大したことじゃないんだけどさ」
「十分大したことだと俺は思うけどな」
幼なじみである風丸の言葉に、円堂はうっと言葉を詰まらせる。
「やっぱり気になるよね」
「気にならなくてもいいから」
「実は……」
「話すの!?」
それはまだ小学校低学年だった時のことである。
季節はもうすぐ春を迎える冬の終わりの時期、円堂(兄)は庭でカマキリの卵を見つけた。
「……この時点で大体流れが分かるな」
「ね」
どんな風に生まれるのだろうかと思い、虫かごに入れて観察することにした。
「蓋空いてたとかいう感じでしょ」
だがその虫かごの蓋が半開きになっていた。
「……先は読めたな」
「そもそもこの地の文は何なんだ」
「何も言うな、鬼道」
そのまま夜中に孵化したカマキリの幼虫は、美波の部屋に侵入して夜が明けた。
「後はもうお察し下さいでいいよねサッカーやろう!」
「……ドンマイ、美波」
「半田も同じようなことになればいいのに」
「絶対に御免だ」
「原因は円堂の不手際といいことか」
「想像してみなよ。朝起きたら自分の周りを沢山の幼虫が蠢いているのを」
「やめろ、想像したくない」
「とんだ災難だったな……」
全員が苦笑いを浮かべていた。そりゃあトラウマになるのも仕方がない。
「だからそれがトラウマで、虫がダメになったんだよね」
「小さい虫もですか?」
「無理無理。密集してるとあの時のこと思い出すし、蜂とかは普通に怖い」
至極真面目な顔で言う美波に、風丸は小さくため息をつく。
「克服しようとして、何回も挫折したんだよな」
「うん……。触れなくなっちゃったんだよね」
「理科の授業とはどうしてるんだ?」
「見るだけならギリギリセーフだから、見てるだけ」
「それは……いいのか?」
「多分」
「多分かよ」
呆れたような染岡を、美波はムッとしたように睨み付けた。
「いつか染岡のベッドに虫住み着けばいいのに…」
「お前な!」
「そうだな」
「ああ」
「円堂と風丸も言うな」
今日も染岡はツッコミである。同じく初期部員である半田は、我関せずと目を逸らしていた。
「もう虫の話終わり!誰だってトラウマ掘り起こされたくないでしょ!」
「そうだぞみんな!練習だ!」
そう言って部室を飛び出して行く2人を見つつ、一同はトラウマの原因は円堂(キャプテン)だとツッコむ。
それぞれ顔を見合わせると、グラウンドへと足を向けた。さあ、今日も練習だ。
***
虫嫌いな理由は兄さんのせいでした。本編ではあまり活かされてない設定です。カマキリ孵化ネタは、小学校時代の担任の話より。
括弧内会話は、
半田→宍戸→少林寺→鬼道→壁山→豪炎寺→マックス→染岡→目金→影野→栗松→土門→一之瀬→妹→風丸
の順番です。全員出そうとしたら大変なことになった。
「美波ってさ、何で虫苦手なの?」
「え」
そう一之瀬に問われた美波は、頬をひきつらせた。幼なじみである風丸は、視線を明後日の方向へ向けている。
「あーそれ俺も気になってた。蜂が教室に入ってきた時なんか、廊下に飛び出しかけてたし」
「だよね。気持ちはわかるけど、過剰反応し過ぎだと思った」
「だって怖いじゃんか!刺されるかもしれないんだよ!?」
「まあ、蜂はな……」
「美波ちゃん、蟻でさえビビってなかったっけ?」
「ちっちゃくても集団で来られたら……うわ、寒気した」
「大げさじゃないか?」
「怖いよ!上木鉢ひっくり返したらびっしり付いてたりするんだよ!?」
力説する美波に、部室にいるメンバーは首を傾げる。
いくら苦手……というか嫌いだとしても、そこまで言うだろうか。いや理由はあるのだろうけど。
「何かトラウマでもあるのか?」
「さあみんな!練習だ!」
「……あるでヤンスね」
「間違いないッス」
「ああっ!壁山のロッカーにゴ○ブリが……」
『……え?』
「ばっ……言うな宍戸!」
カサカサという効果音がつきそうな動きをしながら、ゴ○ブリが壁に貼り付く。次の瞬間、
「いぎゃあああああっ!!!」
美波の悲鳴が、学校中に響き渡った。
(おいそっち行ったぞ!)
(うわあああ!ちょっ、半田先輩がなんとかして下さいよ!)
(宍戸のアフロに付きましたよ!)
(壁山お前、菓子を置いたままにしていたな!)
(すみません!)
(鬼道……そう言いながら逃げる体勢を取るな)
(豪炎寺もね)
(マックス殺虫剤持ってんじゃねえか!)
(何で持ってるんですか!?)
(買い出しでマネージャーたちがいなくてよかったね……ふふ)
(本当でやんすね……)
(新聞もあったぞ!)
(ナイス土門!)
(嫌だああああっ!)
(とりあえず落ち着け美波!)
バンバンバンッ
プシューッ
「……1匹どころか5匹も出てきたな」
「まあ……1匹いたら30匹いるって言うしな」
「さっ、さん……もう嫌だ帰るKFCと練習するまた明日ね皆」
「だから落ち着けって」
バッグをひっ掴んで部室を出ていこうとした美波を、慌てて風丸が引き留める。
ちなみに発生の原因は、壁山のロッカーに放置されていたお菓子(消費期限切れ)であった。
「もうさ、マネージャーに頼んでゴ○ブリホイホイ置こうぜ。美波が部活に来なくなる」
「もう帰っていいよね?」
「……大丈夫か?」
「全然だいじょばない帰りたい」
「本当に何があったんだ……?」
サッカーバカである美波が、部活をせずに帰ろうとまでする程のトラウマって、一体。
付き合いの長い風丸へと自然と目が向けられるが、気まずそうに背けられる。
「円堂に聞いてみる?」
「止めてくれ!」
「……まさか原因って」
「キャプテン……っすか?」
「だね」
「……」
しまったと言いたげな顔になる風丸を美波は横目に見つつ、思い出したくない……と呟いた。
一同が円堂(キャプテン)は何をしたんだと考えを巡らせていると、
「あれ?まだ練習始めてなかったのか?」
丁度いいのか悪いのか、話題になっていた円堂が現れた。
「美波の悲鳴が聞こえたんだけど、何かあったのか?」
追試真っ最中で直ぐに駆けつけられなかったのが不満なのか、しかめっ面で円堂が言う。
「円堂。何故美波は虫が苦手なんだ?」
「……さあ皆!練習だ!」
豪炎寺の問いかけに一瞬固まった円堂は、くるりと体の向きを変え、拳を突き上げた。流石は双子。誤魔化し方も全く同じである。
「あれは守兄のせいなんだからね……!」
「だからごめんって!」
「……何をやからしたんだ」
「大したことじゃないんだけどさ」
「十分大したことだと俺は思うけどな」
幼なじみである風丸の言葉に、円堂はうっと言葉を詰まらせる。
「やっぱり気になるよね」
「気にならなくてもいいから」
「実は……」
「話すの!?」
それはまだ小学校低学年だった時のことである。
季節はもうすぐ春を迎える冬の終わりの時期、円堂(兄)は庭でカマキリの卵を見つけた。
「……この時点で大体流れが分かるな」
「ね」
どんな風に生まれるのだろうかと思い、虫かごに入れて観察することにした。
「蓋空いてたとかいう感じでしょ」
だがその虫かごの蓋が半開きになっていた。
「……先は読めたな」
「そもそもこの地の文は何なんだ」
「何も言うな、鬼道」
そのまま夜中に孵化したカマキリの幼虫は、美波の部屋に侵入して夜が明けた。
「後はもうお察し下さいでいいよねサッカーやろう!」
「……ドンマイ、美波」
「半田も同じようなことになればいいのに」
「絶対に御免だ」
「原因は円堂の不手際といいことか」
「想像してみなよ。朝起きたら自分の周りを沢山の幼虫が蠢いているのを」
「やめろ、想像したくない」
「とんだ災難だったな……」
全員が苦笑いを浮かべていた。そりゃあトラウマになるのも仕方がない。
「だからそれがトラウマで、虫がダメになったんだよね」
「小さい虫もですか?」
「無理無理。密集してるとあの時のこと思い出すし、蜂とかは普通に怖い」
至極真面目な顔で言う美波に、風丸は小さくため息をつく。
「克服しようとして、何回も挫折したんだよな」
「うん……。触れなくなっちゃったんだよね」
「理科の授業とはどうしてるんだ?」
「見るだけならギリギリセーフだから、見てるだけ」
「それは……いいのか?」
「多分」
「多分かよ」
呆れたような染岡を、美波はムッとしたように睨み付けた。
「いつか染岡のベッドに虫住み着けばいいのに…」
「お前な!」
「そうだな」
「ああ」
「円堂と風丸も言うな」
今日も染岡はツッコミである。同じく初期部員である半田は、我関せずと目を逸らしていた。
「もう虫の話終わり!誰だってトラウマ掘り起こされたくないでしょ!」
「そうだぞみんな!練習だ!」
そう言って部室を飛び出して行く2人を見つつ、一同はトラウマの原因は円堂(キャプテン)だとツッコむ。
それぞれ顔を見合わせると、グラウンドへと足を向けた。さあ、今日も練習だ。
***
虫嫌いな理由は兄さんのせいでした。本編ではあまり活かされてない設定です。カマキリ孵化ネタは、小学校時代の担任の話より。
括弧内会話は、
半田→宍戸→少林寺→鬼道→壁山→豪炎寺→マックス→染岡→目金→影野→栗松→土門→一之瀬→妹→風丸
の順番です。全員出そうとしたら大変なことになった。
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