荒波一期(仮)
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「鬼道鬼道鬼道っ!」
昼休み。勢いよくドアを開けながら俺の教室に飛び込んできた美波に、俺はため息をついた。
「読書中悪いんだけど、ちょっと助けてほしいんだ!」
「他を当たってくれ」
「鬼道が頼みの綱なんだってば!」
バンッと机を叩かれ、もう一度ため息をつきつつ本に栞を入れた。
「で、どうしたんだ」
「実はさ、今日うちのクラスで数学の小テストがあったんだ」
「つまり放課後に追試になって、一発で合格しないと部活の時間が減ると言いたいんだな」
「何で分かったの!?」
「これくらいなら大体予想出来る」
「流石は天才ゲームメーカーだね!」
「それは関係ないだろう」
それにしても円堂はともかく、美波が追試なのは意外だ。
サッカーに打ち込みつつも、けじめはつけて、予習復習宿題はちゃんとやっていると聞いていたが。
「その小テストの範囲がさ、苦手な証明だったんだよ」
「ああ……」
苦い顔をしながら言う美波に、納得する。苦手な箇所が小テストの範囲だったというわけだ。証明は苦手になりやすいからな。
「教えてもらうなら、同じクラスの風丸の方がいいんじゃないのか?」
「そうなんだけどね。自分でやらないと身に付かないぞ、って」
「確かにそうだな」
自分の力で解かなければ、自分の実力にはならない。サッカーと同じだ。
「でも、教科書見てもどうしてもわからなくて!」
「だが、」
「半田と染岡はギリギリだったらしいしマックスは面倒だって言うし、豪炎寺と影野と目金は見つからないし……」
「……」
「……守兄は論外だし」
……円堂が貶されたのは、聞いてなかったことにしておこうと思う。一度サッカー部で勉強会を開いた方がいいのではないだろうか。
「だからさ、鬼道のとこに来たんだ」
「最後にか」
「いやー、断るって一刀両断されそうだなと思いまして」
「そのつもりだが」
「そこをなんとか!」
バッと頭を下げられた。そこまでするほどか。……本当、サッカーが好きなんだな。
「あ、でも帝国と雷門だと進度違うんだっけ?」
「帝国の方が速いから問題ない。……で、どこで詰まったんだ」
「! ありがとう!」
差し出されたプリントを見れば、最初の方から間違えていた。
これは苦労しそうだと思ったが、基本を間違えているだけで、そこを理解出来れば簡単だろうとは思う。
「書き込んでもいいか」
「大丈夫だよ」
筆箱からシャーペン出して解いていく。
「ねえ、鬼道」
「何だ」
「もしかして鬼道ってさ、練習試合のことまだ引きずってる?」
シャーペンを持つ手が止まった。
図星だった。普段はやたらと鈍いのに、何故こういうところでは鋭いのかと、常々思う。
最初は散々痛め付け、傷つけたチームに所属しているというのは、なんとも奇妙な感覚で、
影山に従っていたあの頃とはもう決別したと思っていたが、胸のどこかではまだ引きずっていた。
千羽山との試合で受け入れてくれたのだとは感じたが、本当にそう思っているのかと考えると、一概にそう言い切れない。
少なくとも円堂、美波、俺を誘った豪炎寺はそうだとは思うが。
俺が入ったことで、宍戸はスタメンから落ちた。元々崩れかけてはいたが、連携も組み直すことななる。
「あのさ、鬼道」
「何だ」
「千羽山との試合は、鬼道が入ってくれたから勝てたんだってみんな思ってるよ」
「……」
「過去は過去、今は今。大丈夫、みんなもう鬼道は雷門サッカー部だって思ってるから。大切な、仲間だよ」
その言葉を聞いて、胸にのし掛かっていた重い何かが消えていくのを感じた。
帝国とはまた違う、俺の新しい仲間。
過去は過去、今は今、か…。美波らしい考え方だ。いや、美波だけではないのだろう。
「あたしは鬼道のこと、大好きだからね!」
……そういうことはあまり言わないで欲しい。
「解けたぞ」
「わ、ありがと!凄いわかりやすいや。また聞きに来てもいい?」
「ああ」
「あ、予鈴鳴るね。じゃ、部活でね!」
教室を出ていく美波を見送ってから、俺はまた本を開いた。
***
放課後。ウォーミングアップが終わった頃、追試が終わったらしい美波がグラウンドに走ってきた。風丸が真っ先に声をかける。
「終わったのか、追試」
「うん!あ、鬼道!鬼道が教えてくれたおかげで助かったよ。ありがとう!」
「大したことはしていない」
「あたしにとっては大したことだって!」
「……鬼道に教えてもらったのか」
片目しか見えていないにも関わらず、風丸の鋭く冷たい視線が俺に突き刺さる。
ゴール前にいる円堂も何かを察知したのか、ただならぬオーラを放っている。相変わらずだが、もう慣れた。
「美波ーっ!こっちこいよー!」
「あ、うん!」
清々しい笑顔の円堂に呼ばれ、ポニーテールを揺らしながら美波が走っていく。
「……美波をあまり甘やかすなよ」
「自他共に認める心配性には言われたくないな」
言葉を詰まらせた風丸を横目に見つつ、グラウンドに視線を移す。
「鬼道も一郎太も来なよー!」
向けられた満面の笑みに俺たちは顔を見合わせると、一歩踏み出した。
***
書き終わって思ったこと。豪炎寺いねえ。
ちなみに時間軸としては、一之瀬加入前で千羽山戦から数日後くらい。
昼休み。勢いよくドアを開けながら俺の教室に飛び込んできた美波に、俺はため息をついた。
「読書中悪いんだけど、ちょっと助けてほしいんだ!」
「他を当たってくれ」
「鬼道が頼みの綱なんだってば!」
バンッと机を叩かれ、もう一度ため息をつきつつ本に栞を入れた。
「で、どうしたんだ」
「実はさ、今日うちのクラスで数学の小テストがあったんだ」
「つまり放課後に追試になって、一発で合格しないと部活の時間が減ると言いたいんだな」
「何で分かったの!?」
「これくらいなら大体予想出来る」
「流石は天才ゲームメーカーだね!」
「それは関係ないだろう」
それにしても円堂はともかく、美波が追試なのは意外だ。
サッカーに打ち込みつつも、けじめはつけて、予習復習宿題はちゃんとやっていると聞いていたが。
「その小テストの範囲がさ、苦手な証明だったんだよ」
「ああ……」
苦い顔をしながら言う美波に、納得する。苦手な箇所が小テストの範囲だったというわけだ。証明は苦手になりやすいからな。
「教えてもらうなら、同じクラスの風丸の方がいいんじゃないのか?」
「そうなんだけどね。自分でやらないと身に付かないぞ、って」
「確かにそうだな」
自分の力で解かなければ、自分の実力にはならない。サッカーと同じだ。
「でも、教科書見てもどうしてもわからなくて!」
「だが、」
「半田と染岡はギリギリだったらしいしマックスは面倒だって言うし、豪炎寺と影野と目金は見つからないし……」
「……」
「……守兄は論外だし」
……円堂が貶されたのは、聞いてなかったことにしておこうと思う。一度サッカー部で勉強会を開いた方がいいのではないだろうか。
「だからさ、鬼道のとこに来たんだ」
「最後にか」
「いやー、断るって一刀両断されそうだなと思いまして」
「そのつもりだが」
「そこをなんとか!」
バッと頭を下げられた。そこまでするほどか。……本当、サッカーが好きなんだな。
「あ、でも帝国と雷門だと進度違うんだっけ?」
「帝国の方が速いから問題ない。……で、どこで詰まったんだ」
「! ありがとう!」
差し出されたプリントを見れば、最初の方から間違えていた。
これは苦労しそうだと思ったが、基本を間違えているだけで、そこを理解出来れば簡単だろうとは思う。
「書き込んでもいいか」
「大丈夫だよ」
筆箱からシャーペン出して解いていく。
「ねえ、鬼道」
「何だ」
「もしかして鬼道ってさ、練習試合のことまだ引きずってる?」
シャーペンを持つ手が止まった。
図星だった。普段はやたらと鈍いのに、何故こういうところでは鋭いのかと、常々思う。
最初は散々痛め付け、傷つけたチームに所属しているというのは、なんとも奇妙な感覚で、
影山に従っていたあの頃とはもう決別したと思っていたが、胸のどこかではまだ引きずっていた。
千羽山との試合で受け入れてくれたのだとは感じたが、本当にそう思っているのかと考えると、一概にそう言い切れない。
少なくとも円堂、美波、俺を誘った豪炎寺はそうだとは思うが。
俺が入ったことで、宍戸はスタメンから落ちた。元々崩れかけてはいたが、連携も組み直すことななる。
「あのさ、鬼道」
「何だ」
「千羽山との試合は、鬼道が入ってくれたから勝てたんだってみんな思ってるよ」
「……」
「過去は過去、今は今。大丈夫、みんなもう鬼道は雷門サッカー部だって思ってるから。大切な、仲間だよ」
その言葉を聞いて、胸にのし掛かっていた重い何かが消えていくのを感じた。
帝国とはまた違う、俺の新しい仲間。
過去は過去、今は今、か…。美波らしい考え方だ。いや、美波だけではないのだろう。
「あたしは鬼道のこと、大好きだからね!」
……そういうことはあまり言わないで欲しい。
「解けたぞ」
「わ、ありがと!凄いわかりやすいや。また聞きに来てもいい?」
「ああ」
「あ、予鈴鳴るね。じゃ、部活でね!」
教室を出ていく美波を見送ってから、俺はまた本を開いた。
***
放課後。ウォーミングアップが終わった頃、追試が終わったらしい美波がグラウンドに走ってきた。風丸が真っ先に声をかける。
「終わったのか、追試」
「うん!あ、鬼道!鬼道が教えてくれたおかげで助かったよ。ありがとう!」
「大したことはしていない」
「あたしにとっては大したことだって!」
「……鬼道に教えてもらったのか」
片目しか見えていないにも関わらず、風丸の鋭く冷たい視線が俺に突き刺さる。
ゴール前にいる円堂も何かを察知したのか、ただならぬオーラを放っている。相変わらずだが、もう慣れた。
「美波ーっ!こっちこいよー!」
「あ、うん!」
清々しい笑顔の円堂に呼ばれ、ポニーテールを揺らしながら美波が走っていく。
「……美波をあまり甘やかすなよ」
「自他共に認める心配性には言われたくないな」
言葉を詰まらせた風丸を横目に見つつ、グラウンドに視線を移す。
「鬼道も一郎太も来なよー!」
向けられた満面の笑みに俺たちは顔を見合わせると、一歩踏み出した。
***
書き終わって思ったこと。豪炎寺いねえ。
ちなみに時間軸としては、一之瀬加入前で千羽山戦から数日後くらい。
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