アフロディとの邂逅
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※アフロディ視点
フィールドへ行くために通路を歩いていたら、前方から1人の女の子が駆け足でこちらの方へ向かってきた。
どこか見覚えのある彼女は、僕のことを視認すると一瞬立ち止まった。僕に見惚れたのかな。
自惚れじゃない。実際僕は誰もが振り返るような美しい容姿を持ち、美の女神の名を愛称としているのだから。
でも彼女はすぐにどうでもよさそうな表情をして、歩を進め出した。何故だろう。あんな表情をされたのは初めてだ。
「ねえ」
「へっ」
僕の横を素通りしようとした彼女の腕を強く掴めば、弾かれたように彼女は僕のことを見た。顔には戸惑いの色が浮かんでいる。
ああ、そうだ。彼女は、雷門中のキャプテンである円堂守の双子の妹、円堂美波だ。
フットボールフロンティアに出場している唯一の女子選手だそうだけど、なんだ、どこにでもいそうな平凡な子じゃないか。
「あの、試合は?」
「僕の事知ってるの?」
「いや、ユニフォーム着てるから……」
「ああ、なるほどね」
そんな特筆すべきことのない、下らないやり取りしつつ思考を巡らせる。
「雷門中の円堂美波さんだよね?見たよ、地区予選の決勝戦。凄いね、女の子なのに」
「……はあ、どうも」
「試合、見に来たの?」
「うん。帝国に友達がいるから」
「ふうん……そう。なら見ない方がいいよ」
「は……?」
「これは忠告だ。見たら後悔する。見なければよかったって」
「それどういう……」
意味が分からないと困惑する彼女の腕から手離し、フィールドへ足を向けた。
試合は思った通り、完全にワンサイドゲームだった。帝国は僕たちの足元にも及ばず、次々に倒れ伏していく。
なんて滑稽なのだろう。少し前まで王者と呼ばれていた帝国が、神に平伏すが如く倒れていく。
「もう限界だろう。棄権したらどうだい?」
「黙れ!……約束したんだ、美波と、雷門と、必ずまた戦うと……!こんなところで、負けてたまるかあッ!」
無謀にも攻めて来た帝国の11番を吹き飛ばして、奪ったボールが僕に回ってくる。一瞥しつつ、ヘブンズタイムを発動した。
約束、ね。そんなもの、神の前には無意味だ。形の無いものに、そこまで執着する理由はどこにあるのだろう。
円堂美波の影響だろうか。確か、彼は彼女のことを好いていた筈。まあ僕には関係ないことだ。
ディフェンダーを抜いた僕は、満身創痍になりながらも尚ゴールを守ろうとするそのキーパーの姿を見た。
全く、ここまできてまだ諦めないのか。力の差は歴然だというのに。これも雷門の、円堂守と円堂美波の影響だというのか。
馬鹿馬鹿しい。
もう他に立っている者はいない。楽にさせてあげよう。
「ゴッドノウズ!」
僕のシュートが決まり、10ー0となる。これで終わりだ。
帝国側のベンチを見れば、鬼道有人がこちらを凝視していた。
「(総帥から反発しなければ、こうはならなかったものを)」
強大な力に逆らおうとするのは、愚か者がすることだ。彼らも身に染みて分かっただろう。
観客席では、円堂美波が呆然とフィールドを見下ろしていた。
彼女も分かった筈だ。神の力のに勝つことは出来ない。雷門中は優勝出来ない、と。
帝国が倒れ、試合が終わった以上、長居は無用。踵を返して、僕はその場を後にした。
ミーティングの後、彼女はまだいるだろうかと思った僕は、静かな通路を歩いていた。
探せばすぐに見つかった。椅子に座って、俯いて座っている。
「やあ、円堂さん。試合、見たみたいだね」
そう声をかければ、彼女はバッと顔を上げた。睨み付けられるけど、別に怖いなんて思わない。
「アフロディ……」
「へえ、名前知ってたんだ」
「……」
その問いかけには答えずに視線を逸らそうとした彼女の腕を掴めば、ビクリと体を揺らして僕を見た。
「見なかった方がよかっただろう?」
「そんなことない。さっ君……佐久間たち帝国の、最後まで諦めないサッカーを見れたんだから」
強い光を宿した目が僕を射抜く。ビリビリと電流のように、身体中を何かが駆け巡った。
「雷門は負けない。決勝で世宇子と当たったら、絶対に勝ってやる」
「無謀な事を君も考えるんだね。試合を見ただろう?あの圧倒的な実力の差を。そして地に伏していく選手たちを。
そういうところがあの11番に移ったのかな?君の影響で必要以上に傷つくことになるなんて、彼も可哀想だね。
自分より強大なものに逆らうのは、愚者のすること。総帥から離れなければこんなことには……」
パンッ
乾いた音が響いた。じわりと頬が熱を持って、叩かれたのだと理解するのに数秒かかった。
「さっ君たちを、帝国を貶すな」
先ほどまでの様子からは考え付かない、低い声。
「皆は弱くない」
その目は見たことがないくらい真っ直ぐで、純真で、純粋で、その目に自分が映っていることが恐ろしい。
この僕が、1人の少女に恐怖を感じている?
「アフロディはサッカーが好き?」
「サッカーが好きだから、上手くなりたい。強くなりたいって思うんじゃないの?」
「サッカーが好きだから、あんなに凄い技術を身に付けられたんじゃないの?」
「あんな暴力みたいなサッカーやって、楽しい?」
質問に次ぐ質問に、僕は何も言えなかった。
僕はサッカーが好きだから、サッカーをやっているのだろうか。
サッカーが好きだから、強くなりたいと思い、願ったのだろうか。
あんなプレーをして、楽しいだろうか。
自分に問いかけてみても、答えは見つからない。分からない。
「サッカーは楽しいものだよ」
そう言って彼女は、美波さんは柔らかく笑う。反面、その目はとても冷たくて、ゾッとした。
「……総帥って、影山?へえー、あの力も、影山のおかげ?」
「っ、ちが――」
言いかけて、止まった。違う?本当に、そうだろうか。
「勝つのは、雷門だ」
強気な目で見据えられて、僕がその表情を歪ませてやりたいと思った。
悔恨、嫌悪、憎悪。その感情を抱いたとき、彼女はどんな表情をするのだろう。見てみたい。
立ち去ろうとする美波さんの腕をまた強く掴むと、痛みからか、僅かに表情を歪めた。こんな顔もするんだ。
「美波さん」
「気安く呼ばないでよ」
「じゃあ、円堂さん。世宇子においでよ」
「……何を言ってんの?絶対、嫌」
思い切り嫌な顔をされた。どうして。
「帝国に何したかもう忘れたんだ。あたしは、あんなことした人と仲良く出来るほど、いい人じゃない」
「円堂さん、」
「あたしは雷門イレブンだ。あんたのサッカーなんか、認めない!」
睨み付けた円堂さんが僕の手を振り払って、背を向けた。みるみるうちに、遠ざかっていく。
認められたい。円堂さんに、認められたい。……雷門に勝てば、円堂さんは僕を認めてくれるだろうか――。
***
恋ではない。あくまで承認欲求。書き直す前はヤンデレ風味なアフロディでした。なんでだ。
何で妹が冷たかったのかというと、単純にキレてたからです。好感度マイナス突破。突き放す時はとことん嫌いだと突き放す。
アフロディ視点は何度書き直しても納得いかないのでまた書き直すかもしれません。
ナルシストすぎたかなと思うけど、この時は神のアクア云々で性格がやや歪んでいたということで。
フィールドへ行くために通路を歩いていたら、前方から1人の女の子が駆け足でこちらの方へ向かってきた。
どこか見覚えのある彼女は、僕のことを視認すると一瞬立ち止まった。僕に見惚れたのかな。
自惚れじゃない。実際僕は誰もが振り返るような美しい容姿を持ち、美の女神の名を愛称としているのだから。
でも彼女はすぐにどうでもよさそうな表情をして、歩を進め出した。何故だろう。あんな表情をされたのは初めてだ。
「ねえ」
「へっ」
僕の横を素通りしようとした彼女の腕を強く掴めば、弾かれたように彼女は僕のことを見た。顔には戸惑いの色が浮かんでいる。
ああ、そうだ。彼女は、雷門中のキャプテンである円堂守の双子の妹、円堂美波だ。
フットボールフロンティアに出場している唯一の女子選手だそうだけど、なんだ、どこにでもいそうな平凡な子じゃないか。
「あの、試合は?」
「僕の事知ってるの?」
「いや、ユニフォーム着てるから……」
「ああ、なるほどね」
そんな特筆すべきことのない、下らないやり取りしつつ思考を巡らせる。
「雷門中の円堂美波さんだよね?見たよ、地区予選の決勝戦。凄いね、女の子なのに」
「……はあ、どうも」
「試合、見に来たの?」
「うん。帝国に友達がいるから」
「ふうん……そう。なら見ない方がいいよ」
「は……?」
「これは忠告だ。見たら後悔する。見なければよかったって」
「それどういう……」
意味が分からないと困惑する彼女の腕から手離し、フィールドへ足を向けた。
試合は思った通り、完全にワンサイドゲームだった。帝国は僕たちの足元にも及ばず、次々に倒れ伏していく。
なんて滑稽なのだろう。少し前まで王者と呼ばれていた帝国が、神に平伏すが如く倒れていく。
「もう限界だろう。棄権したらどうだい?」
「黙れ!……約束したんだ、美波と、雷門と、必ずまた戦うと……!こんなところで、負けてたまるかあッ!」
無謀にも攻めて来た帝国の11番を吹き飛ばして、奪ったボールが僕に回ってくる。一瞥しつつ、ヘブンズタイムを発動した。
約束、ね。そんなもの、神の前には無意味だ。形の無いものに、そこまで執着する理由はどこにあるのだろう。
円堂美波の影響だろうか。確か、彼は彼女のことを好いていた筈。まあ僕には関係ないことだ。
ディフェンダーを抜いた僕は、満身創痍になりながらも尚ゴールを守ろうとするそのキーパーの姿を見た。
全く、ここまできてまだ諦めないのか。力の差は歴然だというのに。これも雷門の、円堂守と円堂美波の影響だというのか。
馬鹿馬鹿しい。
もう他に立っている者はいない。楽にさせてあげよう。
「ゴッドノウズ!」
僕のシュートが決まり、10ー0となる。これで終わりだ。
帝国側のベンチを見れば、鬼道有人がこちらを凝視していた。
「(総帥から反発しなければ、こうはならなかったものを)」
強大な力に逆らおうとするのは、愚か者がすることだ。彼らも身に染みて分かっただろう。
観客席では、円堂美波が呆然とフィールドを見下ろしていた。
彼女も分かった筈だ。神の力のに勝つことは出来ない。雷門中は優勝出来ない、と。
帝国が倒れ、試合が終わった以上、長居は無用。踵を返して、僕はその場を後にした。
ミーティングの後、彼女はまだいるだろうかと思った僕は、静かな通路を歩いていた。
探せばすぐに見つかった。椅子に座って、俯いて座っている。
「やあ、円堂さん。試合、見たみたいだね」
そう声をかければ、彼女はバッと顔を上げた。睨み付けられるけど、別に怖いなんて思わない。
「アフロディ……」
「へえ、名前知ってたんだ」
「……」
その問いかけには答えずに視線を逸らそうとした彼女の腕を掴めば、ビクリと体を揺らして僕を見た。
「見なかった方がよかっただろう?」
「そんなことない。さっ君……佐久間たち帝国の、最後まで諦めないサッカーを見れたんだから」
強い光を宿した目が僕を射抜く。ビリビリと電流のように、身体中を何かが駆け巡った。
「雷門は負けない。決勝で世宇子と当たったら、絶対に勝ってやる」
「無謀な事を君も考えるんだね。試合を見ただろう?あの圧倒的な実力の差を。そして地に伏していく選手たちを。
そういうところがあの11番に移ったのかな?君の影響で必要以上に傷つくことになるなんて、彼も可哀想だね。
自分より強大なものに逆らうのは、愚者のすること。総帥から離れなければこんなことには……」
パンッ
乾いた音が響いた。じわりと頬が熱を持って、叩かれたのだと理解するのに数秒かかった。
「さっ君たちを、帝国を貶すな」
先ほどまでの様子からは考え付かない、低い声。
「皆は弱くない」
その目は見たことがないくらい真っ直ぐで、純真で、純粋で、その目に自分が映っていることが恐ろしい。
この僕が、1人の少女に恐怖を感じている?
「アフロディはサッカーが好き?」
「サッカーが好きだから、上手くなりたい。強くなりたいって思うんじゃないの?」
「サッカーが好きだから、あんなに凄い技術を身に付けられたんじゃないの?」
「あんな暴力みたいなサッカーやって、楽しい?」
質問に次ぐ質問に、僕は何も言えなかった。
僕はサッカーが好きだから、サッカーをやっているのだろうか。
サッカーが好きだから、強くなりたいと思い、願ったのだろうか。
あんなプレーをして、楽しいだろうか。
自分に問いかけてみても、答えは見つからない。分からない。
「サッカーは楽しいものだよ」
そう言って彼女は、美波さんは柔らかく笑う。反面、その目はとても冷たくて、ゾッとした。
「……総帥って、影山?へえー、あの力も、影山のおかげ?」
「っ、ちが――」
言いかけて、止まった。違う?本当に、そうだろうか。
「勝つのは、雷門だ」
強気な目で見据えられて、僕がその表情を歪ませてやりたいと思った。
悔恨、嫌悪、憎悪。その感情を抱いたとき、彼女はどんな表情をするのだろう。見てみたい。
立ち去ろうとする美波さんの腕をまた強く掴むと、痛みからか、僅かに表情を歪めた。こんな顔もするんだ。
「美波さん」
「気安く呼ばないでよ」
「じゃあ、円堂さん。世宇子においでよ」
「……何を言ってんの?絶対、嫌」
思い切り嫌な顔をされた。どうして。
「帝国に何したかもう忘れたんだ。あたしは、あんなことした人と仲良く出来るほど、いい人じゃない」
「円堂さん、」
「あたしは雷門イレブンだ。あんたのサッカーなんか、認めない!」
睨み付けた円堂さんが僕の手を振り払って、背を向けた。みるみるうちに、遠ざかっていく。
認められたい。円堂さんに、認められたい。……雷門に勝てば、円堂さんは僕を認めてくれるだろうか――。
***
恋ではない。あくまで承認欲求。書き直す前はヤンデレ風味なアフロディでした。なんでだ。
何で妹が冷たかったのかというと、単純にキレてたからです。好感度マイナス突破。突き放す時はとことん嫌いだと突き放す。
アフロディ視点は何度書き直しても納得いかないのでまた書き直すかもしれません。
ナルシストすぎたかなと思うけど、この時は神のアクア云々で性格がやや歪んでいたということで。
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