メイド騒動
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フットボールフロンティア地区予選準決勝。雷門中対秋葉名戸。
試合の場所は秋葉名戸中なのだが、秋葉名戸には奇妙な決まりがあった。
マネージャーはメイド服を着用という決まりだ。
「そういえば美波はどうしたんだ?」
首を傾げながら円堂は言った。円堂の妹である美波は女子ということもあり、フットボールフロンティアには出場できない。
だが普段の練習には参加しているし、練習試合にも出ていた。なのでマネージャーではない。
しかしマネージャーではなかったのにも関わらず連行された。彼ら曰く、選手登録されていない女子の部員はマネージャーだそうで。
「何があったのか?」
幼馴染みの身を案じてか眉をひそめつつ、風丸はマネージャー三人を見た。
「その……美波ちゃんは物凄く嫌がってたんだけど、無理矢理……」
「こんな肩が出ててスカートが短いの着たくない!って、言っていたんですけどね……」
春奈の言葉に想像したのであろう風丸が顔を赤くした。
「大丈夫かしら……」
夏未がそう呟いた時、メイドの一人が焦った様子で走ってきた。
メイドの話によると、着替え終わってグラウンドに行く途中、雷門中控え室の前を通った時に一瞬の隙をついて中に入り、閉じ籠ってしまったらしい。
このままでは試合を始められない為、なんとか説得して欲しいとのこと。
「何着せられたんだよ……」
「メイド服です」
口元をひきつらせる染岡に、きっぱりとメイドが答える。こいつ、慣れてる。
「……とりあえず行ってみないか?」
「それもそうだな……」
豪炎寺の言葉に満場一致で賛成し、控え室へ向かった。
「美波ー、出てきてくれよー」
「無理」
「俺からも頼むよ」
「嫌」
「俺からもだ」
「やだ」
「今度購買のプリン奢るからさー」
「……嫌だ」
「試合始められねえんだよ」
「あたし選手じゃないんだから試合出ないしいなくてもいいじゃん」
口々に言うが、ことごとく跳ね返されてしまう。
「……拗ねてないか」
「メイド服自体がっていうより着ることになった流れの方が問題だなこりゃ」
「今出てこないと美波の上履きに虫詰めるよ」
「それは嫌だあああああ!!!」
虫が苦手な美波は流石に声をあげたが、出てくる気配はなかった。開かない扉にマックスは肩を竦める。
「もうこれ引っ込みがつかなくなってるだけでしょ」
「というか今のは逆効果だったんじゃ」
「そうでやんすね……」
「美波ちゃん。お願い、出てきて!」
「でも……」
「出てきて下さい!」
「春ちゃんカメラ持ってるでしょ」
「あ、あはは……」
見えてはいないにも関わらず、春奈はカメラを背中に回した。バレてる。
「とにかく早く出てきなさい!これは理事長の言葉と思っても構いません!」
「なっちゃんまで……。……絶対に笑わない?」
「ああ!誰も笑わないって!」
「じゃあ……」
少し扉が開き、そこから美波はするりと廊下に出てきた。
着ているメイド服は秋達と同じものだ。違う点はというと、ヘッドドレスにうさぎの耳がついている。
曰く、着用義務が云々かんぬん。逃げ道は無かったという訳で。
「……おかしくない?」
「い、いや、おかしくない!似合ってる!」
「ありがとう一郎太。……無理しなくていいよ」
「してない!本当だ!」
「あっうん」
「いやっ、だから、まあジャージの方が美波は良かったんだろうけど」
「……グラウンドに行った方がいいんじゃないか?」
「そ、そうだな!」
主張し過ぎた。動揺する風丸への豪炎寺の助け舟に、先程から固まっていた円堂が覚醒し、一同はグラウンドへ向かった。
「うう……」
「まあまあ。あいつらを冥土に送っちゃうからさ」
「上手いこといったつもりかよ……」
「よろしく、マックス」
「おい」
「よろしくされましたー」
「皆、殺ろうぜ!」
「そうだな」
「……」
「……俺はもう突っ込まないからな」
遠い目をしながらツッコミ放棄する染岡であった。
途中、秋葉名戸イレブンに写真を撮られかけたが、円堂と風丸という鉄壁の守りによって阻止された。
なお美波は半田によって目を塞がれていた為、その様子を目撃することはなかった。
「はあ……」
「大丈夫か?」
「体力凄い持ってかれた」
「……そうか」
「なんでこんなにスカート短いんだろ」
制服より短い、と美波はスカートを軽くつまみ上げる。その様子を見た豪炎寺は焦った。
「おっ、おい……」
「よくもこんなのを……」
そう思うならスカートをつまみ上げるような事はするな!と言いかけたが、少し言いづらいらしく口をつぐむ。
少し考えた後、豪炎寺はおもむろにジャージを脱ぎ、パサリと美波にかけた。
「うん?」
「試合が終わるまでかけてろ」
「ありがと豪炎寺」
これでとりあえず露出した肩は隠せる。
少し赤い顔で礼を言った美波に、自然と豪炎寺の顔も赤くなった。
その様子を無表情で見ていた円堂によって、豪炎寺のドクターストップ期間が延びかけたのはまた別の話。
「送信っと」
メイド服を来た美波の写真が添付されたメールが、土門によって何処かへ送信されたことを、円堂たちは知らなかった。
「あれ、土門何してるの?」
「え?あ、いや、なんでもないよ。さあーて、試合試合!」
.
試合の場所は秋葉名戸中なのだが、秋葉名戸には奇妙な決まりがあった。
マネージャーはメイド服を着用という決まりだ。
「そういえば美波はどうしたんだ?」
首を傾げながら円堂は言った。円堂の妹である美波は女子ということもあり、フットボールフロンティアには出場できない。
だが普段の練習には参加しているし、練習試合にも出ていた。なのでマネージャーではない。
しかしマネージャーではなかったのにも関わらず連行された。彼ら曰く、選手登録されていない女子の部員はマネージャーだそうで。
「何があったのか?」
幼馴染みの身を案じてか眉をひそめつつ、風丸はマネージャー三人を見た。
「その……美波ちゃんは物凄く嫌がってたんだけど、無理矢理……」
「こんな肩が出ててスカートが短いの着たくない!って、言っていたんですけどね……」
春奈の言葉に想像したのであろう風丸が顔を赤くした。
「大丈夫かしら……」
夏未がそう呟いた時、メイドの一人が焦った様子で走ってきた。
メイドの話によると、着替え終わってグラウンドに行く途中、雷門中控え室の前を通った時に一瞬の隙をついて中に入り、閉じ籠ってしまったらしい。
このままでは試合を始められない為、なんとか説得して欲しいとのこと。
「何着せられたんだよ……」
「メイド服です」
口元をひきつらせる染岡に、きっぱりとメイドが答える。こいつ、慣れてる。
「……とりあえず行ってみないか?」
「それもそうだな……」
豪炎寺の言葉に満場一致で賛成し、控え室へ向かった。
「美波ー、出てきてくれよー」
「無理」
「俺からも頼むよ」
「嫌」
「俺からもだ」
「やだ」
「今度購買のプリン奢るからさー」
「……嫌だ」
「試合始められねえんだよ」
「あたし選手じゃないんだから試合出ないしいなくてもいいじゃん」
口々に言うが、ことごとく跳ね返されてしまう。
「……拗ねてないか」
「メイド服自体がっていうより着ることになった流れの方が問題だなこりゃ」
「今出てこないと美波の上履きに虫詰めるよ」
「それは嫌だあああああ!!!」
虫が苦手な美波は流石に声をあげたが、出てくる気配はなかった。開かない扉にマックスは肩を竦める。
「もうこれ引っ込みがつかなくなってるだけでしょ」
「というか今のは逆効果だったんじゃ」
「そうでやんすね……」
「美波ちゃん。お願い、出てきて!」
「でも……」
「出てきて下さい!」
「春ちゃんカメラ持ってるでしょ」
「あ、あはは……」
見えてはいないにも関わらず、春奈はカメラを背中に回した。バレてる。
「とにかく早く出てきなさい!これは理事長の言葉と思っても構いません!」
「なっちゃんまで……。……絶対に笑わない?」
「ああ!誰も笑わないって!」
「じゃあ……」
少し扉が開き、そこから美波はするりと廊下に出てきた。
着ているメイド服は秋達と同じものだ。違う点はというと、ヘッドドレスにうさぎの耳がついている。
曰く、着用義務が云々かんぬん。逃げ道は無かったという訳で。
「……おかしくない?」
「い、いや、おかしくない!似合ってる!」
「ありがとう一郎太。……無理しなくていいよ」
「してない!本当だ!」
「あっうん」
「いやっ、だから、まあジャージの方が美波は良かったんだろうけど」
「……グラウンドに行った方がいいんじゃないか?」
「そ、そうだな!」
主張し過ぎた。動揺する風丸への豪炎寺の助け舟に、先程から固まっていた円堂が覚醒し、一同はグラウンドへ向かった。
「うう……」
「まあまあ。あいつらを冥土に送っちゃうからさ」
「上手いこといったつもりかよ……」
「よろしく、マックス」
「おい」
「よろしくされましたー」
「皆、殺ろうぜ!」
「そうだな」
「……」
「……俺はもう突っ込まないからな」
遠い目をしながらツッコミ放棄する染岡であった。
途中、秋葉名戸イレブンに写真を撮られかけたが、円堂と風丸という鉄壁の守りによって阻止された。
なお美波は半田によって目を塞がれていた為、その様子を目撃することはなかった。
「はあ……」
「大丈夫か?」
「体力凄い持ってかれた」
「……そうか」
「なんでこんなにスカート短いんだろ」
制服より短い、と美波はスカートを軽くつまみ上げる。その様子を見た豪炎寺は焦った。
「おっ、おい……」
「よくもこんなのを……」
そう思うならスカートをつまみ上げるような事はするな!と言いかけたが、少し言いづらいらしく口をつぐむ。
少し考えた後、豪炎寺はおもむろにジャージを脱ぎ、パサリと美波にかけた。
「うん?」
「試合が終わるまでかけてろ」
「ありがと豪炎寺」
これでとりあえず露出した肩は隠せる。
少し赤い顔で礼を言った美波に、自然と豪炎寺の顔も赤くなった。
その様子を無表情で見ていた円堂によって、豪炎寺のドクターストップ期間が延びかけたのはまた別の話。
「送信っと」
メイド服を来た美波の写真が添付されたメールが、土門によって何処かへ送信されたことを、円堂たちは知らなかった。
「あれ、土門何してるの?」
「え?あ、いや、なんでもないよ。さあーて、試合試合!」
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