「まあ……、こんな感じかな」

「で、ずっと告白できなくて今に至るんだね」



ドスッという音を立てて、マックスの言葉が突き刺さった気がした。



「……これでもそれらしいことは何度か言ったんだ」

「美波にはストレートに言わないと伝わらないと思うよ」

「ああ……」



美波のことだ。遠回しに言ったくらいじゃ、伝わらないってことぐらい分かってる。でも。



「なんだろうな……。今の関係を壊したくない、って気持ちもあるんだ」

「ネガティブだなあ」

「そういう一之瀬はどうなんだ」



そう言えば、一之瀬は口をつぐんだ。一之瀬は幼馴染みの木野が好きだけど、木野はそれを知らない。

加えて木野には好きな奴がいる。そしてそれは、一之瀬ではない。



「俺と風丸って似てない？」

「生憎美波に好きな奴はいないからな」

「でもいつ出来るか分からないよ？」

「それは……そうだけど、」



現時点で強いて言うなら、サッカーだろうか。……勝てる気がしない。

それに、一度だけ……一度だけだけど、ちゃんと告白しようとしたことがある。もっとも、上手くいなかったけど。

あの時、俺達の関係は壊れかけた。だから……もう一度踏み込むのが、怖い。



「はあ……」

「陰気くさい顔すんなって」

「……悪い」

「幼馴染み、か。でも、俺達より距離は近いだろう」

「まあ……」



一緒にお祭りに行ったり、お互いの家に泊まったこともある。新年の初めの挨拶は美波……と円堂だったし、初詣にも行った。

そういえば海にも行ったな。それと、一緒に風呂に……。



「……」



いや、落ち着け俺。風呂に入ったなんてもう何年も前のことじゃないか。



「風丸顔赤いよ」

「……」



何を考えているんだ俺は！

ていうかさっき豪炎寺、しれっとした顔で距離について聞いてきたな。普段はこの手の話は避ける癖に……！

こちらから仕掛けてやろうかと思っていたら、今度は鬼道が話を振ってくる。



「幼馴染みということは、それだけ苦労する時もあるんじゃないか？」

「……異性として見てもらえないっていうか」

「そもそも美波本人が恋愛に興味ないみたいだからな」

「確かに」

「幼馴染みで親友でいい相談相手止まりって感じか？」

「まあ、そうなるのかな……」

「さっさと言えばいいのに」

「それが出来ないから苦労してるんだろ」



盛大にブーメランしている一之瀬に、呆れたような土門が言う。

前途多難だとつくづく思う。常に円堂が牽制してるけど、ライバルはどんどん増えるし。

豪炎寺に鬼道、あと佐久間。ここにきて三人も増えるなんて。



「ていうか呼び方、あだ名だったんだな」

「まあな」

「円堂さんらしいよね」

「いたのか影野……」



その時、



「悪い！遅れた！」

「同じく遅れた！」



勢いよく部室のドアが開いて、円堂と美波が入ってきた。噂をすればなんとやら、だ。

どこかで着替えて来たようで、既にユニフォームを着ている。



「あれ、何か話してた？」

「美波と風丸の馴れ初め聞いてた」

「へー、懐かしいね。初めて会った頃はあたしの方が身長高かったんだよ！」

「よく泣いてたよな」

「円堂っ！」

「へえ、ちょっとそれ詳しく」

「聞かなくていい！」



声をあげれば逃げろ逃げろと１年生を連れてマックスや半田たちは出て行った。はあ……。



「おっし、あたし達も行こう！」



振り向いて見せてくれたいつもと変わらない笑顔。それを見ていたら自然と笑みが零れた。



「ああ！」



……いつか、この想いを伝えられたら。





→あとがき