風丸一郎太の回想
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「そういえばさ、風丸って円堂や美波といつからの付き合いなんだ?」
「え?」
放課後の部室で着替えていると、突然一之瀬にそう聞かれた。
周りを見ると、皆が興味深げに俺を見ていた。豪炎寺や鬼道まで、こちらを伺っている。
円堂と美波は、まだ来ていない。だから一之瀬も今聞いてきたんだろうけど。
「そういえば、聞いたことなかったな……」
「ね、教えてよ」
期待の目を寄せられ、苦笑いをしながら俺は口を開いた。
***
俺と美波が出会ったのは、小学校の入学式の日。クラスが同じで、席も隣だった。
緊張と不安で何を話せばいいのか分からなかった俺に、美波から声をかけてくれた。
「あたし、円堂美波っていうんだ!キミは?」
「ぼくは……風丸一郎太」
「へー。よろしくね、いち君!」
「えっ、うん。よろしく、円堂さん」
唯一の友達だった。
あの頃の俺は引っ込み思案で、情けないことに美波の後ろをついて回ってばかりいた。
対する美波は、俺と違って積極的で、明るい性格で、優しくて……。
いつだって俺の手を引いてくれる、俺のヒーローだったんだ。
そんな美波に憧れて、髪を伸ばしてみたりもした。
それから暫く経った、ある日の昼休み。長い髪のことで、クラスのやつが絡んできた。
「男なのに長いとかおかしいぞ!」
「か、関係ないだろ!」
「あといっつも円堂と一緒だし!円堂だって迷惑だろ!」
「っ……」
そう言われて、頭が真っ白になった。美波は優しいから拒否しないだけで、もしかしたら、迷惑だったのかもしれない。
そう思ったら、泣きたくなった。その時、
「いち君をいじめんなよ!」
見覚えのある茶色い髪が、間に飛び込んできた。
「いじめてなんかねーよ!」
「いち君泣きそうじゃん!ていうかあたし、メーワクなんかしてないから!」
「で、でも」
「一緒にいたいからいるの!」
「そんなやつ」
「うるさい!知らない!」
そう一蹴すると、俺の手を引いて人気のないところまでつれていってくれた。正直混乱していたから、助かった。
「大丈夫だった?」
「うん……。……円堂さん」
「ん?」
「髪、変じゃないかな……」
「そんなことないよ!あっ、そうだ」
パンと手を打った美波は、予備で持っていた髪ゴムで、俺の髪を結んでくれた。
まだ今ほど長くもなかったし、ブラシもなかった。不恰好で短い、ポニーテールとも言えない。それでも。
「これで、お揃い!」
嬉しかった。美波は優しくて、強くて、憧れで……。やっぱり俺のヒーローだと思った。
でも、それと同時に守りたいとも思った。自分を守ってくれた美波を守れる、俺が美波のヒーローになりたいと。
その日を境に俺は美波のことを名前で呼ぶようなって、高学年になる頃には、呼び捨てになっていた。
円堂とも知り合ってから、二人に付き合って、たまにサッカーをやるようになった。
髪は伸ばした。たまに整えたり、切り戻したりするくらい。
からかってきた奴とは、距離を置いた。今思えば、あいつは美波のことが好きだったのかもしれない。
美波といると、自分の知らない自分を知れる気がした。
「いち君って足速いよねえ」
「え?」
「なんだか、風みたいでかっこいい!」
美波にそう言われて、もっと速く走れるようになりたいと思った。
今でこそ走るのは好きだけど、思い返せば、陸上を始めるきっかけの1つだ。
日に日に俺の中で美波の存在は大きくなっていって、
いつの間にか好きになっていた。
.
「え?」
放課後の部室で着替えていると、突然一之瀬にそう聞かれた。
周りを見ると、皆が興味深げに俺を見ていた。豪炎寺や鬼道まで、こちらを伺っている。
円堂と美波は、まだ来ていない。だから一之瀬も今聞いてきたんだろうけど。
「そういえば、聞いたことなかったな……」
「ね、教えてよ」
期待の目を寄せられ、苦笑いをしながら俺は口を開いた。
***
俺と美波が出会ったのは、小学校の入学式の日。クラスが同じで、席も隣だった。
緊張と不安で何を話せばいいのか分からなかった俺に、美波から声をかけてくれた。
「あたし、円堂美波っていうんだ!キミは?」
「ぼくは……風丸一郎太」
「へー。よろしくね、いち君!」
「えっ、うん。よろしく、円堂さん」
唯一の友達だった。
あの頃の俺は引っ込み思案で、情けないことに美波の後ろをついて回ってばかりいた。
対する美波は、俺と違って積極的で、明るい性格で、優しくて……。
いつだって俺の手を引いてくれる、俺のヒーローだったんだ。
そんな美波に憧れて、髪を伸ばしてみたりもした。
それから暫く経った、ある日の昼休み。長い髪のことで、クラスのやつが絡んできた。
「男なのに長いとかおかしいぞ!」
「か、関係ないだろ!」
「あといっつも円堂と一緒だし!円堂だって迷惑だろ!」
「っ……」
そう言われて、頭が真っ白になった。美波は優しいから拒否しないだけで、もしかしたら、迷惑だったのかもしれない。
そう思ったら、泣きたくなった。その時、
「いち君をいじめんなよ!」
見覚えのある茶色い髪が、間に飛び込んできた。
「いじめてなんかねーよ!」
「いち君泣きそうじゃん!ていうかあたし、メーワクなんかしてないから!」
「で、でも」
「一緒にいたいからいるの!」
「そんなやつ」
「うるさい!知らない!」
そう一蹴すると、俺の手を引いて人気のないところまでつれていってくれた。正直混乱していたから、助かった。
「大丈夫だった?」
「うん……。……円堂さん」
「ん?」
「髪、変じゃないかな……」
「そんなことないよ!あっ、そうだ」
パンと手を打った美波は、予備で持っていた髪ゴムで、俺の髪を結んでくれた。
まだ今ほど長くもなかったし、ブラシもなかった。不恰好で短い、ポニーテールとも言えない。それでも。
「これで、お揃い!」
嬉しかった。美波は優しくて、強くて、憧れで……。やっぱり俺のヒーローだと思った。
でも、それと同時に守りたいとも思った。自分を守ってくれた美波を守れる、俺が美波のヒーローになりたいと。
その日を境に俺は美波のことを名前で呼ぶようなって、高学年になる頃には、呼び捨てになっていた。
円堂とも知り合ってから、二人に付き合って、たまにサッカーをやるようになった。
髪は伸ばした。たまに整えたり、切り戻したりするくらい。
からかってきた奴とは、距離を置いた。今思えば、あいつは美波のことが好きだったのかもしれない。
美波といると、自分の知らない自分を知れる気がした。
「いち君って足速いよねえ」
「え?」
「なんだか、風みたいでかっこいい!」
美波にそう言われて、もっと速く走れるようになりたいと思った。
今でこそ走るのは好きだけど、思い返せば、陸上を始めるきっかけの1つだ。
日に日に俺の中で美波の存在は大きくなっていって、
いつの間にか好きになっていた。
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