第16話 立ち上がれキャプテン!
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アフロディのキックオフで後半は始まった。攻め上がってくる晴矢へ明王ちゃんが動いた。チャージを繰り返すことで挑発して、苛立った晴矢の隙を誘う。
そしてやり返そうとした晴矢を避けてバランスを崩したところを突くと、浮いたボールを浚った。なんて巧みな駆け引きだ。……晴矢のプレーを分かってる。前半、よく見てたんだな。
相手ディフェンス陣の前でリフティングをして挑発を続ける明王ちゃんは、堪えきれずに突っ込んできたのをかわすと自陣に戻ってきた。……え?
「何、してんの……!?」
しかも壁山を壁にしてボールをぶつけると、跳ね返ったボールを受けて敵をかわした。中盤にいた一郎太に対しても同じ。む、無茶苦茶だ!
二人を利用して、パスを求めるヒロトも無視して一人でゴール前まで持ち込むと、シュートを撃つ。止められても、それは折り込み済みといった調子で。
仲間も自分も良いように使われて、一郎太が食って掛かるのも当たり前だった。
「不動!何でヒロトに回さなかった!何故パスしない!」
「うるせえなあ。どうしようと俺の勝手だろ」
「何だと!?」
「熱くなんなよ、風丸クン?」
「っ!」
「止めるんだ!今は仲間同士いがみ合ってる場合じゃない」
敵意を剥き出しにする一郎太を鼻で笑って、ポジションに戻っていく明王ちゃんに、仲裁に入ったヒロトも困り顔だ。
皆が信じてないだけじゃない。明王ちゃんも誰も信じてない。だからお互い、相手を信じようとは思えない。悪循環ばかり続いて空気は悪くなる一方。
かくいうあたしだって、明王ちゃんのワンマンプレーの理由が分からなくて、正直どうすればいいか分からない。でも、考えなしに突っ込んでるとも思えなくて。
試合には出れなくてもいつもベンチで皆を見ていた。監督の指示の意図にも気づいてた。だから今回も、目的があってのこと……だと思いたい。
……無理にでも一緒に練習する時間を取っていれば、すぐ分かったのかな。言い合いになってから全然話せなくなってしまったのを、今更ながらに後悔する。
「パスを回せ、不動!不動っ!」
「そんなにボールが欲しいなら俺から奪い取ってみるんだな!」
「なっ……」
皆が厳しい目で見ているのは、分かっている筈なのに。どうしてそんな言い方しか出来ないんだ……!
「じゃあっ、貰うよ!」
「テメェ!なにしやがる!」
「それはこっちのセリフ!考えてることがあるなら言ってよ!」
「俺は俺がやりたいようにやる!邪魔すんじゃねえ!」
「そのやりたいことを教えてって言ってんの!合わせるから!」
「チッ……。お前はそこで、見てやがれ!」
「そういう訳には、いかないって、言ってるじゃん!」
ボールを奪い合いながらゴール前。無理矢理二人で撃つ形になったシュートは、キーパーの正面で。当然キャッチされた。
「お前が邪魔したからタイミングが合わなかったんだ」
「……どのみち明王ちゃんのシュートじゃ破れないでしょ」
「何だと!?」
「明王ちゃんの方が頭いいのも沢山考えてるのも知ってるよ。でも一人で全部は無理じゃん」
「……」
「だから上手く使ってみせてよ、あたし達を。それも出来ない?」
「……無駄な動きばっかりしやがって」
「無駄に喧嘩売りまくる奴にだけは言われたくない」
売り言葉に買い言葉でトゲのあることばかりが出てくる。信じてほしいから信じたいのに、どうしてこうなるんだ……。
「(あ、これ)」
……あの時と同じだ。まるっきり同じじゃないけど、エイリア学園と戦っていた頃の士郎くんとアツヤと近い、かもしれない。
頼れない、頼ってほしい。信じて、信じられない。勝ちたい気持ちは一緒な筈なのに、どうしてかちぐはぐで、噛み合わない。
とにもかくにも直にファイアードラゴンが攻めてくる。自陣に戻る道中で、声をかけてきたのは晴矢と風介だ。
「おいおい、美波が仲間割れなんて珍しいな」
「これも何かの作戦かい?」
「パスくれないなら体当たりで伝えるしかないから」
「成る程。奴ならではのコミュニケーションということか」
「慣れてねえ癖によくやるぜ」
「けど口の割には息が合っていたじゃないか」
「ゴール前まで行けたのは褒めてやるよ」
「……合ってた?ゴール前?」
確かに、ゴール前に行くまで、ボールを取られるどころかディフェンスに割り込まれることは一度もなかった。まるで……道筋が計算されていたみたいに。
それなら、そうだとしたら、あたしがやるべきことは……!
「来るぞ美波!」
「っ、壁山!」
「はいっす!」
「ノーザンインパクト!」
「「ロックウォールダムッ!!」」
取り囲むように壁を築いて、迫る冷気を押し止める。よし、上手くいった!
「寄越せ!」
「明王ちゃんっ!」
前線へ走り出した明王ちゃんにパスを出せば、皆がぎょっとしたようにあたしを見た。……これでいいんだ。
明王ちゃんはどれだけ呼ばれようとルート・オブ・スカイを使おうとはしない。また一人で攻めて、キープしきれずボールを奪われた。
あたしがフォローに入るよりに先に、一郎太がスライディングでボールを出す。そして耐えきれないとばかりに怒鳴り声をあげた。
「いい加減にしろ不動!パスを出せ!皆に合わせろ!」
「俺に命令するな!俺は出したい時に出す!」
「……勝手にしろ」
そう吐き捨てて、一郎太は背を向けた。だからあんな言い方じゃ分からないってば……。
「で、もういい?」
「遅ェ」
「気付いてあげたんだから褒めてくれてもいいと思う」
「ならすぐフォローに入れよ」
「入ろうとしたよ!一郎太の方が速かっただけで」
「……全力でついてくるんじゃなかったのかよ」
「えっ、あ!試合前に言ったの覚えてたんだ!」
「うるせえ戻れ」
「はーい」
やっと明王ちゃんのサッカーが分かってきたことに、我ながらちょっと浮かれてると思う。でも嬉しいものは嬉しいんだから仕方ない。
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そしてやり返そうとした晴矢を避けてバランスを崩したところを突くと、浮いたボールを浚った。なんて巧みな駆け引きだ。……晴矢のプレーを分かってる。前半、よく見てたんだな。
相手ディフェンス陣の前でリフティングをして挑発を続ける明王ちゃんは、堪えきれずに突っ込んできたのをかわすと自陣に戻ってきた。……え?
「何、してんの……!?」
しかも壁山を壁にしてボールをぶつけると、跳ね返ったボールを受けて敵をかわした。中盤にいた一郎太に対しても同じ。む、無茶苦茶だ!
二人を利用して、パスを求めるヒロトも無視して一人でゴール前まで持ち込むと、シュートを撃つ。止められても、それは折り込み済みといった調子で。
仲間も自分も良いように使われて、一郎太が食って掛かるのも当たり前だった。
「不動!何でヒロトに回さなかった!何故パスしない!」
「うるせえなあ。どうしようと俺の勝手だろ」
「何だと!?」
「熱くなんなよ、風丸クン?」
「っ!」
「止めるんだ!今は仲間同士いがみ合ってる場合じゃない」
敵意を剥き出しにする一郎太を鼻で笑って、ポジションに戻っていく明王ちゃんに、仲裁に入ったヒロトも困り顔だ。
皆が信じてないだけじゃない。明王ちゃんも誰も信じてない。だからお互い、相手を信じようとは思えない。悪循環ばかり続いて空気は悪くなる一方。
かくいうあたしだって、明王ちゃんのワンマンプレーの理由が分からなくて、正直どうすればいいか分からない。でも、考えなしに突っ込んでるとも思えなくて。
試合には出れなくてもいつもベンチで皆を見ていた。監督の指示の意図にも気づいてた。だから今回も、目的があってのこと……だと思いたい。
……無理にでも一緒に練習する時間を取っていれば、すぐ分かったのかな。言い合いになってから全然話せなくなってしまったのを、今更ながらに後悔する。
「パスを回せ、不動!不動っ!」
「そんなにボールが欲しいなら俺から奪い取ってみるんだな!」
「なっ……」
皆が厳しい目で見ているのは、分かっている筈なのに。どうしてそんな言い方しか出来ないんだ……!
「じゃあっ、貰うよ!」
「テメェ!なにしやがる!」
「それはこっちのセリフ!考えてることがあるなら言ってよ!」
「俺は俺がやりたいようにやる!邪魔すんじゃねえ!」
「そのやりたいことを教えてって言ってんの!合わせるから!」
「チッ……。お前はそこで、見てやがれ!」
「そういう訳には、いかないって、言ってるじゃん!」
ボールを奪い合いながらゴール前。無理矢理二人で撃つ形になったシュートは、キーパーの正面で。当然キャッチされた。
「お前が邪魔したからタイミングが合わなかったんだ」
「……どのみち明王ちゃんのシュートじゃ破れないでしょ」
「何だと!?」
「明王ちゃんの方が頭いいのも沢山考えてるのも知ってるよ。でも一人で全部は無理じゃん」
「……」
「だから上手く使ってみせてよ、あたし達を。それも出来ない?」
「……無駄な動きばっかりしやがって」
「無駄に喧嘩売りまくる奴にだけは言われたくない」
売り言葉に買い言葉でトゲのあることばかりが出てくる。信じてほしいから信じたいのに、どうしてこうなるんだ……。
「(あ、これ)」
……あの時と同じだ。まるっきり同じじゃないけど、エイリア学園と戦っていた頃の士郎くんとアツヤと近い、かもしれない。
頼れない、頼ってほしい。信じて、信じられない。勝ちたい気持ちは一緒な筈なのに、どうしてかちぐはぐで、噛み合わない。
とにもかくにも直にファイアードラゴンが攻めてくる。自陣に戻る道中で、声をかけてきたのは晴矢と風介だ。
「おいおい、美波が仲間割れなんて珍しいな」
「これも何かの作戦かい?」
「パスくれないなら体当たりで伝えるしかないから」
「成る程。奴ならではのコミュニケーションということか」
「慣れてねえ癖によくやるぜ」
「けど口の割には息が合っていたじゃないか」
「ゴール前まで行けたのは褒めてやるよ」
「……合ってた?ゴール前?」
確かに、ゴール前に行くまで、ボールを取られるどころかディフェンスに割り込まれることは一度もなかった。まるで……道筋が計算されていたみたいに。
それなら、そうだとしたら、あたしがやるべきことは……!
「来るぞ美波!」
「っ、壁山!」
「はいっす!」
「ノーザンインパクト!」
「「ロックウォールダムッ!!」」
取り囲むように壁を築いて、迫る冷気を押し止める。よし、上手くいった!
「寄越せ!」
「明王ちゃんっ!」
前線へ走り出した明王ちゃんにパスを出せば、皆がぎょっとしたようにあたしを見た。……これでいいんだ。
明王ちゃんはどれだけ呼ばれようとルート・オブ・スカイを使おうとはしない。また一人で攻めて、キープしきれずボールを奪われた。
あたしがフォローに入るよりに先に、一郎太がスライディングでボールを出す。そして耐えきれないとばかりに怒鳴り声をあげた。
「いい加減にしろ不動!パスを出せ!皆に合わせろ!」
「俺に命令するな!俺は出したい時に出す!」
「……勝手にしろ」
そう吐き捨てて、一郎太は背を向けた。だからあんな言い方じゃ分からないってば……。
「で、もういい?」
「遅ェ」
「気付いてあげたんだから褒めてくれてもいいと思う」
「ならすぐフォローに入れよ」
「入ろうとしたよ!一郎太の方が速かっただけで」
「……全力でついてくるんじゃなかったのかよ」
「えっ、あ!試合前に言ったの覚えてたんだ!」
「うるせえ戻れ」
「はーい」
やっと明王ちゃんのサッカーが分かってきたことに、我ながらちょっと浮かれてると思う。でも嬉しいものは嬉しいんだから仕方ない。
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