第15話 完全なる戦術!パーフェクトゾーンプレス!!
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守兄のいない決勝戦。スタメンから外した監督の狙いはわからないけれど、それに気づかない限り監督が守兄を出すことはない。
代わりにゲームキャプテンを任されたあたしに出来ること。チームを纏めて、勝利を目指す。守兄ならきっと気づけるから、それまでは!
「少しは上手くなったようだな、レーゼ!」
「どういう意味だ、バーン!」
「俺に勝つにはまだ早いってことだよ!」
「何!?」
「一人で勝つ必要もないけど、ね!」
「美波!……チッ」
リュウジのスライディングをかわした晴矢に立て続けにブロックをしかければ、舌打ちした晴矢はチャンスウへ戻した。
チャンスウについた士郎くんがすかさずスノーエンジェルでボールを奪う。また攻撃のチャンスだ。なのに余裕そうに笑う姿に、嫌な予感がした。
「竜の雄叫びを聞け!我らの完全なる戦術、パーフェクトゾーンプレス!」
手を振り上げたチャンスウの号令でファイアードラゴンのミッドフィルダーが条兄を、ディフェンダーが士郎くんを囲むと周りを高速で走り出す。
逃げる暇もなく、二人は二重のサークルに閉じ込められてしまった。周囲を寄せ付けない圧迫感で近付こうにも近付けない。分断された……!
「何だこの技は。吹雪と綱海、それに俺達まで分断するつもりか」
「残念だが、これは技ではない。戦術だ。見ていてごらん、二つの包囲網の動きを。竜が君たちを締め付けていくよ」
風介の言う通りに輪は徐々に縮まっていく。中の様子は見えないけれど、条兄はボールをキープしきれず取り返そうにも弾かれてるようだった。
しかも鉄の壁でも出来るような猛スピードで走りながら、正確なパス回しをしては挑発してくるらしい。なんて技術……じゃなくて、戦術だ。
パーフェクトゾーンプレス。外からでもこのプレッシャーなんだ。中にいる二人が感じてる圧は想像もつかない。現に、挑発に乗る二人は冷静さを失ってるようだった。
「士郎くん!条兄!無理しないで!」
「僕達なら大丈夫!」
「こんなの、破ってやるぜ!」
包囲網が突然緩んだ。突っ込んだ体勢の士郎くんと条兄は互いに向き合っていて、そこにボールはない。声を上げる間もなく二人は衝突した。
縺れるように倒れ込んだ二人に駆け寄る。大丈夫だなんて言うけど痩せ我慢にしか見えない。審判がホイッスルを鳴らす。下敷きになった士郎くんの足の具合は特に酷そうだった。……この試合、もう。
「士郎くん、肩貸すよ。立てそう?」
「うん。……ごめん、美波ちゃん」
「気にしないで。一郎太!」
「ああ」
あたしと一郎太で士郎くんを、土方と飛鷹で条兄を支えてベンチに戻る。二人の足は、アイシングでこの試合中にどうにかなる状態じゃなくて、交代が宣言された。
空中戦が得意な晴矢には条兄を当てたかった。それに攻守共に活躍してくれた士郎くんが抜けたのが痛い。……あたしが、チャンスウを警戒していれば。
キャプテンマークを掴む。もっと出来たことがあったんじゃないか。具体的に何か思いつく訳でもないけど、それでも。悔しい。苦しい。……左腕が、重い。
「美波」
「……守兄」
「美波のせいじゃない」
「でも」
「絶対違う」
そうだろ?辺りを見回した守兄が問いかければ、皆が、士郎くんと条兄も頷いてくれた。……言わせちゃったな。
「……切り替えてこう!パーフェクトゾーンプレスには注意!やられても無理には取り返さない!その後のフォローに力を入れる!」
大きな返事をした皆がピッチへ戻っていく。あたし、ちゃんとキャプテン出来てるかな。
「次、畳み掛けてくると思う」
「……ヒロト」
「あいつらのことはよく知ってる」
沢山やってきたからね。晴矢と風介を見ながら呟くヒロトの目はどこまでも真っ直ぐだ。それはまるで、流れ星みたいで。
「気をつけて」
そう言って遠ざかっていく18番をぼんやりと見ていたら、一郎太に軽く背中を叩かれた。そうだ、ポジションにつかないと。
「ライトニングアクセル!」
中盤までは繋がっても、あと一歩が踏み込めない。……パーフェクトゾーンプレスは多人数でのタクティクス。発動すれば選手が集まる分、スペースが空く。
けれど当然ながらそれは折り込み済みでファイアードラゴンは動く。攻めの起点にされないように、決して逃がさないと動きを制限してくる。
今度は飛鷹と土方が囲まれた。ボールキープは出来なくても、鬼道の声かけもあって無理をしている気配はない。ボールが奪われるのなんて、怪我するよりずっといい。
ゾーンの外へボールが弾き出された。風介がチャンスウに回して、晴矢が上がる。来た!
「アトミックフレア!」
「決めさせない!水龍改!!」
猛る灼熱の炎に水の龍が食らいつく。ぶつけたそばから水が蒸発していくのを感じた。何て熱量だ。豪炎寺と同じくらい……いや……!
「この程度か!」
「いいや……まだだ、負けるかあ!!」
龍が大きく膨れ上がって、シュートを呑み込む。勢いを殺してくれた水が、激しく飛び散った。
「ちょっとは強くなったな美波!やるじゃねえか!」
「そう簡単に点はやらない!あとちょっとは余計だから!」
あ、このやり取り、沖縄でもやったやり取りだ。晴矢もあの時のことを思い出したのか、楽しそうに笑った。
「ハハッ、そうだなあ!もうナメちゃいねーよ!なら……これはどうだ!」
高く跳ね上がったボール。ディフェンスを振り切っていち早く飛び付いた晴矢が、不敵に笑う。流石は空中戦が得意な晴矢だ。なんて身軽な身のこなし。
再びのアトミックフレア。放たれたのはゴールではなく真下で、そこへ飛び込んできたのは風介だった。……まさか!
「くそっ、ディフェンス戻れ!」
「流石は美波だ。……だが、一手遅かったな。ノーザンインパクト!!」
「シュートチェイン……!止めろ立向居ッ!」
加速したシュートにブロックは間に合わない。振り向けば腰を落としてセーブ体勢に入った立向居が両手を突き出す。
晴矢と風介、二人分のパワーが込められたシュートは、繰り出したムゲン・ザ・ハンドを撃ち破った。
同点に追い付かれてしまった。ヒロトに気をつけてと言われていたのに。あたしが一度シュートを止めるのまで読まれていた。隙のない二段構えにまんまとしてやられた。
「……ごめん立向居。戻りが遅かった」
「俺の方こそすみません、守りきれなくて」
「いや、この1点は俺達のミスでもある」
「パーフェクトゾーンプレス、想像以上に手強い」
「大丈夫ですよ豪炎寺さん!次は俺達の秘密兵器を見せてやりましょう!」
「あの必殺技か」
「だけど、奴らのプレッシャーを受けたら、必殺技どころじゃないぞ」
あの徹底したプレッシング。一度かかれば動きを封じるだけでなく、判断力までも奪うタクティクス。あれに意識を割いたままじゃ必殺技まで持ち込めない。
必殺技どころじゃない。その言葉に鬼道は引っ掛かるものがあったらしく、考え込み始めた。どんな困難も突破口を切り開いてくれたイナズマジャパンの司令塔。鬼道なら大丈夫だ。
続けて久遠監督も練習の成果を見せてくれと言ってきた。ということは、あの泥のフィールドでのプレーがパーフェクトゾーンプレス破りの鍵なのか。
顔を上げた鬼道が思いついたのは、下を泥だと思ってのボールコントロール。
……どういう意味?泥の中じゃ鈍って思うように動かせないから、ボールが落ちないようにパスやシュートをしたりで……ん?落とさない?
詳しく聞こうにも試合再開が迫っていて慌ててポジションへと散らばる。話してる時間が無いなら試合の中で掴むしかない。
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代わりにゲームキャプテンを任されたあたしに出来ること。チームを纏めて、勝利を目指す。守兄ならきっと気づけるから、それまでは!
「少しは上手くなったようだな、レーゼ!」
「どういう意味だ、バーン!」
「俺に勝つにはまだ早いってことだよ!」
「何!?」
「一人で勝つ必要もないけど、ね!」
「美波!……チッ」
リュウジのスライディングをかわした晴矢に立て続けにブロックをしかければ、舌打ちした晴矢はチャンスウへ戻した。
チャンスウについた士郎くんがすかさずスノーエンジェルでボールを奪う。また攻撃のチャンスだ。なのに余裕そうに笑う姿に、嫌な予感がした。
「竜の雄叫びを聞け!我らの完全なる戦術、パーフェクトゾーンプレス!」
手を振り上げたチャンスウの号令でファイアードラゴンのミッドフィルダーが条兄を、ディフェンダーが士郎くんを囲むと周りを高速で走り出す。
逃げる暇もなく、二人は二重のサークルに閉じ込められてしまった。周囲を寄せ付けない圧迫感で近付こうにも近付けない。分断された……!
「何だこの技は。吹雪と綱海、それに俺達まで分断するつもりか」
「残念だが、これは技ではない。戦術だ。見ていてごらん、二つの包囲網の動きを。竜が君たちを締め付けていくよ」
風介の言う通りに輪は徐々に縮まっていく。中の様子は見えないけれど、条兄はボールをキープしきれず取り返そうにも弾かれてるようだった。
しかも鉄の壁でも出来るような猛スピードで走りながら、正確なパス回しをしては挑発してくるらしい。なんて技術……じゃなくて、戦術だ。
パーフェクトゾーンプレス。外からでもこのプレッシャーなんだ。中にいる二人が感じてる圧は想像もつかない。現に、挑発に乗る二人は冷静さを失ってるようだった。
「士郎くん!条兄!無理しないで!」
「僕達なら大丈夫!」
「こんなの、破ってやるぜ!」
包囲網が突然緩んだ。突っ込んだ体勢の士郎くんと条兄は互いに向き合っていて、そこにボールはない。声を上げる間もなく二人は衝突した。
縺れるように倒れ込んだ二人に駆け寄る。大丈夫だなんて言うけど痩せ我慢にしか見えない。審判がホイッスルを鳴らす。下敷きになった士郎くんの足の具合は特に酷そうだった。……この試合、もう。
「士郎くん、肩貸すよ。立てそう?」
「うん。……ごめん、美波ちゃん」
「気にしないで。一郎太!」
「ああ」
あたしと一郎太で士郎くんを、土方と飛鷹で条兄を支えてベンチに戻る。二人の足は、アイシングでこの試合中にどうにかなる状態じゃなくて、交代が宣言された。
空中戦が得意な晴矢には条兄を当てたかった。それに攻守共に活躍してくれた士郎くんが抜けたのが痛い。……あたしが、チャンスウを警戒していれば。
キャプテンマークを掴む。もっと出来たことがあったんじゃないか。具体的に何か思いつく訳でもないけど、それでも。悔しい。苦しい。……左腕が、重い。
「美波」
「……守兄」
「美波のせいじゃない」
「でも」
「絶対違う」
そうだろ?辺りを見回した守兄が問いかければ、皆が、士郎くんと条兄も頷いてくれた。……言わせちゃったな。
「……切り替えてこう!パーフェクトゾーンプレスには注意!やられても無理には取り返さない!その後のフォローに力を入れる!」
大きな返事をした皆がピッチへ戻っていく。あたし、ちゃんとキャプテン出来てるかな。
「次、畳み掛けてくると思う」
「……ヒロト」
「あいつらのことはよく知ってる」
沢山やってきたからね。晴矢と風介を見ながら呟くヒロトの目はどこまでも真っ直ぐだ。それはまるで、流れ星みたいで。
「気をつけて」
そう言って遠ざかっていく18番をぼんやりと見ていたら、一郎太に軽く背中を叩かれた。そうだ、ポジションにつかないと。
「ライトニングアクセル!」
中盤までは繋がっても、あと一歩が踏み込めない。……パーフェクトゾーンプレスは多人数でのタクティクス。発動すれば選手が集まる分、スペースが空く。
けれど当然ながらそれは折り込み済みでファイアードラゴンは動く。攻めの起点にされないように、決して逃がさないと動きを制限してくる。
今度は飛鷹と土方が囲まれた。ボールキープは出来なくても、鬼道の声かけもあって無理をしている気配はない。ボールが奪われるのなんて、怪我するよりずっといい。
ゾーンの外へボールが弾き出された。風介がチャンスウに回して、晴矢が上がる。来た!
「アトミックフレア!」
「決めさせない!水龍改!!」
猛る灼熱の炎に水の龍が食らいつく。ぶつけたそばから水が蒸発していくのを感じた。何て熱量だ。豪炎寺と同じくらい……いや……!
「この程度か!」
「いいや……まだだ、負けるかあ!!」
龍が大きく膨れ上がって、シュートを呑み込む。勢いを殺してくれた水が、激しく飛び散った。
「ちょっとは強くなったな美波!やるじゃねえか!」
「そう簡単に点はやらない!あとちょっとは余計だから!」
あ、このやり取り、沖縄でもやったやり取りだ。晴矢もあの時のことを思い出したのか、楽しそうに笑った。
「ハハッ、そうだなあ!もうナメちゃいねーよ!なら……これはどうだ!」
高く跳ね上がったボール。ディフェンスを振り切っていち早く飛び付いた晴矢が、不敵に笑う。流石は空中戦が得意な晴矢だ。なんて身軽な身のこなし。
再びのアトミックフレア。放たれたのはゴールではなく真下で、そこへ飛び込んできたのは風介だった。……まさか!
「くそっ、ディフェンス戻れ!」
「流石は美波だ。……だが、一手遅かったな。ノーザンインパクト!!」
「シュートチェイン……!止めろ立向居ッ!」
加速したシュートにブロックは間に合わない。振り向けば腰を落としてセーブ体勢に入った立向居が両手を突き出す。
晴矢と風介、二人分のパワーが込められたシュートは、繰り出したムゲン・ザ・ハンドを撃ち破った。
同点に追い付かれてしまった。ヒロトに気をつけてと言われていたのに。あたしが一度シュートを止めるのまで読まれていた。隙のない二段構えにまんまとしてやられた。
「……ごめん立向居。戻りが遅かった」
「俺の方こそすみません、守りきれなくて」
「いや、この1点は俺達のミスでもある」
「パーフェクトゾーンプレス、想像以上に手強い」
「大丈夫ですよ豪炎寺さん!次は俺達の秘密兵器を見せてやりましょう!」
「あの必殺技か」
「だけど、奴らのプレッシャーを受けたら、必殺技どころじゃないぞ」
あの徹底したプレッシング。一度かかれば動きを封じるだけでなく、判断力までも奪うタクティクス。あれに意識を割いたままじゃ必殺技まで持ち込めない。
必殺技どころじゃない。その言葉に鬼道は引っ掛かるものがあったらしく、考え込み始めた。どんな困難も突破口を切り開いてくれたイナズマジャパンの司令塔。鬼道なら大丈夫だ。
続けて久遠監督も練習の成果を見せてくれと言ってきた。ということは、あの泥のフィールドでのプレーがパーフェクトゾーンプレス破りの鍵なのか。
顔を上げた鬼道が思いついたのは、下を泥だと思ってのボールコントロール。
……どういう意味?泥の中じゃ鈍って思うように動かせないから、ボールが落ちないようにパスやシュートをしたりで……ん?落とさない?
詳しく聞こうにも試合再開が迫っていて慌ててポジションへと散らばる。話してる時間が無いなら試合の中で掴むしかない。
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