第13話 最後の試合
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士郎くんと土方は守兄、豪炎寺と虎丸は立向居を相手に連携必殺技の特訓を続けている。
これが完成すれば、チームの得点力は大幅アップ。更に世界に近づく!……条兄と壁山は相変わらずなみたいだけど。
「円堂くん!美波ちゃん!手紙が来てるわよ!」
「「手紙?」」
守兄と顔を見合わせる。秋が持ってきてくれたのは一通の手紙。裏を見ても差出人は無し。誰からだろう?
守兄が開けるのを横から覗き込む。出てきたのは紙が一枚だけ。内容も一文だけ。けれどその文字に、思考が止まった。こ、これって!
「ああっ!この字は!」
「キャプテンの特訓ノートと同じ字でやんす!」
「ということは、大介さんからの」
「でも、円堂と美波のおじいさんは、もうずっと前に亡くなって……」
書かれていたのはじいちゃん――円堂大介の文字だった。つまりこの手紙は、じいちゃんからの手紙!?
内容は"頂上で待ってる"。頂上って、フットボールフロンティアインターナショナルの?出場するチームのどれかにじいちゃんがいる?
でも、じいちゃんはずっと前に死んだと聞かされてきた。疑問符だらけの中で、目金が罠かもしれないと言い出した。
あたし達を動揺させる為?わざわざそんな回りくどいことするかなあ。すると、何度もノートを見てきた立向居が絶対じいちゃんだと反論する。
そしたらお互いにカチンときたのか、あたし達を差し置いて口論になってしまった。
「ちょ、ちょっとじいちゃんのことで揉めないでよ!……今確かめられることじゃないし、考えても仕方ないよ」
「ああ!もしこの手紙が何かの間違いならそれだけのことだし、本物ならFFI世界大会へ行けば会えるってことだしさ!」
世界の頂上。アジア予選を勝ち抜けば、本戦に行けば、じいちゃんに会える。この手紙が本当なら、じいちゃんに……!
「それより特訓だ!今は決勝戦のことだけ考えようぜ!」
「何にしても世界大会に行けば分かる話だからね。練習、頑張ってこうっ!」
……といっても、衝撃が大きすぎて、ボールを蹴っても手紙の文字が頭の中をぐるぐる回る。
じいちゃんは生きていた?どこで?お母さんにも秘密で?何で今になって手紙を?どこかであたし達がサッカーしてるのを見てたの?
うっかり顔面ブロックしかけて夕弥に怒られてたら、ゴール前の守兄と目が合った。どちらともなく頷く。考えることは一緒だ。
練習が終わってから学校を出たあたし達は、商店街へ足を向けた。雷雷軒の戸を叩けば、出迎えてくれたのは響木監督。もちろん聞くのは、じいちゃんのこと。
「ハッキリするまで言いたくはなかったんだがな……」
「それじゃあ、やっぱり、じいちゃんは!」
「生きてるんですね!」
「まだそうと決まった訳じゃない。大介さんらしき人がいると噂を聞いただけでな」
「「そうですか……」」
「ま、いずれ分かることだ。それより今は決勝戦に集中しろ」
雷雷軒を出て河川敷を歩く。そっか、響木監督は知ってたんだ。なら鬼瓦刑事も知ってるかな。いずれってことは、調べてくれてるんだろうな。
「本当に生きてるのかな、じいちゃん」
「噂、かあ。でも噂になるくらいじいちゃんかもって思った人がいるってことだよな!」
「だね!手紙まで来たんだし、少なくともじいちゃんを知ってる人が世界大会にはいるんだ!」
「よしっ!じいちゃん、もし生きてるなら待っててくれ!俺、絶対決勝戦に勝って、世界大会へ行くからな!」
「あたし達の試合見ててね!誰が相手だって絶対負けないから!世界大会で会おうね!」
空に向かって声を張り上げる。日が殆ど落ちてる空は、星がキラキラと瞬いていた。
「美波、上見ながら歩くと危ないぞ」
「分かってるって。でも今日は雲がないから割と見えるんだ」
「あ、本当だ。懐かしいなあ。皆で眺めたりしてさ」
「キャラバンの上でね!そしたらヒロトが」
「ん?ヒロト?」
「空見てたらなんか会いに来てくれた時があった」
「……ふーん。それってさ、ヒロトとよく会ってたってこと?」
「よくって程じゃ………そうかも?あと必殺技の特訓に付き合ってくれた」
「北海道だな」
言わなくても間髪入れずにいつのことか分かるのは流石は双子の片割れだ。にしても、あの頃のヒロトは色々不思議だったな。
特訓に付き合ってくれて、タオル貸してくれて、何回も会いに来た。風介や晴矢が呆れるくらいに。
ヒロトが優しいからだと思ってたけど、それ以上にヒロトは吉良さんが大切だった筈だ。でも打算だけだったとも思えなくて……今更聞かないけど。
「あの頃のヒロトって……覚えてなくても……雷門のサッカーが……俺の時は……」
「守兄?」
「ガゼルってどんな奴だっけ」
「は?風介?」
何でいきなり風介?というかそっか、守兄って風介の名字知らないのか。晴矢は名乗ってたしね。
「涼野風介だよ。冷静でクールだけど結構頑固で負けず嫌いで熱いとこもあって、晴矢とは犬猿の仲だけど息ピッタリ!」
「美波にとっては」
「友達!……エイリア学園と戦うのを迷ってた時、お互い守りたいものの為に戦おうって言ってくれたのは嬉しかったな」
「そっか。大事な友達なんだな」
「あたしにとっては世界とかの前に、友達とまた笑ってサッカーする為の戦いだったから」
守兄がヒロトのことで難しい顔をしてたのや、突然風介のことを聞いてきた理由は分からないけど。
……いや、分かりたくないのかもしれない。自分が……まだ向き合えていないから。
河川敷グラウンドを通りかかった時、ボールを蹴る音が聞こえてきた。目を向ければそこには豪炎寺がいた。
こんな時間まで自主練なんて流石は豪炎寺だ。あたし達も付き合おうと駆け寄ったけど、丁度切り上げるとこだったらしい。ちょっと残念。
クールダウンする豪炎寺は酷く静かだった。何か抱え込んでるようで、守兄が聞いてもやっぱり豪炎寺はなんでもないと言うだけで。
ならここは引き下がるしかない。先に帰ってようと堤防を上がろうとしたら、呼び止めたのは他ならない豪炎寺。
「……円堂、美波」
俺は、サッカーをやめる。
飛び出してきた言葉に、ガツンと頭を殴られたような、そんな衝撃を受けた。
アジア予選が終わったら、ドイツへ留学する?医者になる為に、サッカーをやめるだって!?そんなの急過ぎるよ!
「(ああ、そうか)」
……真人くんが言ってた心配って、このことだったんだ。そしてこれには豪炎寺のお父さんも関わってた。
前から、サッカーやめて欲しかったんだ。そういえば豪炎寺、疲れてても毎日必ず勉強してるって言ってたっけ。お父さんとの約束って……だから……。
何も言えずにいるあたしをよそに、守兄が詰め寄る。どうして今なのか。次勝てば世界大会に行けるとこまで来てるのに。世界と戦えるのに。
そうだ、皆で力を合わせて、やっとここまでこれたんだ。何より、豪炎寺はサッカーしたい筈なのに!何で、何でこんな時に!
「何で今!何でそんなことになっちゃってんだよ!豪炎寺!」
「っそうだよ!豪炎寺はサッカーしたいんじゃないの!?だって、豪炎寺は……」
それ以上は言えなかった。とても、悲しそうな顔をしていたから。
……豪炎寺のお父さんは、サッカーを。豪炎寺だけじゃなくて、夕香ちゃんのこともあった。そうなっても……おかしくない。
だとしたら、前に病院ですれ違った時に向けられた視線が、居心地悪かったのも分かる。
あたしが……雷門中サッカー部だから。豪炎寺がまたボールを蹴るようになったきっかけのチームの一員だったから。
「だから、だから今すぐやめて留学するって、そうなのか?豪炎寺!豪炎寺っ!」
「もう決めたことだ」
「決めたことって……本当にそれでいいのかよ、サッカーをやめるって。本当にいいのかよ!」
「これでいいなんて本当に思ってる訳じゃないよね!?大好きなものに嘘つくなって、あたしに言ってくれたの豪炎寺じゃん!」
「……」
「嫌だよ、あたし……豪炎寺……!」
「すまない……円堂、美波」
帰り道、会話は無かった。
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これが完成すれば、チームの得点力は大幅アップ。更に世界に近づく!……条兄と壁山は相変わらずなみたいだけど。
「円堂くん!美波ちゃん!手紙が来てるわよ!」
「「手紙?」」
守兄と顔を見合わせる。秋が持ってきてくれたのは一通の手紙。裏を見ても差出人は無し。誰からだろう?
守兄が開けるのを横から覗き込む。出てきたのは紙が一枚だけ。内容も一文だけ。けれどその文字に、思考が止まった。こ、これって!
「ああっ!この字は!」
「キャプテンの特訓ノートと同じ字でやんす!」
「ということは、大介さんからの」
「でも、円堂と美波のおじいさんは、もうずっと前に亡くなって……」
書かれていたのはじいちゃん――円堂大介の文字だった。つまりこの手紙は、じいちゃんからの手紙!?
内容は"頂上で待ってる"。頂上って、フットボールフロンティアインターナショナルの?出場するチームのどれかにじいちゃんがいる?
でも、じいちゃんはずっと前に死んだと聞かされてきた。疑問符だらけの中で、目金が罠かもしれないと言い出した。
あたし達を動揺させる為?わざわざそんな回りくどいことするかなあ。すると、何度もノートを見てきた立向居が絶対じいちゃんだと反論する。
そしたらお互いにカチンときたのか、あたし達を差し置いて口論になってしまった。
「ちょ、ちょっとじいちゃんのことで揉めないでよ!……今確かめられることじゃないし、考えても仕方ないよ」
「ああ!もしこの手紙が何かの間違いならそれだけのことだし、本物ならFFI世界大会へ行けば会えるってことだしさ!」
世界の頂上。アジア予選を勝ち抜けば、本戦に行けば、じいちゃんに会える。この手紙が本当なら、じいちゃんに……!
「それより特訓だ!今は決勝戦のことだけ考えようぜ!」
「何にしても世界大会に行けば分かる話だからね。練習、頑張ってこうっ!」
……といっても、衝撃が大きすぎて、ボールを蹴っても手紙の文字が頭の中をぐるぐる回る。
じいちゃんは生きていた?どこで?お母さんにも秘密で?何で今になって手紙を?どこかであたし達がサッカーしてるのを見てたの?
うっかり顔面ブロックしかけて夕弥に怒られてたら、ゴール前の守兄と目が合った。どちらともなく頷く。考えることは一緒だ。
練習が終わってから学校を出たあたし達は、商店街へ足を向けた。雷雷軒の戸を叩けば、出迎えてくれたのは響木監督。もちろん聞くのは、じいちゃんのこと。
「ハッキリするまで言いたくはなかったんだがな……」
「それじゃあ、やっぱり、じいちゃんは!」
「生きてるんですね!」
「まだそうと決まった訳じゃない。大介さんらしき人がいると噂を聞いただけでな」
「「そうですか……」」
「ま、いずれ分かることだ。それより今は決勝戦に集中しろ」
雷雷軒を出て河川敷を歩く。そっか、響木監督は知ってたんだ。なら鬼瓦刑事も知ってるかな。いずれってことは、調べてくれてるんだろうな。
「本当に生きてるのかな、じいちゃん」
「噂、かあ。でも噂になるくらいじいちゃんかもって思った人がいるってことだよな!」
「だね!手紙まで来たんだし、少なくともじいちゃんを知ってる人が世界大会にはいるんだ!」
「よしっ!じいちゃん、もし生きてるなら待っててくれ!俺、絶対決勝戦に勝って、世界大会へ行くからな!」
「あたし達の試合見ててね!誰が相手だって絶対負けないから!世界大会で会おうね!」
空に向かって声を張り上げる。日が殆ど落ちてる空は、星がキラキラと瞬いていた。
「美波、上見ながら歩くと危ないぞ」
「分かってるって。でも今日は雲がないから割と見えるんだ」
「あ、本当だ。懐かしいなあ。皆で眺めたりしてさ」
「キャラバンの上でね!そしたらヒロトが」
「ん?ヒロト?」
「空見てたらなんか会いに来てくれた時があった」
「……ふーん。それってさ、ヒロトとよく会ってたってこと?」
「よくって程じゃ………そうかも?あと必殺技の特訓に付き合ってくれた」
「北海道だな」
言わなくても間髪入れずにいつのことか分かるのは流石は双子の片割れだ。にしても、あの頃のヒロトは色々不思議だったな。
特訓に付き合ってくれて、タオル貸してくれて、何回も会いに来た。風介や晴矢が呆れるくらいに。
ヒロトが優しいからだと思ってたけど、それ以上にヒロトは吉良さんが大切だった筈だ。でも打算だけだったとも思えなくて……今更聞かないけど。
「あの頃のヒロトって……覚えてなくても……雷門のサッカーが……俺の時は……」
「守兄?」
「ガゼルってどんな奴だっけ」
「は?風介?」
何でいきなり風介?というかそっか、守兄って風介の名字知らないのか。晴矢は名乗ってたしね。
「涼野風介だよ。冷静でクールだけど結構頑固で負けず嫌いで熱いとこもあって、晴矢とは犬猿の仲だけど息ピッタリ!」
「美波にとっては」
「友達!……エイリア学園と戦うのを迷ってた時、お互い守りたいものの為に戦おうって言ってくれたのは嬉しかったな」
「そっか。大事な友達なんだな」
「あたしにとっては世界とかの前に、友達とまた笑ってサッカーする為の戦いだったから」
守兄がヒロトのことで難しい顔をしてたのや、突然風介のことを聞いてきた理由は分からないけど。
……いや、分かりたくないのかもしれない。自分が……まだ向き合えていないから。
河川敷グラウンドを通りかかった時、ボールを蹴る音が聞こえてきた。目を向ければそこには豪炎寺がいた。
こんな時間まで自主練なんて流石は豪炎寺だ。あたし達も付き合おうと駆け寄ったけど、丁度切り上げるとこだったらしい。ちょっと残念。
クールダウンする豪炎寺は酷く静かだった。何か抱え込んでるようで、守兄が聞いてもやっぱり豪炎寺はなんでもないと言うだけで。
ならここは引き下がるしかない。先に帰ってようと堤防を上がろうとしたら、呼び止めたのは他ならない豪炎寺。
「……円堂、美波」
俺は、サッカーをやめる。
飛び出してきた言葉に、ガツンと頭を殴られたような、そんな衝撃を受けた。
アジア予選が終わったら、ドイツへ留学する?医者になる為に、サッカーをやめるだって!?そんなの急過ぎるよ!
「(ああ、そうか)」
……真人くんが言ってた心配って、このことだったんだ。そしてこれには豪炎寺のお父さんも関わってた。
前から、サッカーやめて欲しかったんだ。そういえば豪炎寺、疲れてても毎日必ず勉強してるって言ってたっけ。お父さんとの約束って……だから……。
何も言えずにいるあたしをよそに、守兄が詰め寄る。どうして今なのか。次勝てば世界大会に行けるとこまで来てるのに。世界と戦えるのに。
そうだ、皆で力を合わせて、やっとここまでこれたんだ。何より、豪炎寺はサッカーしたい筈なのに!何で、何でこんな時に!
「何で今!何でそんなことになっちゃってんだよ!豪炎寺!」
「っそうだよ!豪炎寺はサッカーしたいんじゃないの!?だって、豪炎寺は……」
それ以上は言えなかった。とても、悲しそうな顔をしていたから。
……豪炎寺のお父さんは、サッカーを。豪炎寺だけじゃなくて、夕香ちゃんのこともあった。そうなっても……おかしくない。
だとしたら、前に病院ですれ違った時に向けられた視線が、居心地悪かったのも分かる。
あたしが……雷門中サッカー部だから。豪炎寺がまたボールを蹴るようになったきっかけのチームの一員だったから。
「だから、だから今すぐやめて留学するって、そうなのか?豪炎寺!豪炎寺っ!」
「もう決めたことだ」
「決めたことって……本当にそれでいいのかよ、サッカーをやめるって。本当にいいのかよ!」
「これでいいなんて本当に思ってる訳じゃないよね!?大好きなものに嘘つくなって、あたしに言ってくれたの豪炎寺じゃん!」
「……」
「嫌だよ、あたし……豪炎寺……!」
「すまない……円堂、美波」
帰り道、会話は無かった。
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