第12話 豪炎寺の決意!
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練習は終わったけど、体を動かし足りない。夕飯前に軽くランニングしようと、秋達に声をかけて合宿所を出る。
正門を出たところで屈伸していると、辺りを見回して不安そうにしている女の子を発見した。
「あれ、夕香ちゃん?」
「! 美波お姉ちゃん!」
そこにいたのは豪炎寺の妹である夕香ちゃんだった。話を聞くと、何でも雷門まで一緒に来た人とはぐれちゃったらしい。
「そっかあ。じゃあ一緒に探そう!」
「うん!」
はぐれないように手を繋ぐ。とりあえず、雷門中の外周を一周してみよう。
夕香ちゃんの足取りは軽い。初めて会った時は入院してたから、ここまで元気になって本当に良かったな。
「今日は豪……お兄ちゃんに会いに来たの?」
「うん。でも夕香じゃなくて、真人くんが心配だから会いたいって」
「へー、はぐれちゃったのってその真人くん?」
「そうなの。……あのね、お兄ちゃん、ちょっと変なんだ」
「変?」
「昨日お父さんと話した後ね、悲しそうな顔してたの」
そう言うと、夕香ちゃんは眉を下げて寂しそうな顔をした。豪炎寺のお父さんというと、稲妻総合病院でお医者さんをやってるんだっけ。
豪炎寺からは親子仲がどうとかは聞いたことないけど、大好きな家族がギクシャクしてたら寂しいよね。
あたしも、守兄とお母さんがサッカーをやるやらないで揉めた時は、怖くなって泣いちゃって困らせたなあ……。
「お兄ちゃんならきっと大丈夫!お兄ちゃんが強い人なのは、夕香ちゃんが一番知ってるよね」
「そうだよね……そうだよね!お兄ちゃんなら大丈夫だよね!」
「うんうん!今も新しい必殺技作ってて、次の決勝戦だって格好よくシュート決めちゃうよ!」
「お姉ちゃんも?」
「え、あたし?あたしはディフェンダーだから……頑張って相手のシュートを止める!」
シュートを撃つのは好きだけど、あたしのパワーで世界のゴールを破れるかっていうとそれは難しい。やるなら、それこそ……。……でも。
「でもやっぱりシュート決めるのは格好いいよね。勝敗に直接関係するからプレッシャーは凄いけど、その分爽快っていうか」
「うん!お兄ちゃんはね、すっごくカッコいいんだよ!」
「ピンチの時に駆けつけてくれるし!あの力強いシュートに何度引っ張られたか」
「お兄ちゃんは雷門のヒーローなんだね!」
「……そうだね!チームを勝利に導いてくれる、豪炎寺はヒーローだよ!なんてったって日本代表のエースストライカー!」
「決勝戦、楽しみだなあ……!夕香、絶対応援しに行くね!」
「夕香ちゃんが応援してくれたらパワー百倍だ!」
「夕香!」
その声に二人で振り向くと、慌てた様子で走ってくる男の子がいた。誰かに似てる、ような?誰だろう。
「真人くん!」
「急にいなくなるから心配したんだぞ!」
「ごめんなさい……」
「ま、まあまあ!夕香ちゃんも悪気があった訳じゃないんだし!」
悲しそうな夕香ちゃんが見てられずに口を挟むと、じろりと視線を向けられて思わず後ずさった。
そのままじろじろと顔を見られて、なんだか居心地が悪くなってくる。何だ。顔に何かついてたんだろうか。
眺めるだけ眺めた男の子――真人くん?は、ああ、と合点がいったという風に頷いた。
「修也の彼女だ」
……修也?というと豪炎寺の名前だ。つまり彼は豪炎寺の……何だろ?友達?そもそも夕香ちゃんと一緒にいて……ってちょっと待った!
「彼女じゃないよ!?」
「違うのか?」
修也がよく話してるからそうだと思ってた。と、真人くん。いや違うよ。豪炎寺は一体どんな話をしてるっていうんだ。
「というか君誰!?」
「豪炎寺真人。修也と夕香の従兄弟だ」
「従兄弟!?」
豪炎寺に従兄弟いたんだ!いやそりゃいるか。言われてみれば、確かに目元や顔立ちが似てる。
「えーと、豪炎寺……真人くん」
ここにいるだけでも"豪炎寺"が二人いるからややこしいな。あたしにとって、豪炎寺は豪炎寺だし。
「そうだ。真人くん、サッカーやってる?」
「……本当、修也が言ってた通りの奴だな」
呆れながらも真人くんは自分もサッカーをやってること、ポジションは豪炎寺と同じフォワードであることを教えてくれた。
そして、修也には負けないと。従兄弟でライバルなんだ。染岡や士郎くんもそうだけど、そういうのっていいなあ。
「あ、そうだ。豪炎寺に会いに来たんだよね。呼んでくるよ」
「いや、いい。会ってくつもりだったけど、修也にはアンタや仲間がいるって分かったからな」
「あたし?皆?」
「知ってると思うけど、あいつ結構黙って抱え込むとこあるだろ。だから見といてやってくれ」
確かに豪炎寺は口数少なくてちょっと口下手だ。元々クールな奴なのが、溜め込んで我慢して、限界が来ると足が出る。
変だと言う夕香ちゃん。真人くんの心配。間違いなく何かある。豪炎寺は言いたがらないだろうけど、まずは聞くだけ聞いてみよう。
「分かった。豪炎寺のことは任せて!」
「修也を頼んだ」
「またね、美波お姉ちゃん!」
「うん、夕香ちゃんも真人くんもまた会おうね!」
「ああ。またな、美波」
***
夕飯の時間。皆の輪に入ろうとした豪炎寺を呼び止めて、二人で端のテーブルについた。
「珍しいな」
「そう?」
「大体不動と食べてるだろ」
「食べてるっていうかあたしが一方的に話しかけてるっていうか」
話題を振ったところで明王ちゃんからの返事はほぼ無い。あっても「ああ」「そうかよ」「知るか」だ。
サッカー関連だとたまに一言以上喋ってくれるけど、それでもあたしから食いつかないと会話が続くことはない。
「まあたまにはね」
「そうか」
「あ、今日夕香ちゃんに会ったよ」
「夕香と?」
「うん。あと真人くん」
「げほっ」
今まさに水を飲もうとしていた豪炎寺は盛大に噎せた。
「大丈夫?」
「……ああ。真人の奴、何か言ってなかったか。変なこととか」
「変なことって……あ」
あった。思い出すのは彼女発言。あれは十二分に変なことだ。だって、あたしが豪炎寺の彼女なんてね。
「修也の彼女かって言われた」
味噌汁を飲もうとしていた豪炎寺はさっきより酷く噎せた。流石に大丈夫じゃない気がして背中を擦る。
暫くして咳が収まった豪炎寺は、何も言わずにご飯を口に運び始めた。なんとなく気まずくてあたしもハンバーグを一口。あ、美味しい。
「それで、何て返したんだ」
「さっきの続き?違うよって」
「悪かったな。真人の奴、何を勘違いしたんだか」
「あたしのことは豪炎寺から聞いたって話してたけど、どんな話したの?」
「……普通に、どんな奴かとか。プレースタイルとか」
それで何で彼女なんて飛躍したんだろ。稲妻KFCの子達といい、やっぱりお年頃的?なあれなのか。
彼女、つまり付き合ってる人。あたし達くらいの歳の男女が二人で出歩いてたりすると、そう思われるのが自然なことなのかな。
別に、異性の友達同士で出掛けるのは普通だと思う。皆、友達だ。豪炎寺だけじゃない。一郎太も、鬼道も、士郎くんも、ヒロトも……。
――俺は……デートでも良かったよ。
「(いやいやいやいや!!)」
あれは多分言葉の綾ってやつだ。同性異性問わず友達とのお出かけをデートと言う文化があるって前に目金が言ってた!うん、そう!
きっと士郎くんでも同じこと言った!……意味合いは違うだろうけど。これは想像じゃなくて確信だ。何で確信出来るかっていうと、あたしが士郎くんの気持ちを知ってるから。
……じゃあ、一郎太だったらどうだろう?多分、慌てて否定する。俺達はそういうのじゃないって言うんだ。だってあたしと一郎太は幼馴染みだから。
「何変な顔してるんだ」
「そんなにおかしな顔してる?」
「ああ」
眉間に皺が寄ってる。と指差しながら笑う豪炎寺。皺を伸ばしながら考える。変、かあ。
変なこと、といえば。豪炎寺だってそうだ。一郎太とのこととか聞いてくるし。進展って何だ。進むとか、進まないとか。
「それより豪炎寺こそ最近変なんじゃないの」
「俺が?何がだ」
「……えっと」
……こうして聞かれると言いづらい。だって、あたしが意識してるみたいじゃん。こんなの今話すことじゃない。もっと他にあるだろ。
「いやほら、だから、夕香ちゃんが言ってた」
「夕香?」
「お父さんと話した後……」
苦し紛れの言葉は続かなかった。あからさまに豪炎寺は表情を強張らせたからだ。
「……何かあったの?」
「……」
「ねえ、豪炎寺。本当に変だよ」
「……すまない」
「何で謝るんだよ……」
「今は、言えない」
「豪炎寺……」
豪炎寺は、それ以上話してはくれなかった。
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正門を出たところで屈伸していると、辺りを見回して不安そうにしている女の子を発見した。
「あれ、夕香ちゃん?」
「! 美波お姉ちゃん!」
そこにいたのは豪炎寺の妹である夕香ちゃんだった。話を聞くと、何でも雷門まで一緒に来た人とはぐれちゃったらしい。
「そっかあ。じゃあ一緒に探そう!」
「うん!」
はぐれないように手を繋ぐ。とりあえず、雷門中の外周を一周してみよう。
夕香ちゃんの足取りは軽い。初めて会った時は入院してたから、ここまで元気になって本当に良かったな。
「今日は豪……お兄ちゃんに会いに来たの?」
「うん。でも夕香じゃなくて、真人くんが心配だから会いたいって」
「へー、はぐれちゃったのってその真人くん?」
「そうなの。……あのね、お兄ちゃん、ちょっと変なんだ」
「変?」
「昨日お父さんと話した後ね、悲しそうな顔してたの」
そう言うと、夕香ちゃんは眉を下げて寂しそうな顔をした。豪炎寺のお父さんというと、稲妻総合病院でお医者さんをやってるんだっけ。
豪炎寺からは親子仲がどうとかは聞いたことないけど、大好きな家族がギクシャクしてたら寂しいよね。
あたしも、守兄とお母さんがサッカーをやるやらないで揉めた時は、怖くなって泣いちゃって困らせたなあ……。
「お兄ちゃんならきっと大丈夫!お兄ちゃんが強い人なのは、夕香ちゃんが一番知ってるよね」
「そうだよね……そうだよね!お兄ちゃんなら大丈夫だよね!」
「うんうん!今も新しい必殺技作ってて、次の決勝戦だって格好よくシュート決めちゃうよ!」
「お姉ちゃんも?」
「え、あたし?あたしはディフェンダーだから……頑張って相手のシュートを止める!」
シュートを撃つのは好きだけど、あたしのパワーで世界のゴールを破れるかっていうとそれは難しい。やるなら、それこそ……。……でも。
「でもやっぱりシュート決めるのは格好いいよね。勝敗に直接関係するからプレッシャーは凄いけど、その分爽快っていうか」
「うん!お兄ちゃんはね、すっごくカッコいいんだよ!」
「ピンチの時に駆けつけてくれるし!あの力強いシュートに何度引っ張られたか」
「お兄ちゃんは雷門のヒーローなんだね!」
「……そうだね!チームを勝利に導いてくれる、豪炎寺はヒーローだよ!なんてったって日本代表のエースストライカー!」
「決勝戦、楽しみだなあ……!夕香、絶対応援しに行くね!」
「夕香ちゃんが応援してくれたらパワー百倍だ!」
「夕香!」
その声に二人で振り向くと、慌てた様子で走ってくる男の子がいた。誰かに似てる、ような?誰だろう。
「真人くん!」
「急にいなくなるから心配したんだぞ!」
「ごめんなさい……」
「ま、まあまあ!夕香ちゃんも悪気があった訳じゃないんだし!」
悲しそうな夕香ちゃんが見てられずに口を挟むと、じろりと視線を向けられて思わず後ずさった。
そのままじろじろと顔を見られて、なんだか居心地が悪くなってくる。何だ。顔に何かついてたんだろうか。
眺めるだけ眺めた男の子――真人くん?は、ああ、と合点がいったという風に頷いた。
「修也の彼女だ」
……修也?というと豪炎寺の名前だ。つまり彼は豪炎寺の……何だろ?友達?そもそも夕香ちゃんと一緒にいて……ってちょっと待った!
「彼女じゃないよ!?」
「違うのか?」
修也がよく話してるからそうだと思ってた。と、真人くん。いや違うよ。豪炎寺は一体どんな話をしてるっていうんだ。
「というか君誰!?」
「豪炎寺真人。修也と夕香の従兄弟だ」
「従兄弟!?」
豪炎寺に従兄弟いたんだ!いやそりゃいるか。言われてみれば、確かに目元や顔立ちが似てる。
「えーと、豪炎寺……真人くん」
ここにいるだけでも"豪炎寺"が二人いるからややこしいな。あたしにとって、豪炎寺は豪炎寺だし。
「そうだ。真人くん、サッカーやってる?」
「……本当、修也が言ってた通りの奴だな」
呆れながらも真人くんは自分もサッカーをやってること、ポジションは豪炎寺と同じフォワードであることを教えてくれた。
そして、修也には負けないと。従兄弟でライバルなんだ。染岡や士郎くんもそうだけど、そういうのっていいなあ。
「あ、そうだ。豪炎寺に会いに来たんだよね。呼んでくるよ」
「いや、いい。会ってくつもりだったけど、修也にはアンタや仲間がいるって分かったからな」
「あたし?皆?」
「知ってると思うけど、あいつ結構黙って抱え込むとこあるだろ。だから見といてやってくれ」
確かに豪炎寺は口数少なくてちょっと口下手だ。元々クールな奴なのが、溜め込んで我慢して、限界が来ると足が出る。
変だと言う夕香ちゃん。真人くんの心配。間違いなく何かある。豪炎寺は言いたがらないだろうけど、まずは聞くだけ聞いてみよう。
「分かった。豪炎寺のことは任せて!」
「修也を頼んだ」
「またね、美波お姉ちゃん!」
「うん、夕香ちゃんも真人くんもまた会おうね!」
「ああ。またな、美波」
***
夕飯の時間。皆の輪に入ろうとした豪炎寺を呼び止めて、二人で端のテーブルについた。
「珍しいな」
「そう?」
「大体不動と食べてるだろ」
「食べてるっていうかあたしが一方的に話しかけてるっていうか」
話題を振ったところで明王ちゃんからの返事はほぼ無い。あっても「ああ」「そうかよ」「知るか」だ。
サッカー関連だとたまに一言以上喋ってくれるけど、それでもあたしから食いつかないと会話が続くことはない。
「まあたまにはね」
「そうか」
「あ、今日夕香ちゃんに会ったよ」
「夕香と?」
「うん。あと真人くん」
「げほっ」
今まさに水を飲もうとしていた豪炎寺は盛大に噎せた。
「大丈夫?」
「……ああ。真人の奴、何か言ってなかったか。変なこととか」
「変なことって……あ」
あった。思い出すのは彼女発言。あれは十二分に変なことだ。だって、あたしが豪炎寺の彼女なんてね。
「修也の彼女かって言われた」
味噌汁を飲もうとしていた豪炎寺はさっきより酷く噎せた。流石に大丈夫じゃない気がして背中を擦る。
暫くして咳が収まった豪炎寺は、何も言わずにご飯を口に運び始めた。なんとなく気まずくてあたしもハンバーグを一口。あ、美味しい。
「それで、何て返したんだ」
「さっきの続き?違うよって」
「悪かったな。真人の奴、何を勘違いしたんだか」
「あたしのことは豪炎寺から聞いたって話してたけど、どんな話したの?」
「……普通に、どんな奴かとか。プレースタイルとか」
それで何で彼女なんて飛躍したんだろ。稲妻KFCの子達といい、やっぱりお年頃的?なあれなのか。
彼女、つまり付き合ってる人。あたし達くらいの歳の男女が二人で出歩いてたりすると、そう思われるのが自然なことなのかな。
別に、異性の友達同士で出掛けるのは普通だと思う。皆、友達だ。豪炎寺だけじゃない。一郎太も、鬼道も、士郎くんも、ヒロトも……。
――俺は……デートでも良かったよ。
「(いやいやいやいや!!)」
あれは多分言葉の綾ってやつだ。同性異性問わず友達とのお出かけをデートと言う文化があるって前に目金が言ってた!うん、そう!
きっと士郎くんでも同じこと言った!……意味合いは違うだろうけど。これは想像じゃなくて確信だ。何で確信出来るかっていうと、あたしが士郎くんの気持ちを知ってるから。
……じゃあ、一郎太だったらどうだろう?多分、慌てて否定する。俺達はそういうのじゃないって言うんだ。だってあたしと一郎太は幼馴染みだから。
「何変な顔してるんだ」
「そんなにおかしな顔してる?」
「ああ」
眉間に皺が寄ってる。と指差しながら笑う豪炎寺。皺を伸ばしながら考える。変、かあ。
変なこと、といえば。豪炎寺だってそうだ。一郎太とのこととか聞いてくるし。進展って何だ。進むとか、進まないとか。
「それより豪炎寺こそ最近変なんじゃないの」
「俺が?何がだ」
「……えっと」
……こうして聞かれると言いづらい。だって、あたしが意識してるみたいじゃん。こんなの今話すことじゃない。もっと他にあるだろ。
「いやほら、だから、夕香ちゃんが言ってた」
「夕香?」
「お父さんと話した後……」
苦し紛れの言葉は続かなかった。あからさまに豪炎寺は表情を強張らせたからだ。
「……何かあったの?」
「……」
「ねえ、豪炎寺。本当に変だよ」
「……すまない」
「何で謝るんだよ……」
「今は、言えない」
「豪炎寺……」
豪炎寺は、それ以上話してはくれなかった。
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