第11話 冬花の究極奥義大作戦!
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「ここは……」
「鉄塔広場!稲妻町のシンボル!ここからの景色は最高なんだ!天気がいい日は帝国学園も見えるんだよ」
日が落ちかかってて、広場も町も綺麗な茜色に染まっている。いいタイミングで来れて良かった!
「このタイヤは?」
「守兄の特訓相手!これを、こう、押してっ!」
タイヤを掴んで思い切り押せば、振り子のように揺れたタイヤが、勢いよくあたしの方へと向かってくる。
腰を軽く落として、構えた手を突き出せば、バシッと乾いた音と衝撃がビリビリきた。
「っつ……こんな感じ!」
「……大丈夫?」
「流石にグローブ無いとキツかった……。あ、でもね、たまにあたしも使ってるんだ。重さがあるから丁度よくて。蹴り返す感じで豪炎寺もやってたんだけど」
「待って、美波ちゃん。スカートが捲れ上がるから足は上げない方がいい」
「そうだった。やっぱ慣れないなスカート……」
「でも、似合ってるよ」
「そう?」
「うん。可愛い」
「……冗談?」
「本当」
クスクスと笑うヒロト。からかわれた?そういえば、北海道でもこんなやり取りしたな。あの時は冗談だったけど……なんかむず痒くなってきた。
そんなあたしをよそに、景色を眺めるヒロトは穏やかに笑っている。まあ、元々の目的は達成出来たしいいや。
「あ、この鉄塔登れるんだよ。風が気持ちいいし見張らしもよくて、悩んでる時はここから景色を眺めるとスッキリするんだ」
「……美波ちゃん」
「わ、分かってるよ!?スカートだよね!でもヒロトが先に登れば」
「駄目だよ」
「はい……」
にっこりと笑うヒロトには有無を言わせぬ迫力があった。ヒロトって怒らせると怖いタイプだ、きっと。
「あれ?美波にヒロト?」
「守兄!冬花さんも!」
そろそろ帰ろうと話してた頃、やってきたのは守兄と冬花さんだった。何でも今日の練習が終わった後、二人で出掛けてたという。
そういえば昨日のどうなったかな。冬花さんを手招きして、守兄とヒロトからちょっと離れた所で小声で話す。
「冬花さん、どうだった?」
「それが……私、リカさんにからかわれてたみたいで」
「え、リカ?」
得意気なリカの顔が浮かぶ。そっか、あたしとヒロトだけじゃなくて冬花さんと守兄もだったのか……。
「マモルくん、私を励ます為にここに連れてきてくれたんです。私、何かしたかったのに、全然出来なくて……それどころか気を遣ってもらって」
「落ち込むことないよ。仲間が心配なのはお互い様なんだよ!大丈夫、冬花さんの気持ちはちゃんと守兄に伝わってるから!」
「そうですか?」
「うん!妹のあたしが太鼓判押す!」
「おーい!美波もフユッペも何話してるんだ?」
「なんでもないよ!ね、冬花さん!」
「……はい!」
そう言って笑いかければ、冬花さんも笑って頷いてくれた。よし、もう大丈夫!
「にしてもせっかく特訓以外の理由で来たのに鉄塔登れないのはミスったな」
「? 登ればいいだろ?」
「スカートだからダメってヒロトに止められた」
「それは俺も賛成。……あ」
「どしたの守兄」
「前に夏未と来た時、夏未は制服だったのに登らせちゃったなって」
「……覗いてないよね」
「覗く訳無いだろ!?でもさ、俺の一番好きな景色を夏未にも好きになってもらえたのは嬉しかったな」
鉄塔広場とここからの景色はあたし達兄妹のお気に入りな訳だけど、あそこで円堂くんと話したの、となっちゃんに聞いたことがある。
元々ここはなっちゃんにとっても、理事長と亡くなったお母さんとの思い出のあるお気に入りの場所で、守兄のおかげでそれを思い出せたって言ってたな。
「なっちゃんと何話したの?」
「んー……秘密!」
「じゃああたしも秘密!」
「え、何だよそれ!ってか美波こそ夏未と何あったんだよ!」
「秘密ったら秘密!じゃあお先に!行こうヒロト!」
ヒロトの手を取ると、あたしは走り出した。
走って走って、階段を降りたところでやめる。辺りは暗くなりつつある。夕飯もあるし、もう帰るだけだ。
有無を言わせず引っ張って来ちゃったけど、合わせてついてきてくれたヒロトは流石だ。……手汗大丈夫かな。大丈夫だと思いたい。
繋がった手からヒロトの体温が伝わってくる。ヒロトはあたしより体温が低いんだな。色白だし、そういうの?
お日さま園に通ってた頃は、よく手を繋ぐこともあったっけ。そう思うと、ヒロトとこうするのは随分久しぶりだ。
離すのが、ちょっとだけ名残惜しい。それを察したのか、ヒロトは何も言わずにそのままにさせてくれた。
お互い黙ったままで歩いて、雷門中まで戻ってきた。正門が見えた所で、自然と手は離れていった。
「今日は楽しかったよ。ありがとう、美波ちゃん」
「それは良かった!ヒロトが稲妻町を好きになってくれたら嬉しいな」
「うん。いい町だね、稲妻町は」
「またこうして回ろうね。案内したい場所はまだまだあるから。雷雷軒にも行けてないし」
「……うん。また、ね。……美波ちゃん」
「ん?」
「俺は……デートでも良かったよ」
「え?」
「……じゃあ俺、着替えてくるから」
足早にヒロトが歩いていく。なのにあたしは動けずにいた。見間違えじゃなければ、ヒロトの耳が、髪と同じくらい赤かったような
「デートって」
それって、どういうこと?
→あとがき
「鉄塔広場!稲妻町のシンボル!ここからの景色は最高なんだ!天気がいい日は帝国学園も見えるんだよ」
日が落ちかかってて、広場も町も綺麗な茜色に染まっている。いいタイミングで来れて良かった!
「このタイヤは?」
「守兄の特訓相手!これを、こう、押してっ!」
タイヤを掴んで思い切り押せば、振り子のように揺れたタイヤが、勢いよくあたしの方へと向かってくる。
腰を軽く落として、構えた手を突き出せば、バシッと乾いた音と衝撃がビリビリきた。
「っつ……こんな感じ!」
「……大丈夫?」
「流石にグローブ無いとキツかった……。あ、でもね、たまにあたしも使ってるんだ。重さがあるから丁度よくて。蹴り返す感じで豪炎寺もやってたんだけど」
「待って、美波ちゃん。スカートが捲れ上がるから足は上げない方がいい」
「そうだった。やっぱ慣れないなスカート……」
「でも、似合ってるよ」
「そう?」
「うん。可愛い」
「……冗談?」
「本当」
クスクスと笑うヒロト。からかわれた?そういえば、北海道でもこんなやり取りしたな。あの時は冗談だったけど……なんかむず痒くなってきた。
そんなあたしをよそに、景色を眺めるヒロトは穏やかに笑っている。まあ、元々の目的は達成出来たしいいや。
「あ、この鉄塔登れるんだよ。風が気持ちいいし見張らしもよくて、悩んでる時はここから景色を眺めるとスッキリするんだ」
「……美波ちゃん」
「わ、分かってるよ!?スカートだよね!でもヒロトが先に登れば」
「駄目だよ」
「はい……」
にっこりと笑うヒロトには有無を言わせぬ迫力があった。ヒロトって怒らせると怖いタイプだ、きっと。
「あれ?美波にヒロト?」
「守兄!冬花さんも!」
そろそろ帰ろうと話してた頃、やってきたのは守兄と冬花さんだった。何でも今日の練習が終わった後、二人で出掛けてたという。
そういえば昨日のどうなったかな。冬花さんを手招きして、守兄とヒロトからちょっと離れた所で小声で話す。
「冬花さん、どうだった?」
「それが……私、リカさんにからかわれてたみたいで」
「え、リカ?」
得意気なリカの顔が浮かぶ。そっか、あたしとヒロトだけじゃなくて冬花さんと守兄もだったのか……。
「マモルくん、私を励ます為にここに連れてきてくれたんです。私、何かしたかったのに、全然出来なくて……それどころか気を遣ってもらって」
「落ち込むことないよ。仲間が心配なのはお互い様なんだよ!大丈夫、冬花さんの気持ちはちゃんと守兄に伝わってるから!」
「そうですか?」
「うん!妹のあたしが太鼓判押す!」
「おーい!美波もフユッペも何話してるんだ?」
「なんでもないよ!ね、冬花さん!」
「……はい!」
そう言って笑いかければ、冬花さんも笑って頷いてくれた。よし、もう大丈夫!
「にしてもせっかく特訓以外の理由で来たのに鉄塔登れないのはミスったな」
「? 登ればいいだろ?」
「スカートだからダメってヒロトに止められた」
「それは俺も賛成。……あ」
「どしたの守兄」
「前に夏未と来た時、夏未は制服だったのに登らせちゃったなって」
「……覗いてないよね」
「覗く訳無いだろ!?でもさ、俺の一番好きな景色を夏未にも好きになってもらえたのは嬉しかったな」
鉄塔広場とここからの景色はあたし達兄妹のお気に入りな訳だけど、あそこで円堂くんと話したの、となっちゃんに聞いたことがある。
元々ここはなっちゃんにとっても、理事長と亡くなったお母さんとの思い出のあるお気に入りの場所で、守兄のおかげでそれを思い出せたって言ってたな。
「なっちゃんと何話したの?」
「んー……秘密!」
「じゃああたしも秘密!」
「え、何だよそれ!ってか美波こそ夏未と何あったんだよ!」
「秘密ったら秘密!じゃあお先に!行こうヒロト!」
ヒロトの手を取ると、あたしは走り出した。
走って走って、階段を降りたところでやめる。辺りは暗くなりつつある。夕飯もあるし、もう帰るだけだ。
有無を言わせず引っ張って来ちゃったけど、合わせてついてきてくれたヒロトは流石だ。……手汗大丈夫かな。大丈夫だと思いたい。
繋がった手からヒロトの体温が伝わってくる。ヒロトはあたしより体温が低いんだな。色白だし、そういうの?
お日さま園に通ってた頃は、よく手を繋ぐこともあったっけ。そう思うと、ヒロトとこうするのは随分久しぶりだ。
離すのが、ちょっとだけ名残惜しい。それを察したのか、ヒロトは何も言わずにそのままにさせてくれた。
お互い黙ったままで歩いて、雷門中まで戻ってきた。正門が見えた所で、自然と手は離れていった。
「今日は楽しかったよ。ありがとう、美波ちゃん」
「それは良かった!ヒロトが稲妻町を好きになってくれたら嬉しいな」
「うん。いい町だね、稲妻町は」
「またこうして回ろうね。案内したい場所はまだまだあるから。雷雷軒にも行けてないし」
「……うん。また、ね。……美波ちゃん」
「ん?」
「俺は……デートでも良かったよ」
「え?」
「……じゃあ俺、着替えてくるから」
足早にヒロトが歩いていく。なのにあたしは動けずにいた。見間違えじゃなければ、ヒロトの耳が、髪と同じくらい赤かったような
「デートって」
それって、どういうこと?
→あとがき