第11話 冬花の究極奥義大作戦!
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「二人共どうしたの?」
「いや、話し込んでるようだったから、単純に気になっただけだ」
「僕は美波ちゃんと風丸くんが二人の世界を作ってたから邪魔しに」
「えっ!?」
「なっ!?」
「茶化すな吹雪」
「茶化してなんかないよ。好きな女の子と恋敵が、二人しか分からない話をしてたら気になるな」
士郎くんはけろりした顔で凄いことを言う。ストレート過ぎる物言いに流石にドキリとした。じっと見つめられて、心臓がバクバクする。
なんてね、と笑う士郎くん。普段は穏やかな新雪のような視線が、凄く熱く感じる。
「僕の気持ちもずっと変わってないよ。美波ちゃんが大好き」
「し、士郎くん待って!」
「……美波ちゃんは鈍いんじゃなくてこの手の話が凄く苦手なんだよね」
突然話が変わった。この前の豪炎寺といい、一体何なんだ。さっきとは違うドキドキに冷や汗が出てくる。
「まるで何かを、向き合うのを怖がってるような……。だから」
「そこまでだ」
「風丸くん」
「話も何も、ただ……俺達は幼馴染みだって話してただけだ。それでいいだろ」
「風丸、お前」
「練習に戻る。行こう、美波」
「あっ……一郎太!」
踵を返した一郎太がグラウンドへ入っていく。後ろ髪が引かれたけど、あたしもそれを追った。
「風丸くんはよく幼馴染みって言うよね」
「そうだな。実際、長い付き合いなんだから、関係を表すには一番だろう」
「でもそれって自分で線引きしてるようにも感じるんだ」
「……美波だけじゃない、ということか」
「さあ、どうだろう。どっちが望んでのことなんだろうね。もしかすると両方なのかも」
「あいつらの関係を、幼馴染みの一言で済ませられるなら……」
「おーい吹雪!練習するぞー!」
「豪炎寺さーん!キャプテンが待ってますよ!」
「ごめんね土方くん!今行くから!」
「すまない、円堂!虎丸!」
「……僕達も戻ろっか」
「そうだな」
***
「マモルくんのことで少し聞きたいことがあって」
練習後。部屋で転がってると、左手にメモ帳、右手にシャーペンを持った冬花さんがやってきた。
何でも守兄が悩んだり行き詰まったりした時、何をするか知りたいとかで。考えて真っ先に思い浮かんだのは鉄塔広場にぶら下がるタイヤ。
「んー……体を動かすかな」
「体を動かす、ですか?」
「立ち止まってくよくよ悩んでたって何も始まらないから。とにもかくにもまず行動してみる!」
「なるほど……」
「あとそれの延長線上だけど、思い付いたことはとりあえずやってみる。刺激になるし、何がヒントに繋がるかは分からないからね」
頷きながら熱心にメモを取る冬花さん。少しは参考になったかな?
「あ、そうだ。冬花さん、マネージャー業は慣れてきた?」
「はい。秋さんにも春奈さんにも丁寧に教えて貰って……。早く覚えて、チームの力になりたいです」
「もうなってるって!でも向上心を忘れないのは偉いっ!」
「ありがとうございます。そういえば、雷門にはもう一人マネージャーがいるんですよね」
「ん?あー、なっちゃんのことか。今留学中なんだ」
一緒に世界に行けると思ってたから、留学を告げられた時はびっくりしたな。ちょっと寂しいけど、前から決まってたなら仕方ない。今頃、何してるのかな。
「あ、でもね、世界大会は応援に来てくれるって言ってた!だからその時は紹介するね!」
「はい!楽しみにしてますね」
***
「で、何すんの」
「次なる獲物を見つけるに決まっとるやん!」
「はあ……」
合宿所玄関にて。拳を握り、瞳に炎を燃やすリカに、付き合わされることを予感した塔子は盛大なため息をついた。
何の因果か、日本代表内には特定の人物に想いを向けている者が複数いるのだ。恋愛話に餓えたリカにとっては格好のネタの宝庫である。
誰が餌食になることやら。半目で廊下を眺める塔子の視界に人影が映ったのは直ぐのこと。現れたのは、ボールを小脇に抱えたユニフォーム姿の吹雪だった。
二人から視線を注がれ、吹雪は不思議そうに瞬きし、首を傾げた。
「なんや吹雪か」
「ええと、僕でごめんね?」
「あー、吹雪が謝ることないよ。どうせ美波のことで何か企んでるだけなんだからさ」
「美波ちゃんのこと?」
「そや。なあ吹雪、美波と進展とかないん?もちのろん、ラブ的な意味で」
「こらリカ、吹雪は日本代表として合宿に参加してるんだぞ?そんなの気にしてる暇ないだろ。吹雪も気にしなくていいからな」
「えー、そんなんつまらんわ」
方や何でもいいから教えろ、方や逃げろと口々に言葉をかけてくる2人に対し、視線を交互に向けると、吹雪は平静のままに返した。
「今はサッカーが第一だよ。僕達は日本代表だからね」
「ほら見たことか」
「それに、また美波ちゃんとサッカー出来るのは嬉しいし」
「ほらほら!やっぱ何かは有るんや!」
「……美波ちゃんの今の一番はサッカーだろうから。好きも、凄いも、格好いいも」
吹雪は持っていたボールを掲げると、穏やかに、しかし強い意思の宿った笑みを浮かべた。
「この前の試合では格好悪いところを見せちゃったからね。次は活躍してみせるよ」
「ふーん。美波の為に?」
「いや、チームの為に、ね。今、必殺技の特訓をしてるんだ」
「ああ、例の連携シュートだろ?」
「それもあるけどもう一つ。あと少しで完成するから、決勝戦には間に合うと思う」
「そっか。呼び止めて悪かったな。頑張れ!応援してる!」
「ありがとう。それじゃあ、僕はこれで」
ひらりと手を振り出ていった吹雪の背中が見えなくなった頃、リカは塔子にジトリとした視線を向けた。
「しっかし塔子もイジワルなこと聞くなあ」
「美波も言ってただろ、日本代表だって。あんまり余計なこと言うのは良くないよ」
「ゆうて自分の為の"誰かの為に"が一番パワー出るとは思わへん?」
「……ちゃんとそういうことも考えてたんだな」
「応援されるとごっつパワー湧いてくるやろ。アレや、アレ」
「それは……分かるな。応えたいって思う」
「要は気持ちや。好きでも嫌いでも何でもええねん。けどパワー出すなら好きの方が絶対ええ」
「一応聞くけどそれだけじゃないよな」
「見てる分にはおもろいけど、どこかでケジメつけなアカン」
「……で?」
「あんな複雑過ぎる人間関係、見てるだけなんて出来ひん」
「はあ……」
.
「いや、話し込んでるようだったから、単純に気になっただけだ」
「僕は美波ちゃんと風丸くんが二人の世界を作ってたから邪魔しに」
「えっ!?」
「なっ!?」
「茶化すな吹雪」
「茶化してなんかないよ。好きな女の子と恋敵が、二人しか分からない話をしてたら気になるな」
士郎くんはけろりした顔で凄いことを言う。ストレート過ぎる物言いに流石にドキリとした。じっと見つめられて、心臓がバクバクする。
なんてね、と笑う士郎くん。普段は穏やかな新雪のような視線が、凄く熱く感じる。
「僕の気持ちもずっと変わってないよ。美波ちゃんが大好き」
「し、士郎くん待って!」
「……美波ちゃんは鈍いんじゃなくてこの手の話が凄く苦手なんだよね」
突然話が変わった。この前の豪炎寺といい、一体何なんだ。さっきとは違うドキドキに冷や汗が出てくる。
「まるで何かを、向き合うのを怖がってるような……。だから」
「そこまでだ」
「風丸くん」
「話も何も、ただ……俺達は幼馴染みだって話してただけだ。それでいいだろ」
「風丸、お前」
「練習に戻る。行こう、美波」
「あっ……一郎太!」
踵を返した一郎太がグラウンドへ入っていく。後ろ髪が引かれたけど、あたしもそれを追った。
「風丸くんはよく幼馴染みって言うよね」
「そうだな。実際、長い付き合いなんだから、関係を表すには一番だろう」
「でもそれって自分で線引きしてるようにも感じるんだ」
「……美波だけじゃない、ということか」
「さあ、どうだろう。どっちが望んでのことなんだろうね。もしかすると両方なのかも」
「あいつらの関係を、幼馴染みの一言で済ませられるなら……」
「おーい吹雪!練習するぞー!」
「豪炎寺さーん!キャプテンが待ってますよ!」
「ごめんね土方くん!今行くから!」
「すまない、円堂!虎丸!」
「……僕達も戻ろっか」
「そうだな」
***
「マモルくんのことで少し聞きたいことがあって」
練習後。部屋で転がってると、左手にメモ帳、右手にシャーペンを持った冬花さんがやってきた。
何でも守兄が悩んだり行き詰まったりした時、何をするか知りたいとかで。考えて真っ先に思い浮かんだのは鉄塔広場にぶら下がるタイヤ。
「んー……体を動かすかな」
「体を動かす、ですか?」
「立ち止まってくよくよ悩んでたって何も始まらないから。とにもかくにもまず行動してみる!」
「なるほど……」
「あとそれの延長線上だけど、思い付いたことはとりあえずやってみる。刺激になるし、何がヒントに繋がるかは分からないからね」
頷きながら熱心にメモを取る冬花さん。少しは参考になったかな?
「あ、そうだ。冬花さん、マネージャー業は慣れてきた?」
「はい。秋さんにも春奈さんにも丁寧に教えて貰って……。早く覚えて、チームの力になりたいです」
「もうなってるって!でも向上心を忘れないのは偉いっ!」
「ありがとうございます。そういえば、雷門にはもう一人マネージャーがいるんですよね」
「ん?あー、なっちゃんのことか。今留学中なんだ」
一緒に世界に行けると思ってたから、留学を告げられた時はびっくりしたな。ちょっと寂しいけど、前から決まってたなら仕方ない。今頃、何してるのかな。
「あ、でもね、世界大会は応援に来てくれるって言ってた!だからその時は紹介するね!」
「はい!楽しみにしてますね」
***
「で、何すんの」
「次なる獲物を見つけるに決まっとるやん!」
「はあ……」
合宿所玄関にて。拳を握り、瞳に炎を燃やすリカに、付き合わされることを予感した塔子は盛大なため息をついた。
何の因果か、日本代表内には特定の人物に想いを向けている者が複数いるのだ。恋愛話に餓えたリカにとっては格好のネタの宝庫である。
誰が餌食になることやら。半目で廊下を眺める塔子の視界に人影が映ったのは直ぐのこと。現れたのは、ボールを小脇に抱えたユニフォーム姿の吹雪だった。
二人から視線を注がれ、吹雪は不思議そうに瞬きし、首を傾げた。
「なんや吹雪か」
「ええと、僕でごめんね?」
「あー、吹雪が謝ることないよ。どうせ美波のことで何か企んでるだけなんだからさ」
「美波ちゃんのこと?」
「そや。なあ吹雪、美波と進展とかないん?もちのろん、ラブ的な意味で」
「こらリカ、吹雪は日本代表として合宿に参加してるんだぞ?そんなの気にしてる暇ないだろ。吹雪も気にしなくていいからな」
「えー、そんなんつまらんわ」
方や何でもいいから教えろ、方や逃げろと口々に言葉をかけてくる2人に対し、視線を交互に向けると、吹雪は平静のままに返した。
「今はサッカーが第一だよ。僕達は日本代表だからね」
「ほら見たことか」
「それに、また美波ちゃんとサッカー出来るのは嬉しいし」
「ほらほら!やっぱ何かは有るんや!」
「……美波ちゃんの今の一番はサッカーだろうから。好きも、凄いも、格好いいも」
吹雪は持っていたボールを掲げると、穏やかに、しかし強い意思の宿った笑みを浮かべた。
「この前の試合では格好悪いところを見せちゃったからね。次は活躍してみせるよ」
「ふーん。美波の為に?」
「いや、チームの為に、ね。今、必殺技の特訓をしてるんだ」
「ああ、例の連携シュートだろ?」
「それもあるけどもう一つ。あと少しで完成するから、決勝戦には間に合うと思う」
「そっか。呼び止めて悪かったな。頑張れ!応援してる!」
「ありがとう。それじゃあ、僕はこれで」
ひらりと手を振り出ていった吹雪の背中が見えなくなった頃、リカは塔子にジトリとした視線を向けた。
「しっかし塔子もイジワルなこと聞くなあ」
「美波も言ってただろ、日本代表だって。あんまり余計なこと言うのは良くないよ」
「ゆうて自分の為の"誰かの為に"が一番パワー出るとは思わへん?」
「……ちゃんとそういうことも考えてたんだな」
「応援されるとごっつパワー湧いてくるやろ。アレや、アレ」
「それは……分かるな。応えたいって思う」
「要は気持ちや。好きでも嫌いでも何でもええねん。けどパワー出すなら好きの方が絶対ええ」
「一応聞くけどそれだけじゃないよな」
「見てる分にはおもろいけど、どこかでケジメつけなアカン」
「……で?」
「あんな複雑過ぎる人間関係、見てるだけなんて出来ひん」
「はあ……」
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