第6話 灼熱の獅子!デザートライオン!!
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アジア予選1回戦を突破したイナズマジャパン。2回戦に向けて、今日も今日とて雷門中グラウンドで練習だ。
「虎丸ってアシスト上手いよね」
「そうですか?ありがとうございます!」
ここに誰か来てくれたら、という所に虎丸は入ってきてくれる。視野が広くて盤面がよく見えてるんだ。
「でももっと前に出てシュートも撃てばいいのに」
「え……」
「あれだけアシストが上手いんだからさ、パスと見せかけてシュート!とか出来たらいいと思うんだよね」
「……美波さん」
「フェイント入れてさ、こう!」
「アドバイスありがとうございます。でも俺、まだまだですから。豪炎寺さん達を差し置いて前に出るなんて出来ませんよ」
失礼します。ぎゅっと口を真一文字に引き結ぶと、虎丸は行ってしまった。
……話、遮られたな。虎丸はシュートの話をするのがあまり好きじゃないみたいだ。シュート自体、撃っているのをまだ見たことがない。
肩を叩かれたので振り返ると、そこには一部始終を見てたらしい豪炎寺がいた。なんだか難しい顔をしている。
「虎丸のことだが……どう思う、美波」
「シュートのこと、だよね。もしかしてとは思ってたけど、虎丸がシュートしないのにはやっぱり何かありそう」
「そうか……。あいつが本気で撃つつもりが無いなら、考える必要があるな」
「豪炎寺や士郎くん、ヒロト達がフリーの時ならいいけど、虎丸が撃たなきゃならない場面はいつか来るよね」
「俺達がフリーだとしても、虎丸がパスしか出せないならどのみち防がれてしまうだろうな」
「確かに……」
イナズマジャパンがこの先大会を勝ち抜いていく上で、虎丸がシュートを撃たないのは課題になってくる。早く解決したいけど……。
久遠監督から集合がかかった。食堂へ移動して、告げられたのは次の対戦相手。カタール代表、デザートライオン。
疲れの知らずの体力と、当たり負けしない足腰の強さを備えているのが特徴で、試合までに基礎体力と身体能力を強化する事になった。
徹底的に走り込んで、強い足腰を身に付ける。シンプルだけど、それが一番だ。
「あのう、すみません。申し訳ないんですが、俺これで失礼します」
「え、ああ」
これからについて話していると、申し訳なさそうにした虎丸が、一礼して帰ってしまった。
虎丸は毎日家から雷門中まで通っている。しかも時々早退もしている。練習禁止の時も帰ってたし、何か家の事情があるんだろうけど……。
皆も気にしてるみたいで、それを解消する為に秋、春ちゃん、目金が虎丸について調べてくれることになった。
「よし。虎丸のことは音無たちに任せて、俺達は特訓だ!」
***
「今日の特訓はここまでだ!」
最後の一周が終わって、勢い任せに寝転がった。髪が砂まみれになるけど、どうせ後で洗うんだから気にしない。
いつもグラウンドを走り回ってるから、走るなんて慣れっこだと思ってたけど、ボールを追いかけるのと走り込みのキツさは全然違う。
しかも今日は気温が高い。試合当日も予報によると暑くなりそうだし、体力の配分には気を付けないと。
見上げれば広がる青い空に白い雲が浮かんでいた。あの雲、おにぎりみたい。眺めながら息を整えていると、視界に差し出された手が入ってきた。
「あ、豪炎寺」
「立てるか」
「うん、ありがとう」
よいしょ、と立ち上がると豪炎寺にちょっと笑われた。別に若者が言ったっていいじゃん。
「走り込みって結構大変だね」
「そうだな。サッカーでの走りとはまた違ったキツさだ」
「あ、それあたしも思った!一郎太にコツとか聞いてみようかな……」
「そういえば、風丸は陸上をやっていたんだったな」
「俺がどうしたんだ?」
噂をすれば一郎太だ。手にはボトルが2本、持ってきてくれたみたいだ。受け取って一口。火照った体に冷たいドリンクが染みる。
「走るコツとかあったら教えて欲しいなって話」
「ああ、陸上の事か。まあ俺の場合は短距離中心だったけどな」
そうは言っても、皆と比べると心なしか余裕があるように見える。陸上部期待のルーキー!なんて言われてた時期もあったっけ。
そんな一郎太も今はすっかりサッカー部で、日本代表に選ばれる程の選手だ。
最初に助っ人になってくれて、迷いながらもサッカーを選んでくれた一郎太。本当に感謝しかない。
「何だよその顔」
「え、あたしそんなに変な顔してた?」
「してた。予想はつくけど、今更過ぎるぞそれ。俺は今の俺の方が気に入ってるよ」
それだけ言うと、丁度鬼道に呼ばれたのもあって、一郎太は行ってしまった。長い付き合いだから、分かっちゃうんだよなあ……。
「思い返せばそんなこともあったな」
「豪炎寺にも分かる?」
「さっきの風丸の言い方で分かった。まだ気にしてたのか」
「まだっていうか、あたしはあの時あんまり力になれなかったから。一郎太にはいつも助けてもらってるのに、全然だなって」
「そんなことはないだろう」
「そうかなあ……」
力になるどころか、逆に……傷つけてしまった事の方が多いような気もする。
一郎太なら大丈夫だと思い込んでて、心を磨り減らしているのにも気づかなかった。支えてあげられなかった。
……ずっと大事にしてくれてたのに、気づかないどころか、怖くなって受け止められずに逃げた。
それでも一郎太はあたしの事は直ぐ気づいてくれる。笑って助けてくれる。まるで、ヒーローみたいだ。
「一郎太はいつもそうなんだ。ヒーローみたいに駆けつけてくれる」
「ヒーローか」
「あ、でも豪炎寺もそうだよね!練習試合の時も、沖縄の時も!初めて会った時から豪炎寺は格好良かった!」
「そうか」
言葉少なに何やら考え込む豪炎寺。今の流れで引っ掛かるようなことあったかな……?
どう話を振ればいいか考えてると、視界の端に綺麗な緑。今日の特訓は終わりなのに、リュウジがまた走り出している。呼び止める守兄の声も聞こえてない。
なんだかリュウジは焦ってるように見える。試合ではスタメンだったし、調子も良さそうなのにどうしたんだろう。ヒロトも心配そうだ。
「ねえヒロト。リュウジなんだけど、無理してないかな?」
「それは俺も気になってたんだ。あいつ、もしかして……」
その先を呑み込んだヒロトは、顔を曇らせた。どこか悲しそうな、寂しそうな、苦しそうな……。
「声、かけに行く?」
「……多分、俺が言っても逆効果だろうから」
「ならあたしが言ってこよっか?」
「いや……今は緑川がやりたいようにさせよう。でも、もしこのままだと駄目だと感じたら、その時は俺が行くよ」
リュウジのことは家族であるヒロトの方がよく知ってる。ヒロトがそう言うなら、それが今は一番だと思う。
虎丸にリュウジ、それから飛鷹、明王ちゃん……チームにはまだまだ問題が山積みだ。
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「虎丸ってアシスト上手いよね」
「そうですか?ありがとうございます!」
ここに誰か来てくれたら、という所に虎丸は入ってきてくれる。視野が広くて盤面がよく見えてるんだ。
「でももっと前に出てシュートも撃てばいいのに」
「え……」
「あれだけアシストが上手いんだからさ、パスと見せかけてシュート!とか出来たらいいと思うんだよね」
「……美波さん」
「フェイント入れてさ、こう!」
「アドバイスありがとうございます。でも俺、まだまだですから。豪炎寺さん達を差し置いて前に出るなんて出来ませんよ」
失礼します。ぎゅっと口を真一文字に引き結ぶと、虎丸は行ってしまった。
……話、遮られたな。虎丸はシュートの話をするのがあまり好きじゃないみたいだ。シュート自体、撃っているのをまだ見たことがない。
肩を叩かれたので振り返ると、そこには一部始終を見てたらしい豪炎寺がいた。なんだか難しい顔をしている。
「虎丸のことだが……どう思う、美波」
「シュートのこと、だよね。もしかしてとは思ってたけど、虎丸がシュートしないのにはやっぱり何かありそう」
「そうか……。あいつが本気で撃つつもりが無いなら、考える必要があるな」
「豪炎寺や士郎くん、ヒロト達がフリーの時ならいいけど、虎丸が撃たなきゃならない場面はいつか来るよね」
「俺達がフリーだとしても、虎丸がパスしか出せないならどのみち防がれてしまうだろうな」
「確かに……」
イナズマジャパンがこの先大会を勝ち抜いていく上で、虎丸がシュートを撃たないのは課題になってくる。早く解決したいけど……。
久遠監督から集合がかかった。食堂へ移動して、告げられたのは次の対戦相手。カタール代表、デザートライオン。
疲れの知らずの体力と、当たり負けしない足腰の強さを備えているのが特徴で、試合までに基礎体力と身体能力を強化する事になった。
徹底的に走り込んで、強い足腰を身に付ける。シンプルだけど、それが一番だ。
「あのう、すみません。申し訳ないんですが、俺これで失礼します」
「え、ああ」
これからについて話していると、申し訳なさそうにした虎丸が、一礼して帰ってしまった。
虎丸は毎日家から雷門中まで通っている。しかも時々早退もしている。練習禁止の時も帰ってたし、何か家の事情があるんだろうけど……。
皆も気にしてるみたいで、それを解消する為に秋、春ちゃん、目金が虎丸について調べてくれることになった。
「よし。虎丸のことは音無たちに任せて、俺達は特訓だ!」
***
「今日の特訓はここまでだ!」
最後の一周が終わって、勢い任せに寝転がった。髪が砂まみれになるけど、どうせ後で洗うんだから気にしない。
いつもグラウンドを走り回ってるから、走るなんて慣れっこだと思ってたけど、ボールを追いかけるのと走り込みのキツさは全然違う。
しかも今日は気温が高い。試合当日も予報によると暑くなりそうだし、体力の配分には気を付けないと。
見上げれば広がる青い空に白い雲が浮かんでいた。あの雲、おにぎりみたい。眺めながら息を整えていると、視界に差し出された手が入ってきた。
「あ、豪炎寺」
「立てるか」
「うん、ありがとう」
よいしょ、と立ち上がると豪炎寺にちょっと笑われた。別に若者が言ったっていいじゃん。
「走り込みって結構大変だね」
「そうだな。サッカーでの走りとはまた違ったキツさだ」
「あ、それあたしも思った!一郎太にコツとか聞いてみようかな……」
「そういえば、風丸は陸上をやっていたんだったな」
「俺がどうしたんだ?」
噂をすれば一郎太だ。手にはボトルが2本、持ってきてくれたみたいだ。受け取って一口。火照った体に冷たいドリンクが染みる。
「走るコツとかあったら教えて欲しいなって話」
「ああ、陸上の事か。まあ俺の場合は短距離中心だったけどな」
そうは言っても、皆と比べると心なしか余裕があるように見える。陸上部期待のルーキー!なんて言われてた時期もあったっけ。
そんな一郎太も今はすっかりサッカー部で、日本代表に選ばれる程の選手だ。
最初に助っ人になってくれて、迷いながらもサッカーを選んでくれた一郎太。本当に感謝しかない。
「何だよその顔」
「え、あたしそんなに変な顔してた?」
「してた。予想はつくけど、今更過ぎるぞそれ。俺は今の俺の方が気に入ってるよ」
それだけ言うと、丁度鬼道に呼ばれたのもあって、一郎太は行ってしまった。長い付き合いだから、分かっちゃうんだよなあ……。
「思い返せばそんなこともあったな」
「豪炎寺にも分かる?」
「さっきの風丸の言い方で分かった。まだ気にしてたのか」
「まだっていうか、あたしはあの時あんまり力になれなかったから。一郎太にはいつも助けてもらってるのに、全然だなって」
「そんなことはないだろう」
「そうかなあ……」
力になるどころか、逆に……傷つけてしまった事の方が多いような気もする。
一郎太なら大丈夫だと思い込んでて、心を磨り減らしているのにも気づかなかった。支えてあげられなかった。
……ずっと大事にしてくれてたのに、気づかないどころか、怖くなって受け止められずに逃げた。
それでも一郎太はあたしの事は直ぐ気づいてくれる。笑って助けてくれる。まるで、ヒーローみたいだ。
「一郎太はいつもそうなんだ。ヒーローみたいに駆けつけてくれる」
「ヒーローか」
「あ、でも豪炎寺もそうだよね!練習試合の時も、沖縄の時も!初めて会った時から豪炎寺は格好良かった!」
「そうか」
言葉少なに何やら考え込む豪炎寺。今の流れで引っ掛かるようなことあったかな……?
どう話を振ればいいか考えてると、視界の端に綺麗な緑。今日の特訓は終わりなのに、リュウジがまた走り出している。呼び止める守兄の声も聞こえてない。
なんだかリュウジは焦ってるように見える。試合ではスタメンだったし、調子も良さそうなのにどうしたんだろう。ヒロトも心配そうだ。
「ねえヒロト。リュウジなんだけど、無理してないかな?」
「それは俺も気になってたんだ。あいつ、もしかして……」
その先を呑み込んだヒロトは、顔を曇らせた。どこか悲しそうな、寂しそうな、苦しそうな……。
「声、かけに行く?」
「……多分、俺が言っても逆効果だろうから」
「ならあたしが言ってこよっか?」
「いや……今は緑川がやりたいようにさせよう。でも、もしこのままだと駄目だと感じたら、その時は俺が行くよ」
リュウジのことは家族であるヒロトの方がよく知ってる。ヒロトがそう言うなら、それが今は一番だと思う。
虎丸にリュウジ、それから飛鷹、明王ちゃん……チームにはまだまだ問題が山積みだ。
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