第3話 呪われた監督!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
次の日の練習。パスを回していると、ボールをトラップした一郎太に向かって、突然明王ちゃんが仕掛けた。
スライディングをもろに食らった一郎太は転倒してしまった。……今の角度、危なかった。流石にあれはやりすぎだ。
「明王ちゃん!流石にあれは危ないよ!」
「フン、あれくらい避けられなきゃ、日本代表なんてやってられないぜ」
「なっ」
「っ不動!今のはわざと後ろから……」
「いいぞ、不動!ナイスチャージだ」
やってきた鬼道の文句を遮るように、監督は明王ちゃんを褒めた。そんな監督を、みんな不信な目で見ている。
……世界を相手に勝つには、ああいうプレーも必要になってくるのかな。でも……。
「やっぱりやりすぎだよ。怪我をしたら、もとも子もないのに」
「お気楽過ぎんだろ。そんなんでスタメンを勝ち取れんのか?女子のお前が」
「っ……」
言葉に詰まった。守兄たちでさえ、レギュラーだとは思っていないと監督は言っていた。なら、あたしは……。
「美波、あいつの言うことは気にするな」
「ありがとう、一郎太。あたしは大丈夫だよ。一郎太も足は」
「平気だ」
一郎太はなんでもないように笑っていて、ホッとした。
夕方、西の空が茜色に染まってきた頃、一足先に練習を切り上げて、虎丸が帰っていった。
昨日もそうだったし、何か家の事情があるのかな。どこに住んでるかは知らないけど、毎朝雷門中まで通うのは大変だろうな。
あ、監督が明王ちゃんに何か話してる。何かあったのだろうか。鬼道を見ると、眉間に皺が寄っている。
「鬼道」
「どうした」
「眉間に皺が寄ってるよ」
「おい」
手を伸ばして触ると、振り払われてしまった。そしてどこかすまなさそうな顔をする。
鬼道が明王ちゃんのことを気にしてしまう気持ちも分かる。あたしだって、佐久間と源田がやられたことを忘れた訳じゃない。
でも、明王ちゃんのことを気にしてばかりいたら、逆に視野が狭くなる……と思う。多分。
その時、条兄の声が聞こえた。目を向けると、条兄の呼び掛けを無視してリュウジが上がっている。どこか焦っているみたいだ。
そんなリュウジは隙が多くて、士郎くんがスライディングでカットした。
「おい緑川、さっきから何1人でやってんだ。パスだって言ってるだろ。……なんだよ、ちょっと待てよ!」
「おい綱海、よさないか」
咎める言葉にもフイと顔を背けて、リュウジは行ってしまう。機嫌を悪くすると条兄を土方が宥めて、リュウジを壁山と栗松が心配していた。
……合宿は始まったばかり。だけど、思ってた以上にチームはなかなか纏まらない。問題は、明王ちゃんだけじゃなさそうだ。
練習が終わって、夕飯まで各自自由時間になった。疲れてはいるけど、なんだか休む気にはなれない。
守兄は一郎太、壁山、栗松と雷雷軒に行くと言っていた。あたしもついていけばよかったかな。
でもせっかく秋たちが夕飯を作ってくれるんだから、入らなくなると困るし。中学生男子の食欲って凄いや。いやでもあたしだって……。
「あ、そうだ」
秋たちの手伝いをしに行こう。3人で選手全員分用意するのは大変だろうなって、前々から思ってたんだ。
1階に降りて調理場に行くと、豪炎寺とヒロトもいた。
「あ、2人も手伝い?」
「そういう美波もか」
「うんそう。豪炎寺は知ってたけど、ヒロトも料理出来るんだね」
「お日さま園で、たまにね」
そう言ってヒロトは笑った。……それは、いつのことなんだろう。
思えば、あれから日本代表になるまでの3ヶ月、ヒロトたちがどう過ごしてきたのかを知らない。聞けることでもない。
慕っていた吉良さんが逮捕されて、何年も積み重ねてきたことが、何もかもが終わって。ヒロトは、何を思ったんだろう。
「美波ちゃん、大丈夫?」
「っえ、あ、ううん!何でもないよ!」
急に黙ったから、心配させてしまった。そうだ、手伝いに来たんだった。
「えーと、この野菜切ればいい?」
「ありがとうございます、美波さん」
「どういたしまして。それにね、冬花さんと話したかったんだよね」
「私、ですか?」
「そうそう。全然話してなかったから」
監督の娘で、守兄とも知り合いみたいで。冬花さんは、守兄のこと覚えてないみたいだけど……。
「あ、冬花さんって呼んで大丈夫だった?」
「はい。あの、美波さんって呼んでいいですか?」
「うん!ところでさ、冬花さんから見た監督ってどんな感じかな」
「お父さんですか?……寡黙だけれど、優しいんですよ」
「へえー」
監督って口下手だったりするのかなあ。日本代表のことを考えてくれてるのは、なんとなく分かるし。
何はともあれ、冬花さんとは仲良くなれそう!
.
スライディングをもろに食らった一郎太は転倒してしまった。……今の角度、危なかった。流石にあれはやりすぎだ。
「明王ちゃん!流石にあれは危ないよ!」
「フン、あれくらい避けられなきゃ、日本代表なんてやってられないぜ」
「なっ」
「っ不動!今のはわざと後ろから……」
「いいぞ、不動!ナイスチャージだ」
やってきた鬼道の文句を遮るように、監督は明王ちゃんを褒めた。そんな監督を、みんな不信な目で見ている。
……世界を相手に勝つには、ああいうプレーも必要になってくるのかな。でも……。
「やっぱりやりすぎだよ。怪我をしたら、もとも子もないのに」
「お気楽過ぎんだろ。そんなんでスタメンを勝ち取れんのか?女子のお前が」
「っ……」
言葉に詰まった。守兄たちでさえ、レギュラーだとは思っていないと監督は言っていた。なら、あたしは……。
「美波、あいつの言うことは気にするな」
「ありがとう、一郎太。あたしは大丈夫だよ。一郎太も足は」
「平気だ」
一郎太はなんでもないように笑っていて、ホッとした。
夕方、西の空が茜色に染まってきた頃、一足先に練習を切り上げて、虎丸が帰っていった。
昨日もそうだったし、何か家の事情があるのかな。どこに住んでるかは知らないけど、毎朝雷門中まで通うのは大変だろうな。
あ、監督が明王ちゃんに何か話してる。何かあったのだろうか。鬼道を見ると、眉間に皺が寄っている。
「鬼道」
「どうした」
「眉間に皺が寄ってるよ」
「おい」
手を伸ばして触ると、振り払われてしまった。そしてどこかすまなさそうな顔をする。
鬼道が明王ちゃんのことを気にしてしまう気持ちも分かる。あたしだって、佐久間と源田がやられたことを忘れた訳じゃない。
でも、明王ちゃんのことを気にしてばかりいたら、逆に視野が狭くなる……と思う。多分。
その時、条兄の声が聞こえた。目を向けると、条兄の呼び掛けを無視してリュウジが上がっている。どこか焦っているみたいだ。
そんなリュウジは隙が多くて、士郎くんがスライディングでカットした。
「おい緑川、さっきから何1人でやってんだ。パスだって言ってるだろ。……なんだよ、ちょっと待てよ!」
「おい綱海、よさないか」
咎める言葉にもフイと顔を背けて、リュウジは行ってしまう。機嫌を悪くすると条兄を土方が宥めて、リュウジを壁山と栗松が心配していた。
……合宿は始まったばかり。だけど、思ってた以上にチームはなかなか纏まらない。問題は、明王ちゃんだけじゃなさそうだ。
練習が終わって、夕飯まで各自自由時間になった。疲れてはいるけど、なんだか休む気にはなれない。
守兄は一郎太、壁山、栗松と雷雷軒に行くと言っていた。あたしもついていけばよかったかな。
でもせっかく秋たちが夕飯を作ってくれるんだから、入らなくなると困るし。中学生男子の食欲って凄いや。いやでもあたしだって……。
「あ、そうだ」
秋たちの手伝いをしに行こう。3人で選手全員分用意するのは大変だろうなって、前々から思ってたんだ。
1階に降りて調理場に行くと、豪炎寺とヒロトもいた。
「あ、2人も手伝い?」
「そういう美波もか」
「うんそう。豪炎寺は知ってたけど、ヒロトも料理出来るんだね」
「お日さま園で、たまにね」
そう言ってヒロトは笑った。……それは、いつのことなんだろう。
思えば、あれから日本代表になるまでの3ヶ月、ヒロトたちがどう過ごしてきたのかを知らない。聞けることでもない。
慕っていた吉良さんが逮捕されて、何年も積み重ねてきたことが、何もかもが終わって。ヒロトは、何を思ったんだろう。
「美波ちゃん、大丈夫?」
「っえ、あ、ううん!何でもないよ!」
急に黙ったから、心配させてしまった。そうだ、手伝いに来たんだった。
「えーと、この野菜切ればいい?」
「ありがとうございます、美波さん」
「どういたしまして。それにね、冬花さんと話したかったんだよね」
「私、ですか?」
「そうそう。全然話してなかったから」
監督の娘で、守兄とも知り合いみたいで。冬花さんは、守兄のこと覚えてないみたいだけど……。
「あ、冬花さんって呼んで大丈夫だった?」
「はい。あの、美波さんって呼んでいいですか?」
「うん!ところでさ、冬花さんから見た監督ってどんな感じかな」
「お父さんですか?……寡黙だけれど、優しいんですよ」
「へえー」
監督って口下手だったりするのかなあ。日本代表のことを考えてくれてるのは、なんとなく分かるし。
何はともあれ、冬花さんとは仲良くなれそう!
.