第1話 集結!日本代表!!
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食べ終わる頃に、守兄は帰ってきた。真顔で考え込んでる様子で、何かあったことが伺えた。
「雷雷軒に行ったら、鬼道も来たんだ」
「鬼道が……」
「色々話したんだけどさ、俺と響木監督やじいちゃんのこと、羨ましいって言ってた」
……鬼道は、決別したつもりでも、心のどこかで影山のことを意識してる。だから、明王ちゃん相手に冷静さを保てないんだ。
鬼道にとって、影山は絶対的な存在だった。あの時までは。……それは、今でも根強く残っている。
まだ小さかった頃から関わり合いがあったらしいし、刷り込みというか、そんなやつだろうか。上手い言葉が見つからない。
明王ちゃんも明王ちゃんだ。鬼道に対しては特に挑発的な態度を取っていて、何かと目の敵にしている。
仲良くして欲しいけど、今のままじゃ無理なんだろうなあ……。
「お風呂沸いたわよ。順番に入りなさい」
「あ、はーい」
「じゃあ俺一番!」
「え、あたしが一番に入りたい!」
「美波は最後だ」
「ちょ、守兄!」
「皆が入ったら一旦お湯を抜いて、ため直す」
「お湯もったいないよ!?」
「男共が入った後のお湯に美波を入れるわけにはいかない!」
「ならあたしが最初に入ればいいじゃん!」
「いや、美波が入った後のお湯に男共を入れるなんてダメだ!特に吹雪!」
「酷いなあ、キャプテンは」
そう言う士郎くんの背後に、狼が見えるような錯覚に陥る。……同じチームなのに、こんな感じで大丈夫なのかな。
***
「おいバカ」
「ついに女ですら無くなったね」
渋々といった様子でベッド脇に布団を敷く不動は、人質ならぬ何とやらとして自分の着替えを後ろ手に確保する美波を睨み付け、息を吐いた。
何故不動が美波の部屋にいるのかというと、寝泊りの為に用意された和室で、吹雪から敵意を向けられる不動を美波が見かねたからだ。
二人を一緒にしてはいけない。そう判断した美波は、不動の荷物をかっさらうと自室に引き上げた。
不動としては荷物を奪取し戻ろうと考えてはいたものの、「士郎くん達とあたし、どっちがいい?」と言われ天秤に乗せたところ、仕方なしに美波の方へと傾いた。
木暮、立向居、綱海、緑川、ヒロトはまだいい。問題は吹雪だ。理由はほぼ染岡と美波関連だが、吹雪は不動をよく思っていない。というか怖い。
「面倒なのに好かれやがって」
「士郎くんのこと?まあ大丈夫だって。あたしは明王ちゃんのこと好きだし」
「理由が理由になってねーよバカ」
「明王ちゃんの語尾、実はバカだったりすんの?」
「ンなわけねーだろ」
「だよね。ほいっ」
美波が不動の着替えの入った鞄を投げる。それを受け止めると、不動は再びため息を吐いた。
「……変わったよな」
「は?」
「アホみてーに鈍感だった癖によ。佐久間とか」
「何で佐久間?」
「……」
「まあ、一郎太や士郎くんと色々あったし」
「お前、告白されたのか」
「……うん。何で分かったの」
「ふーん」
「あと……エイリア学園との戦いの中で色々あったから?」という呟きを聞き流し、不動は美波の幼馴染みである水色を思い出す。
そういえば俺アイツと同じチームじゃなかったか?そして、水色――風丸はこいつが好きで……。……今の状況についてバレたら死ぬんじゃね?
ツーと冷たい汗が頬を流れる。とりあえず、腹いせに手元にあった枕を投げつけた。「ぶっ」顔面に当たった。
「寝ろよ」
「えー」
「お前は明日から選考だろ」
「……あ」
「何だよ」
「明王ちゃんありがと。心配してくれて」
「してねーよ」
「優しいね」
「黙れ」
「初めて会った時もさ、しつこく話しかけたら一緒にサッカーしてくれたじゃん」
「知るか」と言い放つと、不動は背を向け布団を被った。
***
「えっ何これ。明王ちゃん何これ!!!」
「うるせー」
朝。目を覚ました時には、既に明王ちゃんはいなかった。
着替えて降りて1階の和室をそっと覗くと、ヒロトたちはまだ寝ていて、起こさないようにリビングへ向かった。
そして机の前に広がるのは料理の数々。じゃがいもとわかめの味噌汁。絶妙な焼き加減の塩鮭。ほうれん草のおひたし。
なんと、明王ちゃんがお母さんの手伝いをしていた。
「……誰かさんのおかげで、泊まらされてるからな」
「うわー味噌汁美味しい!これが主夫力ってやつか……凄いなあ」
「あ?これくらい普通だろ」
「いやあたしはここまで出来ないよ」
「ちょっと練習すりゃ出来んだろ」
何故か呆れたような明王ちゃんに、「やっぱり優しいじゃん」と言うと。「バカ」とチョップされた。痛い。
こそこそと準備をして、テストを受けに行くべく玄関で靴紐を結んでると、後ろから「おはよう」と声をかけられた。
「あ、おはようヒロト!」
振り向くと、そこに立っていたのはヒロトだった。まだ寝起きなのか、パジャマ姿だ。
寝癖もついてたりして、ちょっと新鮮な感じがする。
「もう行くんだね」
「うん。アップがてら軽くジョギングしてこうかなと」
「無理しちゃダメだよ」
「分かってるって。じゃ、ヒロトも練習頑張って!」
「ああ!」
ヒロトに見送られて、あたしは家を出た。
***
「あーーーっ!!!」
ドサッと、あたしは河川敷のグラウンドに倒れ込んだ。てんてんてんと所々焦げたボールが脇を転がる。
余裕、とまでは言わずとも、一次選考は通過することが出来た。
選考内容は、学校の体育でもやる、所謂体力テストだった。比較資料を入手しやすいからだろうか。
握力とハンドボール投げはまだしも、シャトルランはキツかったな……。体力には自信はあるつもりだったけど、まだまだだ。
体は疲れている。でも、明日は試合形式での選考だ。……ライセンスを取った時のことを思い出す。1対11なんて無茶ぶり、またするのかな。
「よいしょっと」
気合いを入れるように立ち上がって、太股を叩く。そして、ボールに足をかけた。
未完成の必殺技。まだ完成は遠い。でも、やるしかない。これは言わば、明日の切り札。
ここからは自分との戦いだ。完成出来るか、否か。
「はあああっ!!!」
皆と一緒に、世界に行くんだ!
(美波ー!もう夕飯だぞー!)
(あ……まもる……)
(泥だらけじゃないか!一体何して)
(出来たよーっ!)
(うわっ!)
→あとがき
「雷雷軒に行ったら、鬼道も来たんだ」
「鬼道が……」
「色々話したんだけどさ、俺と響木監督やじいちゃんのこと、羨ましいって言ってた」
……鬼道は、決別したつもりでも、心のどこかで影山のことを意識してる。だから、明王ちゃん相手に冷静さを保てないんだ。
鬼道にとって、影山は絶対的な存在だった。あの時までは。……それは、今でも根強く残っている。
まだ小さかった頃から関わり合いがあったらしいし、刷り込みというか、そんなやつだろうか。上手い言葉が見つからない。
明王ちゃんも明王ちゃんだ。鬼道に対しては特に挑発的な態度を取っていて、何かと目の敵にしている。
仲良くして欲しいけど、今のままじゃ無理なんだろうなあ……。
「お風呂沸いたわよ。順番に入りなさい」
「あ、はーい」
「じゃあ俺一番!」
「え、あたしが一番に入りたい!」
「美波は最後だ」
「ちょ、守兄!」
「皆が入ったら一旦お湯を抜いて、ため直す」
「お湯もったいないよ!?」
「男共が入った後のお湯に美波を入れるわけにはいかない!」
「ならあたしが最初に入ればいいじゃん!」
「いや、美波が入った後のお湯に男共を入れるなんてダメだ!特に吹雪!」
「酷いなあ、キャプテンは」
そう言う士郎くんの背後に、狼が見えるような錯覚に陥る。……同じチームなのに、こんな感じで大丈夫なのかな。
***
「おいバカ」
「ついに女ですら無くなったね」
渋々といった様子でベッド脇に布団を敷く不動は、人質ならぬ何とやらとして自分の着替えを後ろ手に確保する美波を睨み付け、息を吐いた。
何故不動が美波の部屋にいるのかというと、寝泊りの為に用意された和室で、吹雪から敵意を向けられる不動を美波が見かねたからだ。
二人を一緒にしてはいけない。そう判断した美波は、不動の荷物をかっさらうと自室に引き上げた。
不動としては荷物を奪取し戻ろうと考えてはいたものの、「士郎くん達とあたし、どっちがいい?」と言われ天秤に乗せたところ、仕方なしに美波の方へと傾いた。
木暮、立向居、綱海、緑川、ヒロトはまだいい。問題は吹雪だ。理由はほぼ染岡と美波関連だが、吹雪は不動をよく思っていない。というか怖い。
「面倒なのに好かれやがって」
「士郎くんのこと?まあ大丈夫だって。あたしは明王ちゃんのこと好きだし」
「理由が理由になってねーよバカ」
「明王ちゃんの語尾、実はバカだったりすんの?」
「ンなわけねーだろ」
「だよね。ほいっ」
美波が不動の着替えの入った鞄を投げる。それを受け止めると、不動は再びため息を吐いた。
「……変わったよな」
「は?」
「アホみてーに鈍感だった癖によ。佐久間とか」
「何で佐久間?」
「……」
「まあ、一郎太や士郎くんと色々あったし」
「お前、告白されたのか」
「……うん。何で分かったの」
「ふーん」
「あと……エイリア学園との戦いの中で色々あったから?」という呟きを聞き流し、不動は美波の幼馴染みである水色を思い出す。
そういえば俺アイツと同じチームじゃなかったか?そして、水色――風丸はこいつが好きで……。……今の状況についてバレたら死ぬんじゃね?
ツーと冷たい汗が頬を流れる。とりあえず、腹いせに手元にあった枕を投げつけた。「ぶっ」顔面に当たった。
「寝ろよ」
「えー」
「お前は明日から選考だろ」
「……あ」
「何だよ」
「明王ちゃんありがと。心配してくれて」
「してねーよ」
「優しいね」
「黙れ」
「初めて会った時もさ、しつこく話しかけたら一緒にサッカーしてくれたじゃん」
「知るか」と言い放つと、不動は背を向け布団を被った。
***
「えっ何これ。明王ちゃん何これ!!!」
「うるせー」
朝。目を覚ました時には、既に明王ちゃんはいなかった。
着替えて降りて1階の和室をそっと覗くと、ヒロトたちはまだ寝ていて、起こさないようにリビングへ向かった。
そして机の前に広がるのは料理の数々。じゃがいもとわかめの味噌汁。絶妙な焼き加減の塩鮭。ほうれん草のおひたし。
なんと、明王ちゃんがお母さんの手伝いをしていた。
「……誰かさんのおかげで、泊まらされてるからな」
「うわー味噌汁美味しい!これが主夫力ってやつか……凄いなあ」
「あ?これくらい普通だろ」
「いやあたしはここまで出来ないよ」
「ちょっと練習すりゃ出来んだろ」
何故か呆れたような明王ちゃんに、「やっぱり優しいじゃん」と言うと。「バカ」とチョップされた。痛い。
こそこそと準備をして、テストを受けに行くべく玄関で靴紐を結んでると、後ろから「おはよう」と声をかけられた。
「あ、おはようヒロト!」
振り向くと、そこに立っていたのはヒロトだった。まだ寝起きなのか、パジャマ姿だ。
寝癖もついてたりして、ちょっと新鮮な感じがする。
「もう行くんだね」
「うん。アップがてら軽くジョギングしてこうかなと」
「無理しちゃダメだよ」
「分かってるって。じゃ、ヒロトも練習頑張って!」
「ああ!」
ヒロトに見送られて、あたしは家を出た。
***
「あーーーっ!!!」
ドサッと、あたしは河川敷のグラウンドに倒れ込んだ。てんてんてんと所々焦げたボールが脇を転がる。
余裕、とまでは言わずとも、一次選考は通過することが出来た。
選考内容は、学校の体育でもやる、所謂体力テストだった。比較資料を入手しやすいからだろうか。
握力とハンドボール投げはまだしも、シャトルランはキツかったな……。体力には自信はあるつもりだったけど、まだまだだ。
体は疲れている。でも、明日は試合形式での選考だ。……ライセンスを取った時のことを思い出す。1対11なんて無茶ぶり、またするのかな。
「よいしょっと」
気合いを入れるように立ち上がって、太股を叩く。そして、ボールに足をかけた。
未完成の必殺技。まだ完成は遠い。でも、やるしかない。これは言わば、明日の切り札。
ここからは自分との戦いだ。完成出来るか、否か。
「はあああっ!!!」
皆と一緒に、世界に行くんだ!
(美波ー!もう夕飯だぞー!)
(あ……まもる……)
(泥だらけじゃないか!一体何して)
(出来たよーっ!)
(うわっ!)
→あとがき