第17話 手に入れろ!世界への切符!!
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ベンチのリュウジに親指を立てるヒロトの真似をしていれば、士郎くんと目が合った。手を振られたから振り返す。
医務室で診てもらった方がいいのに、最後までベンチにいてくれた士郎くん。……本戦、いつからだっけ。間に合うかな。
「美波ちゃん」
「ヒロト……」
「吹雪くんの頑張りもあって、俺達は勝てた。今はそれを喜ぼう」
「……そうだね。いつまでも落ち込んでたら、逆にしろ君に心配かけちゃうよね」
「けっ、仲のいいこった」
「じゃあ明王ちゃんも手振ろうよ、ほらほら」
「触んなバカ美波!」
「バカって何だよバカって!」
「皆の全力で勝ったぞ!行くぞ、世界に!」
『おう!』
「ほら、おーっ!」
「チッ……」
無理矢理拳を持ち上げられて舌打ちしつつも、されるがままになってくれる明王ちゃんは、やっぱりなんだかんだでいい奴だ。
そのまま無言で押し合っていると、晴矢と風介がやってきた。
「あーあ、負けちまった」
「だが全て出しきった。悔いはない」
「晴矢、風介……」
「知ってるか?この試合、俺らが勝ったら美波を引き抜くって話だったんだぜ」
「えっ」
『えーーーっ!!!』
いきなり出てきたとんでもない発言に辺りが騒然となった。え、何それ知らないんだけど!?久遠監督と響木監督は交渉を受けた上で黙ってた……!?
「だ、駄目だ駄目だ駄目だ!絶対駄目だ! 美波はうちのディフェンダーだ!」
「だから勝ったらの話だからもう意味ねーよ」
「美波、お前知ってたのか?」
「全然。今初めて聞いた……」
「まあ、正しくは勝ったらスカウト権を得るだからね。どうするかは美波次第さ」
「そ、そうなんだ」
仮に負けても、あたしはファイアードラゴンとして世界に行けたかもしれないのか。なんだか変な話だ。
でも、スカウトされたとしても、多分断ってたと思う。あたしが一緒に世界一になりたいのはこのチーム、イナズマジャパンだから。とはいえ。
「晴矢や風介と同じチームってのも面白かったかも」
「なっ、美波!……あいつらと一緒にサッカーするのも、ってことだよな?」
「合ってるから落ち着いて一郎太」
せっかく勝ったのに皆がピリピリし始めた。どうしてこうなっちゃったんだ。
「ま、確かにそうだな。ずっと敵対してた訳だし」
「私はどちらでもいいさ。美波とサッカーが出来るのなら」
「またやれるよ、サッカー!何度だって、大会じゃなくたって!今度は味方同士でやれたらいいね」
「……ああ。美波ならそう言うと思っていた。だから私は君が好きなんだ」
「うん……ん!?」
「今の私達には次がある。その時に備えて鍛え直しておくとしよう。友として、ライバルとして、またサッカーをする為に」
差し出された手に応えて握手する。……さっきのは、サッカー選手としてってこと、でいいのだろうか。
あたしが悶々として何も言えないのをいいことに、晴矢と風介はヒロトに向き直った。
「バーン、ガゼル……」
「俺達に勝ったんだ。これですぐ負けたら承知しねーぞ」
「世界で無様な試合をしたら許さないよ、グラン」
それだけ言って、二人は背を向けた。見送るヒロトは何かを言いかけて、迷いがあるのか口を閉じる。
エイリア学園では競い合っていた三人。ライバルと言うには殺伐過ぎた。それが無くなった今、築ける関係は違うものになってるんじゃないか。
言いたいことがあるなら、言った方がいい。軽く背中を押せば驚くヒロトに、頷くあたし。視線を戻したヒロトは声を張り上げた。
「二人の分まで戦ってくるよ。……南雲!涼野!」
「「!」」
二人の足が止まった。振り返った二人は、笑っていた。
「下手なプレーしたら俺が日本代表の座をぶんどってやるからな、基山!」
「ならばその時は私が基山も晴矢も蹴散らしてやろう」
何だと!?と噛みつく晴矢から逃げるように風介が走り出す。風介を追って、晴矢も駆けていく。やがて姿は見えなくなった。
「世界へ行く前に、あいつらとやれて良かったよ」
「ヒロト……うん、良かったね!」
大会が終わったら、お日さま園へ遊びに行こう。会いたい人が沢山いる。話したいことも。あの頃関わりが無かった人とも仲良くなりたい。
辺りがざわめいた。今度は何だろう。皆の視線の先を追うと、なんと豪炎寺のお父さんがグラウンドまで降りてきていた。幻覚なんかじゃなくて、本当に来てくれてたんだ……。
チームを世界に送り出す目的は達成された。この試合をサッカーは辞めるという約束だった。試合を終えた豪炎寺に、何を言うんだろう。
異様な雰囲気に、皆で固唾を飲んで見守る。観客席の夕香ちゃんと家政婦さんも不安そうだ。一瞬だけ、豪炎寺のお父さんと目が合った気がした。
「……しかし、彼らにはまだ、お前の力が必要なようだ」
「!」
「修也、歩いていくがいい。お前は、お前自身の道をな」
そう言って踵を返したお父さんに、豪炎寺が一礼する。分かってくれた。あたし達には豪炎寺が必要だって。認めて貰えた。豪炎寺が進みたい道を……!
「豪炎寺!良かったな!」
「一瞬に、サッカー出来るね!」
「ああ。いよいよ世界だ!」
「おう!」
ついに掴んだ世界への切符。今までがそうでなかったとまでは言わないけど、世界への挑戦もいよいよ本番だ。
世界。……世界かあ。どんな選手が待ってるのかな。まだ見ぬライバル達を思うと心が踊る。どのチームも予選を勝ち抜いて来てるんだから、強敵揃いに違いない。
それからあの手紙。本当に生きてるなら……会えるかもしれない、じいちゃんに。会えたら何を話そう。お母さんにも教えてあげなくちゃ。
沢山の出会いが待ってるだろう世界大会。本当の意味で一つになったこのチームなら、どんなことがあっても乗り越えていける。そう、思った。
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医務室で診てもらった方がいいのに、最後までベンチにいてくれた士郎くん。……本戦、いつからだっけ。間に合うかな。
「美波ちゃん」
「ヒロト……」
「吹雪くんの頑張りもあって、俺達は勝てた。今はそれを喜ぼう」
「……そうだね。いつまでも落ち込んでたら、逆にしろ君に心配かけちゃうよね」
「けっ、仲のいいこった」
「じゃあ明王ちゃんも手振ろうよ、ほらほら」
「触んなバカ美波!」
「バカって何だよバカって!」
「皆の全力で勝ったぞ!行くぞ、世界に!」
『おう!』
「ほら、おーっ!」
「チッ……」
無理矢理拳を持ち上げられて舌打ちしつつも、されるがままになってくれる明王ちゃんは、やっぱりなんだかんだでいい奴だ。
そのまま無言で押し合っていると、晴矢と風介がやってきた。
「あーあ、負けちまった」
「だが全て出しきった。悔いはない」
「晴矢、風介……」
「知ってるか?この試合、俺らが勝ったら美波を引き抜くって話だったんだぜ」
「えっ」
『えーーーっ!!!』
いきなり出てきたとんでもない発言に辺りが騒然となった。え、何それ知らないんだけど!?久遠監督と響木監督は交渉を受けた上で黙ってた……!?
「だ、駄目だ駄目だ駄目だ!絶対駄目だ! 美波はうちのディフェンダーだ!」
「だから勝ったらの話だからもう意味ねーよ」
「美波、お前知ってたのか?」
「全然。今初めて聞いた……」
「まあ、正しくは勝ったらスカウト権を得るだからね。どうするかは美波次第さ」
「そ、そうなんだ」
仮に負けても、あたしはファイアードラゴンとして世界に行けたかもしれないのか。なんだか変な話だ。
でも、スカウトされたとしても、多分断ってたと思う。あたしが一緒に世界一になりたいのはこのチーム、イナズマジャパンだから。とはいえ。
「晴矢や風介と同じチームってのも面白かったかも」
「なっ、美波!……あいつらと一緒にサッカーするのも、ってことだよな?」
「合ってるから落ち着いて一郎太」
せっかく勝ったのに皆がピリピリし始めた。どうしてこうなっちゃったんだ。
「ま、確かにそうだな。ずっと敵対してた訳だし」
「私はどちらでもいいさ。美波とサッカーが出来るのなら」
「またやれるよ、サッカー!何度だって、大会じゃなくたって!今度は味方同士でやれたらいいね」
「……ああ。美波ならそう言うと思っていた。だから私は君が好きなんだ」
「うん……ん!?」
「今の私達には次がある。その時に備えて鍛え直しておくとしよう。友として、ライバルとして、またサッカーをする為に」
差し出された手に応えて握手する。……さっきのは、サッカー選手としてってこと、でいいのだろうか。
あたしが悶々として何も言えないのをいいことに、晴矢と風介はヒロトに向き直った。
「バーン、ガゼル……」
「俺達に勝ったんだ。これですぐ負けたら承知しねーぞ」
「世界で無様な試合をしたら許さないよ、グラン」
それだけ言って、二人は背を向けた。見送るヒロトは何かを言いかけて、迷いがあるのか口を閉じる。
エイリア学園では競い合っていた三人。ライバルと言うには殺伐過ぎた。それが無くなった今、築ける関係は違うものになってるんじゃないか。
言いたいことがあるなら、言った方がいい。軽く背中を押せば驚くヒロトに、頷くあたし。視線を戻したヒロトは声を張り上げた。
「二人の分まで戦ってくるよ。……南雲!涼野!」
「「!」」
二人の足が止まった。振り返った二人は、笑っていた。
「下手なプレーしたら俺が日本代表の座をぶんどってやるからな、基山!」
「ならばその時は私が基山も晴矢も蹴散らしてやろう」
何だと!?と噛みつく晴矢から逃げるように風介が走り出す。風介を追って、晴矢も駆けていく。やがて姿は見えなくなった。
「世界へ行く前に、あいつらとやれて良かったよ」
「ヒロト……うん、良かったね!」
大会が終わったら、お日さま園へ遊びに行こう。会いたい人が沢山いる。話したいことも。あの頃関わりが無かった人とも仲良くなりたい。
辺りがざわめいた。今度は何だろう。皆の視線の先を追うと、なんと豪炎寺のお父さんがグラウンドまで降りてきていた。幻覚なんかじゃなくて、本当に来てくれてたんだ……。
チームを世界に送り出す目的は達成された。この試合をサッカーは辞めるという約束だった。試合を終えた豪炎寺に、何を言うんだろう。
異様な雰囲気に、皆で固唾を飲んで見守る。観客席の夕香ちゃんと家政婦さんも不安そうだ。一瞬だけ、豪炎寺のお父さんと目が合った気がした。
「……しかし、彼らにはまだ、お前の力が必要なようだ」
「!」
「修也、歩いていくがいい。お前は、お前自身の道をな」
そう言って踵を返したお父さんに、豪炎寺が一礼する。分かってくれた。あたし達には豪炎寺が必要だって。認めて貰えた。豪炎寺が進みたい道を……!
「豪炎寺!良かったな!」
「一瞬に、サッカー出来るね!」
「ああ。いよいよ世界だ!」
「おう!」
ついに掴んだ世界への切符。今までがそうでなかったとまでは言わないけど、世界への挑戦もいよいよ本番だ。
世界。……世界かあ。どんな選手が待ってるのかな。まだ見ぬライバル達を思うと心が踊る。どのチームも予選を勝ち抜いて来てるんだから、強敵揃いに違いない。
それからあの手紙。本当に生きてるなら……会えるかもしれない、じいちゃんに。会えたら何を話そう。お母さんにも教えてあげなくちゃ。
沢山の出会いが待ってるだろう世界大会。本当の意味で一つになったこのチームなら、どんなことがあっても乗り越えていける。そう、思った。
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