第1話 トリップしました

二度目のパラシュート無しのスカイダイビング。雲を突っ切った時、勇気のシンボルなイナズママークが見えた。

どうやら言われた通り、ちゃんと雷門中に着く、というか放り出されたようだ。嬉しくない。



「落ちる地点がグラウンドってどういうこと…」

「そもそも雷門中に落とす理由は何よ。誤魔化しやがって」

「ゆみがおこだー。あ、鬼道も一之瀬もいるね。間違いなく千羽山戦以降だな。もう木戸川清修戦は終わったかなー」



かなの分析に頷きつつも、感じる違和感。……そうだ、たったさっき会った佐久間と源田は、入院してなかった。

でも、鬼道が雷門にいるってことは、2人は入院している筈。あたしたちは、ただ場所を移動しているだけじゃないみたいだ。



「…とりあえず。かな、邪魔だからどかして」

「りょーかいっ。お前ら!そこをどけええぇぇえええええっ!!!」


『!?』


「口悪いな」

「どかしたからよくね?」

「硬直してるメンバーが数人いるけど」

「どけよおおおおっ!」

「いや、人が降って来たら硬直するのは当たり前じゃ」



どけと言う方が無茶ぶりだ、とツッコミを入れる前に、ズシャアアァァァアアアという音がした。着地。

だが音がしたのはゆみとかなの所からだけで、あたしの方からはしない。というか足が地面についてないし、衝撃も来ない。

嫌な予感がしつつも、恐る恐る下を見てみると、



「………」



雷門サッカー部のディフェンスの要。色んな方向から人気の美形エースディフェンダー、風丸一郎太さんがいました。

えっ、もしかしてこれ、いやもしかしなくても、あたしが、クッションにしてしまったと……?



「(うっわあああ最悪!よりによって風丸だなんて!)上に乗ってすみませんでした!」



脱兎の如く上から退いて、かなの後ろに隠れた。まともに見られん。とにかく、全国の風丸ファンの皆様ごめんなさい。

かな、「お疲れ(笑)」じゃないから。(笑)じゃないから。全然笑えないから。精神的にきついわ。



「「「では、お騒がせまし」」」


「「待て」」



例によって例の如く引き留められました。あら、本物のシスコンビだー。白いチューリップとゴーグルドレッドマントだー。



「今、空から降ってきたよな」

「何故空から降ってきたんだ?」

「お前らどこから来たんだよ」

「もしかしてスパイか?」

「サッカー好きか?」



豪炎寺、鬼道、染岡、半田の順に、質問が飛んでくる。最後?最後はうん、まあ……。



「今全く関係なさそうな質問が聞こえたような」

「そうなのか?」

「間違いなくお前だろ…」



おお、風丸のツッコミだ。…そんなことより、この露骨に不審な目を向けられるこの状況を、なんとかしないと。



「か、神様(仮)に落とされたから、です」



苦し紛れにかなが言う。確かに事実なんだけれども。おいシスコンビ!携帯取り出すな!通報する気か!



「ちょっと待った!」

「その携帯で警察にかけようとしてるよね!」

「どこから出したんだろう…」

「お前が気になったのはそこかボケ」

「うぎゃっ」



溜まった鬱憤を振り払うように、ゆみのエルボーがかなを襲った。止めろ皆引いてるから。



「ところでさ、お前らサッカー好きか?」



そんな空気をものともせず、我らが主人公様はあたし達にそう問いかけてきた。



「好きだよ!」



真っ先に答えたのはかなだった。満面の笑みを湛えて、ニカッと笑っている。



「……あたしも、」



驚いたことに、ゆみがそれに同意した。…全く、どういう風の吹き回しなんだか。



「お前は?」



円堂の視線があたしに向く。別に、この気持ちを偽る理由もない。



「…好きだよ、サッカー」



その答えを聞いた円堂は、とても嬉しそうに笑い、



「なら、サッカーやろうぜ!」



ごめん、どうしてそうなった?



『えええええ!!!!』



雷門の皆様の大絶叫。流石はは我らがキャプテン、教祖様。思考回路が超次元だ。



「何でそうなるのかが分からないんですが」

「サッカーが好きな奴に、悪い奴はいない!」

「円堂らしいな……」



呆れたような表情の風丸。心中お察し致します。



「ちょっといいか」



そんな中、先程まで思案顔だった鬼道が声をかけてきた。



「帝国学園の源田と佐久間にあったことはあるか?」

「会ったことは一応あるけど…」

「…そうか。ならお前たちの話を俺は信じよう」


『!?』



一同騒然。だって鬼道が一番疑いそうじゃないか。だって鬼道だもの。ゆみが「えっ」と言葉を漏らしながら、問いかける。



「な、何で?」

「2人から聞いたんだ」

「何ぃっ!?」



何故話したし、と思ったが、今にも殴り込みに行きそうなかなを見て落ち着いた。それにしても何で、



「源田と佐久間が鬼道に3人のことを言うの促したの、儂だよ」


『!』


「「「あ、神!」」」



…突然出てくるの、やめてもらえないだろうか。



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