第1話 トリップしました
ということで強制的にエターナルブリザードの練習をさせられたのだが、なんということでしょう。これがなかなか形になってきた。
自分でいうのも難だが、身体能力が高いのは自覚していたものの、必殺技を習得出来るなんて、誰が思うものか。トリップの影響で、体が適応したとか?
「上達はえーな」
「アツヤの教え方が上手いからだよ」
「お、おう」
素直に思った事を言えば、アツヤは照れ臭そうに頬を掻く。ワンマンプレイをしたがる猪突猛進な生意気君だと思ってたけど、案外可愛いところもあるな。
「ところでさ、アツヤは何であたしに教えてくれたの?」
「もしかしたら出来るんじゃねーのかなーって思った」
「なんて単純な」
そんな理由で自分の技を教えていいんかい。
「アツヤが迷惑をかけたね」
「…ああ、入れ替わったのね。大丈夫、楽しかったし」
「そう?」
「吹雪のディフェンスも凄かったね」
「……」
「どうかした?」
「名前」
「は」
「名前で呼んで」
「アツヤだけ狡い」と膨れっ面をする吹雪。こいつ自分の顔の使い方分かってるな…と思いつつも折れて「士郎」と呼んでみれば、嬉しそうに微笑んだ。
りなさん、りなさんと意味もなくあたしの名前を呼ぶ吹雪改め士郎。何故かなつかれたみたいだ。…可愛いし、悪い気はしない。
……これからの"吹雪"ことを考えると、少しだけ辛いとも思う。
その時、
「「隙あり」」
吹雪の顔に雪玉が当たった。犯人はもちろんあたしの妹である。尚、さっきまで雪だるまを作っていた模様。
吹雪は驚きはしたものの、ノリはいいらしく「やったな!」と雪玉を投げ返し始める。
そして雪合戦が始まり、1時間近くやりましたとさ。
「そういえば、これからどうするの?」
「「「あ…」」」
すっかり忘れてた。
一旦吹雪宅に帰って考えてみる。選択肢は2つだ。
1、ここに住まわせてもらう。
2、元の世界に帰る方法を探す旅に出る。
といっても、どちらにせよ帰る方法を探すことに変わりない。
1は吹雪に迷惑をかけるからダメ。2はというと、吹雪に危ないと止められた。頼りになる相棒もいないからなあ。
だからといって、あたし達に住む場所はない。この世界での"知り合い"は、吹雪ただ1人。
住まわせても構わないとは言われても、恩人にどれだけ迷惑をかければ気が済むのか。借りは少ない方がいい。
「どうしよっか……」
「旅に出よう!」
「お前1人で行け!」
「酷い!」
「いつもこんな感じなの?」
「うん」
「面白いね」
…ゆみとかなの掛け合いが、吹雪のどんなツボにハマったのかがいまいち分からん。
それにしてもどうしようか、と4人で考え込んでいた時、
「儂、参上!」
『………』
あ! 野生の 不審者が 現れた!▼
「あれ、目の前に変な人が……」
「仮面ラ◯ダー◯王?」
「かな、それはアウトだ」
「誰?」
あたし、かな、ゆみ、吹雪の順に、それぞれ思ったことを呟く。曰く、自分は神様とのこと。
『………』
……いやあ、ないわ。
「……士郎、電話ある?警察に通報しよう。ほら、不審者が家に現れたって言ってさ」
「そうだね」
「ねえやめよう!儂の立場がなくなるから!そう!実は、3人をトリップさせたのは儂」
「行け、かな」
「アイアイサー!」
ニヤリと笑ったかなが、綺麗な飛び蹴りをかました。そして決めポーズ。申し訳程度にゆみが拍手を送る。
「で、何?今更」
そう言ったゆみの目は、冷めきっている。相当怒ってるな、これは。
「雷門中に送ろうとしたら、間違えて北海道に落としてしまってだね」
「「「あたし達凍死しかけたんですけど」」」
「すみませんでした」
「女の子を雪まみれにして、そのまま放置するなんて……最低だね」
「ちょっと黒いよこの子!恐いよ!」
「土下座をしろ。跪け、跪くんだ!さぁ、早く!」
「かなちょっとストップ」
「ハリセンと鞭、どっちがいいかな」
「ゆみもとりあえず落ち着こうか」
これは情報を聞き出すチャンスなんだから。…吹雪がボールを足元に置いてるのは、気にしないでおこう。
「何であたしたちはトリップしなきゃいけなかったの?」
「そうだな。例えるなら、"くじ引き"かな」
「嫌な例えー」
「何この神様」
「こんな神様嫌だなあ」
「あたしたちが北海道に落とされた理由は?」
「だから、間違えて……なんてね!」
「うわ、誤魔化した」
「バレバレなんだけど。ないわ」
「もう少しマシな誤魔化し方、出来ないのかな」
「ギャラリーが怖い」
口元をひきつらせる神様(仮)。かなが先陣を切って、ゆみが叩き落とし、吹雪がドドメというこの謎コンボよ。
「…あんた、本当に神様?」
「それは君たちの判断に任せるよ。でも、ある意味では、間違いなく神さ」
何だその意味深な発言は、と切り込みたかったけど、やめた。どうせ、話す気は無さそうだ。
あとキャラが意味分からない。コミカルかと思えば真面目なんだから、全く読めない。
「君の作り笑顔も読み難いけどねえ」
「! ………」
…自慢出来る特技ではないものの、表情を作るのは得意だ。なのにバレたということは、つまり、
「…さて、じゃあ行こうか」
「どこに?」
「雷門中だよ!本来ならば行くべき所はそこだ」
胡散臭い身振り手振りに、ゆみの表情が険しくなる。機嫌直すの大変だなこれ。
「雷門中…。今年のフットボールフロンティアで、快進撃をしてる?」
「十中八九、その雷門中だろうね」
「…また会えるよね」
「…会えるんじゃないかなあ」
「そうだ。携帯持ってる?メアドと番号交換しようよ!」
「うん!」
かなの提案を採用して、メアドを交換する。何かあったら連絡をして欲しいという彼は、神様(仮)よりよっぽど神様だ。
吹雪に別れを告げ、3人の視界は真っ白になった。
(…ねえ、本当に3人は雷門中へ行ったの?)
(鋭いね。まあこれは、円滑に事を進める為だよ)
((一体どういうことなんだろう……))
自分でいうのも難だが、身体能力が高いのは自覚していたものの、必殺技を習得出来るなんて、誰が思うものか。トリップの影響で、体が適応したとか?
「上達はえーな」
「アツヤの教え方が上手いからだよ」
「お、おう」
素直に思った事を言えば、アツヤは照れ臭そうに頬を掻く。ワンマンプレイをしたがる猪突猛進な生意気君だと思ってたけど、案外可愛いところもあるな。
「ところでさ、アツヤは何であたしに教えてくれたの?」
「もしかしたら出来るんじゃねーのかなーって思った」
「なんて単純な」
そんな理由で自分の技を教えていいんかい。
「アツヤが迷惑をかけたね」
「…ああ、入れ替わったのね。大丈夫、楽しかったし」
「そう?」
「吹雪のディフェンスも凄かったね」
「……」
「どうかした?」
「名前」
「は」
「名前で呼んで」
「アツヤだけ狡い」と膨れっ面をする吹雪。こいつ自分の顔の使い方分かってるな…と思いつつも折れて「士郎」と呼んでみれば、嬉しそうに微笑んだ。
りなさん、りなさんと意味もなくあたしの名前を呼ぶ吹雪改め士郎。何故かなつかれたみたいだ。…可愛いし、悪い気はしない。
……これからの"吹雪"ことを考えると、少しだけ辛いとも思う。
その時、
「「隙あり」」
吹雪の顔に雪玉が当たった。犯人はもちろんあたしの妹である。尚、さっきまで雪だるまを作っていた模様。
吹雪は驚きはしたものの、ノリはいいらしく「やったな!」と雪玉を投げ返し始める。
そして雪合戦が始まり、1時間近くやりましたとさ。
「そういえば、これからどうするの?」
「「「あ…」」」
すっかり忘れてた。
一旦吹雪宅に帰って考えてみる。選択肢は2つだ。
1、ここに住まわせてもらう。
2、元の世界に帰る方法を探す旅に出る。
といっても、どちらにせよ帰る方法を探すことに変わりない。
1は吹雪に迷惑をかけるからダメ。2はというと、吹雪に危ないと止められた。頼りになる相棒もいないからなあ。
だからといって、あたし達に住む場所はない。この世界での"知り合い"は、吹雪ただ1人。
住まわせても構わないとは言われても、恩人にどれだけ迷惑をかければ気が済むのか。借りは少ない方がいい。
「どうしよっか……」
「旅に出よう!」
「お前1人で行け!」
「酷い!」
「いつもこんな感じなの?」
「うん」
「面白いね」
…ゆみとかなの掛け合いが、吹雪のどんなツボにハマったのかがいまいち分からん。
それにしてもどうしようか、と4人で考え込んでいた時、
「儂、参上!」
『………』
あ! 野生の 不審者が 現れた!▼
「あれ、目の前に変な人が……」
「仮面ラ◯ダー◯王?」
「かな、それはアウトだ」
「誰?」
あたし、かな、ゆみ、吹雪の順に、それぞれ思ったことを呟く。曰く、自分は神様とのこと。
『………』
……いやあ、ないわ。
「……士郎、電話ある?警察に通報しよう。ほら、不審者が家に現れたって言ってさ」
「そうだね」
「ねえやめよう!儂の立場がなくなるから!そう!実は、3人をトリップさせたのは儂」
「行け、かな」
「アイアイサー!」
ニヤリと笑ったかなが、綺麗な飛び蹴りをかました。そして決めポーズ。申し訳程度にゆみが拍手を送る。
「で、何?今更」
そう言ったゆみの目は、冷めきっている。相当怒ってるな、これは。
「雷門中に送ろうとしたら、間違えて北海道に落としてしまってだね」
「「「あたし達凍死しかけたんですけど」」」
「すみませんでした」
「女の子を雪まみれにして、そのまま放置するなんて……最低だね」
「ちょっと黒いよこの子!恐いよ!」
「土下座をしろ。跪け、跪くんだ!さぁ、早く!」
「かなちょっとストップ」
「ハリセンと鞭、どっちがいいかな」
「ゆみもとりあえず落ち着こうか」
これは情報を聞き出すチャンスなんだから。…吹雪がボールを足元に置いてるのは、気にしないでおこう。
「何であたしたちはトリップしなきゃいけなかったの?」
「そうだな。例えるなら、"くじ引き"かな」
「嫌な例えー」
「何この神様」
「こんな神様嫌だなあ」
「あたしたちが北海道に落とされた理由は?」
「だから、間違えて……なんてね!」
「うわ、誤魔化した」
「バレバレなんだけど。ないわ」
「もう少しマシな誤魔化し方、出来ないのかな」
「ギャラリーが怖い」
口元をひきつらせる神様(仮)。かなが先陣を切って、ゆみが叩き落とし、吹雪がドドメというこの謎コンボよ。
「…あんた、本当に神様?」
「それは君たちの判断に任せるよ。でも、ある意味では、間違いなく神さ」
何だその意味深な発言は、と切り込みたかったけど、やめた。どうせ、話す気は無さそうだ。
あとキャラが意味分からない。コミカルかと思えば真面目なんだから、全く読めない。
「君の作り笑顔も読み難いけどねえ」
「! ………」
…自慢出来る特技ではないものの、表情を作るのは得意だ。なのにバレたということは、つまり、
「…さて、じゃあ行こうか」
「どこに?」
「雷門中だよ!本来ならば行くべき所はそこだ」
胡散臭い身振り手振りに、ゆみの表情が険しくなる。機嫌直すの大変だなこれ。
「雷門中…。今年のフットボールフロンティアで、快進撃をしてる?」
「十中八九、その雷門中だろうね」
「…また会えるよね」
「…会えるんじゃないかなあ」
「そうだ。携帯持ってる?メアドと番号交換しようよ!」
「うん!」
かなの提案を採用して、メアドを交換する。何かあったら連絡をして欲しいという彼は、神様(仮)よりよっぽど神様だ。
吹雪に別れを告げ、3人の視界は真っ白になった。
(…ねえ、本当に3人は雷門中へ行ったの?)
(鋭いね。まあこれは、円滑に事を進める為だよ)
((一体どういうことなんだろう……))