第7話 奈良へGO!

試合に勝った。じわじわと込み上げてきた嬉しさに、苦笑する。一度はサッカーを手放したのに、またこうして楽しめるなんて。



「勝ったー!わーいわーい!」

「そうだね。勝ててよかったよ」

「……ゆみがそんなこと言うとは思ってなかった」

「っ、それは……」



皮肉めいた棘のある言葉に、体が強張った。頭の中が真っ白になる。



「あのドリブル技、完全にものにしたな」

「みんなには負けてられないからね」



いつもならフォローをしてくれるりなは風丸と話していて、気づいてない。それとも、あえて介入してこないだけ……?



「かな、あの、」

「なーんてね。ゆみがまたサッカーを楽しいって思えるようになったなら、何よりだよ」

「……本当に、そう思う?」

「うん。またサッカーやれたらなって、思ってたし」



……あの日、あたしはサッカーをやめた。今思えば、理不尽な理由だ。

サッカーは何も悪くなかったのに、当時のあたしは受け入れたくなくて、サッカーを悪者にすることで逃げ出した。

りなとかなに八つ当たりをして、何もかも忘れようとして、話題にもしなくなった頃にトリップした。

そうして今、再びボールを蹴っている。結局、サッカーから離れるなんて、出来なかったんだ。



「なんだって!?」

「っ、!」



周りがザワッとした。辺りを見回すと、みんなが塔子を凝視している。なんだなんだ。



「どうしたの?」

「俺たちがフットボールフロンティアで優勝したチームだと知っていたそうだ」



聞いてなかったのか、とゴーグル越しでも感じる呆れたような視線に目をそらす。考え事してたんだ。許して欲しい。

父親である財前総理を救うため、塔子は強い仲間が欲しかったらしい。そして試合をすることで、実力を測ったと。

……お父さん、か。いいなあ、親子仲がよさそうで。

一緒に戦って欲しいと言う塔子に、もちろんだと円堂が了承して、握手をかわす。

その時、ブウンという音がして、近くにあった多きなモニターにレーゼの姿が写った。

宇宙からやってきた云々、大いなる力を見せる云々。これが演技だっていうんだから、演技力凄すぎる。

野蛮な行為は望まないとか言ってるけど、暴力的なプレイは野蛮な行為、には入らないのか。



「……」

「かな、どうかした?」

「うぇっ、あ……ううん。なんでもないよ、なんでもない……」

「本当に?」

「だから……なんでもないってば」



そう応えるかなは、どこか上の空だった。なんでもないと、自分に言い聞かせている、ような。

何でか聞こうとして……やめた。言わないってことは、例え聞いても教えてはくれいないだろう。


先ほどの映像は、奈良シカTVというテレビ局が発信源のようで、塔子の案内であたしたちはそこへ向かうことに。

屋上には、ジェミニストームがいた。余裕綽々と言った様子のレーゼは、不意に誰かを探すように視線をさまよわせる。

向けられた視線の先には、かながいた。かなもレーゼを見つめている。もしかして、別行動している時に、会ったとか……?

だとしたら、かなの様子にも納得がいく。何エンカウントしてるの。1人で行かせなければよかった。



「後悔したって、仕方ないよ」

「……そうだね」



りながぽつりと呟く。そうだ。今は目の前のことに集中しないと。


2度目の試合。エースストライカーが抜けるきっかけとなる試合が、始まろうとしているのだから。




→あとがき
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