第7話 奈良へGO!
試合開始前、茂みから角馬が飛び出してきた。奈良まで実況しに来たらしい。自転車で。ある意味凄いと思う。
体力というか脚力というか……実況にかける執念が凄い。もう超次元サッカーやればいいんじゃないかな。
「小生、雷門イレブンの試合の実況をすることに、魂をかけておりますので!」
「へえー」
「試合、始まるよ」
「ほーい」
間延びした返事だ。合流してから、かなの様子がおかしいような気がする。何かあったんだろうけど、言い出す気配もない。
そんなこんなで試合開始。相手が大人だから、体力的にも身体的にも差があってキツそうだ。でも、一番の問題はあの3人だ。
風丸、染岡、壁山。入院した半田たちのこともあるし、彼らと比べたら軽症だと出ようとする気持ちもわかる。でも無理は禁物だ。
現に鬼道のゲームメイクが上手くいっていない。シュートは決まらず、攻めきれない。円堂が防いでいるから、点は取られてないけど。
やっぱり出ればよかったんじゃ、そう思ってしまって、苦笑した。
「(あたしたちは、本来ならここに存在するはずのない、イレギュラーな存在なんだ……)」
ダメだな。過ごしているうちに、どうしても情が湧いてくる。言い聞かせないと忘れてしまいそうだ。あたしたちが、異分子なんだと。
これじゃあ、かなのことを批判できやしない。りなが、少なくとも前半は試合に出ないことにしたのは、流れを極力変えないためだろうに。
「秋ちゃん、夏未ちゃん、春奈ちゃん」
「なんですか?」
「アイシングの用意、お願いできる?」
「アイシング?」
「うん。必要なやつが3人いるから」
……変えないため、だよね……?本当に意図がわからない。なんか、中途半端な感じがする。
かなを見ると、アップをしていた。何してるんだお前は。
「監督からの伝言。3人共アップをしておいて、だって」
「……出るの?」
「多分そういうこと」
「……」
「まあまあ、監督の指示だし、ね?」
……監督の指示なら仕方ない、か。そうだ仕方ないんだ。
前半戦が終了し、監督から作戦を言われた。それは風丸、染岡、壁山をベンチに下げ、あたしたちを出すというもの。
それにみんなは反発する。選手交代はいいが、何で11人でやらないんだと。りなが、明後日の方へ視線を向けていた。
「どうしたんだ?」
「いや……監督の作戦は、不満?」
「不満に決まってんだろ!」
「染岡の言う通りだ。なんで俺たちが……」
「あたしたちでは代わりは務まらない?」
「そうじゃない。人数が揃ってるのに、10人で戦うなんておかしいだろ」
「……まあ、そうだよね」
「なあ、何でさっきは10人でやろうって言ったんだ?」
「え、うーん」
あ、風丸に突っ込まれてる。それはそうだろうな。明らかに不自然だったし……。フォローしようにも、思いつかない。
「……なんとなく、じゃダメ?」
「りなって誤魔化すとき、いつもそう言うよな」
「そうだったっけ」
「ああ。なんとなく、だけどな」
ニヤッと得意気に笑った風丸に、肩をすくめるりな。……何だあれ。何なんだあのやり取り。
「まあ怪我の手当てはちゃんとやろうぜってことだよ諸君!」
「いってえ!気づいてたんならわざわざ触んな!」
「てへぺろ」
雰囲気を変えるためか、染岡がかなの犠牲になった。ドンマイだ。
「ってことで、マイエンジェル……間違えた。秋ちゃんたちアイシングよろしくねー」
「かなちゃんたちは、わかってたの?」
「隠してたみたいだけど、なーんか違和感があって」
「それと、鬼道がゲームメイクやりにくそうだったから。だから、いつもと違うやつがいるんじゃないかってね」
誤魔化しつつ選手交代。染岡がいたところにかなが、風丸がいたところにりなが、壁山のいたところにあたしが入る。
「おーっし!サッカーやろうぜ!」
「おう!」
拳を突き上げるかなに、反応する円堂。元気いいな。
試合は防戦一方で、攻められてるけど必死に守る。一見押されているように見えるけれど、全体的に前半より動きがいい。
ベンチを一瞥し、監督を見た鬼道が、口元をつり上げて指示を飛ばす。まあつまり、そういうことだ。
ボールが外に出て、試合が止まる。近くにいたからか、鬼道が話しかけてきた。
「3人を下げた理由、気づいていたのか」
「まあね。例えば染岡は、シュート外してたから」
「……なるほどな。俺もまだまだだ」
「そうでもないよ。あのミスは10人で染岡が逸ってたのもあるし、ベンチから見てたからわかったんだろうし」
いかにも、な嘘を吐く。わかったんじゃない。知ってたんだ。涌いてきた罪悪感に、頭を抱えたくなった。
怪我をしている3人が抜けて鬼道はゲームメイクがやりやすくはなったが、雷門は1人足りない分ハンデがある。
しかも相手は塔子以外は大人。どうしても埋められない差があって、体力の限界も近づいてくる。
残り時間も少ない中、円堂がセキュリティショットをマジン・ザ・ハンドで止めた。最後のチャンス。
ボールは一之瀬に渡って、ザ・フェニックスの体勢に入る。でもそれはフェイントだ。
「鬼道!」
「イリュージョンボール!ゆみ!」
「っし、りな!」
「アイスステップ!かな!」
「行っけえ!豪炎寺!」
ボールを繋いで、前線の豪炎寺へ。跳躍した豪炎寺が、炎を纏った左足を振り抜いた。
「ファイアトルネード!」
シュートが決まる。1ー0で、雷門の勝ちだ。
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体力というか脚力というか……実況にかける執念が凄い。もう超次元サッカーやればいいんじゃないかな。
「小生、雷門イレブンの試合の実況をすることに、魂をかけておりますので!」
「へえー」
「試合、始まるよ」
「ほーい」
間延びした返事だ。合流してから、かなの様子がおかしいような気がする。何かあったんだろうけど、言い出す気配もない。
そんなこんなで試合開始。相手が大人だから、体力的にも身体的にも差があってキツそうだ。でも、一番の問題はあの3人だ。
風丸、染岡、壁山。入院した半田たちのこともあるし、彼らと比べたら軽症だと出ようとする気持ちもわかる。でも無理は禁物だ。
現に鬼道のゲームメイクが上手くいっていない。シュートは決まらず、攻めきれない。円堂が防いでいるから、点は取られてないけど。
やっぱり出ればよかったんじゃ、そう思ってしまって、苦笑した。
「(あたしたちは、本来ならここに存在するはずのない、イレギュラーな存在なんだ……)」
ダメだな。過ごしているうちに、どうしても情が湧いてくる。言い聞かせないと忘れてしまいそうだ。あたしたちが、異分子なんだと。
これじゃあ、かなのことを批判できやしない。りなが、少なくとも前半は試合に出ないことにしたのは、流れを極力変えないためだろうに。
「秋ちゃん、夏未ちゃん、春奈ちゃん」
「なんですか?」
「アイシングの用意、お願いできる?」
「アイシング?」
「うん。必要なやつが3人いるから」
……変えないため、だよね……?本当に意図がわからない。なんか、中途半端な感じがする。
かなを見ると、アップをしていた。何してるんだお前は。
「監督からの伝言。3人共アップをしておいて、だって」
「……出るの?」
「多分そういうこと」
「……」
「まあまあ、監督の指示だし、ね?」
……監督の指示なら仕方ない、か。そうだ仕方ないんだ。
前半戦が終了し、監督から作戦を言われた。それは風丸、染岡、壁山をベンチに下げ、あたしたちを出すというもの。
それにみんなは反発する。選手交代はいいが、何で11人でやらないんだと。りなが、明後日の方へ視線を向けていた。
「どうしたんだ?」
「いや……監督の作戦は、不満?」
「不満に決まってんだろ!」
「染岡の言う通りだ。なんで俺たちが……」
「あたしたちでは代わりは務まらない?」
「そうじゃない。人数が揃ってるのに、10人で戦うなんておかしいだろ」
「……まあ、そうだよね」
「なあ、何でさっきは10人でやろうって言ったんだ?」
「え、うーん」
あ、風丸に突っ込まれてる。それはそうだろうな。明らかに不自然だったし……。フォローしようにも、思いつかない。
「……なんとなく、じゃダメ?」
「りなって誤魔化すとき、いつもそう言うよな」
「そうだったっけ」
「ああ。なんとなく、だけどな」
ニヤッと得意気に笑った風丸に、肩をすくめるりな。……何だあれ。何なんだあのやり取り。
「まあ怪我の手当てはちゃんとやろうぜってことだよ諸君!」
「いってえ!気づいてたんならわざわざ触んな!」
「てへぺろ」
雰囲気を変えるためか、染岡がかなの犠牲になった。ドンマイだ。
「ってことで、マイエンジェル……間違えた。秋ちゃんたちアイシングよろしくねー」
「かなちゃんたちは、わかってたの?」
「隠してたみたいだけど、なーんか違和感があって」
「それと、鬼道がゲームメイクやりにくそうだったから。だから、いつもと違うやつがいるんじゃないかってね」
誤魔化しつつ選手交代。染岡がいたところにかなが、風丸がいたところにりなが、壁山のいたところにあたしが入る。
「おーっし!サッカーやろうぜ!」
「おう!」
拳を突き上げるかなに、反応する円堂。元気いいな。
試合は防戦一方で、攻められてるけど必死に守る。一見押されているように見えるけれど、全体的に前半より動きがいい。
ベンチを一瞥し、監督を見た鬼道が、口元をつり上げて指示を飛ばす。まあつまり、そういうことだ。
ボールが外に出て、試合が止まる。近くにいたからか、鬼道が話しかけてきた。
「3人を下げた理由、気づいていたのか」
「まあね。例えば染岡は、シュート外してたから」
「……なるほどな。俺もまだまだだ」
「そうでもないよ。あのミスは10人で染岡が逸ってたのもあるし、ベンチから見てたからわかったんだろうし」
いかにも、な嘘を吐く。わかったんじゃない。知ってたんだ。涌いてきた罪悪感に、頭を抱えたくなった。
怪我をしている3人が抜けて鬼道はゲームメイクがやりやすくはなったが、雷門は1人足りない分ハンデがある。
しかも相手は塔子以外は大人。どうしても埋められない差があって、体力の限界も近づいてくる。
残り時間も少ない中、円堂がセキュリティショットをマジン・ザ・ハンドで止めた。最後のチャンス。
ボールは一之瀬に渡って、ザ・フェニックスの体勢に入る。でもそれはフェイントだ。
「鬼道!」
「イリュージョンボール!ゆみ!」
「っし、りな!」
「アイスステップ!かな!」
「行っけえ!豪炎寺!」
ボールを繋いで、前線の豪炎寺へ。跳躍した豪炎寺が、炎を纏った左足を振り抜いた。
「ファイアトルネード!」
シュートが決まる。1ー0で、雷門の勝ちだ。
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