第6話 抹茶ソフトの宇宙人

次の日、いつも通りの朝を迎えた。違うといえば、どのテレビのチャンネルでも、エイリア学園の話題で持ちきりなことか。

破壊された学校の映像が流れる。コメンテーターがあることないこと話していて、面倒になってテレビの電源を切った。



「おっはよー」

「おはよう、かな。朝ごはんできてるよ」

「はいはーい。いただきまーす!」

「全く、寝坊して」

「いいじゃん。今日の朝ごはんも洗濯も当番じゃないし」

「手伝え」

「すみませんでした」



ゆみの一言に、かなが頭を下げる。いつも通りのやり取りだ。もう大丈夫……だろうか。

かなはあたしやゆみの言うことの大体はよく聞く。特に、ゆみに対しては。

もしこの世界で過ごすうちに、2人がぶつかることがあれば……、姉として、あたしはどうすればいいだろう。



「ゆみ、お皿下げて」

「うん」

「ごちそうさまー」

「早食いはよくないよ」

「わかってるけど、やっぱり気になってね」

「……そうだね」



机の上に投げ出された新聞に目をやって、かなは言った。一面記事は、もちろんエイリア学園だ。

決勝戦直後とはいえ、フットボールフロンティア優勝校をやすやすと下し、サッカーによる破壊活動を繰り返している。

かくいうあたしたちが、円堂たちほどの怒りを抱かないのは、何が起きるか、エイリアの真相を知っているからだ。

かなの言っていたように、記憶がなければ……、ここまで気が重くなることもなかったのだろうか。

……さて、



「「「行きますか」」」



制服に腕を通して、あたしたちは家を出た。心なしか人通りが少ない。これも、エイリア学園の影響か。

学校に行くと、入院したメンバー以外が勢揃いしていた。誰もがエイリア学園を許すことはできないと、ここに集まったんだ。



「……なんか、やるせないね」

「そうだね。けど、理由はどうであれ、破壊活動をしていい免罪符にはならないよ」

「そりゃそうだけど、知ってるわけだし……」



どうやらかなはエイリア側に感情移入気味みたいだ。あたしたちは雷門である、ってことを忘れてないならいいけども。

そしてやってきた響木監督につれられて、イナビカリ修練場へ。

エレベーターで地下へ降りると、モニターにキーに色々な機械と、いかにも秘密基地、といった様子の空間が広がっていた。

あたしたちを待っていた理事長の言葉を要約すると、欠けたメンバーの埋め合わせのために全国を回り、地上最強イレブン作る、ということだ。

そして響木監督は何か別にやることがあるようで、ついてこないと。監督なしかとざわめくところに、1人の女性が現れた。



「ちょっとがっかりですね、理事長」



凛とした声が、地下理事長室に響く。長い髪を揺らしながら歩いてくる女性。……あたしたちの新しい監督、吉良瞳子監督だ。



「本当にこの子たちに地球の未来を託せるんですか?彼らは一度、エイリア学園に負けているんですよ?」

「だから勝つんです!一度負けたことは次の勝利に繋がるんです!」

「……頼もしいわね。でも私のサッカーは今までとは違うわよ。覚悟しておいて!」



円堂の言葉に、瞳子監督は少しだけ笑みを浮かべて言い放つ。ふと、監督と目があった。何かを見透かすような目に、思わず後退る。

傍にいた風丸に「どうした」と聞かれて、平静を装おって「大丈夫」だと返した。監督はなんで、あたしを見たんだろう。


一旦家に帰ると、いつ呼び出しがかかってもいいように、旅へ出る準備をした。まあ、すぐ呼び出されるんだけれども。



「ついに全国巡りかー。旅行みたい」

「そんなお気楽でいると足元掬われるかもよ」

「何をお」

「はいはい。……あ、呼び出しだね」



再び学校へ向かい、地下へ行く。モニターには、奈良シカ公園という場所が映し出されていた。そして財前総理が拉致されたと。

遅れてやって来た豪炎寺には、どこか元気がない。……奈良で、暫くお別れか。

奈良ですぐにエイリア学園と戦うことになるかもしれない。みんなが表情を引き締める中、かなは浮かない顔だ。

離脱する豪炎寺のこと、エイリアのこと。思うところがあるんだろう。

イナズマキャラバンに、部室の看板。運転手の古株さん。これからよろしくお願いします。



「お前たちはきっと、エイリア学園に勝てる。俺はそう信じているからな」

『はい!』



響木監督と理事長に見送られて、キャラバンが地上へ上がっていく。



「イナズマキャラバン!」


『発進!』



……長い長い、戦いの旅が始まった。





→あとがき
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