第5話 雷門VS世宇子!
ゆっくりと降りてきた世宇子スタジアムは、フロンティアスタジアムの真上?で止まった。え、どういう仕組みだよ。
アニメ見てた時も思ったけど、どうやって入るんだよ、これ。パッと見出入口らしきのは見つからないんだが。
普通のスタジアムにおける出入口に当たる部分は、フロンティアスタジアムのフィールドからじゃないと近づけませんよね?
声に出して言ってみたら、みんな神妙な顔つきになった。どうやら同じことを考えていたようだ。でも、扉は閉まっているわけで。
考えた結果、とりあえず一周してみようと裏手に回ったところで、するするとスロープ……っていうか階段が降りてきた。
ハイテク過ぎるだろ、とツッコミを入れつつ、踏み外さないように上っていく。真っ直ぐ通路を進んでいけば、フィールドに出た。
「決勝当日になって、世宇子スタジアムに変更。……影山の圧力ね。どういうつもりかしら」
冷たさを孕んだ夏未ちゃんの言葉に頷いていれば、頭上に何やら気配を感じた。気づいたらしい円堂が、ハッと上を見る。
「影山!」と上げられた声に、みんなが一斉に見上げる。視線の先には影山がいた。サングラスで表情が見えない。
影山は見上げるあたしたちに気づいたようで、口角を上げ、にたりと見下すような笑みを浮かべた。
心配そうに円堂が豪炎寺を見る。平静を装ってはいるものの、未だ眠り続ける夕香ちゃんを思い出しているのか、握られた拳は震えていた。
そんな中、円堂に向かって「話がある」と切り出したのは、響木監督だ。
「大介さん……お前のお祖父さんの死には、影山が関わっているかもしれない」
みんなが息を呑んだ。
「じいちゃんが、……影山に?」
「ああ」
震え声での問いに、短く返された返事。円堂は肩を震わせ、息を荒げて拳を握り、唇を噛み締める。今にも爆発しそうな感情を、必死に抑えているように見えた。
「何故こんな時に!」と、夏未ちゃんは咎めるような視線を円堂に向ける。想われてますなあ。なんて羨ま……いや今はそんなこと考えてる場合じゃない。
夏未ちゃんの気持ちも分かる。けど、今でなければダメなのだ。
恨みに囚われれば、サッカーを失うことになる。影山への恨みでサッカーをすれば、大好きなサッカーを自分で自分から奪うことになる。
なんて、これはただの受け売りなんだけど。影山を前にして、いつものプレイが出来るのか。知り得ない筈の、響木監督の目的だ。
豪炎寺が円堂の肩に手を置く。豪炎寺だって影山が憎いだろうに、その感情をセーブしている。円堂は大きく息を吐き、豪炎寺を見つめ返した。
円堂、円堂くん、キャプテン、とみんなが励ますように口々に呼ぶ。勿論、
「「「円堂!」」」
あたしも、りなも、ゆみもだ。ハモったのはご愛嬌。
「……こんなに、俺を思ってくれる仲間。みんなに出会えたのは、サッカーのおかげなんだ。
影山は憎い。けど、そんな気持ちでサッカーしたくない。
サッカーは楽しくて、面白くて、わくわくする。1つのボールにみんなが熱い気持ちをぶつける、最高のスポーツなんだ!
だからこの試合も、俺はいつもの、俺たちのサッカーをする。みんなと優勝を目指す!」
一拍置いて我らがキャプテンが言うのは、
「サッカーが好きだから!」
満場一致の、気持ちだ。
「さあ、試合の準備だ!」
「はいっ!」
監督に促されて、控え室へと走る。
みんなの体はすり傷だらけのアザだらけだ。いい体してんな……って、だから違うだろうがあたし。
ペンダントを誓うように握り締め、ユニフォームの内側に仕舞う豪炎寺を円堂が見つめている。
そんな円堂もユニフォームを着て、バッグからグローブを取り出した。その動きが止まる。
どうしたのかとバッグを覗いてみると、もう1つ、年期の入って古びたグローブが入っていた。ああ、そういう。
「円堂、そのグローブは?」
「ああ、これさ、じいちゃんのグローブなんだ。じいちゃん、決勝戦に来れなかったから。じいちゃん、見ててくれよ……!」
強く意気込む円堂。もう大丈夫そうだ。とはいえ、やはり決勝戦となると緊張はするもので、みんなの表情が固い。
慣れてそうな鬼道や豪炎寺だって、難しい表情だ。ここに来るまで色々あって、様々な思いが交錯してるもんね。……うーん。
「……決勝戦勝ったら、アフロディのことハゲにしてやろうかな」
『!?』
お、皆さんびっくりしてらっしゃる。
「いやハゲってあんたねえ」
「なんだよゆみさんその顔は」
「ゆみじゃなくてもそんな顔すんだろ」
「おお、ツンデレ染岡がゆみを名前呼びしてる!」
「いやそうしろって言ったのお前らだろ!大体同じ名字が3人で紛らわしいんだよ!」
「やだなあ染さん、それは木戸川も同じじゃん。不服だけど」
「そ……はあ!?」
「別にハゲじゃなくてアフロでもいいのよ。アフロディだけに」
「いやそういう問題じゃ」
「なんか……気ぃ抜けた……」
「はっはっは」
呆れた様子の半田にガッツポーズをする。1年ズも、少しは解れたかな。
ニヤニヤしてたら、豪炎寺に肩ポンされた。振り向けば、優しい笑顔。意図がバレていた模様。
ゾワッと鳥肌が立ちかけたが、反対側からりなが肩ポンしたことにより、収まった。
「あ、半田ってばまた靴紐ほどけてる」
「え」
.
アニメ見てた時も思ったけど、どうやって入るんだよ、これ。パッと見出入口らしきのは見つからないんだが。
普通のスタジアムにおける出入口に当たる部分は、フロンティアスタジアムのフィールドからじゃないと近づけませんよね?
声に出して言ってみたら、みんな神妙な顔つきになった。どうやら同じことを考えていたようだ。でも、扉は閉まっているわけで。
考えた結果、とりあえず一周してみようと裏手に回ったところで、するするとスロープ……っていうか階段が降りてきた。
ハイテク過ぎるだろ、とツッコミを入れつつ、踏み外さないように上っていく。真っ直ぐ通路を進んでいけば、フィールドに出た。
「決勝当日になって、世宇子スタジアムに変更。……影山の圧力ね。どういうつもりかしら」
冷たさを孕んだ夏未ちゃんの言葉に頷いていれば、頭上に何やら気配を感じた。気づいたらしい円堂が、ハッと上を見る。
「影山!」と上げられた声に、みんなが一斉に見上げる。視線の先には影山がいた。サングラスで表情が見えない。
影山は見上げるあたしたちに気づいたようで、口角を上げ、にたりと見下すような笑みを浮かべた。
心配そうに円堂が豪炎寺を見る。平静を装ってはいるものの、未だ眠り続ける夕香ちゃんを思い出しているのか、握られた拳は震えていた。
そんな中、円堂に向かって「話がある」と切り出したのは、響木監督だ。
「大介さん……お前のお祖父さんの死には、影山が関わっているかもしれない」
みんなが息を呑んだ。
「じいちゃんが、……影山に?」
「ああ」
震え声での問いに、短く返された返事。円堂は肩を震わせ、息を荒げて拳を握り、唇を噛み締める。今にも爆発しそうな感情を、必死に抑えているように見えた。
「何故こんな時に!」と、夏未ちゃんは咎めるような視線を円堂に向ける。想われてますなあ。なんて羨ま……いや今はそんなこと考えてる場合じゃない。
夏未ちゃんの気持ちも分かる。けど、今でなければダメなのだ。
恨みに囚われれば、サッカーを失うことになる。影山への恨みでサッカーをすれば、大好きなサッカーを自分で自分から奪うことになる。
なんて、これはただの受け売りなんだけど。影山を前にして、いつものプレイが出来るのか。知り得ない筈の、響木監督の目的だ。
豪炎寺が円堂の肩に手を置く。豪炎寺だって影山が憎いだろうに、その感情をセーブしている。円堂は大きく息を吐き、豪炎寺を見つめ返した。
円堂、円堂くん、キャプテン、とみんなが励ますように口々に呼ぶ。勿論、
「「「円堂!」」」
あたしも、りなも、ゆみもだ。ハモったのはご愛嬌。
「……こんなに、俺を思ってくれる仲間。みんなに出会えたのは、サッカーのおかげなんだ。
影山は憎い。けど、そんな気持ちでサッカーしたくない。
サッカーは楽しくて、面白くて、わくわくする。1つのボールにみんなが熱い気持ちをぶつける、最高のスポーツなんだ!
だからこの試合も、俺はいつもの、俺たちのサッカーをする。みんなと優勝を目指す!」
一拍置いて我らがキャプテンが言うのは、
「サッカーが好きだから!」
満場一致の、気持ちだ。
「さあ、試合の準備だ!」
「はいっ!」
監督に促されて、控え室へと走る。
みんなの体はすり傷だらけのアザだらけだ。いい体してんな……って、だから違うだろうがあたし。
ペンダントを誓うように握り締め、ユニフォームの内側に仕舞う豪炎寺を円堂が見つめている。
そんな円堂もユニフォームを着て、バッグからグローブを取り出した。その動きが止まる。
どうしたのかとバッグを覗いてみると、もう1つ、年期の入って古びたグローブが入っていた。ああ、そういう。
「円堂、そのグローブは?」
「ああ、これさ、じいちゃんのグローブなんだ。じいちゃん、決勝戦に来れなかったから。じいちゃん、見ててくれよ……!」
強く意気込む円堂。もう大丈夫そうだ。とはいえ、やはり決勝戦となると緊張はするもので、みんなの表情が固い。
慣れてそうな鬼道や豪炎寺だって、難しい表情だ。ここに来るまで色々あって、様々な思いが交錯してるもんね。……うーん。
「……決勝戦勝ったら、アフロディのことハゲにしてやろうかな」
『!?』
お、皆さんびっくりしてらっしゃる。
「いやハゲってあんたねえ」
「なんだよゆみさんその顔は」
「ゆみじゃなくてもそんな顔すんだろ」
「おお、ツンデレ染岡がゆみを名前呼びしてる!」
「いやそうしろって言ったのお前らだろ!大体同じ名字が3人で紛らわしいんだよ!」
「やだなあ染さん、それは木戸川も同じじゃん。不服だけど」
「そ……はあ!?」
「別にハゲじゃなくてアフロでもいいのよ。アフロディだけに」
「いやそういう問題じゃ」
「なんか……気ぃ抜けた……」
「はっはっは」
呆れた様子の半田にガッツポーズをする。1年ズも、少しは解れたかな。
ニヤニヤしてたら、豪炎寺に肩ポンされた。振り向けば、優しい笑顔。意図がバレていた模様。
ゾワッと鳥肌が立ちかけたが、反対側からりなが肩ポンしたことにより、収まった。
「あ、半田ってばまた靴紐ほどけてる」
「え」
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