第4話 合宿だあああっ!

校舎内へ突撃。人影を見た教室前廊下の両端から詰めていく。



「あの中だな」

「うん」



そろそろと近づいていき、目配せをしたところで一気にドアを開け放った。



「諦めろ!逃げても無駄だ!」



教室内を見回すも、しん、と静まり返っていて、人の気配はしなかった。逃がしたかと首を捻っていると、一之瀬が走り出した。



「いたぞ!こっちだ!」

「貸してくれ!」

「ええッ」



宍戸から枕をかっ拐った円堂が、一之瀬を追う。ある程度走ったところで蹴り飛ばされた哀れな枕は、人影に直撃し、転倒させた。

「マイ枕ァーーー!」と叫びながら枕へ駆け寄る宍戸をスルーし(気遣ってやれよ)、円堂は人影に近づいた。

が、その人影は影山の手下どころか円堂たちの目標である、嘗てのイナズマイレブンのメンバーであるマスターであった。

音を聞いてやってきたのは、備流田さん、髪村さん、会田さんとこれまたイナズマイレブンのおじさんたち。



「えーと、知り合い?」

「ああ。40年前のイナズマイレブンのおじさんたち」

「へえ。この人たちが……」



風丸の返答に、りなと一之瀬が関心したように頷いている。まあ、知ってはいたんだけどね。

そして一旦戻ろうと響木監督の元へ行くと、「やっぱりお前らだったのか」「えっ、知ってたんですか!?」監督が気づいてた件な。

一方かなはというと、「そういやそうだったな」とぼやいていた。こっちに来てから色々あったとはいえ、記憶力大丈夫か。

夕飯のカレーを食べながら聞いてみると、おじさんたちは、菅田先生から合宿のことを聞いて、"アレ"を持ってきて驚かそうとしたらしい。

「あれ?」と円堂が復唱すると、おじさんたちはまるでいたずらっ子のように笑ってみせた。






イナビカリ修練所の部屋の1つに鎮座する、よく分からない特訓マシン。一見、サッカーの練習に使うもののようには見えない。

というかどうやって運んだんだこれ。解体して一から組み立てたのか?ご苦労様です。



「何ですか?これ」

「俺たちが40年前に作った、マジン・ザ・ハンド養成マシンだ」

「えっ、養成マシン?」

「そんなもんがあったのか」



会田さんが言うには、マジン・ザ・ハンドのポイントはヘソと尻の使い方。それをマスターする為に作ったそうだ。

毎晩会田さんの家に集まって、合宿としていたとか。みんな懐かしそうに、目を細めている。



「で、完成したんですか?」

「いや、ダメだった」

「だっ……ダメ、だったんですか」



脱力した半田が転ける。それでも惜しいところまではいったそうで、もしかしたら、ということだ。



「早速やってみようぜ!いいですよね、監督!」

「これを使っても完成させられる保証は無いぞ」

「はい!」

「……いいだろう」



なにはともあれ特訓開始。右足と左足で、交互に丸を踏みながら端まで行くようだ。動かすのは人力なんだけど、



「か、固い」



長年放置されていたからか、ハンドルはすっかり固くなっていた。予め用意してあった油をさして調整し、そこからはとにかくハンドルを回す。



「もっと低く!臍に力を入れて!」


「はい!……うわっ」


「もう一度だ!」


「はい!」



マジン・ザ・ハンド養成マシンというだけあって、難易度は高い。障害物に当たるのも、地味に痛そうだ。



「あれ、あたしもやってみたい!んで一発でクリアしてみせたい!」

「一発ってナメ過ぎ。ていうかあんたフォワードでしょ」



面白そうだとは思うけどね。



「円堂。少しくらい休憩したら?」

「……そうだな。休憩するか」

「染岡、回すの代わるよ」

「結構力いるぞ」

「これでも力はあるから、ね?」

「豪炎寺、あたしも代わるよ」

「じゃあ、あたしは鬼道のとこに入るよ」

「すまない。だが大丈夫か……?」

「これくらいなら全然大丈夫さ!平気の平気!ゆみなんか片手で回せると思うよ。腕力バカだから」

「片手って……しかも腕力バカって……」



驚いたような視線に晒される。いやいやいや、



「握力バカに言われたくはなかった」

「腕力に握力か……。じゃありなはなんなんだ?」

「「体力バカ」」

「やめて」



りなが真顔だった。別に変なこと話した訳ではないよね?



「ところで俺とは誰も代わってくれないのか……」

「か、代わるっス!」

「ダメだよ一之瀬。後輩に強制させちゃ」

「そんなつもりじゃないってば」



秋ちゃんや春奈も手伝うと声を上げて、みんなの闘志も上がる。そんな中、「俺はバカだ」と円堂が言った。何を今更。



「何やってんだ、俺は。こんな仲間が居たのに、マジン・ザ・ハンドが出来ないからって1人で焦って。俺は世界一の大バカ者だ!」

「円堂君……」

「頼むぜ、みんな!俺、絶対完成させてみせるから!」



そんなの、頼まれなくたって、いくらでもやってやるさ。



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