第4話 合宿だあああっ!
夕飯作りは順調に進んで、あとは煮込むだけだ。そん中、つんつん、と先程から壁山がしきりに半田の背中をつついている。
さして気にしてはいなかったものの痺れを切らしたようで、「なんだよさっきから」と不機嫌そうに振り向いた。
「だから、トイレ……」
「トイレ?だったら行けばいいだろ」
「ひ、1人でですか?」
「は?1人でって当たり前……」
「だ、だって、お化けとか出たら!」
「おば……ってお前いくつだよ!そんなお化けなんてな!」
「……あの~」
「で、出たーーー!!!」
「出たっすーーー!!!」
……一応言っておくと、声をかけたのは影野である。長い髪と相まって、勘違いされてしまったようだ。
俺で良かった付き合う、との申し出に、お化けでなかったことに小さく息を吐く壁山。いやほっとするのはいいけどさ、
「い、いいから、早く降りろ……」
驚いた拍子に、壁山を持ち上げるという火事場の馬鹿力を発揮した半田が、今にも潰れそうになっていた。
キーパー用のマシンの餌食になったりと、なにかと今日の半田は不幸というか不運なような。
「あたしも行こうか?」
「いいんすか!」
「あたしの仕事は終わったからね」
そうやって微笑むゆみ。相変わらずな、後輩への甘やかしっぷりだなあ……。
「大丈夫っすか……何も出ないっすか……?」
「大丈夫だから、ね?」
「ゆゆゆ、ゆみさん。肩、掴んでていいっすか?」
「お好きにどうぞ」
遠慮なくあたしの肩は掴まれた。力が入ってしまったいるのか、ちょっと痛いけど、これくらいなら我慢しよう。
夜の学校は何かと不気味だ。明かりも手持ちの懐中電灯しかない。……先生に頼んで、電気を点ければ良かった。今更だけど。
「ゆみさんは怖くないんだね」
「まあね。かながお化けとかダメでね、そういうの見る度にオーバーに反応するから、逆に冷静になれるようになったんだ」
「ふうん。かなさんは暗いところダメなんだ……」
「うん。お化けに付随してアウトになった」
かなは寝るとき必ず豆電球を点けるようにしている。消すと飛び起きて、ぎゃんぎゃん叫ぶもんだから、相当なトラウマという。
トラウマというと、これ以上のがあるんだよなあ。小学校低学年時代に……って、これ今関係ないことか。
「影野は逆に好きそうだね」
「落ち着くからね……。でも俺、目立ちたいんだ」
「その身なりなら、そこそこ目立ちそうだと思うんだけどね」
なんせ顔が隠れる程の前髪に長髪だ。色素は薄いし、ドレッドゴーグルマントを筆頭に凄いのがいるけど、影野もなかなか……まああの中じゃ普通めか。
とはいえ前言撤回するわけにもいかないので、黙る。影野はというと「俺、目立ててるんだ……!」と喜んでいた。今度アイス奢ろう。
その時、何かの足音がして、あたしに張り付くように歩いていた壁山が身震いした。
「壁山?」
「どうかした……?」
「いえ、気のせいみたいっす」
壁山が影野に向き直る。必然的に、あたしは影野の方へ向くことに。影野が背を向けている教室のドアの窓に、人影が映った。ん?
「出たっすぅぅうううっ!!!」
「ぐ、かべ、く、首がっ!影野、ごめん、1人で戻ってきて……」
……あたしの声は、聞こえただろうか。
3人を待ちつつ配膳準備をしていると、絶叫しながら猛スピードで壁山が走ってきた。首根っこを掴まれたゆみが死にかけている。
あ、かながすっ飛んでって救出した。「死ぬなあーーー!」「死んでないから」「イヤーーー!」「演技やめろ」あっはい大丈夫だそうだ。もういいや。
「ででででで、出たっすよおおおお!」
「出たって何が?」
壁山が言うには、3組の教室に出たのだと。えーと、イナズマイレブンのおじさんたち、だったっけ?
「何言ってるんですか!そんなお化けみたいな非科学的なものがこの世に……!」
「確かに誰かいた」
『えっ!?』
壁山の後ろからぬらりと現れた影野に、目金は気絶してしまった。メンタル弱いな。
「影野の言う通り、誰かいたね。でも、少なくともお化けじゃない」
「ああ。誰か大人の人がいたんだ」
ゆみも同調する。でも、この場には監督も、夏未ちゃんのお付きの場寅さんも、生活指導の菅田先生もいる。
この学校にいる筈の大人は、この3人だけなのだから、おかしい。
「もしかしたら、影山の手下じゃないか?決勝戦前に事故を起こして、相手チームが出られないようにするのは、影山の手だ」
「あり得るでやんす」
「よーし行くぞ、みんな!そいつを捕まえて、正体を暴くんだ!」
『おーっ!』
「夏未さん。火、お願い!」
「わ、分かったわ!」
「壁山。どうする?」
「むむむむりっすよゆみさん!」
どうやら壁山はここに残るようだ。
「あたしもここにいるよ!夏未ちゃんと一緒に火、見てるから!」
「かな……」
それ、分かってても暗いの怖いだけだよね。
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さして気にしてはいなかったものの痺れを切らしたようで、「なんだよさっきから」と不機嫌そうに振り向いた。
「だから、トイレ……」
「トイレ?だったら行けばいいだろ」
「ひ、1人でですか?」
「は?1人でって当たり前……」
「だ、だって、お化けとか出たら!」
「おば……ってお前いくつだよ!そんなお化けなんてな!」
「……あの~」
「で、出たーーー!!!」
「出たっすーーー!!!」
……一応言っておくと、声をかけたのは影野である。長い髪と相まって、勘違いされてしまったようだ。
俺で良かった付き合う、との申し出に、お化けでなかったことに小さく息を吐く壁山。いやほっとするのはいいけどさ、
「い、いいから、早く降りろ……」
驚いた拍子に、壁山を持ち上げるという火事場の馬鹿力を発揮した半田が、今にも潰れそうになっていた。
キーパー用のマシンの餌食になったりと、なにかと今日の半田は不幸というか不運なような。
「あたしも行こうか?」
「いいんすか!」
「あたしの仕事は終わったからね」
そうやって微笑むゆみ。相変わらずな、後輩への甘やかしっぷりだなあ……。
「大丈夫っすか……何も出ないっすか……?」
「大丈夫だから、ね?」
「ゆゆゆ、ゆみさん。肩、掴んでていいっすか?」
「お好きにどうぞ」
遠慮なくあたしの肩は掴まれた。力が入ってしまったいるのか、ちょっと痛いけど、これくらいなら我慢しよう。
夜の学校は何かと不気味だ。明かりも手持ちの懐中電灯しかない。……先生に頼んで、電気を点ければ良かった。今更だけど。
「ゆみさんは怖くないんだね」
「まあね。かながお化けとかダメでね、そういうの見る度にオーバーに反応するから、逆に冷静になれるようになったんだ」
「ふうん。かなさんは暗いところダメなんだ……」
「うん。お化けに付随してアウトになった」
かなは寝るとき必ず豆電球を点けるようにしている。消すと飛び起きて、ぎゃんぎゃん叫ぶもんだから、相当なトラウマという。
トラウマというと、これ以上のがあるんだよなあ。小学校低学年時代に……って、これ今関係ないことか。
「影野は逆に好きそうだね」
「落ち着くからね……。でも俺、目立ちたいんだ」
「その身なりなら、そこそこ目立ちそうだと思うんだけどね」
なんせ顔が隠れる程の前髪に長髪だ。色素は薄いし、ドレッドゴーグルマントを筆頭に凄いのがいるけど、影野もなかなか……まああの中じゃ普通めか。
とはいえ前言撤回するわけにもいかないので、黙る。影野はというと「俺、目立ててるんだ……!」と喜んでいた。今度アイス奢ろう。
その時、何かの足音がして、あたしに張り付くように歩いていた壁山が身震いした。
「壁山?」
「どうかした……?」
「いえ、気のせいみたいっす」
壁山が影野に向き直る。必然的に、あたしは影野の方へ向くことに。影野が背を向けている教室のドアの窓に、人影が映った。ん?
「出たっすぅぅうううっ!!!」
「ぐ、かべ、く、首がっ!影野、ごめん、1人で戻ってきて……」
……あたしの声は、聞こえただろうか。
3人を待ちつつ配膳準備をしていると、絶叫しながら猛スピードで壁山が走ってきた。首根っこを掴まれたゆみが死にかけている。
あ、かながすっ飛んでって救出した。「死ぬなあーーー!」「死んでないから」「イヤーーー!」「演技やめろ」あっはい大丈夫だそうだ。もういいや。
「ででででで、出たっすよおおおお!」
「出たって何が?」
壁山が言うには、3組の教室に出たのだと。えーと、イナズマイレブンのおじさんたち、だったっけ?
「何言ってるんですか!そんなお化けみたいな非科学的なものがこの世に……!」
「確かに誰かいた」
『えっ!?』
壁山の後ろからぬらりと現れた影野に、目金は気絶してしまった。メンタル弱いな。
「影野の言う通り、誰かいたね。でも、少なくともお化けじゃない」
「ああ。誰か大人の人がいたんだ」
ゆみも同調する。でも、この場には監督も、夏未ちゃんのお付きの場寅さんも、生活指導の菅田先生もいる。
この学校にいる筈の大人は、この3人だけなのだから、おかしい。
「もしかしたら、影山の手下じゃないか?決勝戦前に事故を起こして、相手チームが出られないようにするのは、影山の手だ」
「あり得るでやんす」
「よーし行くぞ、みんな!そいつを捕まえて、正体を暴くんだ!」
『おーっ!』
「夏未さん。火、お願い!」
「わ、分かったわ!」
「壁山。どうする?」
「むむむむりっすよゆみさん!」
どうやら壁山はここに残るようだ。
「あたしもここにいるよ!夏未ちゃんと一緒に火、見てるから!」
「かな……」
それ、分かってても暗いの怖いだけだよね。
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