第4話 合宿だあああっ!
「やあ。大変だね」
「あんたが影山に流したんだな。やれ、かな」
「ラジャー」
突然現れた神様(仮)に、かなは腹いせ混じりの飛び蹴りを食らわせた。そいつ、一応神様だからね。一応。
「で、何で情報流したの。よりによって影山に。面倒事起きそうじゃん」
「関わらないルートも選べた筈なのに、関わることを選んだのは君たちじゃないか」
「……」
……否定は出来なかった。
あの時円堂の誘いを断れば、空から落ちてきた奇妙な転校生基クラスメイトとその場に居合わせた俺たち、という関係で終わっていただろう。
いや終わっていた、と断定するのはよくないか。まあ、顔見知り程度にはなっていた可能性は高い。
サッカー部に入ろうと決断したのは、紛れもなくあたしたち自身だ。あたし個人として、後悔をしていないのかというと、嘘になる。
あたしたちがいることで、栗松の代わりにゆみが試合に出た。本来ならなかった筈の攻めをされた。僅かなズレかもしれないけど、嬉しさと同時に恐怖を味わった。
「……何の為にあたしたちはトリップしたの?」
「それは今は言えない。何れ、時が来たら教えるよ」
そう言って神様(仮)は消えた。何だよ、時が来たらって。何を隠してるんだ。そもそも何しに来たんだ。
……とりあえず、シャワーに一番乗りさせてもらおう。
体育館に行くと、既に大半が集まっていて、布団を敷いたりしていた。その布団どこから……え?雷門中の備品?あ、そうですか……。
手伝いもそこそこに、かなは枕(持参)を掲げて、嬉々とした様子で声を張り上げた。
「やっぱ合宿と言えばこれでしょ!枕投げしようぜ!」
『賛成っ!』
壁山、栗松、少林寺、春奈ちゃんが手を上げる。ゆみも控えめに手を上げた。お前もやるんかい。
「花咲かな選手。第一球振りかぶってー……投げましたあ!」
「花咲ゆみ選手蹴り返したー」
「ぶふぉわあ!」
それなりのスピードで投げられた枕を、ゆみが蹴り返す。その枕は見事にかなの顔面に命中した。
春奈ちゃんの拍手に「どーもどーも」と気が抜けた返事をするゆみ。表情を見るに、満更でもなさそうだ。
「じゃあ2チームに分かれようぜ!壁山、少林、行くよ!」
「はい!」
「はいっす!」
「春奈、栗松。かなに集中砲火するよ」
「はいっ」
「はいでやんす!」
「ちょっと待って何かおかしぶふっ」
「敵を打つっす!」
「とりゃあ!」
……楽しそうで何よりだ。お、円堂も来たか。
「円堂」
「あ、りな。これ……」
顰めっ面をした円堂が、体育館内を見回す。
「ちょっとみんなやめなさいってば!枕投げに来たんじゃないのよ!」
「やったでやんすな!え~い、え~い!」
「くっそ!やった、な……」
「お前らなあ……!」
「ひいー!ごめんなさい!」
「こら待てこら!」
「キャー!」
「だから言ったのに…」
枕投げの方では、一之瀬、土門と談笑していた染岡の後頭部に当ててしまい、追いかけ回されている。ゆみはちゃっかり回避。
宍戸は愛用している低反発枕について半田に話していて、松野は寝る時用の限定品だとカラフルなキャップを影野に見せている。
目金に至っては、自分の部屋よろしくフィギュアを並べていた。
「お前ら、何しに来たんだ……」
キャプテンの呆れ声は、届かず。
全員が集まり、一通り準備を終えたところで、夕飯作りだ。
「すごーい!豪炎寺先輩って料理も出来るんですね!」
「よく妹に作ってやってたからな」
「見てみて春奈ちゃんあたしも出来るよ!しかもピーラーじゃなくて包丁で皮向き!」
「おおっ!凄いテクニックですね!」
「へっへーん、どうよ」
「俺だってそれくらいは出来る」
「……」
「……」
「勝負だ」
「いいだろう」
……何をしているんだ。かなも豪炎寺も、そんなスピードで皮剥きして、手を怪我したらどうすんの。
「あ、じゃがいもこれくらいの大きさでいいかな?」
「いいんじゃね?」
そんなあたしは土門、少林寺とじゃがいもを切っている。玉ねぎは別として、流れ作業だ。
「ダメですよ先輩!ちゃんと角落とさなきゃ、じゃないと荷崩れするんですから!」
「いいだろ、別に…」
「ダメです!いくら先輩でも、それだけは譲れません!」
きゃんきゃんと抗議する少林寺に、疲れたような土門。拘りあるなあ。
「ここは先輩らしく、妥協してあげなよ」
「ええー……」
「りなはどっちの味方なんだよ」
「どちらかというと後輩」
「……」
結局、土門が折れましたとさ。
「うう……染みるで、やんす……。やっぱりそれやると、涙が出ないでやんすかね?」
「まあな」
「じゃあ、あたしたちも付けようか」
玉ねぎはやはり強敵ならしい。鬼道はゴーグルのおかげで平気なようで、それを真似してみんなも付けていた。
いつものみんなが戻ってきたものの、肝心の円堂は、料理に加わらずノートをじっと読んでいる。
「難しいなあ…」
.
「あんたが影山に流したんだな。やれ、かな」
「ラジャー」
突然現れた神様(仮)に、かなは腹いせ混じりの飛び蹴りを食らわせた。そいつ、一応神様だからね。一応。
「で、何で情報流したの。よりによって影山に。面倒事起きそうじゃん」
「関わらないルートも選べた筈なのに、関わることを選んだのは君たちじゃないか」
「……」
……否定は出来なかった。
あの時円堂の誘いを断れば、空から落ちてきた奇妙な転校生基クラスメイトとその場に居合わせた俺たち、という関係で終わっていただろう。
いや終わっていた、と断定するのはよくないか。まあ、顔見知り程度にはなっていた可能性は高い。
サッカー部に入ろうと決断したのは、紛れもなくあたしたち自身だ。あたし個人として、後悔をしていないのかというと、嘘になる。
あたしたちがいることで、栗松の代わりにゆみが試合に出た。本来ならなかった筈の攻めをされた。僅かなズレかもしれないけど、嬉しさと同時に恐怖を味わった。
「……何の為にあたしたちはトリップしたの?」
「それは今は言えない。何れ、時が来たら教えるよ」
そう言って神様(仮)は消えた。何だよ、時が来たらって。何を隠してるんだ。そもそも何しに来たんだ。
……とりあえず、シャワーに一番乗りさせてもらおう。
体育館に行くと、既に大半が集まっていて、布団を敷いたりしていた。その布団どこから……え?雷門中の備品?あ、そうですか……。
手伝いもそこそこに、かなは枕(持参)を掲げて、嬉々とした様子で声を張り上げた。
「やっぱ合宿と言えばこれでしょ!枕投げしようぜ!」
『賛成っ!』
壁山、栗松、少林寺、春奈ちゃんが手を上げる。ゆみも控えめに手を上げた。お前もやるんかい。
「花咲かな選手。第一球振りかぶってー……投げましたあ!」
「花咲ゆみ選手蹴り返したー」
「ぶふぉわあ!」
それなりのスピードで投げられた枕を、ゆみが蹴り返す。その枕は見事にかなの顔面に命中した。
春奈ちゃんの拍手に「どーもどーも」と気が抜けた返事をするゆみ。表情を見るに、満更でもなさそうだ。
「じゃあ2チームに分かれようぜ!壁山、少林、行くよ!」
「はい!」
「はいっす!」
「春奈、栗松。かなに集中砲火するよ」
「はいっ」
「はいでやんす!」
「ちょっと待って何かおかしぶふっ」
「敵を打つっす!」
「とりゃあ!」
……楽しそうで何よりだ。お、円堂も来たか。
「円堂」
「あ、りな。これ……」
顰めっ面をした円堂が、体育館内を見回す。
「ちょっとみんなやめなさいってば!枕投げに来たんじゃないのよ!」
「やったでやんすな!え~い、え~い!」
「くっそ!やった、な……」
「お前らなあ……!」
「ひいー!ごめんなさい!」
「こら待てこら!」
「キャー!」
「だから言ったのに…」
枕投げの方では、一之瀬、土門と談笑していた染岡の後頭部に当ててしまい、追いかけ回されている。ゆみはちゃっかり回避。
宍戸は愛用している低反発枕について半田に話していて、松野は寝る時用の限定品だとカラフルなキャップを影野に見せている。
目金に至っては、自分の部屋よろしくフィギュアを並べていた。
「お前ら、何しに来たんだ……」
キャプテンの呆れ声は、届かず。
全員が集まり、一通り準備を終えたところで、夕飯作りだ。
「すごーい!豪炎寺先輩って料理も出来るんですね!」
「よく妹に作ってやってたからな」
「見てみて春奈ちゃんあたしも出来るよ!しかもピーラーじゃなくて包丁で皮向き!」
「おおっ!凄いテクニックですね!」
「へっへーん、どうよ」
「俺だってそれくらいは出来る」
「……」
「……」
「勝負だ」
「いいだろう」
……何をしているんだ。かなも豪炎寺も、そんなスピードで皮剥きして、手を怪我したらどうすんの。
「あ、じゃがいもこれくらいの大きさでいいかな?」
「いいんじゃね?」
そんなあたしは土門、少林寺とじゃがいもを切っている。玉ねぎは別として、流れ作業だ。
「ダメですよ先輩!ちゃんと角落とさなきゃ、じゃないと荷崩れするんですから!」
「いいだろ、別に…」
「ダメです!いくら先輩でも、それだけは譲れません!」
きゃんきゃんと抗議する少林寺に、疲れたような土門。拘りあるなあ。
「ここは先輩らしく、妥協してあげなよ」
「ええー……」
「りなはどっちの味方なんだよ」
「どちらかというと後輩」
「……」
結局、土門が折れましたとさ。
「うう……染みるで、やんす……。やっぱりそれやると、涙が出ないでやんすかね?」
「まあな」
「じゃあ、あたしたちも付けようか」
玉ねぎはやはり強敵ならしい。鬼道はゴーグルのおかげで平気なようで、それを真似してみんなも付けていた。
いつものみんなが戻ってきたものの、肝心の円堂は、料理に加わらずノートをじっと読んでいる。
「難しいなあ…」
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