第3話 三つ子と神(笑)と
そんなこんなで次の日になった。
「決勝戦に少しずづ近づいてるって感じだね」
「そうだね。みんながフルボッコにされるのを見るのは辛いだろうけど、きっと勝てるよ」
「そりゃあ、勝てなきゃ困るというか。楽観的だな、りなは」
「そんなことないよ。あたしたちがいる時点で、あたしたちの知ってるイナズマイレブンじゃない訳だし、何が起こるか分からない。
それでも、円堂たちならどんな困難でも乗り越えられる。そんな感じしない?少なくともあたしは、トリップしてから改めてそう思ったよ」
「まあ、そうだね。円堂だし」
よく太陽と称される円堂だけど、全くもってその通りだ。転んでも立ち止まっても、その手で引っ張り上げて、一緒に走ってくれる。
円堂のおかげで、またサッカーが好きになれそうだ。…あたしも円堂に引っ張り上げられた人間の1人ってか。
「アーフロアーフロ」
「やめろかな」
何故にやつをアフロにしたがる。名字はそうだけど。寧ろアフロなのは三期の彼だ。
今日の練習が終わり、部室で各々が着替える中、円堂はユニフォームの上にジャージを羽織り、鞄を肩に掛けて出ていった。
「あれ、円堂?」
「恐らく鉄塔広場だろうな」
「ああ…成る程ね。1人で特訓するつもりだと」
納得。そんな鬼道も着替える素振りは見せないし、示し合わせたように豪炎寺もジャージだ。
それに気づいたりなとかなも、いそいそとジャージを着ている。野次馬する気か。さて、どうしたものか。
「……」
机に積んであった真新しいタオルを拝借し、鞄に突っ込む。つまりは、そういうことだ。
ちなみに言うと、あたしたちも部室で着替えさせてもらっている。自称早着替えのプロですどうも。最初はびびられたけど。
鉄塔広場に行くと、円堂はタイヤを使い、いつものように特訓をしていた。
「こんなことだと思ったよ」
「それでマジン・ザ・ハンドがマスター出来るのか」
「…とにかく、俺にはこれしか無いからさ」
ぱしん、とタイヤを軽く叩いた円堂に、鬼道と豪炎寺は顔を見合わせると、僅かに笑った。
「手伝おう」
「本当!?」
「サッカーバカになってみるか」
「世宇子に勝つ秘訣になるかもしれない」
「2人共元々サッカーバカの癖にぃ」
「それはかなもだろう?」
「まあね。あたしも付き合うよ!」
「ありがとな!」
「おうともよ!」
「りなはどうする?」
「あたしはタイヤ揺らす係でもやろうかな。ゆみは荷物番でもしてて」
「ええ…何でよ」
「なんとなく」
出たよ、りなのなんとなく。まあ正直疲れてるし、荷物を預かり、ベンチに座って特訓しているのを眺める。
木にタイヤを3つ吊るして、揺らす。その間を抜けるように、鬼道、豪炎寺、かながシュートを打った。
そんなコントロールが必要になってくる程のことを、かなが出来るのかと思ったけど、これが案外出来てて驚いた。
そういや、新しい必殺技作りたいとかぼやいてたな。気が早いような気がしなくもなかったけど、これは負けてはいられない。
「あ」
秋ちゃんと夏未ちゃんが来た。心配で、様子を見に来たらしい。無茶な特訓に、絶句している。
「体がボロボロになるわ!今すぐやめなさい!」
「まだまだ!諦めてたまるか!」
「無駄だよ」
「やめろと言ってやめるような男か?」
「絶対マジン・ザ・ハンドを覚えて、決勝戦を戦い抜くんだ!みんなで優勝したいじゃないか!続けるぞ!」
円堂の気迫に秋ちゃんは押し黙り、夏未ちゃんは唇を噛み締めた。
「どうしたの?見守ろうって言ったの、夏未さんなのに…。やっぱり、何かあった?」
「ううん、そうじゃないんだけど。ただ円堂君が心配で…」
「今まで、いっぱい無茶して強くなってきたじゃない。信じようよ」
「ええ…」
「円堂のこと本当に好きだね、お二人さんは」
「「なっ」」
照れたように顔を赤らめる秋ちゃんと夏未ちゃん。あ、かなが反応してこっちちらちら見てる。お前の女の子センサーどうなってんの。
それにしても、無茶苦茶な特訓だ。ボールだけじゃない。ボールが当たったタイヤが跳ねて、不用意に飛んでくる。反応しきてれいない。
擦り傷はどんどん増えていき、ついには、
「ファイアトルネード!」
「うわあぁっ!」
「あっ」
頭に直撃し、ぶっ倒れてしまった。ぶちぶちと音を立てながら、タイヤを吊るしていた縄も切れたし、どんだけ強力なシュートだったんだ。
疲れがどっと出てしまったのか、円堂が倒れ込み、慌てて駆け寄る。あー、ぐったりしてらっしゃる。
「ここからなら雷雷軒が近いし、氷を貰って手当てしよう」
「それがよさそうだな」
りなの提案に一同が同意し、鬼道と豪炎寺が円堂を若干引き摺るように肩を貸し、あたしたちは荷物を持った。
そのまま急いで雷雷軒へ。
「監督!氷を下さい!」
「派手にやっちゃって……」
乱暴に扉を開けながら飛び込んできたあたしたちに、響木監督は苦笑した。営業中にすみません。
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「決勝戦に少しずづ近づいてるって感じだね」
「そうだね。みんながフルボッコにされるのを見るのは辛いだろうけど、きっと勝てるよ」
「そりゃあ、勝てなきゃ困るというか。楽観的だな、りなは」
「そんなことないよ。あたしたちがいる時点で、あたしたちの知ってるイナズマイレブンじゃない訳だし、何が起こるか分からない。
それでも、円堂たちならどんな困難でも乗り越えられる。そんな感じしない?少なくともあたしは、トリップしてから改めてそう思ったよ」
「まあ、そうだね。円堂だし」
よく太陽と称される円堂だけど、全くもってその通りだ。転んでも立ち止まっても、その手で引っ張り上げて、一緒に走ってくれる。
円堂のおかげで、またサッカーが好きになれそうだ。…あたしも円堂に引っ張り上げられた人間の1人ってか。
「アーフロアーフロ」
「やめろかな」
何故にやつをアフロにしたがる。名字はそうだけど。寧ろアフロなのは三期の彼だ。
今日の練習が終わり、部室で各々が着替える中、円堂はユニフォームの上にジャージを羽織り、鞄を肩に掛けて出ていった。
「あれ、円堂?」
「恐らく鉄塔広場だろうな」
「ああ…成る程ね。1人で特訓するつもりだと」
納得。そんな鬼道も着替える素振りは見せないし、示し合わせたように豪炎寺もジャージだ。
それに気づいたりなとかなも、いそいそとジャージを着ている。野次馬する気か。さて、どうしたものか。
「……」
机に積んであった真新しいタオルを拝借し、鞄に突っ込む。つまりは、そういうことだ。
ちなみに言うと、あたしたちも部室で着替えさせてもらっている。自称早着替えのプロですどうも。最初はびびられたけど。
鉄塔広場に行くと、円堂はタイヤを使い、いつものように特訓をしていた。
「こんなことだと思ったよ」
「それでマジン・ザ・ハンドがマスター出来るのか」
「…とにかく、俺にはこれしか無いからさ」
ぱしん、とタイヤを軽く叩いた円堂に、鬼道と豪炎寺は顔を見合わせると、僅かに笑った。
「手伝おう」
「本当!?」
「サッカーバカになってみるか」
「世宇子に勝つ秘訣になるかもしれない」
「2人共元々サッカーバカの癖にぃ」
「それはかなもだろう?」
「まあね。あたしも付き合うよ!」
「ありがとな!」
「おうともよ!」
「りなはどうする?」
「あたしはタイヤ揺らす係でもやろうかな。ゆみは荷物番でもしてて」
「ええ…何でよ」
「なんとなく」
出たよ、りなのなんとなく。まあ正直疲れてるし、荷物を預かり、ベンチに座って特訓しているのを眺める。
木にタイヤを3つ吊るして、揺らす。その間を抜けるように、鬼道、豪炎寺、かながシュートを打った。
そんなコントロールが必要になってくる程のことを、かなが出来るのかと思ったけど、これが案外出来てて驚いた。
そういや、新しい必殺技作りたいとかぼやいてたな。気が早いような気がしなくもなかったけど、これは負けてはいられない。
「あ」
秋ちゃんと夏未ちゃんが来た。心配で、様子を見に来たらしい。無茶な特訓に、絶句している。
「体がボロボロになるわ!今すぐやめなさい!」
「まだまだ!諦めてたまるか!」
「無駄だよ」
「やめろと言ってやめるような男か?」
「絶対マジン・ザ・ハンドを覚えて、決勝戦を戦い抜くんだ!みんなで優勝したいじゃないか!続けるぞ!」
円堂の気迫に秋ちゃんは押し黙り、夏未ちゃんは唇を噛み締めた。
「どうしたの?見守ろうって言ったの、夏未さんなのに…。やっぱり、何かあった?」
「ううん、そうじゃないんだけど。ただ円堂君が心配で…」
「今まで、いっぱい無茶して強くなってきたじゃない。信じようよ」
「ええ…」
「円堂のこと本当に好きだね、お二人さんは」
「「なっ」」
照れたように顔を赤らめる秋ちゃんと夏未ちゃん。あ、かなが反応してこっちちらちら見てる。お前の女の子センサーどうなってんの。
それにしても、無茶苦茶な特訓だ。ボールだけじゃない。ボールが当たったタイヤが跳ねて、不用意に飛んでくる。反応しきてれいない。
擦り傷はどんどん増えていき、ついには、
「ファイアトルネード!」
「うわあぁっ!」
「あっ」
頭に直撃し、ぶっ倒れてしまった。ぶちぶちと音を立てながら、タイヤを吊るしていた縄も切れたし、どんだけ強力なシュートだったんだ。
疲れがどっと出てしまったのか、円堂が倒れ込み、慌てて駆け寄る。あー、ぐったりしてらっしゃる。
「ここからなら雷雷軒が近いし、氷を貰って手当てしよう」
「それがよさそうだな」
りなの提案に一同が同意し、鬼道と豪炎寺が円堂を若干引き摺るように肩を貸し、あたしたちは荷物を持った。
そのまま急いで雷雷軒へ。
「監督!氷を下さい!」
「派手にやっちゃって……」
乱暴に扉を開けながら飛び込んできたあたしたちに、響木監督は苦笑した。営業中にすみません。
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