第2話 転入、練習、そして試合

後半戦開始。早々、三兄弟が攻撃を仕掛けてきた。

そろそろ見せてやる、と言っているところをみると、あの必殺技を使うということだろう。



「来るよ!」



いち早く察知したゆみが、振り向いて円堂を仰ぐ。迫る三兄弟に、円堂は軽く腰を落として、構えた。



「「「トライアングルZ!!!」」」


「ゴッドハンド!」



すかさずゴッドハンドを出すものの、押し切られる形で神の手は砕け散り、シュートはゴールに入った。

三兄弟が雄叫びをあげた。ワンマンプレー…いや3人だから正確には違うけど、あんなやり方でも強いのがムカつく。

実力がある故の自信と慢心なんだろうけれどもね!それはそうとイラッとくる。……あたしも煽り耐性ないな。人のこと言えないや。



「円堂……大丈夫?」

「ああ…」



苦々しげに右手を見つめ、顔を上げる。痛めてはいないようだけど、ちょっと心配だ。

十八番のゴッドハンドを破られても尚、その目からは闘志は消えない。寧ろ、燃え上がっているようにも見えた。



「(凄いなあ)」



諦めることを知らないって感じだ。あたしも、そんなやつでいたかった。



「お前たちの好きにはさせない」



豪炎寺は円堂が吹っ飛ばされて怒ってるんですね分かります。美味しいで……りなの視線が痛い。



「ゴッドハンドが破られるなんて…」

「それくらい強いシュートってことだね」

「監督、どうしたらいいんですか?」



春奈ちゃんの問いに、監督は答えない。つまるところ、



「今はみんなを……円堂くんを信じましょう」



夏未ちゃんの言う通りだ。






「マックス!一之瀬!コースを塞げ!」



的確な指示が飛んで、努は勝にパスを出す。そこに鬼道が鋭いスライディングを仕掛けた。

それを見た勝は、鬼道のスライディングをかわすように、ギリギリのタイミングでノーマルシュートを打った。

もちろん円堂は、証明からがっちりと押さえ込んだ。ゆみが挑発してたけど、なんだかんだいって実力はあるんだよね。



「行くぞ!トライペガサスだ!」


「「おう!」」



もう一度と上がっていくものの、西垣のスピニングカットで3人は吹き飛ばされ、ボールは外に出た。

西垣は一之瀬たちのアメリカ時代の幼馴染みで、共にトライペガサスを完成させた。だから、防ぎ方も知っている。



「ペガサスの羽が折れたな」


「厨二……」

「おい」



ゆみの呟きに、鬼道がツッコミを入れた。だってペガサスの羽が折れたって。確かに発動を阻止されたわけだけども、ね?痛々しいよね。

あたしもそう思ってたし、思考回路が似てるんだな。うん。まあみんな中学二年生だから!そういうお年頃だからね!



「く……トライペガサスがとめられるなんて」

「焦るな、円堂。…俺が必ずゴールを決める!」



それはエースストライカーの、フォワードの意地か、プライドか。






雷門陣内まで戻ってきていた豪炎寺がカットし、そのまま木戸川清修陣内へ持ち込んだ。

マークを外した染岡がパスを受け取り、ダイレクトに打ち出す。



「「ドラゴントルネード!」」


「タフネスブロック!」



だが距離があった為か、ギリギリのところで弾かれる。おしい。その時、跳ね上がったボールに、豪炎寺が食いついた。



「ファイアトルネード!」



が叩き込まれた。完全に隙を突いたシュートはゴールに突き刺さる。これで2-2、同点だ。



「豪炎寺!ナイスシュート!」


「……!」



見事に有言実行をしたエースストライカー様にベンチから声をかけると、フッとドヤ顔をされた。くそ、無駄に決まってる。






同点という現状。先にもう1点取った方が勝ちなのは、ほぼ確実だ。クロスドライブにハリケーンアローと、攻防が続く。

一進一退での攻防が続いていて、試合は膠着状態になりつつあった。



「時間は?」

「あーっ!もう残って無いです!」

「まじでか」



……そういや、試合前の回で、この試合はカウンター主体でどうこう鬼道が言ってたような。

実際それが逆転に繋がるのだから、あえて打たせる……のは不安要素が多すぎるか。こんなことは、知ってるから考えられることだ。

時間は刻々と過ぎていく。このままだと、延長までいくかもしれない。

あたしが知識として持ってる中では延長なんてない。でも、起こりうる可能性は十分にある。

だって……、



「あ」



三兄弟が、抜けた。



「延長なんて必要ないっしょ!」


「「「俺たちは負けない!」」」


「絶対に!」

「俺たちが!」

「勝つんだ!」


『!』


「「「トライアングルZ!」」」


「うおおおっ、ゴッドハンド!」



ゴッドハンドで迎え撃った円堂は、じりじりと後ろに押されていく。左手でも押さえるが、それでも、まだ足りない。



「このゴールを許したら、チームみんなの想いが途切れてしまう!だから俺は、絶対に止めてみせる!ゴールを背負うっていうのはそういうことなんだ!」


「……壁山、行くぞ。援護だ!」

「は、はいっす!」



飛び出したゆみと壁山が、円堂の背中を支える。ああ、そういえばそうだった。



「2人共……。……うおおおっ!」



一拍置いて、円堂の手の中にはボールが収まっていた。



「よっしゃあ!」

「やったね!」

「やったーっ!」


「やった!やったよりな!」

「はいはい。分かったから揺らさないの」

「すまぬ」



知ってはいた。分かっていた。それでも、みんなの成長が見える瞬間っていうのは、嬉しいもんだ。

まだ出会って四日目だけどな!



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