第2話 転入、練習、そして試合
「あたし、雷雷軒行ってみたかったんですけどそれは」
「まあまあ。行ったときにはゆみの分払うから。それよりさ、やっぱ試合出たいじゃん!」
「唐突過ぎる」
「だってサッカー楽しいし、みんなが頑張ってる中ベンチだなんて」
「ま、それでもいいんじゃない?出れるか分からないし、ベンチウォーマーとして活躍出来ればそれで」
ゆみさん冷めてらっしゃる。練習は良くて試合に出るのはダメなんですかね。なるほど分からん。
「ポジションはどうするんだ」
「あー……」
淡々とした様子の鬼道に、ゆみがそうだったと息を吐く。ポジション、ねえ…。
「俺は3人ともフォワードがいいと思うんだ!」
「「「それは嫌だ」」」
円堂の提案を拒否すると、思いっきりハモった。わあ、流石三つ子。
「あんなに凄いシュート打てるのにか?」
「三つ子でポジションがフォワードとかさ」
「どこぞのサングラス3兄弟と」
「思いっきり被っちゃってるんだよねぇ」
「「「だから嫌だ」」」
りな、ゆみ、あたしの順番で言って、最後はまたもやハモる。抜群のコンビネーション!
まあ別に理由はそれだけじゃない。あたしはともかく、りなとゆみはフォワードよりピッタリのポジションがある。
「……一応、前サッカーやってた時あたしはディフェンダーだったから、それでいこうと思う」
「じゃああたしはミッドフィルダーだな。かなはフォワードだったよね」
「そだよ。じゃ、それでやりますか!」
「そうか。随分本格的にやっていたようだな」
何やら考え込んでいる鬼道。天才の考えることは分からんな。
「誰かに教えてもらってたのか?」
「…。あたしたち6歳年の離れた兄がいるんだけど、兄はサッカーやってたんだ。で、教えてもらった」
「まあ、小6の時までの話だけどね。色々あって、それから全然やってなかったから」
「約2年のブランクであそこまで出来るなら、上出来だろう」
鬼道が言うのは昨日のことだろう。正確には5年なんだが。流れでとはいえ、それより前に吹雪と軽くサッカーしていて良かった。
「へー!俺も会ってみたいな!」
円堂がそう言った時、ゆみが凍りついた。……あーもー。
「(めんどくせ)」
ったく、元カレに未練たらたらな女かってんだ(彼氏いたことないし身近に彼氏いた子いないけど)。
りなはというと、全然連絡取ってない、とか、音信不通状態でどこに居るかも分からない、と誤魔化していた。
円堂は残念そうなものの、諦めてくれた模様。良かった。
とにかく、無事ポジションが決まった訳だ。……うん、ところで、
「そういえばGO園児くんよ」
「豪炎寺だ」
「わざとだ」
「……」
「すんませんでした!」
何とも言えない表情を、我らがエースストライカー様に向けられました。イケメンはどんな表情でも様になるなくそ。
「…で、何なんだ」
「やっぱ必殺技って覚えなきゃならないんですかね」
「まあ、あった方がいいんじゃないか」
「あたし死ぬかも」
「勝手に死ぬ宣言やめて」
ゆみは真顔でした、まる。いやだってだって、足から火が出て、人が凍って、地中からペンギン召喚する世界なんだもの。
あっ、でもりなはエターナルブリザード出来そうだったんだから、あたしたちにも出来るか。という希望的観測ね。
とりあえずシュート練習をすることになったあたしは、円堂に向かってシュートを打つことになりました。
「おりゃあっ!」
渾身の力を籠めて打ってみたところ、…なんということでしょう。あたしの打ったシュートは星を纏ってゴールへ飛びました。うそん。
「出来ちゃった…!?」
円堂、唖然。豪炎寺と染岡も驚いていて、攻守の確認をしていたディフェンダー、ミッドフィルダー陣もギョッとしておられます。
そんでもって試しに同じようにりなとゆみが蹴ると、同じようなシュートがゴール出ました。自分で言うのも難だが三つ子って何。何なの。
「3人ともすっげーなっ!」
「わー、ありがとう円堂。ほんとすげーなー」
「ちょ、ゆみしっかり!」
「目が死んでるね」
「超次元にも程があるだろ……」
ゆみの言うこともごもっともだ。
「あ、そういや準決勝っていつ?」
「明後日だ」
「へえ、明後日か……。……マジかよ」
んで部活は終了した。残らず帰るメンバーがほとんどのようで、その大半は雷雷軒に寄っていくらしい。
「3人も行くか?案内するよ」
「そうだね。せっかくだから…、」
「ちょっとストップ!あたしらは用事あるんでまた今度!」
「は…、かな?」
「ではまた明日!」
「あ、ああ」
戸惑っている風丸は特に気にせず、りなとゆみの腕を掴んで走る。ゆみから抗議を受けたけど、スルー。
行き先は河川敷。到着してグラウンドを見てみると、今日はちびっこたちはいないみたいだ。
「とにかく必殺技だ!ならば……河川敷で特訓じゃーーーっ!」
「ならばの使い方違うと思う」
りなに冷静にツッコまれた。無理矢理使ったんだもの。
「あたしはシュート技、りなはドリブル技、ゆみはディフェンス技を明後日までに作るぞー!おー!」
「出来る訳が無い」
「じゃああたしは何なんだよって」
「りなだから」
「適当だなあ」
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