第2話 転入、練習、そして試合
「早く起きんかこのバカがっ!」
「ぎゃあああああ!!!」
「朝っぱら煩いよ2人共ー」
大抵が騒がしい朝で始まる花咲家の三姉妹。そして今日は、雷門中に転入する日である。
「転入テストとかあるのかな?」
難しい表情をしながらりなが言った。まああるならそれはそれで面倒だけど、中身は高校生だし問題ないでしょ。
とか、あたし――花咲かなは味噌汁を啜りながら考えてたらゆみ曰く、
「神(仮)が色々してくれたらしい」
だそうだ。手元には何やら書いてある紙。最早何でもありだ。あーはいはい、超次元ですね分かります!
その紙は封筒に入っていたらしく、その中にはカードも同封されていた。何だこれは。
とにかく、朝ごはんを食べ終えたあたしたちは、雷門中に向けて家を出た。
職員室に行って、担任に入るクラスへ案内される。りなもゆみも別のクラスだけど、三つ子だし仕方ないよね。
そもそも3人同時に入れる程空きのあるクラスなんて、そうそうないだろうし。
ガラッとドアを開けて教室に入る。軽く教室内を見回すと、バンダナに白チューリップにヘアピン美少女がいました。
「(円堂と豪炎寺と秋ちゃんと同じクラス!)」
昨日知り合ったばかりとはいえ、顔見知りがいると分かってちょっとだけ安心した。
その後軽く自己紹介をし、席に着く。
授業のときは隣の席のモブキャラE男君に教科書を見せてもらい、休み時間は転入生お約束ともいえる質問攻め。
お昼を食べて、午後の授業をこなす。正直、中学の授業は簡単だなと思った。高校生の頭脳万歳。
そして放課後、円堂と一緒にりなとゆみを待っていると、暫くして2人が顔を出した。
「あ、来たな!」
「待たせてごめんね」
「疲れた……」
「お疲れー。2人は誰か一緒のやついた?」
「あたしは風丸と半田と松野と一緒だったよ」
「鬼道と一之瀬がいた」
「へー」
とまあ、そんな談笑をしている暇はない。パンッと手を打ち鳴らした円堂が、「じゃあ、グラウンド行くぞ!」と言った。
いささか気が早いんじゃなかろうか。まだ入部届を出していないのですがそれは。と、りなが聞くと、
「俺が出しといたぞ!3人の分の入部届け!」
おいこら勝手に何をしているんですかキャプテン!判子どうした判子!え?貸してもらった?誰に!ああアイツですかね!
りなは苦笑してるし、ゆみは「円堂字汚いじゃん。変な勘違いされたらどうすんだって」そこじゃなくね?
「じゃ、行くぞ!」
「おわっ」
腕を掴まれ、軽く引きずられた状態で廊下を駆け出した。りなもゆみも笑ってないで助けてよ!
校舎を出ると、正面のグラウンドでは既に練習が始まっていた。沢山練習したいだろうに、付き合わせてしまって円堂に申し訳なく思う。
部室に入ると、円堂から雷門の黄色と青の新品のユニフォームを渡された。あたしは背番号17、りなは18、ゆみは19だ。
「おおお!凄いな!」
「そうか?」
「いやー」
なんてったって、画面越しにずっと見ていたユニフォームだ。これを実際に着れるなんてさ!
「……あのさ、円堂」
「何だ?」
「本当に選手として入っていいの?女子なのに。大会とかには出られないだろうし」
「いいって!あんなに出来るのに、選手にならないなんてもったいないよ!」
心配そうなりなに、円堂が笑いながら返す。我らがキャプテン様が言うなら、問題ないさ。
せっかくイナズマイレブンの世界に来たんだから、どうせならサッカーやりたいし。
あれだ。練習の時は混じってサッカーして、公式試合の時はマネージャーちゃんたちの手伝いを……手伝い3人もいらないか。
とにもかくにもグラウンドに出ると、ボールを蹴るのを止めたみんなが出迎えてくれた。
改めて自己紹介する中、どことなくぎこちなさを感じる表情の奴もちらほら。やっぱ女子が選手ってのは抵抗あるか。
だからといって、
「俺は女子が選手なんて認めねーからな」
ストレートに噛みついてくるのはやめよーぜ染岡さんよ。流石にお姉さんもイラッとしちゃうぜ。
「そーめおかっ!」
「何だよ」
「はい!握手!」
「は……」
「はい!」
「いや」
「はい!!!」
「お、おお……」
しつこく言って勢いに押された染岡が手を握った瞬間、あたしは手を思い切り握り締めた。染岡氏、声にならない悲鳴をあげる。
口元をひきつらせた鬼道が「大丈夫か……?」と声をかければ、「……痛ぇ」とのこと。はっはっはー。
「あたしの左手が唸るぜいたあ!」
「何をやってるんだお前は」
ギリギリとゆみに足を踏まれる。地味に痛いのですが。りなは苦笑いだ。
「かなの握力、右は50だっけ?」
「はあ!?」
「そうだよ。これでも手加減したんだから」
「どこがだよ」
「だってあたし左利きだもん。左の方は60kgだし。ナメんなよ!」
ふんっと鼻を鳴らす。ドヤ顔をしてみせれば、染岡に頭をわしわしとやられた。ムカついたけど、不器用な謝罪として受け取っておく。
「凄いな」と呟いた豪炎寺に「まーね」とピースサインを送る。握力はあたしの取り柄の1つだ。
脚力だって、流石の豪炎寺には敵わないだろうけど、そこらの男子よりかはあると自負しているし、自信はある。
「りなたちは?」
「普通に標準だよ……一之瀬くん?」
「くんは付けなくていいよ」
「うん」
……フレンドリーなのは嬉しいけど、りなとの距離ちょっと近いぞお前。
.
「ぎゃあああああ!!!」
「朝っぱら煩いよ2人共ー」
大抵が騒がしい朝で始まる花咲家の三姉妹。そして今日は、雷門中に転入する日である。
「転入テストとかあるのかな?」
難しい表情をしながらりなが言った。まああるならそれはそれで面倒だけど、中身は高校生だし問題ないでしょ。
とか、あたし――花咲かなは味噌汁を啜りながら考えてたらゆみ曰く、
「神(仮)が色々してくれたらしい」
だそうだ。手元には何やら書いてある紙。最早何でもありだ。あーはいはい、超次元ですね分かります!
その紙は封筒に入っていたらしく、その中にはカードも同封されていた。何だこれは。
とにかく、朝ごはんを食べ終えたあたしたちは、雷門中に向けて家を出た。
職員室に行って、担任に入るクラスへ案内される。りなもゆみも別のクラスだけど、三つ子だし仕方ないよね。
そもそも3人同時に入れる程空きのあるクラスなんて、そうそうないだろうし。
ガラッとドアを開けて教室に入る。軽く教室内を見回すと、バンダナに白チューリップにヘアピン美少女がいました。
「(円堂と豪炎寺と秋ちゃんと同じクラス!)」
昨日知り合ったばかりとはいえ、顔見知りがいると分かってちょっとだけ安心した。
その後軽く自己紹介をし、席に着く。
授業のときは隣の席のモブキャラE男君に教科書を見せてもらい、休み時間は転入生お約束ともいえる質問攻め。
お昼を食べて、午後の授業をこなす。正直、中学の授業は簡単だなと思った。高校生の頭脳万歳。
そして放課後、円堂と一緒にりなとゆみを待っていると、暫くして2人が顔を出した。
「あ、来たな!」
「待たせてごめんね」
「疲れた……」
「お疲れー。2人は誰か一緒のやついた?」
「あたしは風丸と半田と松野と一緒だったよ」
「鬼道と一之瀬がいた」
「へー」
とまあ、そんな談笑をしている暇はない。パンッと手を打ち鳴らした円堂が、「じゃあ、グラウンド行くぞ!」と言った。
いささか気が早いんじゃなかろうか。まだ入部届を出していないのですがそれは。と、りなが聞くと、
「俺が出しといたぞ!3人の分の入部届け!」
おいこら勝手に何をしているんですかキャプテン!判子どうした判子!え?貸してもらった?誰に!ああアイツですかね!
りなは苦笑してるし、ゆみは「円堂字汚いじゃん。変な勘違いされたらどうすんだって」そこじゃなくね?
「じゃ、行くぞ!」
「おわっ」
腕を掴まれ、軽く引きずられた状態で廊下を駆け出した。りなもゆみも笑ってないで助けてよ!
校舎を出ると、正面のグラウンドでは既に練習が始まっていた。沢山練習したいだろうに、付き合わせてしまって円堂に申し訳なく思う。
部室に入ると、円堂から雷門の黄色と青の新品のユニフォームを渡された。あたしは背番号17、りなは18、ゆみは19だ。
「おおお!凄いな!」
「そうか?」
「いやー」
なんてったって、画面越しにずっと見ていたユニフォームだ。これを実際に着れるなんてさ!
「……あのさ、円堂」
「何だ?」
「本当に選手として入っていいの?女子なのに。大会とかには出られないだろうし」
「いいって!あんなに出来るのに、選手にならないなんてもったいないよ!」
心配そうなりなに、円堂が笑いながら返す。我らがキャプテン様が言うなら、問題ないさ。
せっかくイナズマイレブンの世界に来たんだから、どうせならサッカーやりたいし。
あれだ。練習の時は混じってサッカーして、公式試合の時はマネージャーちゃんたちの手伝いを……手伝い3人もいらないか。
とにもかくにもグラウンドに出ると、ボールを蹴るのを止めたみんなが出迎えてくれた。
改めて自己紹介する中、どことなくぎこちなさを感じる表情の奴もちらほら。やっぱ女子が選手ってのは抵抗あるか。
だからといって、
「俺は女子が選手なんて認めねーからな」
ストレートに噛みついてくるのはやめよーぜ染岡さんよ。流石にお姉さんもイラッとしちゃうぜ。
「そーめおかっ!」
「何だよ」
「はい!握手!」
「は……」
「はい!」
「いや」
「はい!!!」
「お、おお……」
しつこく言って勢いに押された染岡が手を握った瞬間、あたしは手を思い切り握り締めた。染岡氏、声にならない悲鳴をあげる。
口元をひきつらせた鬼道が「大丈夫か……?」と声をかければ、「……痛ぇ」とのこと。はっはっはー。
「あたしの左手が唸るぜいたあ!」
「何をやってるんだお前は」
ギリギリとゆみに足を踏まれる。地味に痛いのですが。りなは苦笑いだ。
「かなの握力、右は50だっけ?」
「はあ!?」
「そうだよ。これでも手加減したんだから」
「どこがだよ」
「だってあたし左利きだもん。左の方は60kgだし。ナメんなよ!」
ふんっと鼻を鳴らす。ドヤ顔をしてみせれば、染岡に頭をわしわしとやられた。ムカついたけど、不器用な謝罪として受け取っておく。
「凄いな」と呟いた豪炎寺に「まーね」とピースサインを送る。握力はあたしの取り柄の1つだ。
脚力だって、流石の豪炎寺には敵わないだろうけど、そこらの男子よりかはあると自負しているし、自信はある。
「りなたちは?」
「普通に標準だよ……一之瀬くん?」
「くんは付けなくていいよ」
「うん」
……フレンドリーなのは嬉しいけど、りなとの距離ちょっと近いぞお前。
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