第9話 イプシロン来襲!
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廊下にはワックスがかかってたらしい。誰がこんな仕掛けを……。とその時、どこからともなくうっしっしという笑い声が聞こえた。
「ざまーみろ!フットボールフロンティアで優勝したからっていい気になって!」
「なっ、危ないじゃんかよ!目金なんて怪我しちゃったんだよ!」
「そうですよ!どうしてくれるんですか!」
「こんなんで怪我するなんて鍛え方が足りないんじゃねーの」
「何をお!」
「お前!よくもやったな!」
逃げ出した彼を追おうと、塔子が廊下の手すりを乗り越える。その瞬間、塔子は着地した所にあった落とし穴に見事にはまってしまった。
ワックスの次は落とし穴。とんでもないいたずらっ子だ。塔子まで怪我してないといいんだけど。
「木暮ェーーー!!!」
聞こえてきた怒鳴り声に木暮と呼ばれた奴は逃げていく。逃がすか!
「待てっ!」
あたしも手すりを飛び越える。良かった、こっちには落とし穴は無いみたいだ。
「#美波!どこ行くんだよ!」
「捕まえる!ちゃんと謝ってもらわないと!」
すたこらさっさと逃げていくその身のこなしは軽快だ。いたずらは厄介だけど意外と凄い奴なのかもしれない。
追いかけた先にはさっきとは別の道場があった。漫遊寺にはこういう建物が沢山あるんだな。
「やっと追いついた!捕まえた!」
「うわ、何なんだよお前!」
「守兄達に謝ってもらうよ!」
「やーだねっ!日本一だかなんだか知らないけど、エイリア学園にはボロ負けしたんだろ!」
「最初はね。でも特訓に特訓を積み重ねて勝った!努力はいつか実を結ぶ!」
胸を張って言ってみせれば、不機嫌そうに舌打ちされた。そして道場の隅にあった掃除道具を取りに行く。
「掃除するの?」
「あいつら、ちゃんとやんないとまたうるさいから」
邪魔すんなよ。そう言って、バケツの中に入っていた水で雑巾を濡らし始める。なんだかんだ言って、根は真面目なのかな?
にしてもそんなに何枚も雑巾を濡らしてどうするんだろう。頑張っても同時に使えるのは二枚だけじゃ……。そう思っていたら、突然雑巾を蹴り上げた。
天井にぶつかった雑巾は、なんと滑る様に走り出す。何これ!?こんなの初めて見た!凄い!
「普通だろ、これくらい」
「普通じゃないって!えいっ!」
雑巾を一枚借りて、見様見真似で同じようにやってみる。べちっ、と情けない音と共に、雑巾は落ちてきた。
「下手くそ」
「分かってるから言わないでよ……」
もう一回蹴り上げてみてもやっぱり全然出来ない。結構なテクニックがいる。本人は気づいてないみたいだけど、これは強力な武器だ。
実はこの掃除もサッカーの特訓なのかな?こうすることで、知らないうちに実力がついてたりして!ポジションはどこだろう?必殺技は?
「君ともサッカーしたいなあ!」
「……無理だよ。アイツらがいいって言うわけない」
「ならこっそりやろうよ!えーっと、名前は?」
「木暮夕弥」
「木暮……うん、夕弥ね!あたしは円堂美波!よろしく!」
「馴れ馴れしいなお前」
「だからお前じゃなくて円堂美波だってば。ね、これからさ」
「っていうか、行けばいいじゃん」
「え?」
夕弥が指差した蹴球道場の方を見ると、丁度守兄達が出てくるのが見えた。話終わったんだ。なら仕方ない。
「じゃあまた今度ね!」
「へいへい」
どうでもよさげな返事だな……。ま、いっか。京都には暫くいるんだし、サッカーする機会もあるよね!
「皆!」
「あ、美波!」
「アイツ……木暮と話してたのか?」
「うん。それでさ、漫遊寺の人は何だって?」
「戦う気はないんだって」
「ええ!?」
戦う気はないって……。邪念がどうこう言われても、エイリア学園はそんなことを言って聞くような相手じゃないのに。
「てかどうして壁山が目金背負ってるの?」
「壁山くんの下敷きになって怪我してしまいましたからね!これ以上悪化しないようにです!」
「正確には木暮のせいで転んで、だろ?」
「ひねくれてたなあ、木暮」
「……親に裏切られた、か」
「裏切られた?何それ」
「影田さんが言ってたんです。……親に裏切られたって」
「……そっか」
飛び出してきた驚きの言葉について、少し沈んだ顔をした春ちゃんが教えてくれた。
夕弥がひねくれてる理由は分かったけど、そういうのを勝手に教えるのはどうかと思う。誰にだって知られたくないことはあるのに。
「……私、ちょっとだけ、木暮くんの気持ちが分かる気がして」
「春ちゃん?」
「なんでもないです!さあ、キャラバンに戻りましょう!」
キャラバンの所まで戻ってきて、まず考えたのはこれからどうするか。
せっかく京都まで来たけど、肝心の漫遊寺がエイリア学園と戦う気がないとなると、雷門もどう動けばいいのか。
皆もどこか呆れたような表情で、全然分かってないと口々に言う。そんなに酷かったのかな。
「考えても仕方ないさ。俺達は俺達で、今出来ることをするだけだ!」
「出来ること?」
「特訓だな?」
「ああ。相手はエイリア学園のファーストランクチーム。こっちももっと特訓して、強くなんないとな!」
『ああ!』
「そうと決まれば、早速練習場所を探そう!」
「練習場所ならあるよ」
声の方向を見ると、またもやしろ君が両サイドに女の子を連れていた。向こうに川があって、そこの河川敷でサッカー出来るらしい。
「また何かあったらよろしくね」
「「はーい!」」
今度は皆、別の意味で呆れていた。
「相変わらずだね、しろ君」
「そうかなあ。白恋ではいつもこんな感じだったよ?」
「へ、へー……」
そういえば、雷門でも豪炎寺のファンクラブがあったな。豪炎寺も……ダメだイメージ出来ない。多分違う。やめよう。
移動途中、携帯を開くと一件着信があった。さっ君からだ。題名は、無題。
"暫く俺も源田も連絡は取れない"
たったそれだけ。理由は何も書いてない、簡潔すぎる内容だった。
「どうしたのかな、二人共……」
何でか分からないけど、どうしようもない不安が湧いてくる。そうだ、寺門達帝国イレブンにも聞いてみよう。
危ないけど歩きながらメールを打ってると、鬼道が近づいてきた。
「どうかしたのか」
「え?いや、別に?何でもないよ」
「そうか。だが何かあったら一人で抱え込まずに話せよ」
「うん」
まだ不確定なことを話して、チームを不安にさせる訳にはいかない。
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「ざまーみろ!フットボールフロンティアで優勝したからっていい気になって!」
「なっ、危ないじゃんかよ!目金なんて怪我しちゃったんだよ!」
「そうですよ!どうしてくれるんですか!」
「こんなんで怪我するなんて鍛え方が足りないんじゃねーの」
「何をお!」
「お前!よくもやったな!」
逃げ出した彼を追おうと、塔子が廊下の手すりを乗り越える。その瞬間、塔子は着地した所にあった落とし穴に見事にはまってしまった。
ワックスの次は落とし穴。とんでもないいたずらっ子だ。塔子まで怪我してないといいんだけど。
「木暮ェーーー!!!」
聞こえてきた怒鳴り声に木暮と呼ばれた奴は逃げていく。逃がすか!
「待てっ!」
あたしも手すりを飛び越える。良かった、こっちには落とし穴は無いみたいだ。
「#美波!どこ行くんだよ!」
「捕まえる!ちゃんと謝ってもらわないと!」
すたこらさっさと逃げていくその身のこなしは軽快だ。いたずらは厄介だけど意外と凄い奴なのかもしれない。
追いかけた先にはさっきとは別の道場があった。漫遊寺にはこういう建物が沢山あるんだな。
「やっと追いついた!捕まえた!」
「うわ、何なんだよお前!」
「守兄達に謝ってもらうよ!」
「やーだねっ!日本一だかなんだか知らないけど、エイリア学園にはボロ負けしたんだろ!」
「最初はね。でも特訓に特訓を積み重ねて勝った!努力はいつか実を結ぶ!」
胸を張って言ってみせれば、不機嫌そうに舌打ちされた。そして道場の隅にあった掃除道具を取りに行く。
「掃除するの?」
「あいつら、ちゃんとやんないとまたうるさいから」
邪魔すんなよ。そう言って、バケツの中に入っていた水で雑巾を濡らし始める。なんだかんだ言って、根は真面目なのかな?
にしてもそんなに何枚も雑巾を濡らしてどうするんだろう。頑張っても同時に使えるのは二枚だけじゃ……。そう思っていたら、突然雑巾を蹴り上げた。
天井にぶつかった雑巾は、なんと滑る様に走り出す。何これ!?こんなの初めて見た!凄い!
「普通だろ、これくらい」
「普通じゃないって!えいっ!」
雑巾を一枚借りて、見様見真似で同じようにやってみる。べちっ、と情けない音と共に、雑巾は落ちてきた。
「下手くそ」
「分かってるから言わないでよ……」
もう一回蹴り上げてみてもやっぱり全然出来ない。結構なテクニックがいる。本人は気づいてないみたいだけど、これは強力な武器だ。
実はこの掃除もサッカーの特訓なのかな?こうすることで、知らないうちに実力がついてたりして!ポジションはどこだろう?必殺技は?
「君ともサッカーしたいなあ!」
「……無理だよ。アイツらがいいって言うわけない」
「ならこっそりやろうよ!えーっと、名前は?」
「木暮夕弥」
「木暮……うん、夕弥ね!あたしは円堂美波!よろしく!」
「馴れ馴れしいなお前」
「だからお前じゃなくて円堂美波だってば。ね、これからさ」
「っていうか、行けばいいじゃん」
「え?」
夕弥が指差した蹴球道場の方を見ると、丁度守兄達が出てくるのが見えた。話終わったんだ。なら仕方ない。
「じゃあまた今度ね!」
「へいへい」
どうでもよさげな返事だな……。ま、いっか。京都には暫くいるんだし、サッカーする機会もあるよね!
「皆!」
「あ、美波!」
「アイツ……木暮と話してたのか?」
「うん。それでさ、漫遊寺の人は何だって?」
「戦う気はないんだって」
「ええ!?」
戦う気はないって……。邪念がどうこう言われても、エイリア学園はそんなことを言って聞くような相手じゃないのに。
「てかどうして壁山が目金背負ってるの?」
「壁山くんの下敷きになって怪我してしまいましたからね!これ以上悪化しないようにです!」
「正確には木暮のせいで転んで、だろ?」
「ひねくれてたなあ、木暮」
「……親に裏切られた、か」
「裏切られた?何それ」
「影田さんが言ってたんです。……親に裏切られたって」
「……そっか」
飛び出してきた驚きの言葉について、少し沈んだ顔をした春ちゃんが教えてくれた。
夕弥がひねくれてる理由は分かったけど、そういうのを勝手に教えるのはどうかと思う。誰にだって知られたくないことはあるのに。
「……私、ちょっとだけ、木暮くんの気持ちが分かる気がして」
「春ちゃん?」
「なんでもないです!さあ、キャラバンに戻りましょう!」
キャラバンの所まで戻ってきて、まず考えたのはこれからどうするか。
せっかく京都まで来たけど、肝心の漫遊寺がエイリア学園と戦う気がないとなると、雷門もどう動けばいいのか。
皆もどこか呆れたような表情で、全然分かってないと口々に言う。そんなに酷かったのかな。
「考えても仕方ないさ。俺達は俺達で、今出来ることをするだけだ!」
「出来ること?」
「特訓だな?」
「ああ。相手はエイリア学園のファーストランクチーム。こっちももっと特訓して、強くなんないとな!」
『ああ!』
「そうと決まれば、早速練習場所を探そう!」
「練習場所ならあるよ」
声の方向を見ると、またもやしろ君が両サイドに女の子を連れていた。向こうに川があって、そこの河川敷でサッカー出来るらしい。
「また何かあったらよろしくね」
「「はーい!」」
今度は皆、別の意味で呆れていた。
「相変わらずだね、しろ君」
「そうかなあ。白恋ではいつもこんな感じだったよ?」
「へ、へー……」
そういえば、雷門でも豪炎寺のファンクラブがあったな。豪炎寺も……ダメだイメージ出来ない。多分違う。やめよう。
移動途中、携帯を開くと一件着信があった。さっ君からだ。題名は、無題。
"暫く俺も源田も連絡は取れない"
たったそれだけ。理由は何も書いてない、簡潔すぎる内容だった。
「どうしたのかな、二人共……」
何でか分からないけど、どうしようもない不安が湧いてくる。そうだ、寺門達帝国イレブンにも聞いてみよう。
危ないけど歩きながらメールを打ってると、鬼道が近づいてきた。
「どうかしたのか」
「え?いや、別に?何でもないよ」
「そうか。だが何かあったら一人で抱え込まずに話せよ」
「うん」
まだ不確定なことを話して、チームを不安にさせる訳にはいかない。
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