第7話 エースストライカーは誰だ!!

夢小説設定

この小説の夢小説設定
名前

今日も昨日に引き続き、スノボ特訓だ。



「風を感じるんだ。それで楽しめば、体がついてくるから!」

「うん!」



しろ君の指導のおかげで、なかなかに上達は早かったように思う。滑りながら風を感じるのが気持ちいい。

コツを掴めば案外滑るのは簡単だ。でも雪玉をさけるのはやっぱり難しくて、正面衝突すること5回目。冷たい。そして痛い。

ぶつけたとこを摩る。心配して来てくれたしろ君にお礼を言いつつ立ち上がると、丁度横を守兄と一郎太が滑っていった。



「守兄も一郎太も上達早いね!」

「朝特訓したからな!」

「ああ。今なら吹雪と同じ速さで走れる気がする!」



最近元気がなかった一郎太にも、笑顔が戻ってきた。良かった!



「ちゃんと前を見ろ!」

「え、ぶふっ」



鬼道に言われて前を向いた瞬間、雪玉が顔面に衝突した。痛いのと冷たいのがいっぺんにくる。これで6回目か……。



「もっと早く言ってよ……」

「前をちゃんと見ていない方が悪い」

「否定できない。ってなんでドヤ顔するんだよ!」

「まあ吹雪の言う通り、着実に上達してるんじゃないのか」

「は……」

「戻るぞ」



そう言って、マントを翻しながらスタート位置に歩いて行く鬼道。え、今の褒められたの?



「素直じゃない……?」



と言ったら雪玉が飛んできた。なんでだよ!






夜。あたしは誰も起きていない事を確認して、静かにテントを出た。

夜といってもまだ9時過ぎ。皆練習で疲れているからすぐ寝てしまった。

マネージャーである秋、なっちゃん、春ちゃんも、朝は早いから寝てしまった。

起きているのはあたしだけ……だと思う。音を立てないように慎重に進む。行き先は、グラウンドだ。


リュウジの話だと、ジェミニストームより強いチームがあと4つもある。だからあたしも強くならなきゃならない。

この前思い付いた必殺技。次のジェミニストームとの試合までに完成させてたい。

滝を見てピンときたから、イメージとしては高くジャンプしてからのオーバーヘッドキック。

あれ程高くはないけど、1人でイナズマ落としを打つような感じで。こう、ガーッと落ちてくるようなシュート。



「よーし!」



まずは空中でボールを蹴る練習だ!


……少し、いや、あたしは少しどころかかなり甘く見てたみたいだ。空振りしまくりで、思ってたより難しい。

豪炎寺は空中という不安定な場所から、あんなに凄いシュートを打っていたのかと、改めてその凄さを知る。

あの豪炎寺だって何度も練習してやっと完成したんだから、あたしは尚更頑張らなきゃ。



「もう1回!」



諦めたらダメだ。出来るようになるまで練習あるのみ!それにしてもさっきから視線を感じる気がするような無いような。

気にせずもう一度、ボールをよく見てやってみれば、なんとかボールを蹴ることができた。やった!

ゴールからは全然違う方向に逸れちゃったし、まだ必殺技には程遠い。でも大事な一歩。さて、後は着地だ!

空中で着地の体勢に入ろうとした時、少し離れたところに人影が見えた。鮮やかな赤。そして一瞬目が合った。

あれは誰だろう。そう考えたのが間違いで、あたしは派手に着地に失敗した。お尻打った。痛い。

気を取り直しもう一度やってみる。今度はさっきより逸れなかった。うん。少し上達したかも。と思ってたら、



「頑張ってるね」



後ろから突然声をかけられて、腰を抜かしました。



「ごめんね、驚かせちゃったかな」

「ヒロト君!?」



暗闇から現れたのはヒロト君だった。何で白恋中に!



「立たないの?」

「こっ、腰が抜けて……」



そう言えば、ヒロト君は笑いだした。なんか恥ずかしいな……。



「くっ……ふふっ……」

「わ、笑うなあ!びっくりしたんだからしょうがないじゃん!」

「ははっ。そうだね、驚かせたのは俺だ。ごめんごめん」

「悪びれてないような」

「そんなことないよ。はい」



手を差し出されたので、お言葉に甘えて立たせてもらう。腕についた砂を払ってると、ヒロト君は感心したように頷いた。



「それにしても凄いね。女の子なのに」

「そんなことないよ。女の子なら塔子だってそうだし、あたしはまだまだ」

「そう?もう少し自信を持ってもいいと思うな」

「ありがとうヒロト君……じゃなくてヒロト。というか何でここに?」

美波ちゃんが練習してるんじゃないかと思ってね、見学に」

「そんな見て面白いことはしてないけど……」



ここが白恋中か、なんて言いながら周りを見渡しているヒロト君。その姿を見て頭の中で電球がつく。そうだ!



「ヒロト!パス!」



軽く蹴り出せばきょとんとした顔でヒロト君は受けた。不意打ちになっちゃったけど、なんでもないようにトラップしたヒロト君は凄い。



「サッカーやろうよ!」



そう持ち掛ければ、ほんの少しだけ考える素振りを見せた後、いいよとヒロト君は了承してくれた。




やり始めて十数分。あたしは完全に息が上がっていた。それに対してヒロト君は肩で軽く息をしている程度。はっきりとした実力の差を感じた。



「はあ、はあ、……す、凄いや……」

美波ちゃんだって凄いじゃないか」



サラッと褒めてくれたけど、全然そうは思えない。パワーも、コントロールも、テクニックも、全てがあたしを上回っていた。

流石エイリア学園の選手、ってこれじゃ皮肉っぽいかな。リュウジが言ってた通り、ヒロト君は多分、ジェミニストームより強いチームなんだ。



「そういえば、さっきのシュートだけどもう少し角度をつけるといいよ」

「角度?角度か……分かった!やってみる!」

「でも今日はもう休んだ方がいいんじゃないかな?」

「それもそうか。じゃあまたね、ヒロト」

「……うん。またね、美波ちゃん」



背中を向けたヒロトが歩いて行く。市街地とは逆方向だけど、どうやって帰るんだろう。

……あたしが考えても仕方ないか。明日も頑張ろうっと!




.
3/6ページ
スキ