第7話 エースストライカーは誰だ!!
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一足先にキャラバンに戻ると、なっちゃんが困り顔をしていた。
聞けば備品のチェックをしたら、いくつか足りなくなりそうなのがあったらしい。買い出しを申し出ると、なっちゃんは渋い顔をした。
「もう遅いわ。土地勘も無いのに行くなんて危ないわよ」
「大丈夫大丈夫。市街地ならちょっと歩けばつく距離だし、腹ごなしには丁度良いよ」
目的を済ませたら直帰するように!と口を酸っぱくして言うなっちゃんに大きく頷いて、あたしは白恋中を出た。
せっかくだからボールを蹴りながら歩く。雪が積もってるのもあって思いもしない方へ転がる時もあって面白い。凍った路面には要注意。
夜の市街地はイルミネーションがキラキラしている。息抜きに皆でこういうの見に来るのも良いな。
さて、ここまで来た目的は買い出しだ。Gマートを探していると、ベンチに腰かけていたおじいちゃんが声をかけてきた。
「ほお、サッカーボールか。懐かしい」
「こんばんはおじいちゃん!サッカー好きなの?」
「こんばんは。サッカーと聞くと思い出す子達がいてのう」
「へー、サッカーが上手い子?」
「昔サッカーがとても上手な兄弟がいたんじゃよ」
思わぬ言葉にドキリとした。この辺にいたサッカーがとても上手な兄弟といったら、間違いなくしろ君とアツ君だ。
「兄が守り、弟が決める……将来有望な子達だったというのに……」
「あの、何か、あったんですか」
「北ヶ峰という場所を知っているかね?雪崩が多い場所だ。そこで……悲しい事故があったんだよ」
ガツンと頭を殴られたような衝撃を受けた。
北ヶ峰、凍えていたしろ君、雪崩、木から雪が落ちた音、事故、怯えるしろ君。
パズルのピースが綺麗に収まっていくように、点と点が繋がっていくように、断片的に持っていた情報が一つになる。
おじいさんはそれきり黙ってしまって、これ以上は聞けそうにない。でも考えるには情報は十分で。
あくまであたしの想像だから確信までは持てない。でも、これが正しかったとしたら、だとしたらしろ君は、アツ君は……。
回らない頭のまま、どうにか買い出しを済ませて帰路についたものの、足が重く感じる。
ボールも上手く蹴れなくて、行き場のない感情にイライラまでしてくる。もうやめて持って帰ろうかな。
しろ君は時々雰囲気が変わる。まるでアツ君みたいだと思ってたけど、本当にしろ君がアツ君のように振る舞っているんだ。
これからどう接すればいいだろう。しろ君はしろ君だと思うけど、しろ君は好戦的な時の自分をアツヤと呼ぶ。
あの時の彼は本当にしろ君?それとも、アツヤ?
「あ」
またミスキックしてしまった。思わずため息をつく。今日はもう駄目だな。転がったボールは、誰かの足に当たって止まった。
「(……え)」
ボールを拾い上げてくれたのは男の子だった。紫のシャツにオレンジのジャケット。綺麗な赤い髪が風に揺れている。切れ長な緑色の瞳と視線がかち合った。そんな、どうして。
「はい、ボール。君のだよね」
「あっありがとう」
頭の中が真っ白になる。どうしてここにヒロト君がいるんだ。しろ君のことに続いてヒロト君まで現れて、思考がパニックだ。
「そのジャージ、雷門中だよね。聞いてるよ、宇宙人を倒す為に旅をしてるんだって」
「あ、うん」
「凄いね。宇宙人とサッカーするなんて」
「あり、がとう?」
「怖くないの?」
「それは……怖くないって言ったら嘘になるけど、サッカーが好きだから」
「へえ……」
最初は怖かった。正体を知った今でも、正直怖い。友達と世界の平和を賭けて戦うなんて。それでも、戦わないときっともっと辛いことになる。
じっと見てくるヒロト君は、多分あたしを覚えてない。でもあたしだって直ぐリュウジに気づけた訳でもないから、人のことは言えない。
風君も晴君も治も、あたしのこと忘れてるのかな。……その方が、いいかもしれない。皆、あたし以上に覚悟の上だろうけど。
それにしたってどんな気持ちでヒロト君はそんなことを言うんだ。宇宙人を名乗ってるのは、自分達なのに。どんな気持ちでサッカーしてるんだ。
「ひ……君はサッカーやってる?好き?」
「うーん。サッカーはやってるけど、好きとは違うかな」
「え?」
「俺にとってサッカーは必要なものなんだ。だからやってる。それだけ」
「好きじゃない?」
「好きとか嫌いとか、そういうのじゃないよ。ただ……」
言葉を途切れさせ、目を伏せたヒロト君の表情はよく分からない。けれど、どこか愁いを帯びた雰囲気を纏っているように感じた。
かと思えば、口元が弧を描く。顔を上げたヒロト君は、あたしを見て面白そうに笑っていた。
「俺、基山ヒロト。君の名前を聞いてもいいかな」
「円堂美波だよ。よろしくね、ヒロト君」
「ヒロトでいいよ。美波ちゃんは暫くここにいるの?」
「うん。エイリア学園の襲撃予告があったし、今度こそ勝つ為に特訓してるからね」
「ふうん、どんな特訓?」
「えっと……スノーボード」
「え」
予想外だったのかぱちぱちと瞬きしたヒロト君は、不思議そうな、興味ありげな顔をした。だよね、あたしも最初はびっくりした。
「あ、でも、今あたし新しい必殺技も考えててそれの特訓もしたいんだ」
言ってから気づく。エイリア学園と戦う為の新必殺技の話なんて、エイリア学園のヒロト君にしちゃダメじゃん。
「特訓、か」
「うん!だから応援よろしく!」
いや応援も何もないよね!?ヒロト君はそんな立場じゃないのに。なんだか恥ずかしくなってきた……。
そんなあたしの気持ちを知ってか知らずか、ヒロト君はクスクスと笑うと、背を向けてひらりを手を振った。
「それじゃあね、美波ちゃん。特訓頑張って」
赤い髪が人混みの中に消えていく。それが見えなくなるまで、あたしは動けずにいた。
「応援してくれた……」
色々ありすぎて何が何だか分からない。早く帰って休もう……。
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聞けば備品のチェックをしたら、いくつか足りなくなりそうなのがあったらしい。買い出しを申し出ると、なっちゃんは渋い顔をした。
「もう遅いわ。土地勘も無いのに行くなんて危ないわよ」
「大丈夫大丈夫。市街地ならちょっと歩けばつく距離だし、腹ごなしには丁度良いよ」
目的を済ませたら直帰するように!と口を酸っぱくして言うなっちゃんに大きく頷いて、あたしは白恋中を出た。
せっかくだからボールを蹴りながら歩く。雪が積もってるのもあって思いもしない方へ転がる時もあって面白い。凍った路面には要注意。
夜の市街地はイルミネーションがキラキラしている。息抜きに皆でこういうの見に来るのも良いな。
さて、ここまで来た目的は買い出しだ。Gマートを探していると、ベンチに腰かけていたおじいちゃんが声をかけてきた。
「ほお、サッカーボールか。懐かしい」
「こんばんはおじいちゃん!サッカー好きなの?」
「こんばんは。サッカーと聞くと思い出す子達がいてのう」
「へー、サッカーが上手い子?」
「昔サッカーがとても上手な兄弟がいたんじゃよ」
思わぬ言葉にドキリとした。この辺にいたサッカーがとても上手な兄弟といったら、間違いなくしろ君とアツ君だ。
「兄が守り、弟が決める……将来有望な子達だったというのに……」
「あの、何か、あったんですか」
「北ヶ峰という場所を知っているかね?雪崩が多い場所だ。そこで……悲しい事故があったんだよ」
ガツンと頭を殴られたような衝撃を受けた。
北ヶ峰、凍えていたしろ君、雪崩、木から雪が落ちた音、事故、怯えるしろ君。
パズルのピースが綺麗に収まっていくように、点と点が繋がっていくように、断片的に持っていた情報が一つになる。
おじいさんはそれきり黙ってしまって、これ以上は聞けそうにない。でも考えるには情報は十分で。
あくまであたしの想像だから確信までは持てない。でも、これが正しかったとしたら、だとしたらしろ君は、アツ君は……。
回らない頭のまま、どうにか買い出しを済ませて帰路についたものの、足が重く感じる。
ボールも上手く蹴れなくて、行き場のない感情にイライラまでしてくる。もうやめて持って帰ろうかな。
しろ君は時々雰囲気が変わる。まるでアツ君みたいだと思ってたけど、本当にしろ君がアツ君のように振る舞っているんだ。
これからどう接すればいいだろう。しろ君はしろ君だと思うけど、しろ君は好戦的な時の自分をアツヤと呼ぶ。
あの時の彼は本当にしろ君?それとも、アツヤ?
「あ」
またミスキックしてしまった。思わずため息をつく。今日はもう駄目だな。転がったボールは、誰かの足に当たって止まった。
「(……え)」
ボールを拾い上げてくれたのは男の子だった。紫のシャツにオレンジのジャケット。綺麗な赤い髪が風に揺れている。切れ長な緑色の瞳と視線がかち合った。そんな、どうして。
「はい、ボール。君のだよね」
「あっありがとう」
頭の中が真っ白になる。どうしてここにヒロト君がいるんだ。しろ君のことに続いてヒロト君まで現れて、思考がパニックだ。
「そのジャージ、雷門中だよね。聞いてるよ、宇宙人を倒す為に旅をしてるんだって」
「あ、うん」
「凄いね。宇宙人とサッカーするなんて」
「あり、がとう?」
「怖くないの?」
「それは……怖くないって言ったら嘘になるけど、サッカーが好きだから」
「へえ……」
最初は怖かった。正体を知った今でも、正直怖い。友達と世界の平和を賭けて戦うなんて。それでも、戦わないときっともっと辛いことになる。
じっと見てくるヒロト君は、多分あたしを覚えてない。でもあたしだって直ぐリュウジに気づけた訳でもないから、人のことは言えない。
風君も晴君も治も、あたしのこと忘れてるのかな。……その方が、いいかもしれない。皆、あたし以上に覚悟の上だろうけど。
それにしたってどんな気持ちでヒロト君はそんなことを言うんだ。宇宙人を名乗ってるのは、自分達なのに。どんな気持ちでサッカーしてるんだ。
「ひ……君はサッカーやってる?好き?」
「うーん。サッカーはやってるけど、好きとは違うかな」
「え?」
「俺にとってサッカーは必要なものなんだ。だからやってる。それだけ」
「好きじゃない?」
「好きとか嫌いとか、そういうのじゃないよ。ただ……」
言葉を途切れさせ、目を伏せたヒロト君の表情はよく分からない。けれど、どこか愁いを帯びた雰囲気を纏っているように感じた。
かと思えば、口元が弧を描く。顔を上げたヒロト君は、あたしを見て面白そうに笑っていた。
「俺、基山ヒロト。君の名前を聞いてもいいかな」
「円堂美波だよ。よろしくね、ヒロト君」
「ヒロトでいいよ。美波ちゃんは暫くここにいるの?」
「うん。エイリア学園の襲撃予告があったし、今度こそ勝つ為に特訓してるからね」
「ふうん、どんな特訓?」
「えっと……スノーボード」
「え」
予想外だったのかぱちぱちと瞬きしたヒロト君は、不思議そうな、興味ありげな顔をした。だよね、あたしも最初はびっくりした。
「あ、でも、今あたし新しい必殺技も考えててそれの特訓もしたいんだ」
言ってから気づく。エイリア学園と戦う為の新必殺技の話なんて、エイリア学園のヒロト君にしちゃダメじゃん。
「特訓、か」
「うん!だから応援よろしく!」
いや応援も何もないよね!?ヒロト君はそんな立場じゃないのに。なんだか恥ずかしくなってきた……。
そんなあたしの気持ちを知ってか知らずか、ヒロト君はクスクスと笑うと、背を向けてひらりを手を振った。
「それじゃあね、美波ちゃん。特訓頑張って」
赤い髪が人混みの中に消えていく。それが見えなくなるまで、あたしは動けずにいた。
「応援してくれた……」
色々ありすぎて何が何だか分からない。早く帰って休もう……。
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