第6話 雪原の皇子!
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「染岡!?」
染岡の気持ちが分からない訳でもない。豪炎寺としろ君では、全くと言っていいほど正反対だから。
でもそれとこれとは話が別だ。豪炎寺は豪炎寺、しろ君はしろ君なんだ。そう思いながら見ていたら、しろ君が染岡を弾き飛ばした。
もっと楽しませろ、と。高らかに笑って、真っ直ぐに、守兄がいるゴールへと突っ走っていく。
「美波!お前はどいてろ!」
「ええ!?あ、ちょっと!」
あたしの制止もお構いなしで、再び放たれたエターナルブリザード。心なしかさっき打たれたのより威力が高く見える。
その時、シュートの軌道上に壁山と塔子が飛び込んだ。発動したザ・タワーとザ・ウォールが、シュートを抑え込もうとする。
「そんなのに止められるエターナルブリザードじゃねえ!」
好戦的な表情でしろ君が吠えた。次の瞬間、巨大な塔と壁は打ち砕かれて、二人は吹き飛ばされてしまった。
構えた守兄は今度はマジン・ザ・ハンドを繰り出したけど、シュートが上へ逸れたことで勝負は終わった。
「チッ、さっきのでコースがズレたか」
「それでもあんな威力なんて凄いよ……」
「当然だ。ズレてなきゃ決まってたぜ」
「守兄だって負けてないよ!次は絶対止めてた!」
「そうだね。マジン・ザ・ハンド、凄いパワーが伝わってくる技だったよ」
「う、ん……?」
……あれ、元に戻った?荒っぽい雰囲気だと思ったら、ふんわりとした表情で守兄を褒めるしろ君。落差の激しさに頭が混乱してきた。
「ねえ、しろ君」
改めて聞こうとしたけど、その前にしろ君に瞳子監督が声をかけた。そうだった、この試合はしろ君の実力を見る為のものだった。
それにしてもザ・タワー、ザ・ウォールでの二重のディフェンス。あれでシュートが守兄へ届く前に威力を落とせたら、大きな武器になる。
シュートブロック技、か。これからを思うとあたしも何か考えた方が良さそうだ。今考えてる技が完成したら、また考えてみよう。
そしてしろ君は瞳子監督の改めてスカウトを受けて、正式に雷門イレブンの一員になった。
やっぱり認められない染岡が怒りのままにどこかへ行ってしまったけど、守兄が追いかけたから大丈夫だと思う。
染岡に睨まれまくっていたしろ君は、困ったように眉を下げた。
「嫌われちゃったかな?」
「染岡は気持ちの整理を出来てないんだと思う。だからごめんだけど、もう少し待ってあげて欲しい」
「そっか。彼とも楽しくサッカーをやれたらいいね」
「喧嘩っ早いとこもあるけど、本当は仲間思いでいい奴なんだよ」
「うん。ところで美波ちゃん、さっきから何か聞こうとしてたよね」
「それは、まあ、その」
「ちょっと場所を変えよう」
そう言って歩き出したしろ君の後を追う。着いたのは校舎裏で、そこにはなんとゲレンデが広がっていた。白恋中、凄い。
「ここなら僕達だけだから。何を話しても大丈夫」
「分かった。それでなんだけど、えーっと、しろ君ってディフェンダーだよね」
「そうだよ」
「白恋ではディフェンダーもフォワードもやってるの?」
「うーん、そうなるかな。どっちも出来るから。そうすれば、完璧になれる」
「完璧?」
「そう、完璧。点を取るのも、守るのも、僕がやるんだ」
「それは凄いことだと思うけど、全部一人でなんて大変だよ」
「そんなことないよ。僕は完璧にならないといけないから」
何でもないようにさらっとしろ君は言うけど、結構とんでもないことを言ってる気がする。
サッカーは11人全員でする競技だ。いくらしろ君の実力が白恋の中ではずば抜けているとはいえ、全部を完璧?にやるのは難しい。
ならどうすればいいかっていうと役割分担だ。例えるなら、ディフェンダーのしろ君が守って、フォワードのアツ君が点を取るように。
「……アツ君って今どうしてる?」
しろ君の瞳が揺れた。さっきまでぽんぽんと返って来てた筈の返事が、返って来なくなった。
なんだか嫌な予感がする。寒い。さっきまで動き回って温まってた体が冷えていく感覚。これは、動いてないからだけじゃない。
「皆にしろ君の話をしなかったのは、ディフェンダーだって聞いてたしろ君がストライカーをしてるのにびっくりしたから」
「……」
「フォワードはアツ君だよね。まだアツ君は中学生じゃないからかなって思ったんだけど、それなら何で、しろ君がフォワードやってるんだろうって」
上手く言葉に出来なくて、声がどんどん小さくなっていく。聞きたいことがごちゃついて分からなくなってきた。
黙り込んだあたしに対して、しろ君は大きく息を吐いた。
「アツヤに会いたい?」
そう言われて頷けば、じゃあ会わせてあげると言ってしろ君は目を閉じると、ぎゅっとマフラーを掴んた。
目を開いたしろ君のその目は金色に輝いていた。髪も跳ね上がって、雰囲気も試合で好戦的になってた時みたいで、あれ、え、なにこれ。
「アツ君?」
「ああ、そうだ」
「え、え!?でもしろ君は、あれ?」
訳が分からない。さっきまで目の前にいたのは間違いなくしろ君だ。なのに今はアツヤだという。これは、どういうことだ。
「おいおい、久しぶりに会ったってのに何難しそうな顔してんだよ。嬉しくねえのか」
「いや、嬉しい、けど……アツ君でいいんだよね?」
「何度も言わせんな。つーかガキみたいな呼び方してねえで、アツヤって呼べよ」
「アツヤ……?」
満足そうな笑みを浮かべるアツ君、いやアツヤ。やっぱり訳が分からない。
アツヤがマフラーに触れると、挑発的な雰囲気が消えた。ぱちりと開いた目は青灰色に戻っていた。
「代わった……?」
「ごめんね。アツヤが我が儘言って」
「あ、ううん、大丈夫」
「そろそろ皆に所に戻ろうか」
微笑んだしろ君が校舎の方へ足を向けたのであたしもついていく。話はこれで終わりらしい。
しろ君にアツ君……アツヤのことやポジションのことを聞くつもりだったのに、謎が謎を読んで結局さっぱりだ。
しろ君はしろ君だしアツヤはアツヤの筈で、どうしてしろ君はアツヤみたいなこと言うんだろう。あれじゃあまるで、しろ君がアツヤだ。
これから一緒に戦っていくうちに分かるかなあ……。
教室に入ると、パソコンを持っている春ちゃんを中心に皆が集まっていた。
「どうしたの春ちゃん?」
「美波先輩!吹雪さん!大変なんです、これ見てください!」
差し出されたパソコンの画面には、あのレーゼが映っていた。エイリア学園による襲撃予告。次の標的は……白恋中。
「白恋中に……」
「エイリア学園がやって来る……!」
→あとがき
染岡の気持ちが分からない訳でもない。豪炎寺としろ君では、全くと言っていいほど正反対だから。
でもそれとこれとは話が別だ。豪炎寺は豪炎寺、しろ君はしろ君なんだ。そう思いながら見ていたら、しろ君が染岡を弾き飛ばした。
もっと楽しませろ、と。高らかに笑って、真っ直ぐに、守兄がいるゴールへと突っ走っていく。
「美波!お前はどいてろ!」
「ええ!?あ、ちょっと!」
あたしの制止もお構いなしで、再び放たれたエターナルブリザード。心なしかさっき打たれたのより威力が高く見える。
その時、シュートの軌道上に壁山と塔子が飛び込んだ。発動したザ・タワーとザ・ウォールが、シュートを抑え込もうとする。
「そんなのに止められるエターナルブリザードじゃねえ!」
好戦的な表情でしろ君が吠えた。次の瞬間、巨大な塔と壁は打ち砕かれて、二人は吹き飛ばされてしまった。
構えた守兄は今度はマジン・ザ・ハンドを繰り出したけど、シュートが上へ逸れたことで勝負は終わった。
「チッ、さっきのでコースがズレたか」
「それでもあんな威力なんて凄いよ……」
「当然だ。ズレてなきゃ決まってたぜ」
「守兄だって負けてないよ!次は絶対止めてた!」
「そうだね。マジン・ザ・ハンド、凄いパワーが伝わってくる技だったよ」
「う、ん……?」
……あれ、元に戻った?荒っぽい雰囲気だと思ったら、ふんわりとした表情で守兄を褒めるしろ君。落差の激しさに頭が混乱してきた。
「ねえ、しろ君」
改めて聞こうとしたけど、その前にしろ君に瞳子監督が声をかけた。そうだった、この試合はしろ君の実力を見る為のものだった。
それにしてもザ・タワー、ザ・ウォールでの二重のディフェンス。あれでシュートが守兄へ届く前に威力を落とせたら、大きな武器になる。
シュートブロック技、か。これからを思うとあたしも何か考えた方が良さそうだ。今考えてる技が完成したら、また考えてみよう。
そしてしろ君は瞳子監督の改めてスカウトを受けて、正式に雷門イレブンの一員になった。
やっぱり認められない染岡が怒りのままにどこかへ行ってしまったけど、守兄が追いかけたから大丈夫だと思う。
染岡に睨まれまくっていたしろ君は、困ったように眉を下げた。
「嫌われちゃったかな?」
「染岡は気持ちの整理を出来てないんだと思う。だからごめんだけど、もう少し待ってあげて欲しい」
「そっか。彼とも楽しくサッカーをやれたらいいね」
「喧嘩っ早いとこもあるけど、本当は仲間思いでいい奴なんだよ」
「うん。ところで美波ちゃん、さっきから何か聞こうとしてたよね」
「それは、まあ、その」
「ちょっと場所を変えよう」
そう言って歩き出したしろ君の後を追う。着いたのは校舎裏で、そこにはなんとゲレンデが広がっていた。白恋中、凄い。
「ここなら僕達だけだから。何を話しても大丈夫」
「分かった。それでなんだけど、えーっと、しろ君ってディフェンダーだよね」
「そうだよ」
「白恋ではディフェンダーもフォワードもやってるの?」
「うーん、そうなるかな。どっちも出来るから。そうすれば、完璧になれる」
「完璧?」
「そう、完璧。点を取るのも、守るのも、僕がやるんだ」
「それは凄いことだと思うけど、全部一人でなんて大変だよ」
「そんなことないよ。僕は完璧にならないといけないから」
何でもないようにさらっとしろ君は言うけど、結構とんでもないことを言ってる気がする。
サッカーは11人全員でする競技だ。いくらしろ君の実力が白恋の中ではずば抜けているとはいえ、全部を完璧?にやるのは難しい。
ならどうすればいいかっていうと役割分担だ。例えるなら、ディフェンダーのしろ君が守って、フォワードのアツ君が点を取るように。
「……アツ君って今どうしてる?」
しろ君の瞳が揺れた。さっきまでぽんぽんと返って来てた筈の返事が、返って来なくなった。
なんだか嫌な予感がする。寒い。さっきまで動き回って温まってた体が冷えていく感覚。これは、動いてないからだけじゃない。
「皆にしろ君の話をしなかったのは、ディフェンダーだって聞いてたしろ君がストライカーをしてるのにびっくりしたから」
「……」
「フォワードはアツ君だよね。まだアツ君は中学生じゃないからかなって思ったんだけど、それなら何で、しろ君がフォワードやってるんだろうって」
上手く言葉に出来なくて、声がどんどん小さくなっていく。聞きたいことがごちゃついて分からなくなってきた。
黙り込んだあたしに対して、しろ君は大きく息を吐いた。
「アツヤに会いたい?」
そう言われて頷けば、じゃあ会わせてあげると言ってしろ君は目を閉じると、ぎゅっとマフラーを掴んた。
目を開いたしろ君のその目は金色に輝いていた。髪も跳ね上がって、雰囲気も試合で好戦的になってた時みたいで、あれ、え、なにこれ。
「アツ君?」
「ああ、そうだ」
「え、え!?でもしろ君は、あれ?」
訳が分からない。さっきまで目の前にいたのは間違いなくしろ君だ。なのに今はアツヤだという。これは、どういうことだ。
「おいおい、久しぶりに会ったってのに何難しそうな顔してんだよ。嬉しくねえのか」
「いや、嬉しい、けど……アツ君でいいんだよね?」
「何度も言わせんな。つーかガキみたいな呼び方してねえで、アツヤって呼べよ」
「アツヤ……?」
満足そうな笑みを浮かべるアツ君、いやアツヤ。やっぱり訳が分からない。
アツヤがマフラーに触れると、挑発的な雰囲気が消えた。ぱちりと開いた目は青灰色に戻っていた。
「代わった……?」
「ごめんね。アツヤが我が儘言って」
「あ、ううん、大丈夫」
「そろそろ皆に所に戻ろうか」
微笑んだしろ君が校舎の方へ足を向けたのであたしもついていく。話はこれで終わりらしい。
しろ君にアツ君……アツヤのことやポジションのことを聞くつもりだったのに、謎が謎を読んで結局さっぱりだ。
しろ君はしろ君だしアツヤはアツヤの筈で、どうしてしろ君はアツヤみたいなこと言うんだろう。あれじゃあまるで、しろ君がアツヤだ。
これから一緒に戦っていくうちに分かるかなあ……。
教室に入ると、パソコンを持っている春ちゃんを中心に皆が集まっていた。
「どうしたの春ちゃん?」
「美波先輩!吹雪さん!大変なんです、これ見てください!」
差し出されたパソコンの画面には、あのレーゼが映っていた。エイリア学園による襲撃予告。次の標的は……白恋中。
「白恋中に……」
「エイリア学園がやって来る……!」
→あとがき