第5話 伝説のストライカーを探せ!
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朝、つんざくような音が鳴り響いた。何事かとテントから顔を出すと、瞳子監督が笛を持って立っていた。どうやら出発の時間らしい。
それからキャラバンでひたすら移動して、漸く北海道に入った。窓の外は雪が降っていて、辺り一面銀世界だ。
キャラバン内は暖房が入っているけど、それでもやっぱり寒いものは寒い。こんな時は、だ。さっ君に貰ったマフラーをバッグから取り出して装着!
隣の染岡に見せびらかしてると、振り向いた一郎太が首を傾げた。
「美波、そのマフラーは?」
「さっ君に貰った!」
「ああ、帝国の佐久間か」
「そうだよ。見てみて、ペンギン柄。凄いよね、自分で作ったんだって」
「あいつ、結構暇なんだな」
「あー……まあ、そうかもね」
まだ怪我は完治してないし、ずっと病院のベッドで横になってるのは、暇だと思う。何か雑誌とか差し入れすれば良かったかな。
そんな中、キャラバンが急に止まった。古株さんが言うには人がいたらしい。守兄がその子を連れて……って、
「(え!?しろ君!?)」
キャラバンに入ってきたのは、雷門が探しているその人であろう、前に北海道で会ったしろ君――吹雪士郎だった。
ちょっと雰囲気は変わった気がするけど、ふんわりした穏やかな感じは変わってない。多分、しろ君だ。
それにしても、アツ君は一緒じゃないのかな?てかあのマフラー、アツ君がつけてたやつじゃない?なんでしろ君が……?
?がぐるぐると脳内を飛び交う。てか知り合いってばれたらまずい気がする。鬼道あたりに何か言われそう。知っていたなら何故言わない?とか。
だってしろ君はディフェンダーの筈で、噂の吹雪士郎はフォワードで、確証が持てなかったし。
体を縮こめて前の座席の背もたれに隠れると、染岡に呆れられた。
「何やってんだよ、お前」
「気にしないで染岡。ちょっと屈みたい気分なんだ」
「そうかよ……。まあ、酔ったとか体調悪いとかじゃないならいいけどよ」
染岡の盛大な溜め息に、ますます体を縮こめたくなった。
「……なあ、お前は豪炎寺が抜けた理由知ってんのか」
「え?」
「見送ったんだろ、あいつの事」
「それは……そうだけど、詳しくは知らないっていうか」
「詳しくなくても知ってて、それでも俺達には言えねえ理由なのかよ」
「う、ん。ごめん」
「はあ……。何で美波が謝るんだよ。黙って抜けた豪炎寺も豪炎寺だろ」
拗ねたような声だけど、染岡はどこか寂しそうだった。豪炎寺と染岡、ずっと二人で雷門のストライカーコンビだったんだ。当然だ。
「監督に反論しなかったってことは豪炎寺は納得してて、あいつなりの理由もあったってことだろ。話してくれりゃあいいのによお」
「染岡は、豪炎寺を信じられない?帰って来るって」
「分かんねえ。豪炎寺だって離れたくて離れた訳じゃねえとは思うが、なら戻れない理由だってあるかもしれねえ」
「……豪炎寺は絶対強くなって帰ってくる。あたしはそう信じたい、いや信じてる」
「美波……」
「だから、一緒に待とう!あたし達も負けないくらいに強くなってね!」
「……当たり前だ!」
ニッと染岡は笑った。久しぶりに見たなあ、染岡が笑ったの。ここ暫くはずっとキツい顔してたから。
その時、キャラバンが急に止まった。雪にタイヤをとられたらしい。古株さんが外に出ようとしたら、山親父が来るから駄目だとしろ君が止めた。
「何それ……うわっ」
ぐらりとキャラバンが揺れた。外を見るとでかい熊がいた。……えっ?
「く、熊!?染岡!熊がいるよ!」
「はしゃいでる場合か!」
「痛い!ごめん!」
頭に拳骨が降ってきた。染岡としても思ってた以上に力が入ってたみたいで悪いと謝られた。
にしてもあの熊、見たことあるような。前に北海道に来た時、アツ君が吹っ飛ばしてくれた熊かな?
キャラバン内は大混乱で、あちこちから悲鳴が聞こえる。周りがこうだから逆に冷静になってきたけど、この状況どうしよう。
しろ君に聞けば対処法は分かるだろうかと前方を見たら、既に彼はいなかった。
まさかと外を見ると、熊――山親父が倒れて、その後ろでボールを持ったしろ君が立っている姿が見えた。
「もう出発しても大丈夫ですよ」
戻ってきたしろ君は安心させるようにふんわりと笑ったけど、皆は顔を見合わせて困惑していた。
外へ出て行ったしろ君に倒れた山親父。しろ君が倒したのは想像つくけど、信じられないのはなんとなく分かる。
キャラバンが動き出した。窓から外を見ると、山親父がふらつきながらも立ち上がろうとしているのが見えた。手加減したのかな。
……それにしても、1発であんなに大きな熊を気絶させるなんて凄い。流石は噂で熊殺しと言われてるだけある。
でもやっぱり、前に会った時と比べて、ちょっと違和感があった。
暫くして、ここまで来たらもう大丈夫だと、しろ君はキャラバンを降りた。降り際にしろ君は「またね」とあたしに手を振った。
思わず振り返して見送ると、じっと守兄と一郎太からの視線が突き刺さった。
「美波ってあいつと話したっけ」
「えっ、あ、話してないけど気を使ってくれたのかな?」
「ふーん」
それ以上は何も聞かれなかった。まああたし達が行くのは白恋中で、しろ君もそこへ行くんだろうから、きっとまた会う筈だ。
窓を開けて外を見たら、こっちを見ていたしろ君と視線が合った。それからしろ君は沢山積もった雪へと思いっきりボールを蹴った。
するとシュートの勢いで雪が弾け飛んで道出来た。そこをすたすたと歩いていくしろ君。まるで十戒のモーゼ。ラッセル車要らず!
「な、なあ、美波。寒い……」
「ごめん!」
しまった、冷たい風が吹き込んできてしまった。慌てて窓を閉めるも時既に遅しでキャラバン内の気温は下がっている。うう、自業自得だけど寒いな。
「周りのこともちゃんと考えろ」
「すみませんでした……」
鬼道に怒られてしまったが返す言葉も無い。
そんなあたし達を乗せたキャラバンは、白恋中へと着々と進んでいくのだった。
→あとがき
それからキャラバンでひたすら移動して、漸く北海道に入った。窓の外は雪が降っていて、辺り一面銀世界だ。
キャラバン内は暖房が入っているけど、それでもやっぱり寒いものは寒い。こんな時は、だ。さっ君に貰ったマフラーをバッグから取り出して装着!
隣の染岡に見せびらかしてると、振り向いた一郎太が首を傾げた。
「美波、そのマフラーは?」
「さっ君に貰った!」
「ああ、帝国の佐久間か」
「そうだよ。見てみて、ペンギン柄。凄いよね、自分で作ったんだって」
「あいつ、結構暇なんだな」
「あー……まあ、そうかもね」
まだ怪我は完治してないし、ずっと病院のベッドで横になってるのは、暇だと思う。何か雑誌とか差し入れすれば良かったかな。
そんな中、キャラバンが急に止まった。古株さんが言うには人がいたらしい。守兄がその子を連れて……って、
「(え!?しろ君!?)」
キャラバンに入ってきたのは、雷門が探しているその人であろう、前に北海道で会ったしろ君――吹雪士郎だった。
ちょっと雰囲気は変わった気がするけど、ふんわりした穏やかな感じは変わってない。多分、しろ君だ。
それにしても、アツ君は一緒じゃないのかな?てかあのマフラー、アツ君がつけてたやつじゃない?なんでしろ君が……?
?がぐるぐると脳内を飛び交う。てか知り合いってばれたらまずい気がする。鬼道あたりに何か言われそう。知っていたなら何故言わない?とか。
だってしろ君はディフェンダーの筈で、噂の吹雪士郎はフォワードで、確証が持てなかったし。
体を縮こめて前の座席の背もたれに隠れると、染岡に呆れられた。
「何やってんだよ、お前」
「気にしないで染岡。ちょっと屈みたい気分なんだ」
「そうかよ……。まあ、酔ったとか体調悪いとかじゃないならいいけどよ」
染岡の盛大な溜め息に、ますます体を縮こめたくなった。
「……なあ、お前は豪炎寺が抜けた理由知ってんのか」
「え?」
「見送ったんだろ、あいつの事」
「それは……そうだけど、詳しくは知らないっていうか」
「詳しくなくても知ってて、それでも俺達には言えねえ理由なのかよ」
「う、ん。ごめん」
「はあ……。何で美波が謝るんだよ。黙って抜けた豪炎寺も豪炎寺だろ」
拗ねたような声だけど、染岡はどこか寂しそうだった。豪炎寺と染岡、ずっと二人で雷門のストライカーコンビだったんだ。当然だ。
「監督に反論しなかったってことは豪炎寺は納得してて、あいつなりの理由もあったってことだろ。話してくれりゃあいいのによお」
「染岡は、豪炎寺を信じられない?帰って来るって」
「分かんねえ。豪炎寺だって離れたくて離れた訳じゃねえとは思うが、なら戻れない理由だってあるかもしれねえ」
「……豪炎寺は絶対強くなって帰ってくる。あたしはそう信じたい、いや信じてる」
「美波……」
「だから、一緒に待とう!あたし達も負けないくらいに強くなってね!」
「……当たり前だ!」
ニッと染岡は笑った。久しぶりに見たなあ、染岡が笑ったの。ここ暫くはずっとキツい顔してたから。
その時、キャラバンが急に止まった。雪にタイヤをとられたらしい。古株さんが外に出ようとしたら、山親父が来るから駄目だとしろ君が止めた。
「何それ……うわっ」
ぐらりとキャラバンが揺れた。外を見るとでかい熊がいた。……えっ?
「く、熊!?染岡!熊がいるよ!」
「はしゃいでる場合か!」
「痛い!ごめん!」
頭に拳骨が降ってきた。染岡としても思ってた以上に力が入ってたみたいで悪いと謝られた。
にしてもあの熊、見たことあるような。前に北海道に来た時、アツ君が吹っ飛ばしてくれた熊かな?
キャラバン内は大混乱で、あちこちから悲鳴が聞こえる。周りがこうだから逆に冷静になってきたけど、この状況どうしよう。
しろ君に聞けば対処法は分かるだろうかと前方を見たら、既に彼はいなかった。
まさかと外を見ると、熊――山親父が倒れて、その後ろでボールを持ったしろ君が立っている姿が見えた。
「もう出発しても大丈夫ですよ」
戻ってきたしろ君は安心させるようにふんわりと笑ったけど、皆は顔を見合わせて困惑していた。
外へ出て行ったしろ君に倒れた山親父。しろ君が倒したのは想像つくけど、信じられないのはなんとなく分かる。
キャラバンが動き出した。窓から外を見ると、山親父がふらつきながらも立ち上がろうとしているのが見えた。手加減したのかな。
……それにしても、1発であんなに大きな熊を気絶させるなんて凄い。流石は噂で熊殺しと言われてるだけある。
でもやっぱり、前に会った時と比べて、ちょっと違和感があった。
暫くして、ここまで来たらもう大丈夫だと、しろ君はキャラバンを降りた。降り際にしろ君は「またね」とあたしに手を振った。
思わず振り返して見送ると、じっと守兄と一郎太からの視線が突き刺さった。
「美波ってあいつと話したっけ」
「えっ、あ、話してないけど気を使ってくれたのかな?」
「ふーん」
それ以上は何も聞かれなかった。まああたし達が行くのは白恋中で、しろ君もそこへ行くんだろうから、きっとまた会う筈だ。
窓を開けて外を見たら、こっちを見ていたしろ君と視線が合った。それからしろ君は沢山積もった雪へと思いっきりボールを蹴った。
するとシュートの勢いで雪が弾け飛んで道出来た。そこをすたすたと歩いていくしろ君。まるで十戒のモーゼ。ラッセル車要らず!
「な、なあ、美波。寒い……」
「ごめん!」
しまった、冷たい風が吹き込んできてしまった。慌てて窓を閉めるも時既に遅しでキャラバン内の気温は下がっている。うう、自業自得だけど寒いな。
「周りのこともちゃんと考えろ」
「すみませんでした……」
鬼道に怒られてしまったが返す言葉も無い。
そんなあたし達を乗せたキャラバンは、白恋中へと着々と進んでいくのだった。
→あとがき