第37話 終わりなき脅威!
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富士山が小さくなった頃、突然キャラバンが止まった。前の方から煙が出ていて、修理が必要みたいだ。研究所から脱出する時、無茶な走りをしたしね……。
「……俺、やっぱりこのチームに入ってよかった」
「なんだよいきなり」
「だってほら俺、かーちゃんのこと、あったろ?俺、人のことが信じられなくなったって」
夕弥の言葉に、キャラバン内が静まり返る。けれど夕弥はなんでもないように笑った。
「けどさ、みんなと一緒に戦って、わかったんだ。人を信じなきゃダメだって!俺、このチームが大好きだ!ほんとに入ってよかったって思ってる!」
……やっぱり、この戦いは辛いだけじゃなかった。出会えた仲間達との新しい繋がりを、大事にしたい。
握手する春ちゃんと夕弥に改めてそう思ってたら、蛙が飛び出してきて、夕弥の頭の上に乗っかった。え、春ちゃん、これって。
「引っかかった引っかかった!私も一回やってみたかったんだあ!うっしっし」
「やっぱり信じた俺がバカだった!」
「まあまあ、たまにはこういう時もあるよ」
「うるせーバカ美波」
「バカって言わないで!」
「あ、そうだ!この際、美波先輩に聞きたいことが!ズバリ、美波先輩の本命!」
「本命?」
なんか嫌な予感しかしない。一歩下がりかけたところで、後ろからリカに両肩を掴まれた。逃げ道なくなった……。
「この戦いで美波も色々あったやろ。そんなら何かしら変わってもおかしないわ」
「確かに色々あったけど」
「あ、お兄ちゃんどうですか?お兄ちゃん!」
「春奈……」
「格好いいですよね!?」
「ん?う、ん?」
「鬼道、表に出ろ」
「落ち着け円堂」
「やっぱり豪炎寺なん?それともダークホースの吹雪か?」
「な、何が」
「僕だよね、美波ちゃん」
「だから何が!?」
「吹雪、表に出ろ」
「円堂……何言っても無駄か」
「もしかしてまさかのグラン、ヒロトさん?ですか!お知り合いだったんですよね!」
「それ言うたらガゼルかもしれへんで」
「確かに!」
盛り上がる二人に置いてかれて、もうなにがなんだかだ。守兄は豪炎寺達につよめってるし、壁山達は怯えてるしで。考えたくもない。
一瞬の隙をついてキャラバンから逃げ出す。逃げるが勝ち!と思いきや、修理がまだかかりそうなのもあって、結局全員降りてきた。
とはいえ自然とこれからの話になったから、話題は逸らせた。エイリア学園を倒して、旅の目的は果たした。雷門中に帰った後は、どうするか。
リカは一之瀬とお好み焼き屋をすると言い出した。立向居は陽花戸、条兄は大海原、士郎くんは白恋へ帰る。
元々エイリア学園と戦うために集まったメンバーだ。寂しいけど、みんな帰る元のチームがあるし、待ってる人達がいるんだよね。
「塔子さんはどうするの?」
「あたし?うーん、リカんちの隣で円堂とたこ焼き屋さんやろっかな」
「「え!?」」
「冗談だよ冗談!あっははは!」
ぎょっとした表情を浮かべた秋となっちゃんが、ほっと胸を撫で下ろす。これからしたいこと、かあ……。
「あたしは何しようかな」
「美波は雷門だろ」
「北海道へおいでよ。アツヤにも報告したいし」
「あ、いいね」
「待て待て待て」
「そうだ。僕達もお店を出そう。僕、サッカーボールのお餅を焼けるんだよ」
「凄いね士郎くん!焼き方教えてよ!」
「だーかーらーーーっ!!!駄目に決まってるだろ!!!」
守兄が叫ぶと同時に、ボンッと音がした。ボンネットのあたりから更に煙が出てる。この様子だと、もう少しかかりそうだ。
「なら、ね!」
「ああ!」
時間潰しなんて、あたし達にとってはこれしか思いつかない。
「「サッカーやろうぜ!」」
『おう!』
転がるように、河川敷へと飛び出した。
みんなでボールをがむしゃらに蹴り合う。試合じゃないから、フィールドもゴールもない。滅茶苦茶なのが楽しくて、まだ小さかった頃を思い出した。
あたしと守兄と一郎太でやったサッカー。早く一郎太に会いたい。一時は会うのが怖かったのに、今は心からそう思う。
「春ちゃん上手いね!」
「お兄ちゃんのプレーをずっと見てましたから!」
「……そうか」
「お、鬼道照れていたたたた!」
「何か言ったか」
「言ってないです!」
「ダメだよ鬼道くん。美波ちゃんが可哀想だよ」
「そうだそうだ!」
「吹雪、美波はあまり甘やかさない方がいい」
「大丈夫。みんながいじめる分、僕がたくさん甘やかしてあげるから」
「ほう」
「吹雪、お前……」
士郎くんに豪炎寺に鬼道。3人の間で激しい火花が散っている……気がする。それを見る春ちゃんの目はキラキラしていた。こんなはずじゃなかったのに、どうしてこうなった。
一旦距離を置こうとじりじりと後ずさって、堤防の上に秋が1人で座っているのが見えた。思わず走り出せば、守兄と並んだ。考えることは同じだ。
「秋ー!どしたの?」
「秋はやらなくていいのか?」
「うん、私はいいの」
そう言って笑った秋に、もう一度顔を見合わせてから、両サイドに座った。
「なあ、俺、思うんだ。エイリア学園とは誰かが戦わなくちゃならなかった。それが、俺達でよかったって。だって、あんなに最高の仲間に出会えたんだから」
「うん」
「あたしもそう思う。辛いこともあったけど、嬉しいこともあって、もっともっとみんなのことも、サッカーのことも好きになれた!」
「…………まあ、そうだな」
「守兄何その間」
「(円堂くん……)」
しかめっ面の守兄から、面倒そうな気配を感じる。……守兄も気にしてるんだな、本命だとかそういうの。
「……恋、か」
「えっ」
「まだ早いんじゃないか」
「……うん。そういうのは、今はいいかな」
「俺もそう思う」
「だよね。あんまり、考えたくないし」
「(びっくりした……)」
「秋?」
「あ、えっと、そういえば、基山くんとは何があったの?」
「ヒロト?」
「美波ちゃんのこと、覚えてなかったみたいだから……」
「流石秋、よく見てる。なんかエイリア石の影響らしいんだよね」
「だからエイリア石が無くなったら思い出したのか」
それもある、と思う。改めて考え直すと、それだけじゃなかった気がしてくる。
お日さま園で遊んでたある日、枝に引っかかったボールを取りに木を登って、落ちかけたヒロトの手を掴んだことがあった。
――絶対、離さない!
あの時と同じことを言って、それからヒロトの様子が変わった。あの頃の思い出がきっかけになったなら……ちょっと、嬉しいかもしれない。
「美波ちゃん?」
「……よし、やっぱり秋も混ざろう!」
「え、え?」
「おっし、行くぞ!」
2人で秋の手を掴んで走り出す。勢いがつき過ぎて、揃って転んで、みんなに心配されて、また笑った。
***
雷門中へ戻ると、妙に薄暗くて、変な空気がした。霧がかかって、視界が悪い。……嫌な感じだ。
しかも何がおかしいのかって、人気が全くない。いくら校舎が新しくなったばかりとはいえ、誰もいないなんて。
不穏な空気に警戒しつつ辺りを見回していると、霧の中からあの研崎とかいう奴が現れた。何でここに……!
……よくよく考えれば、あの場に研崎はいなかった。目の前のことで精一杯で、全然気づかなかった。警察の目を掻い潜って、逃げてたんだ。
「お待ちしていましたよ、雷門の皆さん。皆さんにはまだ、最後の戦いが残っていますからね」
「最後の戦い?」
「どういうことだ!」
研崎の後ろに控えているのは、フードのついた黒いマントを着ている11人。こいつらと、サッカーしろってこと……?
その中の1人が進み出て、フードを取る。見覚えのある綺麗な水色の髪が広がった。
「風丸!?」
「な……一郎太、どうして!?」
久しぶりに顔を合わせた一郎太の瞳は暗く淀んでいて、いつもは束ねている髪は、肩の辺りを舞うように下ろされている。
違和感に体を強張らせていると、黒マント達は次々にフードを取る。そこには、知った顔しかなかった。
「染岡くん!」
「嘘!」
「影野!半田!」
「栗松!少林!」
「マックスまで……」
「杉森!?」
「西垣、お前」
鋭い目付きで真っ直ぐにこちらを見ているみんなに、何で研崎と一緒にいるんだと、頭の中をはてながぐるぐると回る。
「久しぶりだな、円堂」
低い声で、まるであたし達が敵だというように、敵意が見え隠れする目。
戦いは終わらない。
最後の戦い。最後の"敵"。
それは、大切な仲間達だった。
→あとがき
「……俺、やっぱりこのチームに入ってよかった」
「なんだよいきなり」
「だってほら俺、かーちゃんのこと、あったろ?俺、人のことが信じられなくなったって」
夕弥の言葉に、キャラバン内が静まり返る。けれど夕弥はなんでもないように笑った。
「けどさ、みんなと一緒に戦って、わかったんだ。人を信じなきゃダメだって!俺、このチームが大好きだ!ほんとに入ってよかったって思ってる!」
……やっぱり、この戦いは辛いだけじゃなかった。出会えた仲間達との新しい繋がりを、大事にしたい。
握手する春ちゃんと夕弥に改めてそう思ってたら、蛙が飛び出してきて、夕弥の頭の上に乗っかった。え、春ちゃん、これって。
「引っかかった引っかかった!私も一回やってみたかったんだあ!うっしっし」
「やっぱり信じた俺がバカだった!」
「まあまあ、たまにはこういう時もあるよ」
「うるせーバカ美波」
「バカって言わないで!」
「あ、そうだ!この際、美波先輩に聞きたいことが!ズバリ、美波先輩の本命!」
「本命?」
なんか嫌な予感しかしない。一歩下がりかけたところで、後ろからリカに両肩を掴まれた。逃げ道なくなった……。
「この戦いで美波も色々あったやろ。そんなら何かしら変わってもおかしないわ」
「確かに色々あったけど」
「あ、お兄ちゃんどうですか?お兄ちゃん!」
「春奈……」
「格好いいですよね!?」
「ん?う、ん?」
「鬼道、表に出ろ」
「落ち着け円堂」
「やっぱり豪炎寺なん?それともダークホースの吹雪か?」
「な、何が」
「僕だよね、美波ちゃん」
「だから何が!?」
「吹雪、表に出ろ」
「円堂……何言っても無駄か」
「もしかしてまさかのグラン、ヒロトさん?ですか!お知り合いだったんですよね!」
「それ言うたらガゼルかもしれへんで」
「確かに!」
盛り上がる二人に置いてかれて、もうなにがなんだかだ。守兄は豪炎寺達につよめってるし、壁山達は怯えてるしで。考えたくもない。
一瞬の隙をついてキャラバンから逃げ出す。逃げるが勝ち!と思いきや、修理がまだかかりそうなのもあって、結局全員降りてきた。
とはいえ自然とこれからの話になったから、話題は逸らせた。エイリア学園を倒して、旅の目的は果たした。雷門中に帰った後は、どうするか。
リカは一之瀬とお好み焼き屋をすると言い出した。立向居は陽花戸、条兄は大海原、士郎くんは白恋へ帰る。
元々エイリア学園と戦うために集まったメンバーだ。寂しいけど、みんな帰る元のチームがあるし、待ってる人達がいるんだよね。
「塔子さんはどうするの?」
「あたし?うーん、リカんちの隣で円堂とたこ焼き屋さんやろっかな」
「「え!?」」
「冗談だよ冗談!あっははは!」
ぎょっとした表情を浮かべた秋となっちゃんが、ほっと胸を撫で下ろす。これからしたいこと、かあ……。
「あたしは何しようかな」
「美波は雷門だろ」
「北海道へおいでよ。アツヤにも報告したいし」
「あ、いいね」
「待て待て待て」
「そうだ。僕達もお店を出そう。僕、サッカーボールのお餅を焼けるんだよ」
「凄いね士郎くん!焼き方教えてよ!」
「だーかーらーーーっ!!!駄目に決まってるだろ!!!」
守兄が叫ぶと同時に、ボンッと音がした。ボンネットのあたりから更に煙が出てる。この様子だと、もう少しかかりそうだ。
「なら、ね!」
「ああ!」
時間潰しなんて、あたし達にとってはこれしか思いつかない。
「「サッカーやろうぜ!」」
『おう!』
転がるように、河川敷へと飛び出した。
みんなでボールをがむしゃらに蹴り合う。試合じゃないから、フィールドもゴールもない。滅茶苦茶なのが楽しくて、まだ小さかった頃を思い出した。
あたしと守兄と一郎太でやったサッカー。早く一郎太に会いたい。一時は会うのが怖かったのに、今は心からそう思う。
「春ちゃん上手いね!」
「お兄ちゃんのプレーをずっと見てましたから!」
「……そうか」
「お、鬼道照れていたたたた!」
「何か言ったか」
「言ってないです!」
「ダメだよ鬼道くん。美波ちゃんが可哀想だよ」
「そうだそうだ!」
「吹雪、美波はあまり甘やかさない方がいい」
「大丈夫。みんながいじめる分、僕がたくさん甘やかしてあげるから」
「ほう」
「吹雪、お前……」
士郎くんに豪炎寺に鬼道。3人の間で激しい火花が散っている……気がする。それを見る春ちゃんの目はキラキラしていた。こんなはずじゃなかったのに、どうしてこうなった。
一旦距離を置こうとじりじりと後ずさって、堤防の上に秋が1人で座っているのが見えた。思わず走り出せば、守兄と並んだ。考えることは同じだ。
「秋ー!どしたの?」
「秋はやらなくていいのか?」
「うん、私はいいの」
そう言って笑った秋に、もう一度顔を見合わせてから、両サイドに座った。
「なあ、俺、思うんだ。エイリア学園とは誰かが戦わなくちゃならなかった。それが、俺達でよかったって。だって、あんなに最高の仲間に出会えたんだから」
「うん」
「あたしもそう思う。辛いこともあったけど、嬉しいこともあって、もっともっとみんなのことも、サッカーのことも好きになれた!」
「…………まあ、そうだな」
「守兄何その間」
「(円堂くん……)」
しかめっ面の守兄から、面倒そうな気配を感じる。……守兄も気にしてるんだな、本命だとかそういうの。
「……恋、か」
「えっ」
「まだ早いんじゃないか」
「……うん。そういうのは、今はいいかな」
「俺もそう思う」
「だよね。あんまり、考えたくないし」
「(びっくりした……)」
「秋?」
「あ、えっと、そういえば、基山くんとは何があったの?」
「ヒロト?」
「美波ちゃんのこと、覚えてなかったみたいだから……」
「流石秋、よく見てる。なんかエイリア石の影響らしいんだよね」
「だからエイリア石が無くなったら思い出したのか」
それもある、と思う。改めて考え直すと、それだけじゃなかった気がしてくる。
お日さま園で遊んでたある日、枝に引っかかったボールを取りに木を登って、落ちかけたヒロトの手を掴んだことがあった。
――絶対、離さない!
あの時と同じことを言って、それからヒロトの様子が変わった。あの頃の思い出がきっかけになったなら……ちょっと、嬉しいかもしれない。
「美波ちゃん?」
「……よし、やっぱり秋も混ざろう!」
「え、え?」
「おっし、行くぞ!」
2人で秋の手を掴んで走り出す。勢いがつき過ぎて、揃って転んで、みんなに心配されて、また笑った。
***
雷門中へ戻ると、妙に薄暗くて、変な空気がした。霧がかかって、視界が悪い。……嫌な感じだ。
しかも何がおかしいのかって、人気が全くない。いくら校舎が新しくなったばかりとはいえ、誰もいないなんて。
不穏な空気に警戒しつつ辺りを見回していると、霧の中からあの研崎とかいう奴が現れた。何でここに……!
……よくよく考えれば、あの場に研崎はいなかった。目の前のことで精一杯で、全然気づかなかった。警察の目を掻い潜って、逃げてたんだ。
「お待ちしていましたよ、雷門の皆さん。皆さんにはまだ、最後の戦いが残っていますからね」
「最後の戦い?」
「どういうことだ!」
研崎の後ろに控えているのは、フードのついた黒いマントを着ている11人。こいつらと、サッカーしろってこと……?
その中の1人が進み出て、フードを取る。見覚えのある綺麗な水色の髪が広がった。
「風丸!?」
「な……一郎太、どうして!?」
久しぶりに顔を合わせた一郎太の瞳は暗く淀んでいて、いつもは束ねている髪は、肩の辺りを舞うように下ろされている。
違和感に体を強張らせていると、黒マント達は次々にフードを取る。そこには、知った顔しかなかった。
「染岡くん!」
「嘘!」
「影野!半田!」
「栗松!少林!」
「マックスまで……」
「杉森!?」
「西垣、お前」
鋭い目付きで真っ直ぐにこちらを見ているみんなに、何で研崎と一緒にいるんだと、頭の中をはてながぐるぐると回る。
「久しぶりだな、円堂」
低い声で、まるであたし達が敵だというように、敵意が見え隠れする目。
戦いは終わらない。
最後の戦い。最後の"敵"。
それは、大切な仲間達だった。
→あとがき